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結婚出来ない男とご対面
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「いやぁ、あいつは見た目は恐ろしげだが、根は優しくていい奴なんじゃ。ちょっと不器用なせいで色々と誤解されておるがのぅ。あいつの婚約者にと言ってくれるとは…何とも健気な令嬢じゃ」
ローウェル様の婚約者に立候補した事にされた私を前に、国王陛下は上機嫌だった。いや、一介の子爵令嬢に会って下さるだけでも異例な事なのに、そこまで嬉しそうにされるとどう受け止めていいのかわからないのだけど…それとも、そんなに結婚させるのが難しい相手なのか?そうなのか?
相手の外見とか条件にはこだわらない私だけど…こうも破格な対応をされると不安だけが詰み上がっていった…でも普通そうならない?だって国王だよ?子爵なんて王族からしたら平民とさして変わらないレベルだよ?そんな人がいくら甥とはいえ、そこまで動く?
第一、健気なんかとは真逆ですよ、特にセラフィーナは。他人の婚約者誘惑する様な節操なしですし…つーか、そんな緩い女でいいのか?仮にも王家の血を引くんでしょ?
「しかもこんなにも若く愛らしい令嬢とはのぅ」
「陛下、一つだけお耳に入れたい事が…」
「なんじゃ、ハットン子爵」
「はい、こちらから提出した釣書にも記載しましたが、娘は三月ほど前に階段から落ちて頭を打ち、それ以前の記憶を失っております」
「おお、そうじゃったの。不幸な事故じゃったが、身体に障害が残らなくてなによりだ」
「はい。ですが…そのせいでその、マナーや常識、一般教養なども一緒に失われております。その状態で侯爵家の夫人は荷が重いかと…」
(クリフォードさん!)
よく言ってくれました!侯爵と一緒に私を売ったと思ってごめんなさい!ちゃんと私の事、心配してくれたんだね!こんのハゲ予備軍!地獄に落ちやがれ!なんて思ってごめんなさい…
「ああ、心配無用じゃ」
「しかしながら…」
「その件はアイザックにも伝えてあるし、承知しておる」
え?承知している?記憶がなくなって常識やマナーがリセットされた、見た目よくても中身ビッチ(かもしんない)節操なしの小娘でいいって?マジ?ええ~それじゃもしかして、侯爵様も同類だったりするの?もしくは女ならなんでもいいってくらい女に飢えた童貞とか?そっ、それって痛すぎるんだけど…
「肝心のローウェル様は何と?」
「何も」
「は?」
「何も言わんのじゃよ。あいつは女性に興味がないようでなぁ…困っておるんじゃ」
ちょっと待ってー!何も言わないって…それって完全無視、興味なしって事じゃないの?子爵家の娘なんか相手にするかぁ!って感じで…もしくは本当に女なら何でもいい色情魔とか?
「そ、それでは…」
「まぁ、周りに女性がいなかったのもあるだろうが…母親は早くに亡くなったしな。だが、侍女たちとは話もするし、嫌いという訳ではないらしいから何とかなるじゃろう?」
「…左様ですな」
(ちょっと待ったぁああ!!!)
何でそこで納得してんのよ、陛下!しかもクリフォードさんまで!節操なしではないみたいだけど、何とかなるって…無責任過ぎない?もし何ともならなかったら私はどうなるのよ?第一、本人が望んでもいないのに相手宛がったって意味ないでしょ?好みじゃないどころか生理的に無理!とか言われたらど―すりゃいいのよ!
「陛下、ローウェル侯爵が…」
「おお、直ぐに通せ」
私がこの状況に頭を痛めていると、侍従さんらしき人が声をかけてきたけど…どうやらご本人到着らしい。
一体どんな人なんだろう…色々気になるところがあり過ぎて不安しかない…だって、国王陛下がコネや伝を使っても結婚出来ない男だよ。仕事は出来るのに、爵位は高いのに、地位もあるのに…これだけ揃っているのに…想像以上にヤバい人っぽいけど、そんなのに嫁ぎたくな―い!!!
「失礼します。国王陛下、火急の御用と伺いましたが?」
私達は下座で入り口に背を向けていたのでまだ姿は見えないけれど…うん?あれ?声はいい感じだ。低いのに通るし、しっとりと重みがあって美声と言えよう。言葉使いも…これだけだけど、適切じゃないだろうか?変ななまりもないし。
「おお、アイザックか、よく来てくれた。まぁ、こちらへ」
「…陛下…またですか…」
ローウェル様の呆れを含んだ声が聞こえた。陛下の様子に…というか、このシチュエーションにローウェル様は何かを察した?もしかしたら…彼にとっては何度も経験しているシーンなのかもしれない。
「いい加減に諦めて下さい。私は無理をしてまで結婚する気は…」
「まぁ、そう言うな。今度はご令嬢から名乗り出てくれたんじゃ」
「はぁ…?」
(陛下、ちっがーう!違わないけど違うのよ!)
そうは思ったけれど、それは言葉にする事は出来なかった。しかもローウェル様は結婚を望んでいないじゃないの!これじゃ私のやっている事は無駄骨じゃない!あ、違う、私はご令嬢たちの人身御供だった…
「せっかく女性から名乗り上げてきたんだ。女性に恥をかかせるなど、騎士のする事ではなかろう」
「しかし…」
ほらぁ~ローウェル様が戸惑っているじゃない。どう考えても不自然だって。これがどこかで暴漢にでも襲われて助けて貰った…って言うならわかるけど、世間の噂を聞いただけで立候補してくるなんて、金か地位目当てと思われるだけだってば!ひぇ~私の立場がぁ~~~
私が一人悶絶している間に、ローウェル様は陛下の側までやって来た。ようやくご本人と対面だけど…
目の前にいたのは、これまでに会った誰よりも長身の騎士だった。黒い騎士服の上からでもわかるご立派な筋肉に包まれた体躯、短く揃えられた真っ黒な髪。横顔しか見えないから瞳の色はわからないけど、甘さの欠片もみられない厳格な顔立ち。日焼けした肌は血色よく、そして何よりも目立つのは…左の目じりの下から顎に向かってくっきりと走る刀傷の痕…だった。
(…こ、これがあの、悪の化身と言われているローウェル様?)
ローウェル様の婚約者に立候補した事にされた私を前に、国王陛下は上機嫌だった。いや、一介の子爵令嬢に会って下さるだけでも異例な事なのに、そこまで嬉しそうにされるとどう受け止めていいのかわからないのだけど…それとも、そんなに結婚させるのが難しい相手なのか?そうなのか?
相手の外見とか条件にはこだわらない私だけど…こうも破格な対応をされると不安だけが詰み上がっていった…でも普通そうならない?だって国王だよ?子爵なんて王族からしたら平民とさして変わらないレベルだよ?そんな人がいくら甥とはいえ、そこまで動く?
第一、健気なんかとは真逆ですよ、特にセラフィーナは。他人の婚約者誘惑する様な節操なしですし…つーか、そんな緩い女でいいのか?仮にも王家の血を引くんでしょ?
「しかもこんなにも若く愛らしい令嬢とはのぅ」
「陛下、一つだけお耳に入れたい事が…」
「なんじゃ、ハットン子爵」
「はい、こちらから提出した釣書にも記載しましたが、娘は三月ほど前に階段から落ちて頭を打ち、それ以前の記憶を失っております」
「おお、そうじゃったの。不幸な事故じゃったが、身体に障害が残らなくてなによりだ」
「はい。ですが…そのせいでその、マナーや常識、一般教養なども一緒に失われております。その状態で侯爵家の夫人は荷が重いかと…」
(クリフォードさん!)
