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元婚約者のその後

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さて…最後にジスラン殿下のその後についてです。
え?誰も聞いてない?そうですか…やっぱり…
でも、一応この騒動の中心人物なので、私の覚書として記しておきます。

一時は瀕死の状態になった殿下ですが、大聖女様の治療で無事回復されました。
あんな方ではありますが…一応何年かは婚約者として一緒に過ごしてきたのです。
亡くならずに済んだのにはホッとしました。


そんな殿下ですが…

「さぁ、殿下。治療はこれで終わりですわ」
「そ、そうか…三か月も私のために…いくら感謝してもし切れぬ」
「いえ、これも務めですので。それではごきげんよう」
「ま、待ってくれ!」
「はい?まだ何か?」
「…あ、あなたほど素晴らしい女性にこれまで出会ったことがない!どうか私の妃になって欲しい!」

どうやら殿下は、ご自身を癒して下さった大聖女様にすっかり恋をしてしまったようです。
大聖女様は殿下より年上ですが、他に類を見ない清らかなお美しさを持つお方です。
そんな方が三か月もの間、自分のために尽力したとあっては、惚れるなという方が難しいかもしれません。
しかもナルシストで面食いの殿下ですから、この展開は予想範囲内ではあるのですが…

「…お断りします」
「…は?」
「私、軟弱な方には興味がございませんの」
「は?え、えっと…あの…」
「私の理想は、私を守ってくださる心身共に強い殿方です」
「…でも、私は王族で…」
「それが?王族だろうとそんな貧弱な身体と根性で何か出来ますの?」
「そ、それは…」
「求婚なさりたいのなら、せめて人並みの筋肉をお付けください」
「筋肉?」
「ええ、均整の取れた筋肉を。話はそれからですわ」
「…!」

こうして大聖女様に、あっさりバッサリ振られた殿下でしたが…

「おはよう、アルレット嬢」
「…まぁ、殿下…今日も精が出ますね」
「私はもう王族じゃないんだ。殿下はやめてくれ」
「あ、はい、失礼いたしました」
「そんなに恐縮しないでくれ。私はもう一介の騎士だからな」

恋は人を変える…とは言いますが…
大聖女様に一目ぼれしたジスラン様は、自ら王族の身分を捨ててただの騎士となったのです。
今回の騒動の一端でもある殿下にも処分を…という声が上がっていたのもあり、殿下の申し出はあっさり許可されました。
そして今、大聖女様に相応しい男性になるべく、日々訓練に明け暮れています。
あの甘ったれのジスラン様が自らに厳しいトレーニングを課すなんて、誰が想像したでしょう…
今年の王国のびっくり大賞総なめです。

騎士団で鬼のしごきを受けて、驕慢な性格は随分矯正されました。
あ、でも、私にも謝罪に来られて頭を下げられた時には、とうとう呪いで頭をやられたのかと思ったのは内緒です。

呪いに弱いのは変わらないし、訓練の厳しさに負けてしょっちゅう寝込んでいる様です。
寮暮らしも楽ではないのでしょうが、必死に訓練に励む姿は以前の百倍は好感が持てます。
そうは言っても、恋の行方は壊滅的に厳しいと言わざるを得ませんが…

それでも、今の努力がどこかで報われる日が来るといいな、と思います。
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