【完結】王子に婚約破棄され、白豚令息との婚約を命じられました

灰銀猫

文字の大きさ
20 / 27

反撃開始です

しおりを挟む
 あっという間に一月が経ちました。今日は王家の定例夜会、そしてウィルバート様の呪いを解呪する日です。ウィルバート様の本来の姿がわかる日でもあるので、私は二重の意味でドキドキしていました。
 残念なのはあのもふもふ獣毛がなくなってしまうことですが…それはこれまでもたくさん触らせて頂きましたし、昨日も堪能させて頂きました。ええもう、自分の変な嗜好に戸惑いもありますが、ウィルバート様もそんな私を可愛らしいですねと仰って下さったのです。お心の広さに感動ですわ。
 あ、もちろんあの術式もしっかり記録済です。ウィルバート様の話では、ウィルバート様ご自身が自分で掛けることも可能だと仰るので、もし私が望むなら試してみましょうと仰って下さいました。なんてお優しいのでしょう…あの丸々したお姿も見慣れれば可愛く見えますし、こうなったらどんなお姿になってもドンとこい!ですわ。

 今日の晴れの舞台。私はウィルバート様の瞳の色の晴れの日の青空色のドレスにしました。あれから同じ時間を重ねる毎に彼の優しさや聡明さを知って、婚約してよかったと思うようになったからです。だったら仲の良さを皆様に知っていただくのも悪くありませんわ。
 それに…彼がもし素敵な容姿だった場合、他の令嬢への牽制も必要です。顔良し、性格良し、優秀な魔術師となれば引く手あまたですもの。
 ウィルバート様は青みのかかった銀色の生地に金と青と紫の差し色の入った正装です。生地と差し色を揃えたので、お揃い感も中々です。



「緊張、しますわ…」
「はい。私もです」

 会場に入る前、私達は互いにドキドキしながら入場を待ちました。公爵家なので最後の方なので、待ち時間もそれなりにあるのです。
 一方でマイヤー侯爵家に正式に婿入りしたクラウス様は既に入場されましたわ。あちらは水色のお揃いの衣装です。令嬢の方は相変わらずフリルとリボンが大量に使われていて、まるで砂糖菓子のようです。既婚女性は着ないデザインなので、かなり目立っていますわ。

 夜会はいつも通り、つつがなく始まりました。直ぐ近くにいたイルーゼ様とケビン様が声を掛けて下さって、楽しい時間が持てましたわ。イルーゼ様はケビン様の瞳の色と同じ深青色のドレスですが愛らしさの中に大人っぽさも見えて、イルーゼ様の魅力を最大限に引き出していますわね。ケビン様のセンスの良さが感じられますわ。
 このお二人には今日のことを話してあって、もし何かあったら助け船を出して下さる予定です。一応ギルベルトおじ様に解除はお願いしていますが、何が起きるかわかりません。魔術に造詣が深いお二人なら何かあっても対処してくれそうです。

 イルーゼ様達が離れると、あっという間に我が家に親しい関係の令嬢達に囲まれましたわ。皆さん、私の婚約をお祝いして下さった上で、クラウス様達のことを案じて下さいました。やはり入籍を急いだのはあまりいい目では見られていないらしく、私への当てつけじゃないかと心配して下さいました。

「大丈夫ですわ。皆さんもご存じでしょう?私も我が家も、婚約解消を望んでいたのは」
「ええ、勿論ですわ。でも…」
「クラウス様よりもウィルバート様の方がずっといいですわ。お優しくて常識がおありで、魔術の腕も比較になりませんもの」
「それはそうですが…」

 皆様、そんなに心配しなくても大丈夫ですわよ。この肥満体もあと少しで終わりですから。ふふ、肥満体になったマイヤー侯爵令嬢はどんな感じになるのでしょうね。意地悪かもしれませんが、ちょっと楽しみです。

「おい!驕慢女に白豚!」

 楽しく談笑していると、随分と無礼な声が聞こえてきましたわ。この品の欠片もない声の持ち主は…

「これはマイヤー侯爵家の婿殿。ごきげんよう」
「あ、ああ」
「それにしても…元婚約者といえど、マナーは守って下さいまし」
「な、何だと…!」
「貴方様は今やマイヤー侯爵家の婿殿。そして私は公爵家の後継者。下の身分の者が上の身分の者に声を掛けるのはマナー違反ですわよ」

 ふふふ、正式に婿入りした以上、クラウス様は格下ですのよ。そのことを指摘したら…案の定、彼の顔が真っ赤になりましたわ。



しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

<完結済>婚約破棄を叫ぶ馬鹿に用はない

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
卒業パーティーでの婚約破棄に、声をあげたのは5番目に破棄された令嬢だったーー記憶持ちの令嬢、反撃に出ます!

王妃様は逃亡中 後日談・番外編

遊森謡子
ファンタジー
【コミックス刊行されました】「あなたの役目は終わった、元の世界に帰れ」? じょおっだんじゃない、日本に帰るのなんかまっぴらごめん! 強制送還回避のため城からの逃亡を余儀なくされたけれど、実は日本での経験から「逃亡慣れ」していた王妃。彼女のその後は? 書籍化作品の後日談・番外編。書籍版とは細かい設定が違います。小説家になろうさんに掲載していたものをこちらに移動しました。 書籍の試し読みはこちら! → http://www.alphapolis.co.jp/book/detail/1043029/889/

異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪に婚約を破棄し追放刑とする」王太子は冷酷非情に言い放った。モドイド公爵家長女のシャロンは、半妹ジェスナに陥れられた。いや、家族全員に裏切られた。シャロンは先妻ロージーの子供だったが、ロージーはモドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていた。本当ならシャロンも殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。王太子だった第一王子ウイケルの婚約者にジェスナが、第二王子のエドワドにはシャロンが婚約者に選ばれていた。ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。どうしても王妃に成りたかったジェスナは、身体を張ってエドワドを籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせた。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

愛しい義兄が罠に嵌められ追放されたので、聖女は祈りを止めてついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  グレイスは元々孤児だった。孤児院前に捨てられたことで、何とか命を繋ぎ止めることができたが、孤児院の責任者は、領主の補助金を着服していた。人数によって助成金が支払われるため、餓死はさせないが、ギリギリの食糧で、最低限の生活をしていた。だがそこに、正義感に溢れる領主の若様が視察にやってきた。孤児達は救われた。その時からグレイスは若様に恋焦がれていた。だが、幸か不幸か、グレイスには並外れた魔力があった。しかも魔窟を封印する事のできる聖なる魔力だった。グレイスは領主シーモア公爵家に養女に迎えられた。義妹として若様と一緒に暮らせるようになったが、絶対に結ばれることのない義兄妹の関係になってしまった。グレイスは密かに恋する義兄のために厳しい訓練に耐え、封印を護る聖女となった。義兄にためになると言われ、王太子との婚約も泣く泣く受けた。だが、その結果は、公明正大ゆえに疎まれた義兄の追放だった。ブチ切れた聖女グレイスは封印を放り出して義兄についていくことにした。

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。

五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」 オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。 シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。 ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。 彼女には前世の記憶があった。 (どうなってるのよ?!)   ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。 (貧乏女王に転生するなんて、、、。) 婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。 (ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。) 幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。 最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。 (もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)

処理中です...