16 / 74
スパダリですか?そうですか…
しおりを挟む
無事、婚約した私とローウェル様。この先どうなるのかと心配していた私だったけれど、滑り出しは概ね順調だった。むしろ順調すぎて不安になるのは…長かった社畜生活の影響だろうか…
でも、上手くいっている時に限って最後に落とし穴が…な展開は何度も経験しているんだよねぇ…最後の落とし穴って…例えばご本人登場!とかだろうか…
そう言えば、何のきっかけでこうなったのかわからないんだから、何らかのきっかけで元に戻る可能性も…ないとは言い切れないんだよね…そうなった時、勝手に婚約した事、セラフィーナは何と思うかしら?セラフィーナも他の令嬢と同じく、怖いから嫌だって言うかもしれないんだよね…そう思うと、不安が急速に膨らんでいくのを感じた。
いや、今の私がどうなっているのかわからないし、そもそも「元の私」は事故で死んだんじゃないかと思うんだけど…
若い頃ならともかくアラサーにもなると、まぁいっか、で片付けられなくなるんだよねぇ…願わくばこの身体に死ぬまでいられますように…と祈るしかない。
婚約してからは、ローウェル様は頻繁に我が家に足を運ばれるようになった。お忙しくないのだろうか…と心配になったけれど、団長など名誉職のようなものだから書類決裁などがあるくらいで、そんなに忙しいわけではないらしい。
それでも、陛下や国政を担う重鎮たち、他の騎士団のトップとの会議なんかによく駆り出されるらしいが。ただの騎士団長かと思っていたら、宰相府のメンバーにも名を連ねているらしく、私が思っている以上に偉い人だった。それを知った時には、改めて私でいいのかと不安になったのは言うまでもない。
凄く忙しい筈なのに、ローウェル様は訪ねてくる時は必ず、何かしらのプレゼントを持ってきた。花束から始まって、小さなアクセサリーや珍しい菓子、お茶葉、羽ペンなどだ。どれも絶対にいい値段するよね、って思うものばかりで、貰い慣れていない身としては恐縮するばかりだ…嬉しいけどね!
「あの、贈り物はもう十分ですから…」
「そんな事はないだろう?これでも控えているくらいだが?」
「ええ?」
いや、毎回毎回持ってこなくてもいいんだけど…元彼なんて年に一度の誕生日だって怪しかったんだけど…そうは思うのだけどローウェル様は、毎日プレゼントを贈る者もいるし、訪問時に手ぶらの方がマナー違反だと言われてしまえば、それ以上は強く言えなかった。手土産なら花かお菓子で十分だと言ったらと、選ぶのも楽しみの一つだからと言われて、私は言葉に詰まった。なにその男前な発言は…!醜怪侯爵様はスパダリだった!
「婚約披露パーティー、ですか?」
「ああ、陛下にも裁可を頂いたからな」
婚約した貴族にとって、披露パーティーは重要なイベントの一つだ。一般的に婚姻は家同士の結びつきが重要視されるので、両家が手を結んだ事を大々的に知らしめるためにも、結婚式よりも盛大に行う事も珍しくない。
ローウェル様と婚約したのだからいずれは…と思っていたけれど、パーティーは来月を予定していると言われて私は面食らった。
えっと…来月と言っても二十日あるかないか、だよね。ドレスとか準備しなきゃいけないんだけど、今から頼んで間に合うのだろうか…
「ドレス類の心配なら無用だ。全て私から贈ろう」
「ええ?でも…」
「婚約者にドレスを贈るのは婚約者の特権だから気にしないでくれ。それで、何か希望はあるか?」
「き、希望だなんて…贈って頂けるだけでも十分嬉しいです」
うっわ~滅茶苦茶男前だよ、この人。ドレスなんてかなりの値が張るのに、それをさらっと贈れちゃうなんて。いやもう、特にリクエストなんかありません!贈って貰えるだけでも十分です。第一、この婚約、子爵家にメリットアはあり過ぎだけど、侯爵家にはそれほどだよね?そんな状態でこんな高価な物、貰っちゃっていいの?そう思ったけれど、贈るのはローウェル様の中では決定事項だった。
(…あ、でも待てよ、一つだけ希望があった!)
