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元婚約者の噂
「ジスラン殿下が?」
婚約披露パーティーから5日後、私は親友のマリエルのお屋敷でお茶をしていました。
彼女は領地が近い事もあって、子供の頃から仲良くしていますし、王都の屋敷も近いため、定期的にこうしてお茶をする仲です。
今日は早速オーギュ様との婚約の経緯を散々白状させられ、私は顔から火が出そうなほどに恥ずかしい想いをしていましたが…
マリエルの口からジスラン殿下の名を聞いて、そんな思いは一気に吹き飛んでしまいました。
「最近体調が思わしくないそうよ。まだ公にはされていないみたいだけど…」
「そう…」
どうやら私が心配していた事が現実になっていそうな気がします。
聖女の力を持つと言うリアーヌ様を新たな婚約者にすると仰っていましたし、近々婚約を披露するとは聞いています。
でも…リアーヌ様では殿下を守るには難しい…という事でしょうか…
「リアーヌ様に聖女の力があるなんて、これまで聞いた事もなかったから…正直、本当に?って思ってるんだよね」
「それは…ううん、そうね。私も変だと思っていたの。婚約者を選定した時にはリアーヌ様の名前、耳にしなかったから…」
「やっぱり…」
でも、いくら美人でも力がないなら、殿下はまだしも陛下達が婚約を許可するとも思えません。
いくら殿下に甘いとはいえ、命に係わる我儘を許すとは思えないからです。
「アルレット以外で婚約者候補に残ったのって…」
「メルロー辺境伯の…グレース様だったわ」
「グレース様かぁ…美人だけど騎士ですっごく強いと噂の方よね」
「ええ。第二騎士団に所属されているから、詳しくは存じないのだけど…」
そう、殿下の婚約者候補は、最終的に私とグレース様の二人が残りました。
ただ、グレース様は辺境伯の跡取り娘のためにジスラン殿下の元に嫁入りは出来ず、また殿下も自分よりも強い女は嫌だと駄々をこねたため、私が選ばれたのですが…
でも、その時どころか選考の半ばにもリアーヌ様の名はなかった筈です。
「でも…聖女の力を誤魔化すなんて出来ないし…」
「そうよね。それなりに力はお持ちの筈よ。でなければ、殿下はとっくに倒れて寝込んでいると思うし…」
そう、殿下はただでさえ身体が弱い上に、呪いを防ぐ力が皆無です。
婚約破棄してから既に一月以上経っているので、リアーヌ様に力がなければ、とっくに寝込んでいるでしょう。
だから、多少なりとも力はお持ちの筈です。
「まぁ、アルレットほどの力がないって事なのでしょうね。でも…こんな状態で大丈夫なのかしらね?」
「う~ん…最終的には呪いを防ぐ術を使えば大丈夫なんだけど…」
それについては、私も正直何とも言えません。
聖女の力は生涯に一人だけ、呪いを防ぐと言われています。
ただ、その方法は聖女の力を持つ側に大きな負担になるため、実際に使われる事は稀です。
それをしなくても、大抵の呪いは聖女の力で何とかなるからです。
「ま、どっちにしてもアルレットにはもう関係ないでしょ。婚約破棄して、今は公爵様の婚約者ですものね」
「そうね…」
そう答えながらも、私は何となく嫌な予感がするのを止められませんでした。
婚約披露パーティーから5日後、私は親友のマリエルのお屋敷でお茶をしていました。
彼女は領地が近い事もあって、子供の頃から仲良くしていますし、王都の屋敷も近いため、定期的にこうしてお茶をする仲です。
今日は早速オーギュ様との婚約の経緯を散々白状させられ、私は顔から火が出そうなほどに恥ずかしい想いをしていましたが…
マリエルの口からジスラン殿下の名を聞いて、そんな思いは一気に吹き飛んでしまいました。
「最近体調が思わしくないそうよ。まだ公にはされていないみたいだけど…」
「そう…」
どうやら私が心配していた事が現実になっていそうな気がします。
聖女の力を持つと言うリアーヌ様を新たな婚約者にすると仰っていましたし、近々婚約を披露するとは聞いています。
でも…リアーヌ様では殿下を守るには難しい…という事でしょうか…
「リアーヌ様に聖女の力があるなんて、これまで聞いた事もなかったから…正直、本当に?って思ってるんだよね」
「それは…ううん、そうね。私も変だと思っていたの。婚約者を選定した時にはリアーヌ様の名前、耳にしなかったから…」
「やっぱり…」
でも、いくら美人でも力がないなら、殿下はまだしも陛下達が婚約を許可するとも思えません。
いくら殿下に甘いとはいえ、命に係わる我儘を許すとは思えないからです。
「アルレット以外で婚約者候補に残ったのって…」
「メルロー辺境伯の…グレース様だったわ」
「グレース様かぁ…美人だけど騎士ですっごく強いと噂の方よね」
「ええ。第二騎士団に所属されているから、詳しくは存じないのだけど…」
そう、殿下の婚約者候補は、最終的に私とグレース様の二人が残りました。
ただ、グレース様は辺境伯の跡取り娘のためにジスラン殿下の元に嫁入りは出来ず、また殿下も自分よりも強い女は嫌だと駄々をこねたため、私が選ばれたのですが…
でも、その時どころか選考の半ばにもリアーヌ様の名はなかった筈です。
「でも…聖女の力を誤魔化すなんて出来ないし…」
「そうよね。それなりに力はお持ちの筈よ。でなければ、殿下はとっくに倒れて寝込んでいると思うし…」
そう、殿下はただでさえ身体が弱い上に、呪いを防ぐ力が皆無です。
婚約破棄してから既に一月以上経っているので、リアーヌ様に力がなければ、とっくに寝込んでいるでしょう。
だから、多少なりとも力はお持ちの筈です。
「まぁ、アルレットほどの力がないって事なのでしょうね。でも…こんな状態で大丈夫なのかしらね?」
「う~ん…最終的には呪いを防ぐ術を使えば大丈夫なんだけど…」
それについては、私も正直何とも言えません。
聖女の力は生涯に一人だけ、呪いを防ぐと言われています。
ただ、その方法は聖女の力を持つ側に大きな負担になるため、実際に使われる事は稀です。
それをしなくても、大抵の呪いは聖女の力で何とかなるからです。
「ま、どっちにしてもアルレットにはもう関係ないでしょ。婚約破棄して、今は公爵様の婚約者ですものね」
「そうね…」
そう答えながらも、私は何となく嫌な予感がするのを止められませんでした。
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