よく言ってくれました!侯爵と一緒に私を売ったと思ってごめんなさい!ちゃんと私の事、心配してくれたんだね!こんのハゲ予備軍!地獄に落ちやがれ!なんて思ってごめんなさい…
「ああ、心配無用じゃ」
「しかしながら…」
「その件はアイザックにも伝えてあるし、承知しておる」
え?承知している?記憶がなくなって常識やマナーがリセットされた、見た目よくても中身ビッチ(かもしんない)節操なしの小娘でいいって?マジ?ええ~それじゃもしかして、侯爵様も同類だったりするの?もしくは女ならなんでもいいってくらい女に飢えた童貞とか?そっ、それって痛すぎるんだけど…
「肝心のローウェル様は何と?」
「何も」
「は?」
「何も言わんのじゃよ。あいつは女性に興味がないようでなぁ…困っておるんじゃ」
ちょっと待ってー!何も言わないって…それって完全無視、興味なしって事じゃないの?子爵家の娘なんか相手にするかぁ!って感じで…もしくは本当に女なら何でもいい色情魔とか?
「そ、それでは…」
「まぁ、周りに女性がいなかったのもあるだろうが…母親は早くに亡くなったしな。だが、侍女たちとは話もするし、嫌いという訳ではないらしいから何とかなるじゃろう?」
「…左様ですな」
(ちょっと待ったぁああ!!!)
何でそこで納得してんのよ、陛下!しかもクリフォードさんまで!節操なしではないみたいだけど、何とかなるって…無責任過ぎない?もし何ともならなかったら私はどうなるのよ?第一、本人が望んでもいないのに相手宛がったって意味ないでしょ?好みじゃないどころか生理的に無理!とか言われたらど―すりゃいいのよ!
「陛下、ローウェル侯爵が…」
「おお、直ぐに通せ」
私がこの状況に頭を痛めていると、侍従さんらしき人が声をかけてきたけど…どうやらご本人到着らしい。
一体どんな人なんだろう…色々気になるところがあり過ぎて不安しかない…だって、国王陛下がコネや伝を使っても結婚出来ない男だよ。仕事は出来るのに、爵位は高いのに、地位もあるのに…これだけ揃っているのに…想像以上にヤバい人っぽいけど、そんなのに嫁ぎたくな―い!!!
「失礼します。国王陛下、火急の御用と伺いましたが?」
私達は下座で入り口に背を向けていたのでまだ姿は見えないけれど…うん?あれ?声はいい感じだ。低いのに通るし、しっとりと重みがあって美声と言えよう。言葉使いも…これだけだけど、適切じゃないだろうか?変ななまりもないし。
「おお、アイザックか、よく来てくれた。まぁ、こちらへ」
「…陛下…またですか…」
ローウェル様の呆れを含んだ声が聞こえた。陛下の様子に…というか、このシチュエーションにローウェル様は何かを察した?もしかしたら…彼にとっては何度も経験しているシーンなのかもしれない。
「いい加減に諦めて下さい。私は無理をしてまで結婚する気は…」
「まぁ、そう言うな。今度はご令嬢から名乗り出てくれたんじゃ」
「はぁ…?」
(陛下、ちっがーう!違わないけど違うのよ!)
そうは思ったけれど、それは言葉にする事は出来なかった。しかもローウェル様は結婚を望んでいないじゃないの!これじゃ私のやっている事は無駄骨じゃない!あ、違う、私はご令嬢たちの人身御供だった…
「せっかく女性から名乗り上げてきたんだ。女性に恥をかかせるなど、騎士のする事ではなかろう」
「しかし…」
ほらぁ~ローウェル様が戸惑っているじゃない。どう考えても不自然だって。これがどこかで暴漢にでも襲われて助けて貰った…って言うならわかるけど、世間の噂を聞いただけで立候補してくるなんて、金か地位目当てと思われるだけだってば!ひぇ~私の立場がぁ~~~
私が一人悶絶している間に、ローウェル様は陛下の側までやって来た。ようやくご本人と対面だけど…
目の前にいたのは、これまでに会った誰よりも長身の騎士だった。黒い騎士服の上からでもわかるご立派な筋肉に包まれた体躯、短く揃えられた真っ黒な髪。横顔しか見えないから瞳の色はわからないけど、甘さの欠片もみられない厳格な顔立ち。日焼けした肌は血色よく、そして何よりも目立つのは…左の目じりの下から顎に向かってくっきりと走る刀傷の痕…だった。
(…こ、これがあの、悪の化身と言われているローウェル様?)
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