「あ、あの…一つだけ、よろしいでしょうか?」
「ああ、何でも言ってくれ。私はこの手の事は得意ではないし、察しがいい方でもないから、言葉にしてくれた方がずっと有難い」
うわぁ…自分の不足な点を理解していて、さりげなくフォローしてくるよ。きっと仕事も出来るんだろうなぁ…じゃなくて。
「あの、出来ればあまり子どもっぽいものは避けて頂けると…」
「子どもっぽい?」
「ええ、レースやフリルが以前の私は好きだったみたいなのですが、今の私はあまり…」
「なるほど。了解した。では、デザイナーにはそのように伝えておこう。近日中にはデザイナーを手配する。他に希望が出てきたら彼女に言って貰えると助かる」
「ありがとうございます」
うわ、侯爵家お抱えのデザイナーまで派遣してくれるの?きっと子爵家には到底手が届かない様なお店なんだろうなぁ…と思っていた私だったが、やって来たデザイナーは何と、王室お抱えのデザイナーだった。私だけでなく、シンシアさんやエレンが腰抜かすほど驚いたのは言うまでもない。
だって、高位貴族だって簡単には頼めないって噂の店なんだよ?国王陛下の力なのか、そうなのか?絶対に陛下が絡んでるよね、これ…私の脳裏には、嬉々として結婚準備を進める陛下の姿が浮かんだ…
「凄い…」
「これが…」
「王室お抱えの実力…」
パーティーの三日前、我が家に届いたドレスを前にして、私やシンシアさん、侍女たちは感嘆の声を漏らしていた。届いたドレスはこれまでに見たどんなドレスよりも素晴らしかったのだ。そう、先日レイトン侯爵から頂いた物など目じゃなかった。
つーか、これいくらするのよ?いいの、こんな高そうな物頂いちゃっても?後で返せって言われても、子爵家じゃ絶対に返せない金額な気がするんだけど…この時、私の頭には喜びよりも不安の方が勝っていたと思う。
でも仕方ないじゃない!つい最近まで薄給アラサーだったんだよ?三十年近く培ってきた貧乏性、そう簡単には消えそうにないのよ~
更には翌日、ドレスに合せたアクセサリーが宝飾店から届いた。こちらも私の一生分の稼ぎをはたいても絶対に手に出来ないレベルだった。子爵家だって手を出せないレベルだろう。正直言って、こんなに立派過ぎるものを身に着けては、私の方が霞んでしまいそうだった。
でも、上手くいっている時に限って最後に落とし穴が…な展開は何度も経験しているんだよねぇ…最後の落とし穴って…例えばご本人登場!とかだろうか…
そう言えば、何のきっかけでこうなったのかわからないんだから、何らかのきっかけで元に戻る可能性も…ないとは言い切れないんだよね…そうなった時、勝手に婚約した事、セラフィーナは何と思うかしら?セラフィーナも他の令嬢と同じく、怖いから嫌だって言うかもしれないんだよね…そう思うと、不安が急速に膨らんでいくのを感じた。
いや、今の私がどうなっているのかわからないし、そもそも「元の私」は事故で死んだんじゃないかと思うんだけど…
若い頃ならともかくアラサーにもなると、まぁいっか、で片付けられなくなるんだよねぇ…願わくばこの身体に死ぬまでいられますように…と祈るしかない。
婚約してからは、ローウェル様は頻繁に我が家に足を運ばれるようになった。お忙しくないのだろうか…と心配になったけれど、団長など名誉職のようなものだから書類決裁などがあるくらいで、そんなに忙しいわけではないらしい。
それでも、陛下や国政を担う重鎮たち、他の騎士団のトップとの会議なんかによく駆り出されるらしいが。ただの騎士団長かと思っていたら、宰相府のメンバーにも名を連ねているらしく、私が思っている以上に偉い人だった。それを知った時には、改めて私でいいのかと不安になったのは言うまでもない。
凄く忙しい筈なのに、ローウェル様は訪ねてくる時は必ず、何かしらのプレゼントを持ってきた。花束から始まって、小さなアクセサリーや珍しい菓子、お茶葉、羽ペンなどだ。どれも絶対にいい値段するよね、って思うものばかりで、貰い慣れていない身としては恐縮するばかりだ…嬉しいけどね!
「あの、贈り物はもう十分ですから…」
「そんな事はないだろう?これでも控えているくらいだが?」
「ええ?」
いや、毎回毎回持ってこなくてもいいんだけど…元彼なんて年に一度の誕生日だって怪しかったんだけど…そうは思うのだけどローウェル様は、毎日プレゼントを贈る者もいるし、訪問時に手ぶらの方がマナー違反だと言われてしまえば、それ以上は強く言えなかった。手土産なら花かお菓子で十分だと言ったらと、選ぶのも楽しみの一つだからと言われて、私は言葉に詰まった。なにその男前な発言は…!醜怪侯爵様はスパダリだった!
