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新しい道
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それからは、文字通り怒涛の日々だった。
まず、彼との結婚が正式に決まるのがあっという間だった。これはアレクが私と結婚できないなら一生独身を貫くと宣言したからで、これには高位貴族達も大いに慌てた。今や彼以外に王太子殿下の代わりが出来る者がいないからだ。
万が一の時には彼が王位を継ぐしかないけれど、結婚して貰わないと次代の王が生まれない。王統を継ぐ次世代の誕生が我が国の喫緊の課題だから、この際相手は誰でもいいと、いつの間にかそんな流れになっていた。彼に子が成せないのは機密だから、彼への期待は王太子殿下並みに大きい。お陰で私が彼の妃になるのもやむなしとの空気が流れた。それから一月後には大々的に婚約式が行われて、私は正式にアレクの婚約者になった。
「エリーに命令したくないんだ。だから……」
そう言って私の前に跪き、上目遣いで見上げるアレクだったが、絶対に私が彼の顔に弱いのをわかっていてやったと思う。あんな表情は反則だ。しかも彼からの愛情表現が別人かと思うほどに過剰になっていた。中身が別人に入れ替わったんじゃないか……と思うほど違うのだ。戸惑っている間にしっかり外堀どころか内堀まで埋められて、王太子妃としての道が綺麗に舗装されて いた。
その前に実家のミュッセ伯爵家は陞爵されてミュッセ侯爵家になった。お父様が再び婿入りして両親は再婚し、仲睦まじく暮らしているらしい。帰っていないから詳しくは知らないけれど。リアムからの手紙によると、お母様は大層幸せそうで毎日ご機嫌にお過ごしだとか。それはそれでなんか怖い、と感じてしまうのは気のせいだろうか……
(つ、疲れた……)
あれから更に一月が経ち、私は王宮にほぼ軟禁状態で王子妃教育を受けていた。講師は母と公爵夫人、そして王妃様という錚々たる顔ぶれだ。マナーやダンス、語学、一般教養など学ぶべきことは際限なくあった。そんな中でも苦労したのが、学園時代から手を抜いていたマナーとダンスだった。筋肉痛が辛い……
「まさか、エリーが王太子妃にねぇ…」
「言わないで、クラリス……」
げんなりしている私にお茶を淹れてくれたのは、王宮の侍女として復職したクラリスだった。フランクールから来る王女殿下の侍女になるのが内定しているけれど、王女殿下が輿入れされるまでは私の侍女として仕えてくれることになったのだ。親しい相手が側にいてくれるのは嬉しい。嬉しいのだけど…
(クラリスの指導が一番容赦ないって、どういうことよ……)
そう、彼女は私の先生でもあった。王女殿下に長年仕えていた彼女はマナーに関しても一流で、まともにマナーを学んでいない私の指導を任されたのだ。お陰で勉強の時間以外、そう、休憩時間でも容赦なく指摘が入る鬼教師っぷりなのだ。私の休憩時間から癒しの文字が消えた……
「でも、様になっているじゃない。マルスリーヌ様のお陰ね」
「まぁね……」
お母様の躾は厳しかったし容赦なくて、子供の頃に叩き込まれたマナーはまだ生きていた。人生何がどこで役に立つかわからないものだな、と思う。
「エリアーヌ様、マッサージのお時間ですわ」
お茶を飲んでやっと一息……というところにやってきたのは、王宮の綺麗処五人だった。彼女たちはいわゆる美容に詳しい専門家で、王妃様や王女殿下、王子妃を美しく磨き上げるのがお仕事だ。今、彼女たちの腕を活かせるのは王妃様だけで、そこに加わった私はそりゃあもう、やり過ぎなくらいに構われていた。
「ま、まだお茶を飲み始めたばかりで……」
「お茶などマッサージしながらでも飲めますわ!それよりも前の授業が押して時間がありません。さぁ、皆さん、始めますわよ!」
「「「はいっ!」」」
押しの強い女性の集団ほど怖いものはいないと、私はここに来て改めて思い知らされた。ブーランジェ邸の女性陣も凄かったけれど、ここはそれ以上だ。さすがは王宮、パワーが格段に違う。
「エリアーヌ様はプロポーションもおよろしくて、大変磨き甲斐がございますわ」
「ええ、ええ。腕が鳴りますわね」
「え? あ、あの……ちょ……」
「さぁ、今日もエリアーヌ様専用のスペシャルバージョンをご用意しておりますわ」
「はぁ? あ、の……」
なんなのよ、私専用のスペシャルバージョンって……昨日も特別版とかいうエステフルコースで、終わった頃には疲労困憊だったのに……
「ク、クラリス、助け……」
「頑張ってね、エリー。皆さん、エリーをよろしくね」
「「「勿論でございますわ!」」」
「裏切り者~~~!」
抵抗虚しく、私は彼女達に引きずられるようにして連れていかれた。
まず、彼との結婚が正式に決まるのがあっという間だった。これはアレクが私と結婚できないなら一生独身を貫くと宣言したからで、これには高位貴族達も大いに慌てた。今や彼以外に王太子殿下の代わりが出来る者がいないからだ。
万が一の時には彼が王位を継ぐしかないけれど、結婚して貰わないと次代の王が生まれない。王統を継ぐ次世代の誕生が我が国の喫緊の課題だから、この際相手は誰でもいいと、いつの間にかそんな流れになっていた。彼に子が成せないのは機密だから、彼への期待は王太子殿下並みに大きい。お陰で私が彼の妃になるのもやむなしとの空気が流れた。それから一月後には大々的に婚約式が行われて、私は正式にアレクの婚約者になった。
「エリーに命令したくないんだ。だから……」
そう言って私の前に跪き、上目遣いで見上げるアレクだったが、絶対に私が彼の顔に弱いのをわかっていてやったと思う。あんな表情は反則だ。しかも彼からの愛情表現が別人かと思うほどに過剰になっていた。中身が別人に入れ替わったんじゃないか……と思うほど違うのだ。戸惑っている間にしっかり外堀どころか内堀まで埋められて、王太子妃としての道が綺麗に舗装されて いた。
その前に実家のミュッセ伯爵家は陞爵されてミュッセ侯爵家になった。お父様が再び婿入りして両親は再婚し、仲睦まじく暮らしているらしい。帰っていないから詳しくは知らないけれど。リアムからの手紙によると、お母様は大層幸せそうで毎日ご機嫌にお過ごしだとか。それはそれでなんか怖い、と感じてしまうのは気のせいだろうか……
(つ、疲れた……)
あれから更に一月が経ち、私は王宮にほぼ軟禁状態で王子妃教育を受けていた。講師は母と公爵夫人、そして王妃様という錚々たる顔ぶれだ。マナーやダンス、語学、一般教養など学ぶべきことは際限なくあった。そんな中でも苦労したのが、学園時代から手を抜いていたマナーとダンスだった。筋肉痛が辛い……
「まさか、エリーが王太子妃にねぇ…」
「言わないで、クラリス……」
げんなりしている私にお茶を淹れてくれたのは、王宮の侍女として復職したクラリスだった。フランクールから来る王女殿下の侍女になるのが内定しているけれど、王女殿下が輿入れされるまでは私の侍女として仕えてくれることになったのだ。親しい相手が側にいてくれるのは嬉しい。嬉しいのだけど…
(クラリスの指導が一番容赦ないって、どういうことよ……)
そう、彼女は私の先生でもあった。王女殿下に長年仕えていた彼女はマナーに関しても一流で、まともにマナーを学んでいない私の指導を任されたのだ。お陰で勉強の時間以外、そう、休憩時間でも容赦なく指摘が入る鬼教師っぷりなのだ。私の休憩時間から癒しの文字が消えた……
「でも、様になっているじゃない。マルスリーヌ様のお陰ね」
「まぁね……」
お母様の躾は厳しかったし容赦なくて、子供の頃に叩き込まれたマナーはまだ生きていた。人生何がどこで役に立つかわからないものだな、と思う。
「エリアーヌ様、マッサージのお時間ですわ」
お茶を飲んでやっと一息……というところにやってきたのは、王宮の綺麗処五人だった。彼女たちはいわゆる美容に詳しい専門家で、王妃様や王女殿下、王子妃を美しく磨き上げるのがお仕事だ。今、彼女たちの腕を活かせるのは王妃様だけで、そこに加わった私はそりゃあもう、やり過ぎなくらいに構われていた。
「ま、まだお茶を飲み始めたばかりで……」
「お茶などマッサージしながらでも飲めますわ!それよりも前の授業が押して時間がありません。さぁ、皆さん、始めますわよ!」
「「「はいっ!」」」
押しの強い女性の集団ほど怖いものはいないと、私はここに来て改めて思い知らされた。ブーランジェ邸の女性陣も凄かったけれど、ここはそれ以上だ。さすがは王宮、パワーが格段に違う。
「エリアーヌ様はプロポーションもおよろしくて、大変磨き甲斐がございますわ」
「ええ、ええ。腕が鳴りますわね」
「え? あ、あの……ちょ……」
「さぁ、今日もエリアーヌ様専用のスペシャルバージョンをご用意しておりますわ」
「はぁ? あ、の……」
なんなのよ、私専用のスペシャルバージョンって……昨日も特別版とかいうエステフルコースで、終わった頃には疲労困憊だったのに……
「ク、クラリス、助け……」
「頑張ってね、エリー。皆さん、エリーをよろしくね」
「「「勿論でございますわ!」」」
「裏切り者~~~!」
抵抗虚しく、私は彼女達に引きずられるようにして連れていかれた。
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