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王都へ、行く?
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それから更に一月が経った。オーリー様の回復は順調に進み、不調を訴えることも殆どなくなった。それでも五年の間に筋力も体力もすっかり落ちてしまい、取り戻すのはまだまだ時間がかかりそうだ。
それに、最初に飲んだと思われる二つの毒の懸念があった。あれが何なのかがわからない以上、身体にどんなダメージが残っているかもわからないと、ドイル先生やルイス先生は運動の制限をまだ解いていない。
それでも、最近のオーリー様は同一人物かと思うほどに活動的になった。運動は軽いものに留めているけれど、その分今後の我が領の方針やベルクール公爵への対処法などの話し合いに顔を出すようになり、積極的に意見も出して下さっている。
「出来れば王都に行って、陛下に確かめたいな……」
お祖母様を交えてお茶をしていると、オーリー様がそんなことを零した。確かに陛下なら毒の詳細もご存じだろうし、それがわかれば治療もより的確に出来る。
「でも、今王都に行けば、ベルクール公爵が何を企むか……」
「そうなんだよね」
私の考えにオーリー様も同調された。今オーリー様が王都に行けば、回復したと示すことになってしまう。それではベルクール公爵の野心を刺激するだけだ。陛下からの呼び出し状でもあれば話は別なのだけど、今のところそんな気配はない。
「何か、呼び出される口実があれば……」
理由なく移動するのは危険だろう。せめて陛下から呼び出しでもあれば仕方なくという体で向かえるのだけど。
「だったら、私が手紙を書くわ」
「お祖母様?」
「届先は陛下ではなく、陛下の母君の王太后陛下だけどね」
「そう言えばお祖母様は……」
「ええ、そろそろ贈り物を送る時期だからね」
お祖母様と王太后陛下は、幼馴染で仲がよかった。今でも定期的にお便りや贈り物を交わし合っていて、毎年祭りの時期には贈り物を届けていたっけ。
「何なら贈り物を届ける使者に扮して、王都に行くのもありよ」
お祖母様が悪戯っぽい笑顔を浮かべた。
「でも、オーリー様はここから動けないんじゃ……」
「あら、そんなことは陛下の手紙には書いてなかったわよ」
あっけらかんとお祖母様がそう言った。確かにそうでしたね、とオーリー様も同意する。確かに陛下からの文書には、領外に出ることを禁止するような言葉はなかったけれど……
「大丈夫なのでしょうか?」
一応罰的な意味合いを持つ婿入りなのだ。結界が張られるまでは領外に出るのはマズいのではないだろうか。
「まぁ、ダメだと思ったらダメだと書くでしょうよ。禁止されていないことまで止める必要はないわ」
確かにその通りだけど、大丈夫だろうか。
「心配なら、贈り物を届ける使者のふりをしていけばいいんじゃない? 少なくとも王太后には会えるし、そこから陛下にも会えるかもしれないわ」
確かにお祖母様の言う通りだけど、そう上手くいくだろうか。
「王太后相手では、公爵も手が出せない。それに、うちのタウンハウスにはジェイドがいるわ。あそこに滞在出来ないから、王太后のところに泊めてもらえばいいじゃない」
さすがにそれは……と思ったけれど、オーリー様は妙案だと言って乗り気になってしまった。
「オ、オーリー様、さすがにそれは……」
「でも、このままここにいても状況は変わらないよ。それに、早く本当のことを知りたいんだ。王都には気になることも色々あるし……」
どうやらオーリー様の意思は固いようだ。聞けば王太后様との関係は良好で、療養中も見舞いの手紙を貰っていたのだという。出来れば元気になった姿を見て欲しいとも。
「使者はアンジェにして、オードリックはうちの家令にしておきましょうか」
「ええっ?!」
「ああ、それはいいですね。何ならエドを影武者にしましょうか」
「で、殿下?!」
「だって、エドが同行すれば、私がいると周りに気付かれてしまうだろう?」
「しかしっ!」
エドガール様が抵抗したけれど、二人とも不在となれば見舞客が来た時に怪しまれるだろうとお祖母様が言った。二人とも不在なのと、エドガール様が寝込んでいて面会出来ないと説明するのでは大違いだと。
「ですが、私は殿下の……!」
「私は変装するから大丈夫だよ。得意なのはエドも知っているだろう?」
「しかし!」
「今回は大叔母上の使者だけでなく、私の名代としてアンジェが行くって話にすれば周りも納得する。一方で私が完全に回復していないと知らしめることも出来る。公爵を欺くにはちょうどいいよ」
エドガール様が尚も抵抗したけれど、オーリー様はお祖母様と話を進めてしまった。確かにオーリー様の言うことには一理あるし、毒のことも早く知りたいと思うのは私も同じだ。問題なさそうに見えるけれど、今こうしている間も身体がダメージを受けているかもしれないのだから。
その後、お祖母様が王太后様と手紙のやり取りをして、一月後には王都に発つ事になった。
それに、最初に飲んだと思われる二つの毒の懸念があった。あれが何なのかがわからない以上、身体にどんなダメージが残っているかもわからないと、ドイル先生やルイス先生は運動の制限をまだ解いていない。
それでも、最近のオーリー様は同一人物かと思うほどに活動的になった。運動は軽いものに留めているけれど、その分今後の我が領の方針やベルクール公爵への対処法などの話し合いに顔を出すようになり、積極的に意見も出して下さっている。
「出来れば王都に行って、陛下に確かめたいな……」
お祖母様を交えてお茶をしていると、オーリー様がそんなことを零した。確かに陛下なら毒の詳細もご存じだろうし、それがわかれば治療もより的確に出来る。
「でも、今王都に行けば、ベルクール公爵が何を企むか……」
「そうなんだよね」
私の考えにオーリー様も同調された。今オーリー様が王都に行けば、回復したと示すことになってしまう。それではベルクール公爵の野心を刺激するだけだ。陛下からの呼び出し状でもあれば話は別なのだけど、今のところそんな気配はない。
「何か、呼び出される口実があれば……」
理由なく移動するのは危険だろう。せめて陛下から呼び出しでもあれば仕方なくという体で向かえるのだけど。
「だったら、私が手紙を書くわ」
「お祖母様?」
「届先は陛下ではなく、陛下の母君の王太后陛下だけどね」
「そう言えばお祖母様は……」
「ええ、そろそろ贈り物を送る時期だからね」
お祖母様と王太后陛下は、幼馴染で仲がよかった。今でも定期的にお便りや贈り物を交わし合っていて、毎年祭りの時期には贈り物を届けていたっけ。
「何なら贈り物を届ける使者に扮して、王都に行くのもありよ」
お祖母様が悪戯っぽい笑顔を浮かべた。
「でも、オーリー様はここから動けないんじゃ……」
「あら、そんなことは陛下の手紙には書いてなかったわよ」
あっけらかんとお祖母様がそう言った。確かにそうでしたね、とオーリー様も同意する。確かに陛下からの文書には、領外に出ることを禁止するような言葉はなかったけれど……
「大丈夫なのでしょうか?」
一応罰的な意味合いを持つ婿入りなのだ。結界が張られるまでは領外に出るのはマズいのではないだろうか。
「まぁ、ダメだと思ったらダメだと書くでしょうよ。禁止されていないことまで止める必要はないわ」
確かにその通りだけど、大丈夫だろうか。
「心配なら、贈り物を届ける使者のふりをしていけばいいんじゃない? 少なくとも王太后には会えるし、そこから陛下にも会えるかもしれないわ」
確かにお祖母様の言う通りだけど、そう上手くいくだろうか。
「王太后相手では、公爵も手が出せない。それに、うちのタウンハウスにはジェイドがいるわ。あそこに滞在出来ないから、王太后のところに泊めてもらえばいいじゃない」
さすがにそれは……と思ったけれど、オーリー様は妙案だと言って乗り気になってしまった。
「オ、オーリー様、さすがにそれは……」
「でも、このままここにいても状況は変わらないよ。それに、早く本当のことを知りたいんだ。王都には気になることも色々あるし……」
どうやらオーリー様の意思は固いようだ。聞けば王太后様との関係は良好で、療養中も見舞いの手紙を貰っていたのだという。出来れば元気になった姿を見て欲しいとも。
「使者はアンジェにして、オードリックはうちの家令にしておきましょうか」
「ええっ?!」
「ああ、それはいいですね。何ならエドを影武者にしましょうか」
「で、殿下?!」
「だって、エドが同行すれば、私がいると周りに気付かれてしまうだろう?」
「しかしっ!」
エドガール様が抵抗したけれど、二人とも不在となれば見舞客が来た時に怪しまれるだろうとお祖母様が言った。二人とも不在なのと、エドガール様が寝込んでいて面会出来ないと説明するのでは大違いだと。
「ですが、私は殿下の……!」
「私は変装するから大丈夫だよ。得意なのはエドも知っているだろう?」
「しかし!」
「今回は大叔母上の使者だけでなく、私の名代としてアンジェが行くって話にすれば周りも納得する。一方で私が完全に回復していないと知らしめることも出来る。公爵を欺くにはちょうどいいよ」
エドガール様が尚も抵抗したけれど、オーリー様はお祖母様と話を進めてしまった。確かにオーリー様の言うことには一理あるし、毒のことも早く知りたいと思うのは私も同じだ。問題なさそうに見えるけれど、今こうしている間も身体がダメージを受けているかもしれないのだから。
その後、お祖母様が王太后様と手紙のやり取りをして、一月後には王都に発つ事になった。
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