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一章 異世界へようこそ 新たな人生の幕開け

1-9 ???家族はどこに?

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 最近気づいたことがある。産まれた時こそ周りにたくさんの人がいた。
それは出産という一大イベントがあったからだと言うのは分かるが...なぜこうも人が減るのかと...。

特別人が減ったとかではない。
僕達が居るのは母上の寝室なのは変わらないし、母上の寝室には日中は母上馬もちろんのこと、専属の侍女や侍女頭が交代で常に控えている。

夜は専属の騎士らしき人や忍びみたいな人が母上の部屋の扉の前とバルコニーで控えているのを最近になって知った。

その人達に加えて僕達が会うのは専属医師と父上だけであることに気付いたのだ。

執事の人達はたまに父上と来たり、仕事を放棄して母上の部屋に入り浸っている父上を強制連行するために会うことがあるが...その他の家族達はいずこに??

僕達の家族は母上、父上、兄上、相棒である姉上に祖父母がいたはずなのだが...????

寝て起きて出会うのは母上か侍女か侍女頭か父上か姉上なのだ。
気になってしまったら...ねぇ?確認せずにはいられないんだけど...まだ僕は言葉が喋れない。

念話も姉上しか通じないことを生まれて直ぐに知ったのでそれも無理。

だから僕達が自分達の意思を相棒以外に伝える術は..."泣く"しかないのだ。

姉上は本当に赤ちゃんって感じでよく泣く。
自分の欲求を伝えるために。

反対に僕は...前世の記憶がある分泣くことが極端に少ない。
だって見た目は赤ちゃんだが、精神年齢は成人男性なのだから照れもあって泣くのがね...。

あまりにもなく事が少なすぎて、専属医師の診察をよく受ける羽目にはなっている。

が、がよ!他の家族は何処に?!!不自由な手足をバタつかせて、僕は小さな頭をフル回転させていく。

すると、僕が起きたことに気付いた侍女の一人が僕をベビーベッドから抱き起こす。

「まぁ~、今日も"お嬢様"は元気ですね。」

そう言って僕を抱き上げると起きてドレッサーの前に座って身支度を整えていた母上の元に僕を連れていく。

「あら?起きていたの?やはりあなたは泣かないのね?先生は問題はないと言われていたけど...双子の姉に比べたらあまりなも泣かないから不安だわ。」

母上はそういいながら僕を侍女から受け取り物悲しげな表情で僕の顔を覗き込む。

僕は申し訳なさで必死に母上に向かって手を伸ばして"ごめんなさい"をアピールする。

母上は必死に伸ばす僕の手を優しく包み込み微笑む。

「そうだは、今日久しぶりにお兄ちゃんに会いましょうね。ようやく医師から許可が降りたから会えるわよ。」

母上の思いがけない言葉に僕は驚く。
どうやら僕達と会える人に関して専属医師が制限をかけているみたいなのだ。

なんで?と新たな疑問が湧き上がったがそれも直ぐに理由を知ることとなる。

僕が母上としばらく戯れていると部屋のドアがノックされた。

母上は侍女頭に合図を送り、侍女頭が部屋のドアを開けて確認をする。

すると...ドアの外には父上と一緒に数人の執事と兄上がいた。

侍女頭は母上をチラッと見て確認をとる。
母上は侍女頭に合図を送ると父上達に中に入るように促す。

父上はニコニコ顔で、兄上は...???父上のズボンを握りしめて少し不安そうな表情をしていた。

執事達は相変わらず無表情。さすがプロっといった感じだ。

父上は母上の腕の中に僕がいる事に気付いて兄上を促しながら近づいてくる。

母上はドレッサーの椅子から立ち上がり部屋の中にあるソファーへと移動する。
それに合わせて父上達もソファーへと向かう。

母上は僕を抱きしめたままソファーに腰をかけると直ぐ側まで父上と兄上はやってきた。

兄上はなんとも言えない表情をして父上のズボンにしがみつきながらチラチラと僕を見つめる。

その視線に僕はふと何かを思い出す。
(この視線...確か前にも感じたような??)

そんな事を思いながら久しぶりに会う兄上に視線を向けると父上は兄上に声をかける。

「ほら、やっと医師から許可が降りたんだ。しっかり顔をみないと?」

自分のズボンにしがみついて離れない兄上に僕の顔を見るように促す。

しかし、兄上は中々動かない。

すると母上が優しく兄上に声をかける。

「この子達もお兄ちゃんにすごく会いたかったみたいよ?」

母上の言葉にズボンにしがみついていた兄上は驚きの表情を浮かべて僕と母上を見つめる。

ちなみに僕も驚く。
(えっ?!母上ってエスパーなの?!それとも僕の考えが聞こえてるの??)

母上はなおも言葉を続ける。

「特にこの子はお兄ちゃんが恋しかったみたいよ。起きるたびに辺りをキョロキョロと見ているんですって。今日なんて手足をバタつかせていたぐらいだか。」

母上は別に僕達の念話が聞こえているわけでなく、日々の僕の様子を見て判断しているようだ。

さすが母上。僕は密かに母上に尊敬の眼差しを送った。

母上の言葉を聞いて兄上はボソッと呟く。
あまりにもその呟きは小さくて僕は聞き逃してしまったが、母上には聞こえていたみたいで優しく微笑みながら頷いていた。

父上も兄上の呟きが聞こえていたようで優しく兄上の背中を押して僕の方へ近づけるのだった。
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