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婚約者の条件
ディアークの立太子が怪しくなったせいで、私に変更される可能性が高くなってきた。個人的にはドルツマイヤー辺境伯領を継ぐ方が私の性格にはあっていると思っていたが、そんな個人的な事情が通る話ではない。残念ながら私は国王の実子の一人だから。
「でも、もしアリーセ様が立太子されると、王配探しになりますよね」
「そうなるね」
凄く気が重いが仕方がない。これまではディアークが有力視され、私が辺境拍家に養子に入るとみられていたから誰も自分が婚約者にとは言って来なかった。
だが、ディアークがやらかせば情況が一転するのは目に見えていた。
「そうなると、フォンゼル様を婿に、との声が高くなりませんか?」
ローゼがレイニーに気を使ってか、控えめにそう言った。
「確かにその可能性もあるけど、彼を王配にするとなれば他の国が黙っていないだろう」
「あ……そうですね」
「ギューデン以外からも我が国の王子を、との声が高くなるのは目に見えている。父上にとってはそれはあまり嬉しい状況じゃないんだ」
「それは……エーデルマン公爵家の力が強くなりすぎるからですか?」
「そういうこと。レイニーの母君はギューデンの王族だからね。公爵家の言葉は無下にできないだけに、間接的に干渉を受ける可能性が高くなる。それに元々フォンゼルは形だけの婚約者というのは父上もご存じだったからね」
「そうだったんですか……」
この辺はレイニーは知っていることだが、ローゼにとっては初耳だろう。公爵家の夫人になるための教育が始まれば知ることになっただろうが。
「となると、アリーセ様の婿は……」
「父王は国内の貴族からとお考えだ。私の母の実家は五大公爵家だが、一家だけでは後ろ盾には足りない、と父上は考えていらっしゃるだろう」
「確かにそうですね」
「私が王位に就くとなれば、ディアークの廃嫡が前提だ。そうなった時、エーデルマン公爵家が私を支持するかは未知数だ。ザックスもディアークの側近だから状況によっては敵になる可能性もある」
父上がディアークの婚約者にレイニーを、側近にカスパーを選んだのは、父なりに私との差をつけて、私を担ぎ出させないようにしたからだった。ただ、そうした場合、ディアークに問題が起きて廃嫡になれば悪手になる。
「去年までは私たちも学園にいたし、ディアークも恙なく過ごしていた。あと一年というところまできたから安心していたんだが……」
全く頭が痛いことに、隙を狙われたと言っていいだろう。ミリセント嬢の目的がはっきりしないが、こうなるとハニートラップの可能性もある。
「となると……アリーセ様のお相手にはカスパー殿などもいいのではないかしら?」
「カスパー様?!」
レイニーの提案にローゼが大きな声を上げた。そして上げた本人が言ってから驚いていた。
「あ、申し訳ございません。まさか彼がそうなるとは思っていなかったので……」
「ローゼからしたら幼馴染だからな。急に王族になられても……と思っても仕方ないだろう」
「ええ。それに彼は長男だし、そんな柄じゃないですし」
「後継者だからな。彼が婿になる可能性は低いだろう」
惜しい人材ではあるが、この年になって後継者を変えろというのは無茶な話だ。ザックス公爵家にとっても、やっと一人前に育て上げた後継者を奪われるのは許し難いだろう。王配に旨味があっても、家が傾くのでは意味がない。となれば彼の弟が……となるところだが、彼には妹しかいないし、既に婚約者がいて嫁ぐことが決まっていた。
「他にとなると……残っている公爵家はダールマイヤーとブランゲですか……」
「そうだな。ダールマイヤーにはハンクがいる。彼は次男で有能な騎士だ。何度か一緒に戦ったことがあるが、中々優れた御仁だったな」
ハンクは黄色味の強い金髪と、深い湖水のような青緑の瞳を持つ美男子だ。顔立ちは中性的ですらりと背が高いが、騎士だけあって鍛えられた身体を持っている。まぁ、カスパーのようなマッチョではないが。
「ハンク様ですか……なるほど、だったら悪くないですね」
「そう思うだろう? だが簡単ではないんだよ」
「どうしてですか?」
「本来なら、ダールマイヤーの後継者は彼の筈だから、でしょう?」
