18 / 27
解除の準備
しおりを挟む
「やぁ、アリー。暫く見ないうちにまた綺麗になったんじゃないか?」
「まぁ、おじ様ったら。お世辞でも嬉しいわ」
「お世辞なんかじゃないんだけどなぁ…」
そう言って苦笑するのは、ギルベルト=ファ―ベルグ公爵です。我が国の筆頭魔術師でもある彼は、古代文字と古代魔術の研究家でもあります。お父様が古代魔術を、私が古代文字を研究しているのもあって、昔から交流があるのですよね。
ただ、おじ様は王国の五大公爵家の家長なので、あまり表立って交流はしていません。あまり仲が良すぎても均衡が崩れると言われていて、五大公爵家はつかず離れずの関係を維持するのが常なのです。
でも、今回はそれが好都合なのですよね。
「おじ様、こちらは私の婚約者のリートミュラー辺境伯家のウィルバート様ですわ」
「ああ、君が噂の婚約者殿か」
「は、はい。ウィルバート=リートミュラーにございます」
「ははぁ、なるほど…」
そう言って叔父さまがウィルバート様を繁々と眺め、ウィルバート様が緊張している様に感じますわ。表情がわからないので、あくまでも想像ですが。
「彼、また面白いものをくっ付けているね」
「さすがはおじ様。一目でおわかりになりましたのね」
「そりゃあ、専門家だからね」
そう、私が狙っていたのがこれです。おじ様は古代文字にも古代魔術にも造詣が深いので、ウィルバート様の呪いも直ぐに気が付くと思っていましたわ。
「ふぅん、なるほどねぇ…」
急遽ウィルバート様にご自身が掛けた術式を解除して頂いて、古代文字のそれを見て頂きました。この術式は私も解析を終えていますが…やはり専門家にも見てもらいたかったのですよね。
「中々に面白いね。内容は子供の悪戯レベルだけど」
「やっぱりそう思われます?」
「うん。古代文字が読めればすぐに解析出来るよ。わざと魔力が低い者にも見えるようにしてあるし、最初から解除されるように掛けたんだろうねぇ」
思った通りですわ。この術式は子供相手、多分マイヤー侯爵令嬢が解くように想定してかけられたものだったのです。後からウィルバート様が見えない術式が追加されているのは、きっと彼女への罰だったのでしょうね。彼女が反省して真面目に古代文字を勉強すれば、または大人に頼んで解呪を頼めば出来た筈です。ですが、彼女がそうしなかったのは…
「自分に降りかかるのが嫌で、放置したんだろうなぁ」
「そうでしょうね」
「ウィルバート君には見えないのをいいことにね」
おじ様も私と同じ意見ですわね。この術式は文字も文法も簡単です。長く見えますが、それは子供にもわかるような説明の仕方がされていたからです。しかも彼女が解けば呪いはそこで消滅し、彼女に向うことはなかったのです。それをしなかったのは彼女の保身からでしょう。
「自分で解けばこの呪いは消えたのに…そのチャンスを自分で潰したんだね。しかも十年も。これは悪質といっていいだろう」
「同感ですわ」
そうなれば…これはやはりこちらで解呪するのが一番ですわね。彼女への罰としても。
「それで、これを私が解呪すればいいんだね」
「はい。私がやれば私が呪ったといいそうですから」
「なるほど…あの王子ならそう言いだしそうだね。それで、いつにする?」
「出来れば、あの二人が別れられなくなってからで、と思っていますわ」
「そうだね。薄情者の二人には、それくらいの罰があってもいいだろう」
どうやらおじ様も同じように思って下さったみたいですわ。
「解呪だけなら今すぐにでも出来るから安心して。じゃ、その時が決まったらまた連絡してくれ」
「ありがとうございます、おじ様」
「ご協力感謝します」
「ふふっ、君たちへの婚約祝いにしておこう。そうそう、ウィルバート君、よかったら君、うちに来ないか?」
「え?」
おじ様ったら…優秀な魔術師のスカウトには余念がありませんわね。でも…
「おじ様、ウィルバート様は我が家の専属です。おじ様には渡せませんわよ」
「おやおや、もう焼きもちかい?」
「おじ様っ!」
私の反応を見て、おじ様がウィンクしながら転移魔術で帰っていかれました。もう、油断大敵ですわね。
「まぁ、おじ様ったら。お世辞でも嬉しいわ」
「お世辞なんかじゃないんだけどなぁ…」
そう言って苦笑するのは、ギルベルト=ファ―ベルグ公爵です。我が国の筆頭魔術師でもある彼は、古代文字と古代魔術の研究家でもあります。お父様が古代魔術を、私が古代文字を研究しているのもあって、昔から交流があるのですよね。
ただ、おじ様は王国の五大公爵家の家長なので、あまり表立って交流はしていません。あまり仲が良すぎても均衡が崩れると言われていて、五大公爵家はつかず離れずの関係を維持するのが常なのです。
でも、今回はそれが好都合なのですよね。
「おじ様、こちらは私の婚約者のリートミュラー辺境伯家のウィルバート様ですわ」
「ああ、君が噂の婚約者殿か」
「は、はい。ウィルバート=リートミュラーにございます」
「ははぁ、なるほど…」
そう言って叔父さまがウィルバート様を繁々と眺め、ウィルバート様が緊張している様に感じますわ。表情がわからないので、あくまでも想像ですが。
「彼、また面白いものをくっ付けているね」
「さすがはおじ様。一目でおわかりになりましたのね」
「そりゃあ、専門家だからね」
そう、私が狙っていたのがこれです。おじ様は古代文字にも古代魔術にも造詣が深いので、ウィルバート様の呪いも直ぐに気が付くと思っていましたわ。
「ふぅん、なるほどねぇ…」
急遽ウィルバート様にご自身が掛けた術式を解除して頂いて、古代文字のそれを見て頂きました。この術式は私も解析を終えていますが…やはり専門家にも見てもらいたかったのですよね。
「中々に面白いね。内容は子供の悪戯レベルだけど」
「やっぱりそう思われます?」
