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絶体絶命?
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武の心得のない身では、男二人に抑えられては逃げ場がなかった。引きずられるようにして執務室の奥にあるソファまで連れて来られ、そのままソファに押し倒された。
「は、放しなさい!」
「そう遠慮するなって!」
「ここは職場よ!何を馬鹿な事を!」
「ご心配無用。この時間は誰も残っていませんよ」
「な…!」
大声を出したけれど、確かに誰かが駆けつけてくる気配がなかった。いつもなら団長や副団長の執務室の近くには誰かが控えているのに…
「残念でしたな。このフロアに護衛騎士はおりませんよ」
にやにやしながらそういうギャロワ殿に、この蛮行が計画されたものだと理解した。きっと護衛騎士が少なくなる時間帯を狙ったのだろう。今日はエミール様も早めに帰られたから、そこを狙ったのかもしれない。
「放して!」
ソファに倒れ込んだところにギャロワ殿が覆いかぶさってきた。ぎらついた欲を含んだ目が気持ち悪かった。何とかしないと…そう思って手にしていたドアのカギを持ったまま思いっきり手を振り上げた。
「ぐぇっ!」
手だけでは威力は小さかっただろうが、幸いにも鍵が彼の顔に当たって一瞬怯んだ。その隙に体を起こそうとしたけれど…
「この野郎!」
頭の左側に強い痛みと熱を感じ、眼鏡が飛んで床を転がる音がした。
「へぇ…素顔は中々に可愛らしいじゃねぇか」
「ありゃ、ほんとだ。地味な根暗文官だと言われていたのに」
地味な根暗で悪かったなと怒りが湧くのに、逃げようとした隙は私の予想に反して短すぎた。再びソファに押し倒されて二人がかりで押さえつけられた。
「さぁ、観念しな」
「可愛がってやるから」
そう言って制服に手を掛けられて、一気に左右に引き裂かれた。
「へぇ…意外に胸はありそうだな」
「だけどこれだけ太ってちゃなぁ。胸と腹の境界線がないんじゃねぇのか」
そう言いながら二人の手が伸びてきた。下品な笑い顔と口調が気持ち悪くて吐き気が押し寄せてきた。いっそ吐いたら彼らも諦めるだろうか…
「は、放して!放しなさいっ!」
「うるせぇ!黙れっ!」
「いやっ!誰か、誰か助けて!だっ…ぐぅっ!」
助けが来ないとわかっていても、呼ばずにはいられなかった。もしかしたら近くを誰かが通るかもしれないのだ。ありったけの声を出したまではよかったが、口元を手で塞がれてしまった。よほど力を入れているのか、痛くて歯が折れそうだし息が出来ない…息苦しさに思わず目を閉じた。
(副団長…!)
来る筈はないと思いながらも、脳裏に浮かんだのは彼だった。
「ぎゃぁああああっ!!!」
「がぁあっ!!!」
息が出来なくて意識が薄れつつあるなか、必死で意識を保とうとしていたところに断末魔のような叫び声が耳に届いた。それと同時に口元を押さえつけていた重みが消えた。
(……え?)