「レイニーの言う通りだ。彼の家も中々にゴタゴタしているんだ」
それが彼が婚約者候補に挙がらなかった一因でもあった。
「でも、もしアリーセ様が立太子されると、王配探しになりますよね」
「そうなるね」
凄く気が重いが仕方がない。これまではディアークが有力視され、私が辺境拍家に養子に入るとみられていたから誰も自分が婚約者にとは言って来なかった。
だが、ディアークがやらかせば情況が一転するのは目に見えていた。
「そうなると、フォンゼル様を婿に、との声が高くなりませんか?」
ローゼがレイニーに気を使ってか、控えめにそう言った。
「確かにその可能性もあるけど、彼を王配にするとなれば他の国が黙っていないだろう」
「あ……そうですね」
「ギューデン以外からも我が国の王子を、との声が高くなるのは目に見えている。父上にとってはそれはあまり嬉しい状況じゃないんだ」
「それは……エーデルマン公爵家の力が強くなりすぎるからですか?」
「そういうこと。レイニーの母君はギューデンの王族だからね。公爵家の言葉は無下にできないだけに、間接的に干渉を受ける可能性が高くなる。それに元々フォンゼルは形だけの婚約者というのは父上もご存じだったからね」
「そうだったんですか……」
この辺はレイニーは知っていることだが、ローゼにとっては初耳だろう。公爵家の夫人になるための教育が始まれば知ることになっただろうが。
「となると、アリーセ様の婿は……」
「父王は国内の貴族からとお考えだ。私の母の実家は五大公爵家だが、一家だけでは後ろ盾には足りない、と父上は考えていらっしゃるだろう」
「確かにそうですね」
「私が王位に就くとなれば、ディアークの廃嫡が前提だ。そうなった時、エーデルマン公爵家が私を支持するかは未知数だ。ザックスもディアークの側近だから状況によっては敵になる可能性もある」
父上がディアークの婚約者にレイニーを、側近にカスパーを選んだのは、父なりに私との差をつけて、私を担ぎ出させないようにしたからだった。ただ、そうした場合、ディアークに問題が起きて廃嫡になれば悪手になる。
「去年までは私たちも学園にいたし、ディアークも恙なく過ごしていた。あと一年というところまできたから安心していたんだが……」
全く頭が痛いことに、隙を狙われたと言っていいだろう。ミリセント嬢の目的がはっきりしないが、こうなるとハニートラップの可能性もある。
「となると……アリーセ様のお相手にはカスパー殿などもいいのではないかしら?」
「カスパー様?!」
レイニーの提案にローゼが大きな声を上げた。そして上げた本人が言ってから驚いていた。
「あ、申し訳ございません。まさか彼がそうなるとは思っていなかったので……」
「ローゼからしたら幼馴染だからな。急に王族になられても……と思っても仕方ないだろう」
「ええ。それに彼は長男だし、そんな柄じゃないですし」
「後継者だからな。彼が婿になる可能性は低いだろう」
惜しい人材ではあるが、この年になって後継者を変えろというのは無茶な話だ。ザックス公爵家にとっても、やっと一人前に育て上げた後継者を奪われるのは許し難いだろう。王配に旨味があっても、家が傾くのでは意味がない。となれば彼の弟が……となるところだが、彼には妹しかいないし、既に婚約者がいて嫁ぐことが決まっていた。
「他にとなると……残っている公爵家はダールマイヤーとブランゲですか……」
「そうだな。ダールマイヤーにはハンクがいる。彼は次男で有能な騎士だ。何度か一緒に戦ったことがあるが、中々優れた御仁だったな」
ハンクは黄色味の強い金髪と、深い湖水のような青緑の瞳を持つ美男子だ。顔立ちは中性的ですらりと背が高いが、騎士だけあって鍛えられた身体を持っている。まぁ、カスパーのようなマッチョではないが。
「ハンク様ですか……なるほど、だったら悪くないですね」
「そう思うだろう? だが簡単ではないんだよ」
「どうしてですか?」
「本来なら、ダールマイヤーの後継者は彼の筈だから、でしょう?」
「レイニーの言う通りだ。彼の家も中々にゴタゴタしているんだ」
それが彼が婚約者候補に挙がらなかった一因でもあった。
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