目覚めたらピンク頭の屑ヒロインだった件~罰は醜怪騎士団長との婚約だそうです

灰銀猫

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王子の今後

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 アイザック様の前で恥ずかしくも大泣きしたうえ、セラフィーナからの告白は…これまでの私の鬱々とした気持ちを一掃してくれたらしい。そう思うほどに、あの後の私は…すっきりした気分になっていた。
元の身体に戻りたがっていたセラフィーナだったけれど、彼女は現状を受け入れてクローディアとして生きていく事を選んでいたのだ。それはクローディアも同様で、彼女たちは既に新しい身体での人生を受け入れ、それぞれに歩み始めていた。

 だったら私も、セラフィーナからよろしく頼むと託された身体を大切に守りながら生きていくだけだ。彼女がそう願うのなら、その想いを否定する事は出来そうになかった。
彼女が嬉々として現状を受け入れたと思えるほど、私もおめでたくはない。彼女が両親を大切に思っていた事も、両親にも話していない夢を持っていた事も…私はエレンから聞いて知っていたから。
 それでも、彼女は今を生きる事を選び、私の背中を押すためにそう言ってくれたのだろう。私がアイザック様を好きだと言う気持ちを気遣って。

 何と言うか、こうなると意外に吹っ切れてしまうもので、私は今度こそセラフィーナとして生きると腹を括った。単純かもしれないけど、元より私はこんな感じだ。嘆いたところで何かがよくなるわけではないのは…日本でも散々思い知らされた。元に戻れないならここで踏ん張るしかない。




 妊娠が発覚してからの王子は絶賛悪阻中で、食欲もなくかなり体調が悪いらしい。侍女が栄養価の高い食べられる物を探して食事をさせてくれているけれど、中々大変そうだった。
 そんな状態なので、王子と話をしたいとは思っても、体調が心配で訪ねるのは憚られた。
 いや、だって、妊婦にストレスは大敵って言うじゃない?それに安定期に入るまでは危険だって言うし。妊娠した友達や同僚もそんな事言っていたし、私もそんな時期は彼女たちに凄く気を使ったものだ。

 そりゃあ、王子には言いたい事は山ほどある。何なら一発どころか十発くらい殴らせろ――!!!と思わなくもないけど、殴られるのは自分の身体だし、更に言えば赤ちゃんに罪はない。
 非常に腹立たしいが、理不尽だとは思うが、赤ちゃんに罪はない。さすがに感情のままに怒鳴って殴りつける…なんて事は出来そうもなかった。十年若かったら突撃しただろうけど…




 王子に対しては消化し切れない思いを抱いて過ごしていた私だったけれど、アイザック様から王子の事で相談があると言われた。
 案の定と言うべきか、それは王子―私の身体―の今後の身の振り方だ。今の私の身体はルシア=リット子爵令嬢という肩書がある。ローウェル侯爵家の分家の養女になっているけど、異母兄との婚約に関しては…まだ何も決まっていなかった。ただ、さすがに子供が出来ればこのまま、という訳にもいかなかった。

 それに関しては…私も腹を括るしかないんだよね。
 
 王子には言いたい事が五万とあるし、何ならそれは異母兄に対してもだけど…色々考えたところで子どもに罪はない、ここに行き着いちゃうんだよなぁ…
 きっとあのお腹のいる子も、こんな形で生を受けたくなかっただろうに、とちょっと同情する。子は親を選べないから。私だったらこんな母親の元に生まれたくなかったし、将来事実を知ったら軽く絶望するだろうな、と思う。

 そもそも、王子のメンタルが理解不能だ。自分の身体じゃないってのに、元の持ち主がわかっているのに、その上で致すか?その神経が理解出来ないし、理解したくもない。うん、あれは未知の生物なのだ。あれはその一つだと結論づけ、私は無駄な労力を費やす事は諦めた。世の中には理解しようとしても不可能な事は多々あるのだ。

 でも、こうしている間にも子どもは育っているんだからどうしようもない。王子も異母兄も子どもが出来た事は喜んでいるし、育てる気はあるらしいから、それだけは救いかな、と思っている。そうでなかったら…私の身体でもグーで殴っていたと思う。

「ハットン子爵から、早めに婚姻をとの連絡がきた」
「クリフォードさんが…」

 そう言ってアイザック様がクリフォードさんからの手紙を見せてくれた。そこには、ルシアに子供が出来たから責任を取る意味でも早めに婚姻させてしまいたい。異母兄も強く婚姻を望んでいるとあった。クリフォードさんは真面目だから、きっと今頃は頭を悩ませているだろう。胃痛に効く薬を送ってあげるべきだろうか…

「ライナス殿は、反対されるなら勘当も辞さぬと言っているらしい」
「勘当ですか」

 勝手に何ぬかしているんだ?と思った私は間違っていない筈だ。何?異母兄まで悲劇の恋人同士だと酔ってるの?

「ああ。さすがに婚約もまだの段階で子供が出来たのは看過できない。かと言って…このまま駆け落ちされるのもどうかと…」
「そうですね。駆け落ちされるのは、私も嫌、ですね…」

 うん、勝手に目の届かないところに行かれるのは困る。元に戻れないとしても、何かあった時のためにも所在は明らかにしておきたい。

「この件に関しては、セイナの気持ちを最優先にしたい。元は君の身体なのだから」
「でも…」
「ルシアに関してなら心配は無用だ。彼女は分家の養女だから、駆け落ちしても誘拐として追う事も出来る」
「誘拐、ですか?」
「ああ、我が国ではいくら想い合っていても、婚約者でない娘を連れて駆け落ちすれば誘拐とみなされるのだ」

 アイザック様の話によると、以前駆け落ちと見せかけて、意中の令嬢を誘拐して妻にした悪質な事件が続いたらしい。その為、貴族では同意の上での駆け落ちであっても、婚約していない場合は誘拐とみなされるようになったのだと言う。

「セイナが許せない、子どもも認められない、というのであれば、それに合わせた対応をしよう」
「それに合わせたって…子供は…」
「どうしても嫌だと言うなら…堕胎も選択肢としてはある」
「それ、は…」

 アイザック様もあまり乗り気でないのは一目瞭然だったけれど、私が嫌だと言えばその選択肢を選ぶつもりであるのははっきりしていた。全ては私の気持ち一つ…そう言われて、私は思わず喉が鳴った。

「そうですか…それなら…」

 私は自分の考えをアイザック様に伝えた。

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