慌てて目を開けて…私は息を飲んだ。そこにいたのは…
「副、だんちょ…」
ソファに身を預けたままの私の視界に映ったのは、濃紺の貴族服を身に付けた副団長、いや、第二王子殿下だった。薄暗い室内の中でもその金色の髪は一際存在感を保ち、見間違えるはずもない。彼の視線は壁に向けられていて…わずかに身を起こして視線を向けると、その先には男二人が床に転がっていて、ひくひくと痙攣しているように見えた。
(な、なに、が…)
何が起きているのか、全く理解出来なかった。副団長は王宮にいた筈ではなかっただろうか?最近では騎士団に来ることも殆どなかったし、用があったら王宮に連絡をと言われていたくらいなのに…
「大丈夫か?」
急に頭上から声が落ちてきた。その声の主を見上げると、彼と視線が合った。何か言わなければと思うのに、情況が理解しきれないせいか直ぐには言葉が出てこなかった。それでも、彼の視線は自分に真っすぐに向かっていて、答えを待っているように見えた。
「…だ、大丈夫、です…」
情けないほどにかすれた声しか出てこなかったが、私が返事をしたせいか、彼の表情が僅かに緩んだ気がした。
「副団長!?」
次の瞬間、彼の身体がぐらりと揺れたかと思ったら、そのまま私の上に倒れ込んできた。
「は、放しなさい!」
「そう遠慮するなって!」
「ここは職場よ!何を馬鹿な事を!」
「ご心配無用。この時間は誰も残っていませんよ」
「な…!」
大声を出したけれど、確かに誰かが駆けつけてくる気配がなかった。いつもなら団長や副団長の執務室の近くには誰かが控えているのに…
「残念でしたな。このフロアに護衛騎士はおりませんよ」
にやにやしながらそういうギャロワ殿に、この蛮行が計画されたものだと理解した。きっと護衛騎士が少なくなる時間帯を狙ったのだろう。今日はエミール様も早めに帰られたから、そこを狙ったのかもしれない。
「放して!」
ソファに倒れ込んだところにギャロワ殿が覆いかぶさってきた。ぎらついた欲を含んだ目が気持ち悪かった。何とかしないと…そう思って手にしていたドアのカギを持ったまま思いっきり手を振り上げた。
「ぐぇっ!」
手だけでは威力は小さかっただろうが、幸いにも鍵が彼の顔に当たって一瞬怯んだ。その隙に体を起こそうとしたけれど…
「この野郎!」
頭の左側に強い痛みと熱を感じ、眼鏡が飛んで床を転がる音がした。
「へぇ…素顔は中々に可愛らしいじゃねぇか」
「ありゃ、ほんとだ。地味な根暗文官だと言われていたのに」
地味な根暗で悪かったなと怒りが湧くのに、逃げようとした隙は私の予想に反して短すぎた。再びソファに押し倒されて二人がかりで押さえつけられた。
「さぁ、観念しな」
「可愛がってやるから」
そう言って制服に手を掛けられて、一気に左右に引き裂かれた。
「へぇ…意外に胸はありそうだな」
「だけどこれだけ太ってちゃなぁ。胸と腹の境界線がないんじゃねぇのか」
そう言いながら二人の手が伸びてきた。下品な笑い顔と口調が気持ち悪くて吐き気が押し寄せてきた。いっそ吐いたら彼らも諦めるだろうか…
「は、放して!放しなさいっ!」
「うるせぇ!黙れっ!」
「いやっ!誰か、誰か助けて!だっ…ぐぅっ!」
助けが来ないとわかっていても、呼ばずにはいられなかった。もしかしたら近くを誰かが通るかもしれないのだ。ありったけの声を出したまではよかったが、口元を手で塞がれてしまった。よほど力を入れているのか、痛くて歯が折れそうだし息が出来ない…息苦しさに思わず目を閉じた。
(副団長…!)
来る筈はないと思いながらも、脳裏に浮かんだのは彼だった。
「ぎゃぁああああっ!!!」
「がぁあっ!!!」
息が出来なくて意識が薄れつつあるなか、必死で意識を保とうとしていたところに断末魔のような叫び声が耳に届いた。それと同時に口元を押さえつけていた重みが消えた。
(……え?)
慌てて目を開けて…私は息を飲んだ。そこにいたのは…
「副、だんちょ…」
ソファに身を預けたままの私の視界に映ったのは、濃紺の貴族服を身に付けた副団長、いや、第二王子殿下だった。薄暗い室内の中でもその金色の髪は一際存在感を保ち、見間違えるはずもない。彼の視線は壁に向けられていて…わずかに身を起こして視線を向けると、その先には男二人が床に転がっていて、ひくひくと痙攣しているように見えた。
(な、なに、が…)
何が起きているのか、全く理解出来なかった。副団長は王宮にいた筈ではなかっただろうか?最近では騎士団に来ることも殆どなかったし、用があったら王宮に連絡をと言われていたくらいなのに…
「大丈夫か?」
急に頭上から声が落ちてきた。その声の主を見上げると、彼と視線が合った。何か言わなければと思うのに、情況が理解しきれないせいか直ぐには言葉が出てこなかった。それでも、彼の視線は自分に真っすぐに向かっていて、答えを待っているように見えた。
「…だ、大丈夫、です…」
情けないほどにかすれた声しか出てこなかったが、私が返事をしたせいか、彼の表情が僅かに緩んだ気がした。
「副団長!?」
次の瞬間、彼の身体がぐらりと揺れたかと思ったら、そのまま私の上に倒れ込んできた。
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