「婚約披露パーティー、ですか?」
「ああ、陛下にも裁可を頂いたからな」
婚約した貴族にとって、披露パーティーは重要なイベントの一つだ。一般的に婚姻は家同士の結びつきが重要視されるので、両家が手を結んだ事を大々的に知らしめるためにも、結婚式よりも盛大に行う事も珍しくない。
ローウェル様と婚約したのだからいずれは…と思っていたけれど、パーティーは来月を予定していると言われて私は面食らった。
えっと…来月と言っても二十日あるかないか、だよね。ドレスとか準備しなきゃいけないんだけど、今から頼んで間に合うのだろうか…
「ドレス類の心配なら無用だ。全て私から贈ろう」
「ええ?でも…」
「婚約者にドレスを贈るのは婚約者の特権だから気にしないでくれ。それで、何か希望はあるか?」
「き、希望だなんて…贈って頂けるだけでも十分嬉しいです」
うっわ~滅茶苦茶男前だよ、この人。ドレスなんてかなりの値が張るのに、それをさらっと贈れちゃうなんて。いやもう、特にリクエストなんかありません!贈って貰えるだけでも十分です。第一、この婚約、子爵家にメリットアはあり過ぎだけど、侯爵家にはそれほどだよね?そんな状態でこんな高価な物、貰っちゃっていいの?そう思ったけれど、贈るのはローウェル様の中では決定事項だった。
(…あ、でも待てよ、一つだけ希望があった!)
「あ、あの…一つだけ、よろしいでしょうか?」
「ああ、何でも言ってくれ。私はこの手の事は得意ではないし、察しがいい方でもないから、言葉にしてくれた方がずっと有難い」
うわぁ…自分の不足な点を理解していて、さりげなくフォローしてくるよ。きっと仕事も出来るんだろうなぁ…じゃなくて。
「あの、出来ればあまり子どもっぽいものは避けて頂けると…」
「子どもっぽい?」
「ええ、レースやフリルが以前の私は好きだったみたいなのですが、今の私はあまり…」
「なるほど。了解した。では、デザイナーにはそのように伝えておこう。近日中にはデザイナーを手配する。他に希望が出てきたら彼女に言って貰えると助かる」
「ありがとうございます」
うわ、侯爵家お抱えのデザイナーまで派遣してくれるの?きっと子爵家には到底手が届かない様なお店なんだろうなぁ…と思っていた私だったが、やって来たデザイナーは何と、王室お抱えのデザイナーだった。私だけでなく、シンシアさんやエレンが腰抜かすほど驚いたのは言うまでもない。
だって、高位貴族だって簡単には頼めないって噂の店なんだよ?国王陛下の力なのか、そうなのか?絶対に陛下が絡んでるよね、これ…私の脳裏には、嬉々として結婚準備を進める陛下の姿が浮かんだ…
「凄い…」
「これが…」
「王室お抱えの実力…」
パーティーの三日前、我が家に届いたドレスを前にして、私やシンシアさん、侍女たちは感嘆の声を漏らしていた。届いたドレスはこれまでに見たどんなドレスよりも素晴らしかったのだ。そう、先日レイトン侯爵から頂いた物など目じゃなかった。
つーか、これいくらするのよ?いいの、こんな高そうな物頂いちゃっても?後で返せって言われても、子爵家じゃ絶対に返せない金額な気がするんだけど…この時、私の頭には喜びよりも不安の方が勝っていたと思う。
でも仕方ないじゃない!つい最近まで薄給アラサーだったんだよ?三十年近く培ってきた貧乏性、そう簡単には消えそうにないのよ~
更には翌日、ドレスに合せたアクセサリーが宝飾店から届いた。こちらも私の一生分の稼ぎをはたいても絶対に手に出来ないレベルだった。子爵家だって手を出せないレベルだろう。正直言って、こんなに立派過ぎるものを身に着けては、私の方が霞んでしまいそうだった。
87
あなたにおすすめの小説
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~
高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。
先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。
先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。
普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。
「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」
たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。
そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。
はちみつ色の髪をした竜王曰く。
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」
番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!
(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?
水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。
私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。
【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる