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第一章 運命のはじまりと新たな出会い
1-4 2階のお部屋は
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ドラしゃんの横でお父さんは大きな口を開けて固まっているのをドラしゃんは不思議そうに見ていた。
私とお兄ちゃんは木のドラしゃんにしがみ付いたままお父さんに声をかけた。
「「どうしたの?」」
私達の声に返事はなく口を開けたまま顔をドラしゃんの方に向けたお父さん。
そんなお父さんにドラしゃんは"ああーっ"て顔をしたと思ったら笑顔で普通に話しかけた。
『こちらはお嬢様と坊っちゃまの御部屋です。少し地味目にしてますが内装は怪我をしない様に改装してあります。』
ドラしゃんの言葉に何から突っ込むべきか...または突っ込まない方がいいのかとお父さんは悩んでいたようだ。
なんとか口を閉じて考え抜いて1番気になった部分を聞いてみることにしたらしく
「あの...ベッドはなんですか?」
(ですよねぇ~。
私も以前のと違っていたから気にはなっていたよね。でもこっちの方がカッコいいのでよしとしていたんだ。)
『あれですか?この世界の御神木の一部を使って造ってあります。そのため疲れや病はすぐ消し去ります。あと安眠効果は世界一です。』
(はい?御神木?えっ?疲れや病はすぐ消える?温泉みたいな効能つき?)
突っ込みたいけど突っ込めない!そんなお父さんを無視してドラしゃんは話を続ける。
まるで何かのセールをするかのように...。
『御布団につきましては神様の羽毛を100%使用してありますので年中使えます。あれ1つで暑い日はヒンヤリとしますし、寒い日は暖かくなります。ちなみに洗う必要はありません。自然に綺麗になる仕組みにしてありますので。ああ、予備ももちろん御用意してあります。
床は元聖獣の毛を使用してありますのでふわふわのふかふかです。
この部屋の中で転んでも怪我はいっさいしません。特別に安全な仕様にしてありますので世界一安全な空間に仕上げてます。』
某通販番組の司会者も驚く様な内容ですよ。
ここは宝物庫なんでしょうか?お父さんの心の声は口に出してなくてもちゃんと伝わってくる。
子供部屋にしては豪華な仕様となっているからね。
しかしドラしゃん的にはもう少し色々としたかったらしく、これでもまだ足りないと言いたげな口振りをしている。
どうやらこれ以上手を加えるのは駄目だと神様に止められたらしく現状で妥協してくれたそうだ。
(神様グッジョブ!)
お父さんはもうパンクしかけていたが私達が嬉しそうに部屋の中で居る姿を見て悟りをひらいた様子。
他の所も確認するため気力を振り絞りお父さんは私達を呼び子供部屋をあとにした。
今度は反対側に向かって歩いて行く。
そこには花柄のカーテンがあり見覚えのあるものだった。
以前お母さんが模様替え様に作っていた物をそのまま利用してくれていた。
お父さんが嬉しそうにカーテンを触ると隙間から透明な円形の物が見えた。
どうやら窓のようで円形の真ん中に一直線に木枠が入っていた。
不思議そうに私とお兄ちゃんが窓を見ているとドラしゃんが窓の使い方を説明してくれたのでお父さんも一緒にドラしゃんの説明を聞く。
ドラしゃんは説明しながら実践して見せてくれた。
窓にある真ん中の線にドラしゃんが手を翳すと...線を中心にして外に向かって上下が開いた。
お父さんが尋ねる前にドラしゃんが建物の仕組みについて説明をしてくれた。
外観はこの世界の物を使用しているが内装は特別仕様となっていること。
原理はこの世界の物とたいして変わらないようにしていること。
この世界は基本魔力と魔石が必需品となること。
扉の様な大きな家具や器具には魔石を加工し埋め込み魔力を流し使用すること。
それ以外の小型の家具や器具類には魔石の粉のベールをかけているとのこと。
使用するにあたっては手を翳してイメージしながら魔力を流すだけでいいとのこと。
ただ私とお兄ちゃんはまだ使用できない様にしてあるというのだ。
しかし私達が今できるのは自分達の部屋の扉の開閉み。私とお兄ちゃんは不満そうな顔をするとそんな私達とは違ってお父さんの顔は晴れ晴れとしていた。
「なんて便利な世界だ。」
この話でずっと疑問に思っていた事が原因が分かりスッキリしたそうだ。
(よかったね。お父さん。)
『全ては魔力が必要です。魔力が強ければ強いほど魔石が無くてもある程度の事が出来る様になります。
ですからこの世界の人々は少なからずも魔力は持っております。』
ドラしゃんは窓を閉めながら話を続けていた。
『しかし御一家は元は別世界の方。
魔力もお持ちで無かったのですから使い方もわからないのが当然です。
この世界に来るにあたって神様より魔力等を授かっております。
少しずつまずは日常生活から魔力を使う事を覚えて慣れていかれたら宜しいかと思います。』
だからか。
何かをする度に何か起こる度に驚く私達を馬鹿にするとこなく対応をとってくれたのは。
お父さんは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
そんなお父さんの気持ちを察するかの様にドラしゃんはあえて触れずに次の場所の案内をした。
私とお兄ちゃんはそんな2人の様子を手を繋いだまま嬉しそうに見た。
「よかったね。」
お兄ちゃんは私にそっと囁いた。
私は答える様にお兄ちゃんの手を少し強く握る。
手を繋いだままお父さんとドラしゃん達の後ろを歩いていく。
すると何かの気配を私は感じた。
先程まで壁にしか見えなかった場所に大きな木の扉が現れていた。
気配のする方に私は顔を向けて歩みを止めるとお兄ちゃんが直ぐに気づいて一緒に歩みを止めた。
「どうした?リン。」
歩みを止めて一点を見つめる私にお兄ちゃんは不思議そうに声をかけてきた。
しかし私はその声に反応する事ができなかった。
だって、私を呼ぶ気配が気になって視線を外す事ができなかったからだ。
言葉はわからないが私を呼んでいるには間違いなかった。
その気配は弱々しいもので嫌な気配はいっさいしなかった。
そんな私達の異変に気づいたお父さんとドラしゃん。
お父さんは一点を見つめて動かない私の側に来て肩に手を置き声をかけた。
が、私は反応しなかった。
そんな私をドラしゃんは一瞬考え込む様な仕草をした。
そして私の左側に居たお兄ちゃんの上から私に声をかけてきた。
『何かきこえました?』
ドラしゃんには何かわかってる様だった。
私が見つめている先をお父さんも確認するとひときわ大きく頑丈な造りの扉があるのみだった。
扉にはドラしゃんに似たドラゴンの彫り物がしてあった。
お父さんはドラしゃんの顔を見てあの扉は何なのか質問した。
お父さんの問いにドラしゃんは珍しく顔を顰めた。
どう答えようか悩んでいた。
どれだけ時間が経ったのかわからない。
私を呼ぶ気配がすーっと消えたと同時にさっきまであった扉が消えたのだった。
私の体から少し力が抜けた。
そして、ふと左を向くとオロオロしたお兄ちゃんと難しい顔をしたドラしゃんが。
右を向くとドラしゃんの顔を真剣な顔で見つめるお父さんがいた。
そんな皆んなに向かって私は不思議そうに声をかけた。
「どうちたの?」
私の声に皆んなはっとして一気に私に詰め寄ってきた。
「大丈夫か?リン。」
「どうした?リン。何があったんだ?」
『お嬢様大丈夫ですか?』
あまりにも一気に詰め寄られ私はパニックになった。
「だいじょぶよ。わたし、よばれたの。
でもわからないの。きえたの。」
分かる範囲で答えた。
私が、無事な事を確認して3人は安堵の表情を浮かべた。
「あの部屋はまだのはずなのに...。」
私は何故かその言葉を口にしていた。
私の言葉にドラしゃんは、一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑顔に戻り頷いた。
急に現れた扉私の様子そしてまた急に扉が消えた。
ドラしゃんは何も教えてくれない。
私の反応がおかしかった。
お父さんは全てに対して不安で仕方がなかった為
「なんなんだ!あの扉は?頼む教えてくれ。以前の家にはなかったぞ!
娘達に危害が及ぶものならどうにかしてくれ。」
珍しく大声を上げるお父さんの声に私は驚き泣いてしまった。
お父さんは、慌てふためき急いで抱っこをして私をあやしだした。
お兄ちゃんもお父さんの足元で大丈夫だよ!って励ますよに声をかけてくれた。
「ごめんよ。大きな声をたして。
リンに怒ったんじゃ、ないからな?
泣き止んでくれないかい?」
さっきまでの怖い雰囲気が消えいつものお父さんに戻ったのを感じ私は少しずつ泣くのをやめた。
「おこじゃない?」
涙目で私は、お父さんを見つめて問いかけるとお父さんは一瞬悶えていた。
が、すぐに笑顔になりらウンウンと頷きながら私に答えてくれたので私は笑顔を向けた。
そのやりとりをドラしゃんはしばらく眺めてはぁーと溜息をついて、お父さんに向かって声をかけた。
『本当は、まだ先の事なのでお伝えするつもりはなかったのです。
しかし、いつこの様な事が起こるか分からないので、可能な範囲でお伝えします。』
真剣な顔つきでお父さんに向かって話すドラしゃん。
ドラしゃんの雰囲気でデレデレ顔になっていたお父さんの顔も真剣な顔付きに変わった。
私はまだ少しぐずりながらお父さんの腕の中からドラしゃんをみつめた。
『あの部屋は、神様のいる世界とこちらを繋ぐ特別な部屋の扉です。
そして、聖獣の卵を保管してある場所でもあります。
時が来たら自然にあの部屋の扉は出現し開くはずだったのです。
決してお嬢様方に害を及ぼす事はございません。
今はそれしかお伝えできません。』
ドラしゃんはそう語るとお父さんが何を聞いてもそれ以上あの部屋について語りはしなかった。
「本当にリン達に害は起きないのだな?」
お父さんは念を押す様に尋ねた。
ドラしゃんは真剣な表情でその問に頷くだけだった。
お父さんはまだ納得しきってはいなかったがこれ以上は無駄だと諦めた。
私はこの当時の記憶は朧げなものしか残っていなかった。
後にお兄ちゃんから昔の出来事を聞いて知った。
お兄ちゃんはあの時の事が鮮明に焼き付いて、中々忘れなかったと苦笑いしながら教えてくれた。
私のぐずりも落ち着いてきたので2階の残りを見て回った。
ソファーベットになるソファー。
その後ろにはベランダがあった。
洗濯を干せる様になっていた。
問題の扉が出現した壁の横にはガラス張りの部屋があった。
外から見た時はなかったはずだ。
外からは普通に丸太の木の壁にしか見えないが、実際はサンルーム風ウッドデッキだった。
以前の家にあったのがそのままの状態であった。
お母さんのこだわりの場所だ。
雨の日でも洗濯物が干せるし夜はこの部屋でパイプベッドを置いて夜空を見ながら過ごしていた。
パイプベッドはなかったが替わりにハンモックが置いてあった。
サンルーム風ウッドデッキの横の小さな扉2つはトイレと風呂になっていた。
トイレは水洗トイレだ。
いいのか?って疑問がわいたがドラしゃんが用意したのだからもんだないのだろう。
お風呂場は、.....空間無視。
檜風呂の大浴場だった。
しかもサウナ付きだ。
お父さんはもう慣れたのか驚きも小さくなった。
お風呂場を見ていたら私のお腹がクゥ~と音を立てた。
お腹が空いてきたのだった。
いつのまにか、お父さんの腕の中からドラしゃんの腕の中へ移動していた私は親指を咥えてドラしゃんをみつめた。
『下へ降りましょう。』
「「いぎなし。」」
ドラしゃんの意見にお父さんもお兄ちゃんも頷き風呂場を後にした。
(やった!勝った!)
私は、指を咥えたままほくそ笑んだ。
私達4人はお父さん達の寝室の前まで移動した。
そして、ドラしゃんはお父さんに早速魔力操作を実践させる事にした。
『旦那様。早速ですが、魔力を使って階段を出してみましょう。
何事も経験ですから。
やり方は、御教えしますので。』
ドラしゃんの提案にお父さんは頷き階段を出してみることにした。
『まず、魔力の出し方ですが目を瞑って集中してくださ。
体の中に、温かく渦を巻くものがあるはずです。
それを感じとって下さい。
分かりますか?』
ドラしゃんの指示に従ってお父さんは目を瞑った。
「あっ。これかなぁ?なんかあったかいのがある。」
お父さんがお腹の辺りに手を当てながらドラしゃんに話た。
『それが魔力です。
次に、床に降る階段をイメージしてみて下さい。
はっきりイメージが、できましたら、その魔力を床に流し込む様にして下さい。
大丈夫です。
失敗しても、私がいますから安心して力を使って下さい。』
ドラしゃんの力強い発言に背中を押され、お父さんは初めての魔力操作を行った。
《階段。階段。》
お父さんは、呟きながら床に階段をイメージしていた。
するとさっきまで木の床だった場所に、うっすらと下に向かって降りる階段が出てきたのだった。しかも手すり付き。
出てきた階段はしだいにはっきり形を保ち固定された。
『はい。もう大丈夫です。
目を開けて下さい。
初めてにしては上出来ですよ。』
ドラしゃんがそうお父さんに告げると
ゆっくりと目を開けて床を見つめていた。
お父さんが目を開けても出てきた階段は消えなかったのだった。
『慣れてきましたら目を瞑らなくてもできるようになります。
お疲れ様です。』
ドラしゃんはお父さんを励ます様に声を掛けた。
お父さんは照れながらも嬉しそうな顔をしていた。
そんな中私のお腹は空気を読まずにクゥ~とまたなり出すのだった。
その音を聞いてお父さんは急いでお兄ちゃんを抱き抱えた。
そしてお母さんの待つ1階に向かって順番に降りていったのだった。
私とお兄ちゃんは木のドラしゃんにしがみ付いたままお父さんに声をかけた。
「「どうしたの?」」
私達の声に返事はなく口を開けたまま顔をドラしゃんの方に向けたお父さん。
そんなお父さんにドラしゃんは"ああーっ"て顔をしたと思ったら笑顔で普通に話しかけた。
『こちらはお嬢様と坊っちゃまの御部屋です。少し地味目にしてますが内装は怪我をしない様に改装してあります。』
ドラしゃんの言葉に何から突っ込むべきか...または突っ込まない方がいいのかとお父さんは悩んでいたようだ。
なんとか口を閉じて考え抜いて1番気になった部分を聞いてみることにしたらしく
「あの...ベッドはなんですか?」
(ですよねぇ~。
私も以前のと違っていたから気にはなっていたよね。でもこっちの方がカッコいいのでよしとしていたんだ。)
『あれですか?この世界の御神木の一部を使って造ってあります。そのため疲れや病はすぐ消し去ります。あと安眠効果は世界一です。』
(はい?御神木?えっ?疲れや病はすぐ消える?温泉みたいな効能つき?)
突っ込みたいけど突っ込めない!そんなお父さんを無視してドラしゃんは話を続ける。
まるで何かのセールをするかのように...。
『御布団につきましては神様の羽毛を100%使用してありますので年中使えます。あれ1つで暑い日はヒンヤリとしますし、寒い日は暖かくなります。ちなみに洗う必要はありません。自然に綺麗になる仕組みにしてありますので。ああ、予備ももちろん御用意してあります。
床は元聖獣の毛を使用してありますのでふわふわのふかふかです。
この部屋の中で転んでも怪我はいっさいしません。特別に安全な仕様にしてありますので世界一安全な空間に仕上げてます。』
某通販番組の司会者も驚く様な内容ですよ。
ここは宝物庫なんでしょうか?お父さんの心の声は口に出してなくてもちゃんと伝わってくる。
子供部屋にしては豪華な仕様となっているからね。
しかしドラしゃん的にはもう少し色々としたかったらしく、これでもまだ足りないと言いたげな口振りをしている。
どうやらこれ以上手を加えるのは駄目だと神様に止められたらしく現状で妥協してくれたそうだ。
(神様グッジョブ!)
お父さんはもうパンクしかけていたが私達が嬉しそうに部屋の中で居る姿を見て悟りをひらいた様子。
他の所も確認するため気力を振り絞りお父さんは私達を呼び子供部屋をあとにした。
今度は反対側に向かって歩いて行く。
そこには花柄のカーテンがあり見覚えのあるものだった。
以前お母さんが模様替え様に作っていた物をそのまま利用してくれていた。
お父さんが嬉しそうにカーテンを触ると隙間から透明な円形の物が見えた。
どうやら窓のようで円形の真ん中に一直線に木枠が入っていた。
不思議そうに私とお兄ちゃんが窓を見ているとドラしゃんが窓の使い方を説明してくれたのでお父さんも一緒にドラしゃんの説明を聞く。
ドラしゃんは説明しながら実践して見せてくれた。
窓にある真ん中の線にドラしゃんが手を翳すと...線を中心にして外に向かって上下が開いた。
お父さんが尋ねる前にドラしゃんが建物の仕組みについて説明をしてくれた。
外観はこの世界の物を使用しているが内装は特別仕様となっていること。
原理はこの世界の物とたいして変わらないようにしていること。
この世界は基本魔力と魔石が必需品となること。
扉の様な大きな家具や器具には魔石を加工し埋め込み魔力を流し使用すること。
それ以外の小型の家具や器具類には魔石の粉のベールをかけているとのこと。
使用するにあたっては手を翳してイメージしながら魔力を流すだけでいいとのこと。
ただ私とお兄ちゃんはまだ使用できない様にしてあるというのだ。
しかし私達が今できるのは自分達の部屋の扉の開閉み。私とお兄ちゃんは不満そうな顔をするとそんな私達とは違ってお父さんの顔は晴れ晴れとしていた。
「なんて便利な世界だ。」
この話でずっと疑問に思っていた事が原因が分かりスッキリしたそうだ。
(よかったね。お父さん。)
『全ては魔力が必要です。魔力が強ければ強いほど魔石が無くてもある程度の事が出来る様になります。
ですからこの世界の人々は少なからずも魔力は持っております。』
ドラしゃんは窓を閉めながら話を続けていた。
『しかし御一家は元は別世界の方。
魔力もお持ちで無かったのですから使い方もわからないのが当然です。
この世界に来るにあたって神様より魔力等を授かっております。
少しずつまずは日常生活から魔力を使う事を覚えて慣れていかれたら宜しいかと思います。』
だからか。
何かをする度に何か起こる度に驚く私達を馬鹿にするとこなく対応をとってくれたのは。
お父さんは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
そんなお父さんの気持ちを察するかの様にドラしゃんはあえて触れずに次の場所の案内をした。
私とお兄ちゃんはそんな2人の様子を手を繋いだまま嬉しそうに見た。
「よかったね。」
お兄ちゃんは私にそっと囁いた。
私は答える様にお兄ちゃんの手を少し強く握る。
手を繋いだままお父さんとドラしゃん達の後ろを歩いていく。
すると何かの気配を私は感じた。
先程まで壁にしか見えなかった場所に大きな木の扉が現れていた。
気配のする方に私は顔を向けて歩みを止めるとお兄ちゃんが直ぐに気づいて一緒に歩みを止めた。
「どうした?リン。」
歩みを止めて一点を見つめる私にお兄ちゃんは不思議そうに声をかけてきた。
しかし私はその声に反応する事ができなかった。
だって、私を呼ぶ気配が気になって視線を外す事ができなかったからだ。
言葉はわからないが私を呼んでいるには間違いなかった。
その気配は弱々しいもので嫌な気配はいっさいしなかった。
そんな私達の異変に気づいたお父さんとドラしゃん。
お父さんは一点を見つめて動かない私の側に来て肩に手を置き声をかけた。
が、私は反応しなかった。
そんな私をドラしゃんは一瞬考え込む様な仕草をした。
そして私の左側に居たお兄ちゃんの上から私に声をかけてきた。
『何かきこえました?』
ドラしゃんには何かわかってる様だった。
私が見つめている先をお父さんも確認するとひときわ大きく頑丈な造りの扉があるのみだった。
扉にはドラしゃんに似たドラゴンの彫り物がしてあった。
お父さんはドラしゃんの顔を見てあの扉は何なのか質問した。
お父さんの問いにドラしゃんは珍しく顔を顰めた。
どう答えようか悩んでいた。
どれだけ時間が経ったのかわからない。
私を呼ぶ気配がすーっと消えたと同時にさっきまであった扉が消えたのだった。
私の体から少し力が抜けた。
そして、ふと左を向くとオロオロしたお兄ちゃんと難しい顔をしたドラしゃんが。
右を向くとドラしゃんの顔を真剣な顔で見つめるお父さんがいた。
そんな皆んなに向かって私は不思議そうに声をかけた。
「どうちたの?」
私の声に皆んなはっとして一気に私に詰め寄ってきた。
「大丈夫か?リン。」
「どうした?リン。何があったんだ?」
『お嬢様大丈夫ですか?』
あまりにも一気に詰め寄られ私はパニックになった。
「だいじょぶよ。わたし、よばれたの。
でもわからないの。きえたの。」
分かる範囲で答えた。
私が、無事な事を確認して3人は安堵の表情を浮かべた。
「あの部屋はまだのはずなのに...。」
私は何故かその言葉を口にしていた。
私の言葉にドラしゃんは、一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑顔に戻り頷いた。
急に現れた扉私の様子そしてまた急に扉が消えた。
ドラしゃんは何も教えてくれない。
私の反応がおかしかった。
お父さんは全てに対して不安で仕方がなかった為
「なんなんだ!あの扉は?頼む教えてくれ。以前の家にはなかったぞ!
娘達に危害が及ぶものならどうにかしてくれ。」
珍しく大声を上げるお父さんの声に私は驚き泣いてしまった。
お父さんは、慌てふためき急いで抱っこをして私をあやしだした。
お兄ちゃんもお父さんの足元で大丈夫だよ!って励ますよに声をかけてくれた。
「ごめんよ。大きな声をたして。
リンに怒ったんじゃ、ないからな?
泣き止んでくれないかい?」
さっきまでの怖い雰囲気が消えいつものお父さんに戻ったのを感じ私は少しずつ泣くのをやめた。
「おこじゃない?」
涙目で私は、お父さんを見つめて問いかけるとお父さんは一瞬悶えていた。
が、すぐに笑顔になりらウンウンと頷きながら私に答えてくれたので私は笑顔を向けた。
そのやりとりをドラしゃんはしばらく眺めてはぁーと溜息をついて、お父さんに向かって声をかけた。
『本当は、まだ先の事なのでお伝えするつもりはなかったのです。
しかし、いつこの様な事が起こるか分からないので、可能な範囲でお伝えします。』
真剣な顔つきでお父さんに向かって話すドラしゃん。
ドラしゃんの雰囲気でデレデレ顔になっていたお父さんの顔も真剣な顔付きに変わった。
私はまだ少しぐずりながらお父さんの腕の中からドラしゃんをみつめた。
『あの部屋は、神様のいる世界とこちらを繋ぐ特別な部屋の扉です。
そして、聖獣の卵を保管してある場所でもあります。
時が来たら自然にあの部屋の扉は出現し開くはずだったのです。
決してお嬢様方に害を及ぼす事はございません。
今はそれしかお伝えできません。』
ドラしゃんはそう語るとお父さんが何を聞いてもそれ以上あの部屋について語りはしなかった。
「本当にリン達に害は起きないのだな?」
お父さんは念を押す様に尋ねた。
ドラしゃんは真剣な表情でその問に頷くだけだった。
お父さんはまだ納得しきってはいなかったがこれ以上は無駄だと諦めた。
私はこの当時の記憶は朧げなものしか残っていなかった。
後にお兄ちゃんから昔の出来事を聞いて知った。
お兄ちゃんはあの時の事が鮮明に焼き付いて、中々忘れなかったと苦笑いしながら教えてくれた。
私のぐずりも落ち着いてきたので2階の残りを見て回った。
ソファーベットになるソファー。
その後ろにはベランダがあった。
洗濯を干せる様になっていた。
問題の扉が出現した壁の横にはガラス張りの部屋があった。
外から見た時はなかったはずだ。
外からは普通に丸太の木の壁にしか見えないが、実際はサンルーム風ウッドデッキだった。
以前の家にあったのがそのままの状態であった。
お母さんのこだわりの場所だ。
雨の日でも洗濯物が干せるし夜はこの部屋でパイプベッドを置いて夜空を見ながら過ごしていた。
パイプベッドはなかったが替わりにハンモックが置いてあった。
サンルーム風ウッドデッキの横の小さな扉2つはトイレと風呂になっていた。
トイレは水洗トイレだ。
いいのか?って疑問がわいたがドラしゃんが用意したのだからもんだないのだろう。
お風呂場は、.....空間無視。
檜風呂の大浴場だった。
しかもサウナ付きだ。
お父さんはもう慣れたのか驚きも小さくなった。
お風呂場を見ていたら私のお腹がクゥ~と音を立てた。
お腹が空いてきたのだった。
いつのまにか、お父さんの腕の中からドラしゃんの腕の中へ移動していた私は親指を咥えてドラしゃんをみつめた。
『下へ降りましょう。』
「「いぎなし。」」
ドラしゃんの意見にお父さんもお兄ちゃんも頷き風呂場を後にした。
(やった!勝った!)
私は、指を咥えたままほくそ笑んだ。
私達4人はお父さん達の寝室の前まで移動した。
そして、ドラしゃんはお父さんに早速魔力操作を実践させる事にした。
『旦那様。早速ですが、魔力を使って階段を出してみましょう。
何事も経験ですから。
やり方は、御教えしますので。』
ドラしゃんの提案にお父さんは頷き階段を出してみることにした。
『まず、魔力の出し方ですが目を瞑って集中してくださ。
体の中に、温かく渦を巻くものがあるはずです。
それを感じとって下さい。
分かりますか?』
ドラしゃんの指示に従ってお父さんは目を瞑った。
「あっ。これかなぁ?なんかあったかいのがある。」
お父さんがお腹の辺りに手を当てながらドラしゃんに話た。
『それが魔力です。
次に、床に降る階段をイメージしてみて下さい。
はっきりイメージが、できましたら、その魔力を床に流し込む様にして下さい。
大丈夫です。
失敗しても、私がいますから安心して力を使って下さい。』
ドラしゃんの力強い発言に背中を押され、お父さんは初めての魔力操作を行った。
《階段。階段。》
お父さんは、呟きながら床に階段をイメージしていた。
するとさっきまで木の床だった場所に、うっすらと下に向かって降りる階段が出てきたのだった。しかも手すり付き。
出てきた階段はしだいにはっきり形を保ち固定された。
『はい。もう大丈夫です。
目を開けて下さい。
初めてにしては上出来ですよ。』
ドラしゃんがそうお父さんに告げると
ゆっくりと目を開けて床を見つめていた。
お父さんが目を開けても出てきた階段は消えなかったのだった。
『慣れてきましたら目を瞑らなくてもできるようになります。
お疲れ様です。』
ドラしゃんはお父さんを励ます様に声を掛けた。
お父さんは照れながらも嬉しそうな顔をしていた。
そんな中私のお腹は空気を読まずにクゥ~とまたなり出すのだった。
その音を聞いてお父さんは急いでお兄ちゃんを抱き抱えた。
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雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
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