9 / 33
元婚約者の新しい恋人
しおりを挟む
「ジスラン様、ご気分はいかがですか?」
「ああ、リアーヌか…ありがとう。今日は大分いいよ」
アルレットと婚約破棄して一月以上が経った。
私はこの国の第三王子として生まれ、その中でも抜きん出て麗しく生まれついた。
光に当たると虹色に輝く銀の髪、晴れ渡った空の様だと褒められる瞳、芸術家ですら再現出来ないと言わしめた整った造形。
私は美の女神の寵愛を一身に受けたのだと称えられた。
そんな私だったが、唯一弱点があった。
それは、身体が弱くて呪いにかかりやすい体質だった。
医師や神官たちが言うには、身体が弱いのは呪いを防ぐ力が弱く、呪いに消耗させられているからだろうとの事だった。
まぁ、王家は立場上、妬みや嫉妬、恨みを買いやすい。
その上私は、この世の美を一身に受けているのだ。
私を羨み、呪いたいと思う者がいても仕方ないだろう。
そうは言っても、さすがに熱を出して寝込んでばかりいるのは苦しかった。
私が寝込めば、母上だけでなく多忙な父上ですら駆けつけてくれたから、その事に気分がよくなったものだ。
とは言え、それも度重なると不安だし辛い。
そんな私に与えられたのが、聖女の力を持つアルレットだった。
アルレットは伯爵家の長女で、輝く金の髪と若葉の様な瞳を持ち、造形は悪くはなかった。
ただ、真面目で地味で、正直一緒にいてもつまらないし、華もない。
美の女神に愛された私に釣り合う様な女ではなかった。
それでもアルレットのお陰で、婚約してからは寝込む事もなくなった。
それに関しては感謝しているが、それでも伯爵家では後ろ盾とするには不十分だし、出来れば私の美貌に釣り合う相手がいい。
そう思っていた時に出会ったのが、オランド侯爵家のリアーヌだった。
リアーヌは赤みがかった金の髪と、輝くようなオレンジ色の瞳を持つ美少女だ。
儚げな美貌は群を抜いて美しく、おずおずと見上げてくる様も可憐で、いつも強張った表情のアルレットとは雲泥の差だった。
「今日も力を込めたお茶をお持ちしましたわ」
「ああ、ありがとう。頂くよ」
そう言って手ずからお茶を淹れてくれるリアーヌは、実に献身的で愛らしかった。
彼女が入れてくれるお茶は甘みがあり、飲んだ後は身体がすっきりする。
アルレット程の力はないから、会えない時間は茶葉に聖女の力を込めて、足りない分を補っているのだと言った。何ともいじらしい事だ。
しかし…
最近、以前に比べて調子がよくない事が増えた…と思う。
気に病むほどではないし、リアーヌが悲しむだろうから言いはしないが…
「ジスラン様。こちらを」
そう言ってリアーヌが出してきたのは、珍しい青虹玉だった。
青虹玉は女神の涙とも言われる宝石で、お守りとして重宝されているのだ。
「私の聖女の力を込めてあります。一緒にいられない間はこれがジスラン様をお守りしますわ」
「おお、そうか。ありがとう、リアーヌ」
そう、こんなにも健気で私を案じてくれる恋人がいるのだ。
何を不安に思う事があるだろう。
愛らしくいじらしい恋人を、私は優しく抱きしめた。
「ああ、リアーヌか…ありがとう。今日は大分いいよ」
アルレットと婚約破棄して一月以上が経った。
私はこの国の第三王子として生まれ、その中でも抜きん出て麗しく生まれついた。
光に当たると虹色に輝く銀の髪、晴れ渡った空の様だと褒められる瞳、芸術家ですら再現出来ないと言わしめた整った造形。
私は美の女神の寵愛を一身に受けたのだと称えられた。
そんな私だったが、唯一弱点があった。
それは、身体が弱くて呪いにかかりやすい体質だった。
医師や神官たちが言うには、身体が弱いのは呪いを防ぐ力が弱く、呪いに消耗させられているからだろうとの事だった。
まぁ、王家は立場上、妬みや嫉妬、恨みを買いやすい。
その上私は、この世の美を一身に受けているのだ。
私を羨み、呪いたいと思う者がいても仕方ないだろう。
そうは言っても、さすがに熱を出して寝込んでばかりいるのは苦しかった。
私が寝込めば、母上だけでなく多忙な父上ですら駆けつけてくれたから、その事に気分がよくなったものだ。
とは言え、それも度重なると不安だし辛い。
そんな私に与えられたのが、聖女の力を持つアルレットだった。
アルレットは伯爵家の長女で、輝く金の髪と若葉の様な瞳を持ち、造形は悪くはなかった。
ただ、真面目で地味で、正直一緒にいてもつまらないし、華もない。
美の女神に愛された私に釣り合う様な女ではなかった。
それでもアルレットのお陰で、婚約してからは寝込む事もなくなった。
それに関しては感謝しているが、それでも伯爵家では後ろ盾とするには不十分だし、出来れば私の美貌に釣り合う相手がいい。
そう思っていた時に出会ったのが、オランド侯爵家のリアーヌだった。
リアーヌは赤みがかった金の髪と、輝くようなオレンジ色の瞳を持つ美少女だ。
儚げな美貌は群を抜いて美しく、おずおずと見上げてくる様も可憐で、いつも強張った表情のアルレットとは雲泥の差だった。
「今日も力を込めたお茶をお持ちしましたわ」
「ああ、ありがとう。頂くよ」
そう言って手ずからお茶を淹れてくれるリアーヌは、実に献身的で愛らしかった。
彼女が入れてくれるお茶は甘みがあり、飲んだ後は身体がすっきりする。
アルレット程の力はないから、会えない時間は茶葉に聖女の力を込めて、足りない分を補っているのだと言った。何ともいじらしい事だ。
しかし…
最近、以前に比べて調子がよくない事が増えた…と思う。
気に病むほどではないし、リアーヌが悲しむだろうから言いはしないが…
「ジスラン様。こちらを」
そう言ってリアーヌが出してきたのは、珍しい青虹玉だった。
青虹玉は女神の涙とも言われる宝石で、お守りとして重宝されているのだ。
「私の聖女の力を込めてあります。一緒にいられない間はこれがジスラン様をお守りしますわ」
「おお、そうか。ありがとう、リアーヌ」
そう、こんなにも健気で私を案じてくれる恋人がいるのだ。
何を不安に思う事があるだろう。
愛らしくいじらしい恋人を、私は優しく抱きしめた。
205
あなたにおすすめの小説
放蕩な血
イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。
だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。
冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。
その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。
「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」
過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。
光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。
⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。
追放された令嬢ですが、隣国公爵と白い結婚したら溺愛が止まりませんでした ~元婚約者? 今さら返り咲きは無理ですわ~
ふわふわ
恋愛
婚約破棄――そして追放。
完璧すぎると嘲られ、役立たず呼ばわりされた令嬢エテルナは、
家族にも見放され、王国を追われるように国境へと辿り着く。
そこで彼女を救ったのは、隣国の若き公爵アイオン。
「君を保護する名目が必要だ。干渉しない“白い結婚”をしよう」
契約だけの夫婦のはずだった。
お互いに心を乱さず、ただ穏やかに日々を過ごす――はずだったのに。
静かで優しさを隠した公爵。
無能と決めつけられていたエテルナに眠る、古代聖女の力。
二人の距離は、ゆっくり、けれど確実に近づき始める。
しかしその噂は王国へ戻り、
「エテルナを取り戻せ」という王太子の暴走が始まった。
「彼女はもうこちらの人間だ。二度と渡さない」
契約結婚は終わりを告げ、
守りたい想いはやがて恋に変わる──。
追放令嬢×隣国公爵×白い結婚から溺愛へ。
そして元婚約者ざまぁまで爽快に描く、
“追い出された令嬢が真の幸せを掴む物語”が、いま始まる。
---
嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。
【完結】魔力の見えない公爵令嬢は、王国最強の魔術師でした
er
恋愛
「魔力がない」と婚約破棄された公爵令嬢リーナ。だが真実は逆だった――純粋魔力を持つ規格外の天才魔術師! 王立試験で元婚約者を圧倒し首席合格、宮廷魔術師団長すら降参させる。王宮を救う活躍で副団長に昇進、イケメン公爵様からの求愛も!? 一方、元婚約者は没落し後悔の日々……。見る目のなかった男たちへの完全勝利と、新たな恋の物語。
【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました
冬月光輝
恋愛
ボルメルン王国の聖女、クラリス・マーティラスは王家の血を引く大貴族の令嬢であり、才能と美貌を兼ね備えた完璧な聖女だと国民から絶大な支持を受けていた。
代々聖女の家系であるマーティラス家に仕えているネルシュタイン家に生まれたエミリアは、大聖女お付きのメイドに相応しい人間になるために英才教育を施されており、クラリスの側近になる。
クラリスは能力はあるが、傍若無人の上にサボり癖のあり、すぐに癇癪を起こす手の付けられない性格だった。
それでも、エミリアは家を守るために懸命に彼女に尽くし努力する。クラリスがサボった時のフォローとして聖女しか使えないはずの結界術を独学でマスターするほどに。
そんな扱いを受けていたエミリアは偶然、落馬して大怪我を負っていたこの国の第四王子であるニックを助けたことがきっかけで、彼と婚約することとなる。
幸せを掴んだ彼女だが、理不尽の化身であるクラリスは身勝手な理由でエミリアをクビにした。
さらに彼女はクラリスによって第四王子を助けたのは自作自演だとあらぬ罪をでっち上げられ、家を潰されるかそれを飲み込むかの二択を迫られ、冤罪を被り国家追放に処される。
絶望して隣国に流れた彼女はまだ気付いていなかった、いつの間にかクラリスを遥かに超えるほどハイスペックになっていた自分に。
そして、彼女こそ国を守る要になっていたことに……。
エミリアが隣国で力を認められ巫女になった頃、ボルメルン王国はわがまま放題しているクラリスに反発する動きが見られるようになっていた――。
敗戦国の元王子へ 〜私を追放したせいで貴国は我が帝国に負けました。私はもう「敵国の皇后」ですので、頭が高いのではないでしょうか?〜
六角
恋愛
「可愛げがないから婚約破棄だ」 王国の公爵令嬢コーデリアは、その有能さゆえに「鉄の女」と疎まれ、無邪気な聖女を選んだ王太子によって国外追放された。
極寒の国境で凍える彼女を拾ったのは、敵対する帝国の「氷の皇帝」ジークハルト。 「私が求めていたのは、その頭脳だ」 皇帝は彼女の才能を高く評価し、なんと皇后として迎え入れた!
コーデリアは得意の「物流管理」と「実務能力」で帝国を黄金時代へと導き、氷の皇帝から極上の溺愛を受けることに。 一方、彼女を失った王国はインフラが崩壊し、経済が破綻。焦った元婚約者は戦争を仕掛けてくるが、コーデリアの完璧な策の前に為す術なく敗北する。
和平交渉の席、泥まみれで土下座する元王子に対し、美しき皇后は冷ややかに言い放つ。 「頭が高いのではないでしょうか? 私はもう、貴国を支配する帝国の皇后ですので」
これは、捨てられた有能令嬢が、最強のパートナーと共に元祖国を「実務」で叩き潰し、世界一幸せになるまでの爽快な大逆転劇。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
答えられません、国家機密ですから
ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる