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自力で乗り切ってやりました
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(うん、完璧だわ!)
仕上げた書類の出来上がりを前に、私は充実感に包まれていた。前の職場では散々チェックする側だった書類を、今は私が作る側にいる。チェックする点はしっかり押さえているから、これはもう、完璧な仕上がりと言っていいのではないだろうか。自分の仕事ぶりの惚れ惚れすると同時に、言い表せない充実感に包まれた。
既に夜も更け、日付が変わるかどうか…と言う時間だ。そろそろ帰りたいが、この書類どうしたら…と思っていたところでバタバタと足音が近づき、ドアが開いた。そこにはこの仕事を頼んだ張本人の姿があった。
「すまない!ちょっとトラブルがあって…」
そう言って入ってきた天敵は随分と慌てた様子で、手には似つかわしくないバスケットを持っていた。いや、イケメンは何を持っても様になるらしい。
「…いえ、ちょうど終わったところですので」
そう言って仕上げた書類を差し出すと、驚いた表情を見せた。くそう、イケメンはどんな表情でもイケメンだ。顔面偏差値、ズルい。好みど真ん中の顔なのに、持ち主のせいか癒されないのが至極残念だ。
「も、もう、終わったのか?」
「はい。一応前の部署で何度か見ていたので、これで問題ないと思います。念のため確認をお願いします」
思い返せばこの男、資料を渡すと早々に部屋を出て行って、どうすればいいかの指示もなかった。それに手伝うって言ったのに、具体的な指示もせずに出て行ったきりだったよね?そう思うと静かに怒りが積もっていくのを感じた。これで違うと言われたって知るか!空腹もあってか私は半ばやさぐれた気分だった。
「…問題は…ない」
「そうですか」
「いや、完璧だ。よく短時間でここまで…」
(…勝った!)
天敵が私の書類を繁々と眺め、感嘆している様を見て、私は溜飲が下がった思いがしたし、初めて勝ったという気分になった。何というか、自分の事をやっと認められた、とでも言えばいいのだろうか…何年も首席を奪われ続けてきたけれど、やっとこの男を打ち負かした気分になれて、私は気分がよかった。
「ありがとう。これで団長の出した案が通りそうだ」
「団長の出した案?」
「ああ、騎士団内の不正をチェックする体制作りのための要望書なんだ。何年も前から団長が考えていたもので、この前の不正摘発のお陰でやっと進められると喜んでいらっしゃった」
げ、そんな重要な仕事をあの男は投げて休暇に入ったと?随分な強心臓と言うか…でもそれって、職務放棄と言えるんじゃない?団長の気持ち一つで懲戒解雇になってもいい案件に思えた。
「アルノワ殿は…あまりこの案に乗り気じゃなかったんだ。自分達が疑われているようで気分が悪いと、ずっと反対していたからね」
「は、はぁ…」
いやいやいや、待て!それって自分も不正しています、って言ってるのと同じじゃない?しかもいざ要望書を出そうって時に休暇取ってまでやらないって…何だろう…いきなり騎士団の闇を見た気分だ…あんまりこういう話に関わりたくないんだけど…いや、この男とも関わりたくないんだっけ。
「それで問題ないのでしたら、これで失礼します」
本来の自分の立ち位置を思い出した私は、さっさと帰るべく踵を返した。んだけど…
「ああ、遅くなってすまなかった。お詫びにと思ってテイクアウトの軽食を持ってきたんだ。一緒に食べないか?」
(…冗談じゃない!誰があんたなんかと…)
そう思った私だったが、バスケットを開ける音と美味しそうな匂いがしたと思った途端、お腹が鳴って…私は帰るタイミングを失ったのだった。
仕上げた書類の出来上がりを前に、私は充実感に包まれていた。前の職場では散々チェックする側だった書類を、今は私が作る側にいる。チェックする点はしっかり押さえているから、これはもう、完璧な仕上がりと言っていいのではないだろうか。自分の仕事ぶりの惚れ惚れすると同時に、言い表せない充実感に包まれた。
既に夜も更け、日付が変わるかどうか…と言う時間だ。そろそろ帰りたいが、この書類どうしたら…と思っていたところでバタバタと足音が近づき、ドアが開いた。そこにはこの仕事を頼んだ張本人の姿があった。
「すまない!ちょっとトラブルがあって…」
そう言って入ってきた天敵は随分と慌てた様子で、手には似つかわしくないバスケットを持っていた。いや、イケメンは何を持っても様になるらしい。
「…いえ、ちょうど終わったところですので」
そう言って仕上げた書類を差し出すと、驚いた表情を見せた。くそう、イケメンはどんな表情でもイケメンだ。顔面偏差値、ズルい。好みど真ん中の顔なのに、持ち主のせいか癒されないのが至極残念だ。
「も、もう、終わったのか?」
「はい。一応前の部署で何度か見ていたので、これで問題ないと思います。念のため確認をお願いします」
思い返せばこの男、資料を渡すと早々に部屋を出て行って、どうすればいいかの指示もなかった。それに手伝うって言ったのに、具体的な指示もせずに出て行ったきりだったよね?そう思うと静かに怒りが積もっていくのを感じた。これで違うと言われたって知るか!空腹もあってか私は半ばやさぐれた気分だった。
「…問題は…ない」
「そうですか」
「いや、完璧だ。よく短時間でここまで…」
(…勝った!)
天敵が私の書類を繁々と眺め、感嘆している様を見て、私は溜飲が下がった思いがしたし、初めて勝ったという気分になった。何というか、自分の事をやっと認められた、とでも言えばいいのだろうか…何年も首席を奪われ続けてきたけれど、やっとこの男を打ち負かした気分になれて、私は気分がよかった。
「ありがとう。これで団長の出した案が通りそうだ」
「団長の出した案?」
「ああ、騎士団内の不正をチェックする体制作りのための要望書なんだ。何年も前から団長が考えていたもので、この前の不正摘発のお陰でやっと進められると喜んでいらっしゃった」
げ、そんな重要な仕事をあの男は投げて休暇に入ったと?随分な強心臓と言うか…でもそれって、職務放棄と言えるんじゃない?団長の気持ち一つで懲戒解雇になってもいい案件に思えた。
「アルノワ殿は…あまりこの案に乗り気じゃなかったんだ。自分達が疑われているようで気分が悪いと、ずっと反対していたからね」
「は、はぁ…」
いやいやいや、待て!それって自分も不正しています、って言ってるのと同じじゃない?しかもいざ要望書を出そうって時に休暇取ってまでやらないって…何だろう…いきなり騎士団の闇を見た気分だ…あんまりこういう話に関わりたくないんだけど…いや、この男とも関わりたくないんだっけ。
「それで問題ないのでしたら、これで失礼します」
本来の自分の立ち位置を思い出した私は、さっさと帰るべく踵を返した。んだけど…
「ああ、遅くなってすまなかった。お詫びにと思ってテイクアウトの軽食を持ってきたんだ。一緒に食べないか?」
(…冗談じゃない!誰があんたなんかと…)
そう思った私だったが、バスケットを開ける音と美味しそうな匂いがしたと思った途端、お腹が鳴って…私は帰るタイミングを失ったのだった。
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