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どうぞご自由に…
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「どう、と申されても…」
どういう意図でそんな事を聞いてくるのかと、その真意が掴めず困惑した。最初から彼女とは形だけの婚約だと言ってあるし、殿下も承知の上だ。
「そう?アレクとならちょうどいいかな、と思ったんだけど」
ちょうどいいとはどういう意味だ。そういう対象ではないと先に言ってあるし、そもそも俺は結婚する気はないと伝えている。笑顔を向けているが、それがものすごく胡散臭く見えるのは気のせいだろうか…
「前言を撤回する気はありません」
「頑固だなぁ…」
頑固も何も、子供を成せないのに妻を娶る方が非道だろう。いくら相手がいいと言っても、何年か経てば気持ちが変わる可能性もある。それに…
「そう、ですね…相手が同じ影なら、ありかもしれません」
「影って…」
「暗殺者から自分を守れるくらいでないと無理だという意味です」
「自分で守ろうとは思わないのか?」
「守るのがどれくらい難しいかは、重々承知しておりますので」
そう、女性一人と言うが、王家の影として動いている俺は既に裏社会で名が知られている。俺を狙ってくるのはラドン伯爵だけじゃない。例えば、俺を倒して名を上げたい場末の暗殺者もいるのだ。そんな状態で妻など迎えたら弱点を教える様なもので、こぞって狙ってくるだろう。そんな愚を犯す程馬鹿じゃない。第一、騎士ですらない女性に身を守れと言えるはずもない。
「でも、私の妻にするよりは安全だろう?」
「王太子妃の方が安全ですよ、護衛も影も付けられますから。一介の貴族の妻に護衛なんて付けませんよ」
「なるほど…それで仕事を理由に屋敷に軟禁しているのか」
軟禁とは随分な言い草だ。これでも身を護るために最大限に考慮しているというのに。
「…何の事です?」
「終わりそうにないほどの書類の確認をさせているんだって?」
「それが何か?最初からその予定でしたが?」
そう、最初から不正をあぶり出すためにそうする予定だった。その甲斐あってラドン伯の不正の一端を掴めたのだ。
「そうか。じゃ、この件が片付いたら婚約は白紙にすると?」
「最初からその予定ですよ。公文書にサインもしたじゃありませんか」
そう、この婚約はラドン伯爵を追い落とすまでの期間限定だ。彼女自身も狙われているし、成功したら相応の報酬も付きでお互いにメリットがある。まぁ、王女除けには成らなかったが、あっちはあっちで片付いたし問題ないだろう。
「それじゃ、婚約が白紙になったら私が求婚しても?」
悪戯っぽい笑みを浮かべてそういう王太子は、確実に俺の反応を楽しんでいた。何がしたいのかわからないが、好きにすればいいと思う。彼女がそれを受けるとは思えないが。
「ご自由にどうぞ」
好きにすればいい、と思う。王太子殿下か…今から未来の王妃になろうとするのは簡単ではないが、本人が望むなら何とかなるのではないだろうか。優秀さは折り紙付きだし、あれだけの聡さがあれば王妃の公務は問題ない。下手をすると現王妃よりも優秀かもしれない。それに…あのマルスリーヌ様の娘となれば、国王夫妻も否やとは言わないだろう。王妃はむしろ喜んで迎えそうな気がする…
「即答かぁ」
「何を期待しているんです?」
どんな答えを期待しているのかは知らないが、面白半分に引っ搔き回すのは勘弁して欲しい。殿下の相手をしていられるほど暇じゃないのだ。
「どちらにしても、ラドン伯の脅威を片付けてからです」
「わかっている」
どっちにしても、今手を出されては困る。殿下の妃候補が何人も辞退しているのは、ラドン伯の可能性が高いのだ。ただでさえ狙われているのに、これ以上危険に晒すような真似は何としても避けて欲しかった。
どういう意図でそんな事を聞いてくるのかと、その真意が掴めず困惑した。最初から彼女とは形だけの婚約だと言ってあるし、殿下も承知の上だ。
「そう?アレクとならちょうどいいかな、と思ったんだけど」
ちょうどいいとはどういう意味だ。そういう対象ではないと先に言ってあるし、そもそも俺は結婚する気はないと伝えている。笑顔を向けているが、それがものすごく胡散臭く見えるのは気のせいだろうか…
「前言を撤回する気はありません」
「頑固だなぁ…」
頑固も何も、子供を成せないのに妻を娶る方が非道だろう。いくら相手がいいと言っても、何年か経てば気持ちが変わる可能性もある。それに…
「そう、ですね…相手が同じ影なら、ありかもしれません」
「影って…」
「暗殺者から自分を守れるくらいでないと無理だという意味です」
「自分で守ろうとは思わないのか?」
「守るのがどれくらい難しいかは、重々承知しておりますので」
そう、女性一人と言うが、王家の影として動いている俺は既に裏社会で名が知られている。俺を狙ってくるのはラドン伯爵だけじゃない。例えば、俺を倒して名を上げたい場末の暗殺者もいるのだ。そんな状態で妻など迎えたら弱点を教える様なもので、こぞって狙ってくるだろう。そんな愚を犯す程馬鹿じゃない。第一、騎士ですらない女性に身を守れと言えるはずもない。
「でも、私の妻にするよりは安全だろう?」
「王太子妃の方が安全ですよ、護衛も影も付けられますから。一介の貴族の妻に護衛なんて付けませんよ」
「なるほど…それで仕事を理由に屋敷に軟禁しているのか」
軟禁とは随分な言い草だ。これでも身を護るために最大限に考慮しているというのに。
「…何の事です?」
「終わりそうにないほどの書類の確認をさせているんだって?」
「それが何か?最初からその予定でしたが?」
そう、最初から不正をあぶり出すためにそうする予定だった。その甲斐あってラドン伯の不正の一端を掴めたのだ。
「そうか。じゃ、この件が片付いたら婚約は白紙にすると?」
「最初からその予定ですよ。公文書にサインもしたじゃありませんか」
そう、この婚約はラドン伯爵を追い落とすまでの期間限定だ。彼女自身も狙われているし、成功したら相応の報酬も付きでお互いにメリットがある。まぁ、王女除けには成らなかったが、あっちはあっちで片付いたし問題ないだろう。
「それじゃ、婚約が白紙になったら私が求婚しても?」
悪戯っぽい笑みを浮かべてそういう王太子は、確実に俺の反応を楽しんでいた。何がしたいのかわからないが、好きにすればいいと思う。彼女がそれを受けるとは思えないが。
「ご自由にどうぞ」
好きにすればいい、と思う。王太子殿下か…今から未来の王妃になろうとするのは簡単ではないが、本人が望むなら何とかなるのではないだろうか。優秀さは折り紙付きだし、あれだけの聡さがあれば王妃の公務は問題ない。下手をすると現王妃よりも優秀かもしれない。それに…あのマルスリーヌ様の娘となれば、国王夫妻も否やとは言わないだろう。王妃はむしろ喜んで迎えそうな気がする…
「即答かぁ」
「何を期待しているんです?」
どんな答えを期待しているのかは知らないが、面白半分に引っ搔き回すのは勘弁して欲しい。殿下の相手をしていられるほど暇じゃないのだ。
「どちらにしても、ラドン伯の脅威を片付けてからです」
「わかっている」
どっちにしても、今手を出されては困る。殿下の妃候補が何人も辞退しているのは、ラドン伯の可能性が高いのだ。ただでさえ狙われているのに、これ以上危険に晒すような真似は何としても避けて欲しかった。
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