「うん。古代文字が読めればすぐに解析出来るよ。わざと魔力が低い者にも見えるようにしてあるし、最初から解除されるように掛けたんだろうねぇ」
思った通りですわ。この術式は子供相手、多分マイヤー侯爵令嬢が解くように想定してかけられたものだったのです。後からウィルバート様が見えない術式が追加されているのは、きっと彼女への罰だったのでしょうね。彼女が反省して真面目に古代文字を勉強すれば、または大人に頼んで解呪を頼めば出来た筈です。ですが、彼女がそうしなかったのは…
「自分に降りかかるのが嫌で、放置したんだろうなぁ」
「そうでしょうね」
「ウィルバート君には見えないのをいいことにね」
おじ様も私と同じ意見ですわね。この術式は文字も文法も簡単です。長く見えますが、それは子供にもわかるような説明の仕方がされていたからです。しかも彼女が解けば呪いはそこで消滅し、彼女に向うことはなかったのです。それをしなかったのは彼女の保身からでしょう。
「自分で解けばこの呪いは消えたのに…そのチャンスを自分で潰したんだね。しかも十年も。これは悪質といっていいだろう」
「同感ですわ」
そうなれば…これはやはりこちらで解呪するのが一番ですわね。彼女への罰としても。
「それで、これを私が解呪すればいいんだね」
「はい。私がやれば私が呪ったといいそうですから」
「なるほど…あの王子ならそう言いだしそうだね。それで、いつにする?」
「出来れば、あの二人が別れられなくなってからで、と思っていますわ」
「そうだね。薄情者の二人には、それくらいの罰があってもいいだろう」
どうやらおじ様も同じように思って下さったみたいですわ。
「解呪だけなら今すぐにでも出来るから安心して。じゃ、その時が決まったらまた連絡してくれ」
「ありがとうございます、おじ様」
「ご協力感謝します」
「ふふっ、君たちへの婚約祝いにしておこう。そうそう、ウィルバート君、よかったら君、うちに来ないか?」
「え?」
おじ様ったら…優秀な魔術師のスカウトには余念がありませんわね。でも…
「おじ様、ウィルバート様は我が家の専属です。おじ様には渡せませんわよ」
「おやおや、もう焼きもちかい?」
「おじ様っ!」
私の反応を見て、おじ様がウィンクしながら転移魔術で帰っていかれました。もう、油断大敵ですわね。
225
あなたにおすすめの小説
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
王妃様は逃亡中 後日談・番外編
遊森謡子
ファンタジー
【コミックス刊行されました】「あなたの役目は終わった、元の世界に帰れ」? じょおっだんじゃない、日本に帰るのなんかまっぴらごめん! 強制送還回避のため城からの逃亡を余儀なくされたけれど、実は日本での経験から「逃亡慣れ」していた王妃。彼女のその後は? 書籍化作品の後日談・番外編。書籍版とは細かい設定が違います。小説家になろうさんに掲載していたものをこちらに移動しました。
書籍の試し読みはこちら! → http://www.alphapolis.co.jp/book/detail/1043029/889/
異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪に婚約を破棄し追放刑とする」王太子は冷酷非情に言い放った。モドイド公爵家長女のシャロンは、半妹ジェスナに陥れられた。いや、家族全員に裏切られた。シャロンは先妻ロージーの子供だったが、ロージーはモドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていた。本当ならシャロンも殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。王太子だった第一王子ウイケルの婚約者にジェスナが、第二王子のエドワドにはシャロンが婚約者に選ばれていた。ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。どうしても王妃に成りたかったジェスナは、身体を張ってエドワドを籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせた。
嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。
愛しい義兄が罠に嵌められ追放されたので、聖女は祈りを止めてついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
グレイスは元々孤児だった。孤児院前に捨てられたことで、何とか命を繋ぎ止めることができたが、孤児院の責任者は、領主の補助金を着服していた。人数によって助成金が支払われるため、餓死はさせないが、ギリギリの食糧で、最低限の生活をしていた。だがそこに、正義感に溢れる領主の若様が視察にやってきた。孤児達は救われた。その時からグレイスは若様に恋焦がれていた。だが、幸か不幸か、グレイスには並外れた魔力があった。しかも魔窟を封印する事のできる聖なる魔力だった。グレイスは領主シーモア公爵家に養女に迎えられた。義妹として若様と一緒に暮らせるようになったが、絶対に結ばれることのない義兄妹の関係になってしまった。グレイスは密かに恋する義兄のために厳しい訓練に耐え、封印を護る聖女となった。義兄にためになると言われ、王太子との婚約も泣く泣く受けた。だが、その結果は、公明正大ゆえに疎まれた義兄の追放だった。ブチ切れた聖女グレイスは封印を放り出して義兄についていくことにした。
【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる