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第三章 発展〜街から小さな国へ〜
3-30 フェンリルの躾
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ロドじぃーちゃんに連れられて来たカブさん達の前には、とても不思議な光景が広がっていた。
完成したとてつもない広い放牧地の中で、2匹の犬?と戯れる私。
そして少し離れた木の木陰で固まって見ている動物達。
更にすぐ側で、頭を抱えながら見守る大人ふたり。
なんとも不思議な光景が広がっていたのだ。
特に、私と2匹とその他の温度差があまりにも違いすぎてシュールだったとロドじぃーちゃんが後になって教えてくれた。
ロドじぃーちゃんをはじめ、カブさん達大人陣はどう声を掛けようか悩んでいると。
そこは子供だ。
アサくんと2人の妹が1番先に声をかけたのだ。
この空気を読んでいるのか、読んでいないのか...。
はたまた、怖いもの知らずかわからないが、とりあえず子供達に任せる事にしたロドじぃーちゃん達。
「リン!スゲェーなぁー!これ、お前が建てたのか?」
「リンちゃん。可愛いね。その犬。」
「リンちゃん。私達にも触らせて。」
アサくん、ナナちゃん、サナちゃんに声をかけられて私は笑顔で手を振りながら答える。
「いいよ!あっちからはいってきて!ロドじぃーちゃん。みんなをあんないしてあげて!」
私はアサくん達の後ろに居る、ロドじぃーちゃんに声を掛けて皆をこっち側に連れて来るように伝えた。
私に声を掛けられたロドじぃーちゃんは、皆を小屋の入り口の方へ案内する。
ロドじぃーちゃん達が来た事に気付いたドラしゃんとラミィお兄ちゃんは、気を取り直して彼らを迎える事にした。
小屋の扉を開けて、中にカブさん達を招き入れ小屋の簡単な説明をしながらロドじぃーちゃんは歩いて来ていた。
カブさん達は、周りをキョロキョロ見回しながらゆっくり歩いている。
自分達が知る設備とは明らかに違うのだろう、ロドじぃーちゃんが説明をするたびに驚きの声をあげていた。
「一応、動物毎に寝床は分けてるみたいなんだわ。詳しい事はアイツらに聞いてくれ。」
そう言うと、前から歩いてくるドラしゃんとラミィお兄ちゃんの方を向いた。
ドラしゃんとラミィお兄ちゃんの姿を見たカブさん達は、少し気まずそうにした。
すると、アサくん達にせっつかれ腹を括った顔をして、ドラしゃん達に向きあって頭を下げる。
彼等の行動にドラしゃんとラミィお兄ちゃんは目を丸くした。
「先程はすみません。探るような行動をとって...。」
「俺たち。話し合って决めました。もう迷うのをやめて、ここの住人として暮らしていきます。」
「ですので、私達にできる事を教えて下さい。」
「ご迷惑をおかけするかと思いますが、よろしくお願いします。」
カブさん、モチさん、モアさん、ランさんが皆を代表して言葉を紡いだのだった。
彼等の言葉に、他の人達も"お願いします"と言う。
そんな彼等にドラしゃんは溜息を吐いた。
ドラしゃんの溜息を聞いて、彼らはダメかと思い手を強く握った時だった。
『何を勘違いされているのかわかりませんが、皆はとうにこの街の住人ですよ?
不思議な事を言われますね。まぁ~、この街を出たいと言うのであれば止めませんが、そんな気もないでしょ?
もちろんこの街に住むなら、それぞれ出来ることをしてもらいますよ。
迷惑など思った事ないですし、変な方達ですね。』
ドラしゃんの言葉に、拍子抜けした表情で顔を上げるカブさん達。
カブさん達が見たドラしゃんやラミィお兄ちゃんの顔は、怒った様子はなく穏やかだった。
『とりあえず、この小屋とあと隣接している納屋の説明をしますね。
ついて来てください。世話の仕方は、説明しなくても皆さんの方が詳しいと思いますので、お任せしますよ。』
そうドラしゃんは言うと、踵を返して小屋の説明をし出した。
カブさん達はしばらく、ぼーっとしていたが、ロドじぃーちゃんにせっつかれてドラしゃんの後を急いで追いかけた。
小屋の入り口付近では、ロドじぃーちゃんとラミィお兄ちゃんがその様子を見ていた。
「解決したようですね。」
ラミィお兄ちゃんは、ロドじぃーちゃんにそう呟いた。
「最後のシコリはのいたようだ。これで、アイツらも大丈夫だろう。」
ロドじぃーちゃんとラミィお兄ちゃんは、微笑しながら彼等の姿を眺めていた。
説明をしていくドラしゃんは、一つ一つ丁寧に教えていた。
ドラしゃんの言葉を聞き逃さないように、真剣な表情で話を聞くカブさん達。
ドラしゃんに対してまだ、遠慮がある様だが最初に比べたらまっしな距離感にはなっていた。
小屋の中の説明を終えて、私と2匹のフェンリルや動物達が居る放牧地へとやって来る。
『こちらから、動物を連れて外に出して下さい。広さは十分ありますので、ほぼ一日中外に放っていても問題はないかと思います。
どう世話をするかは、貴方がにお任せしますので、特にこちらから言う事はありません。
逆に、改善して欲しいことや世話をしていて必要なものが出て来ましたら、お知らせ下さい。直ぐに対応させて頂きますので。では、ごゆっくり確認して下さい。』
そう言って、ドラしゃんはカブさん達を放牧地へ連れ出す。
彼らは、実際に放牧地に入って言葉を失っていた。
アサくん達だけ別だった。
「スッゲー!めちゃくちゃ広いなぁー。」
「草もしっかり生えているわ。」
「あっちには花も!」
アサくん三兄妹は、放牧地を走りまわりだす。
さすが子供といったところだろう。どんな環境にも順応が早い。
そんな様子をロドじぃーちゃんやラミィお兄ちゃんは、のほほんと眺めていた。
ドラしゃんは、半ば呆れ顔。
カブさん達は、口をあんぐりっと開けて唖然とした様子。
「ガキはあーでなくっちゃ。」
「微笑ましいですね。」
『怪我をしても知りませんよ。私はそこまで面倒みませんから。』
「....。」
それぞれの反応が面白く、私は思わず笑ってしまった。
「ふふふっ。おもしろいね。」
私の姿を再確認した3人は、息を切らしながら駆け寄って来た。
「リン!凄いなぁー!」
「これならなんでも飼えちゃうね。」
「楽しみだわ。」
3人は笑顔で話してくれた。
そんな3人に、私も笑顔で答えた。
「よかった。あのね、たくさんどうぶつさんふやそうね。
あと、この子たちばんけんってやくわりできたけど、どうする?」
そう言って、2匹のフェンリルを3人に紹介した。
「小さくて、けが白いのが、おんなの子で、なまえが、ホワイト。
となりの大きくて、めのいろがちがう子が、おとこの子でゴールドだよ。」
2匹を紹介するし、アサくん達が触れようとした時だった。
『グッーゥ!!』
2匹はいきなり牙を剥き出しにして、唸り出したのだ。
アサくん達は、慌てて触れようとした手を引っ込めた。
「どうしての?なんで?」
私が慌てて2匹の頭を撫でると、先程の姿が嘘の様に、唸るのをやめて尻尾を振り出す。
私は何がなんだか分からず、ドラしゃんを見つめると、ドラしゃんが答えてくれた。
『ですから、お嬢様。先程も教えたと思いますが、その2匹は普通の犬ではありません。
【聖獣】のフェンリルです。契約主である、お嬢様以外には決して懐きません。
唸る程度で終わって良かったですよ。
下手をすれば、腕を噛みちかがられても文句は言えませんよ。』
ドラしゃんの言葉に私は勿論だが、その場にいた皆が、顔色を蒼白にして驚いた。
ロドじぃーちゃんとラミィお兄ちゃんは、知っていたのかドラしゃんの言葉に対して、"ウンウン"と首を縦に振る。
「こんなかわいいのに?」
私は目に涙を浮かべながらドラしゃんに確認するも、返ってくる返事は変わらなかった。
「じゃー俺達は触れないのか?」
アサくんの質問にドラしゃんが答えた。
『まず無理でしょう。まぁ~、その2匹が許せば可能だと思いますが...今は無理でしょうね。力もどればも回復していないので、赤子程度ですので本人達も警戒心が剥き出しですからね。
もう少し力も回復すれば...なんとかなるのでは?』
ドラしゃんの言葉に、ただ私達は2匹のフェンリルを見つめるしかなかった。
私とは普通なのに...。
「じぁーばんけんは?」
私はドラしゃんに恐る恐る確認すると。
『今の段階では難しいですね。もう少し、力が回復すれば問題ないかと。
その前に、この街で番犬は必要ないかと。こんな安全な街ですので。ね。』
ドラしゃんのその言葉で、カブさん達は頷いた。
この街の外の世界の生活環境を知る彼等にとって、この街がいかに安全かは身に染みてわかっていた。
「お嬢ちゃん。ありがたいけど、今の所は大丈夫だよ。
わしらで交代で、世話をするしこんだけ家から近ければ、何かあればわかるからね。」
カブさんは、未だ蒼白い顔をしたまま私に声をかけた。
その言葉に他の人も頷いた。アサくん達もだ。
「俺たちも、そいつらがもう少し大きくなったら触らせてもらうよ。」
アサくんの言葉に、ナナちゃんもナサちゃんも頷いた。
私は渋々承諾するしかなかった。
「とりあえずは、動物達の世話はカブじぃー達に任せて、お前さんはこの2匹の世話が新しい仕事だな。
これは、お前にしかできない事だから頼んだぜ。」
ロドじぃーちゃんが、代表で私を元気付ける様に励ましの言葉をくれた。
私は皆の顔をみた。
皆も同じ気持ちなのか、眼差しがそう告げていた。
「わかった。リンもがんばる。」
私はそう笑顔で返事をした。
私の笑顔を見て、皆ひと安心。
2匹のフェンリルを私に任せて、アサくん達を連れてドラしゃんは納屋の説明と動物達の所へ案内した。
「こまった子たちね。ダメよ。みんないいひとばかりなんだから。
きずつけたら、わたしおこるからね。」
私はそっと2匹のフェンリルに呟くと、2匹の耳と尻尾が垂れ下がる。
しょんぼりする姿も可愛くて負けそうになったが、このままではいけないと思い私はグッと堪えた。
「あのね。わたしのことをまもろうとするのはいいよ。
でもね、わたしにたいして、わるい人かそうでないかは、しっかりくべつしてね。
ちなみに、このまちにはいないよ。
いたら、ドラしゃんたちが、やっちゅけてくれるから。」
私が2匹のフェンリルに真剣な表情で、話しているのを離れた場所で、ドラしゃん達にしっかり見られていた。
「あれは、もしかしたらもしかするぞ。」
ロドじぃーちゃんは、ニヤニヤ笑っていた。
ラミィお兄ちゃんも、ニコニコ笑っていた。
そんな2人とは正反対に、ドラしゃんは渋い顔をしていた。
「何かするのか?リン?」
アサくんは、ロドじぃーちゃんの言葉が気になった。
そして、側にいたドラしゃんを見上げると、ドラしゃんは視線をアサくんの方へ下げた。
『まぁ~見ていて下さい。飛んだ奇跡を起こしますよ。』
ドラしゃんの言葉に首を傾げるアサくんと妹のナナちゃんとサナちゃん。
「じゃ。いくよ。ぜったい、さっきみたいなことしたら、わたし、きらいになるからね。」
私は2匹のフェンリルに言い聞かせて、皆がいる方へと2匹を連れて行ったのだ。
そして、アサくん達を呼び寄せた。
「アサくん。ナナちゃん、ナサちゃん。こっちきて。」
私の声に、アサくん達は一度ドラしゃんを見上げた。
すると、ドラしゃんは静かに頷いてので、3人は私と2匹のフェンリルの方へ向かって歩いてくる。
「アサくん、ナナちゃん、ナサちゃん、さっきはごめんね。ほらふたりとも!」
私は、私の後ろを耳と尻尾をしょんぼりと下げてついて来た2匹に声をかける。
2匹は私をチラッと横目で見たが、私の意志が変わらない事を気付き、3人の前にゆっくりと出てゆき、伏せの姿勢をとった。
3人と周りで見守っていたカブさん達は驚く。
「だいじょうぶだよ。なでてあげて。」
私はアサくん達にそう言うと、アサくん達は一瞬躊躇した。
しかし、私が笑顔で大丈夫って再度伝えると、3人はしゃがみ2匹をそっと撫でる。
今度は、2匹は3人に牙を剥いたり、唸ったりせずに大人しく伏せをしたまま。
その姿に驚きながらも、嬉しかったのか3人は撫でる回数を増やしていく。
流石に我慢ができなくなったのか、2匹は小さく唸り声をあげて、3人の手が止まった瞬間、私の後ろに逃げて来た。
そして、私に"我慢したよ。褒めて"と言わんばかりに、甘えた声を上げる。
「やっぱりこうなったか。」
「さすが、リンですね。」
『はぁー。こうなる事は目に見えてましたが、ここまでとは...。まぁ~、あくまでもあの3人のみでしょうね。彼等が、リン以外に触るのを許すのは。
あとは...旦那様と奥様。アキラ様ぐらいですね。』
ロドじぃーちゃん達の言葉に、カブさん達は驚きを通り越して、魂が飛びそうになっていた。
この出来事から、カブさん達の認識が少し変わった。
この街で1番凄いのは、"私"って認識になったのは後々大きくなって、昔話を皆でした時に知る事になるのだった。
リン:
困るよね。誰ばり唸ったりされたら。
ロドじぃーちゃん:
そうだろ?だからよ、リン。誰かさんにも、それ言ってくれよ!?
リン:
???ホワイトとゴールド以外にも、そんな事する子いるの?
ロドじぃーちゃん:
いるぞ。それも1人や2人でないからな。
困るんだよぉ~。
むやみやたらにガン付けたり、脅したり、圧をかけたり、毒を盛ろうとしたりよ。
ドラしゃん:
おや?なんの話をしてるんですか?
楽しそうですね(^o^)
ロドじぃーちゃん:
(O_O)...∑(゚Д゚)
ドラしゃん:
??何を楽しそうに話してたんですか?
誰が、なんですって?
あちらで、詳しくお話をお聞かせねがえますか?
ロドじぃーちゃん:
いや、いや~大丈夫だ。
気のせいだぞ。
なっ?リン!:(;゙゚'ω゚'):
リン:
なんかね、ホワイトやゴールドみたいに、唸る子がいるんだって!
誰か知ってる?ドラしゃん?
ドラしゃん:
そんな人が居るんですか?
そんなのを見つけたら、私がお仕置きしておきますから安心して下さいね^ ^
あっ、ロドムカは少しかりていきますね。
リン:
わかった!
ロドじぃーちゃんまたあとでね^ ^
皆さんも、またよろしくお願いします^ ^
完成したとてつもない広い放牧地の中で、2匹の犬?と戯れる私。
そして少し離れた木の木陰で固まって見ている動物達。
更にすぐ側で、頭を抱えながら見守る大人ふたり。
なんとも不思議な光景が広がっていたのだ。
特に、私と2匹とその他の温度差があまりにも違いすぎてシュールだったとロドじぃーちゃんが後になって教えてくれた。
ロドじぃーちゃんをはじめ、カブさん達大人陣はどう声を掛けようか悩んでいると。
そこは子供だ。
アサくんと2人の妹が1番先に声をかけたのだ。
この空気を読んでいるのか、読んでいないのか...。
はたまた、怖いもの知らずかわからないが、とりあえず子供達に任せる事にしたロドじぃーちゃん達。
「リン!スゲェーなぁー!これ、お前が建てたのか?」
「リンちゃん。可愛いね。その犬。」
「リンちゃん。私達にも触らせて。」
アサくん、ナナちゃん、サナちゃんに声をかけられて私は笑顔で手を振りながら答える。
「いいよ!あっちからはいってきて!ロドじぃーちゃん。みんなをあんないしてあげて!」
私はアサくん達の後ろに居る、ロドじぃーちゃんに声を掛けて皆をこっち側に連れて来るように伝えた。
私に声を掛けられたロドじぃーちゃんは、皆を小屋の入り口の方へ案内する。
ロドじぃーちゃん達が来た事に気付いたドラしゃんとラミィお兄ちゃんは、気を取り直して彼らを迎える事にした。
小屋の扉を開けて、中にカブさん達を招き入れ小屋の簡単な説明をしながらロドじぃーちゃんは歩いて来ていた。
カブさん達は、周りをキョロキョロ見回しながらゆっくり歩いている。
自分達が知る設備とは明らかに違うのだろう、ロドじぃーちゃんが説明をするたびに驚きの声をあげていた。
「一応、動物毎に寝床は分けてるみたいなんだわ。詳しい事はアイツらに聞いてくれ。」
そう言うと、前から歩いてくるドラしゃんとラミィお兄ちゃんの方を向いた。
ドラしゃんとラミィお兄ちゃんの姿を見たカブさん達は、少し気まずそうにした。
すると、アサくん達にせっつかれ腹を括った顔をして、ドラしゃん達に向きあって頭を下げる。
彼等の行動にドラしゃんとラミィお兄ちゃんは目を丸くした。
「先程はすみません。探るような行動をとって...。」
「俺たち。話し合って决めました。もう迷うのをやめて、ここの住人として暮らしていきます。」
「ですので、私達にできる事を教えて下さい。」
「ご迷惑をおかけするかと思いますが、よろしくお願いします。」
カブさん、モチさん、モアさん、ランさんが皆を代表して言葉を紡いだのだった。
彼等の言葉に、他の人達も"お願いします"と言う。
そんな彼等にドラしゃんは溜息を吐いた。
ドラしゃんの溜息を聞いて、彼らはダメかと思い手を強く握った時だった。
『何を勘違いされているのかわかりませんが、皆はとうにこの街の住人ですよ?
不思議な事を言われますね。まぁ~、この街を出たいと言うのであれば止めませんが、そんな気もないでしょ?
もちろんこの街に住むなら、それぞれ出来ることをしてもらいますよ。
迷惑など思った事ないですし、変な方達ですね。』
ドラしゃんの言葉に、拍子抜けした表情で顔を上げるカブさん達。
カブさん達が見たドラしゃんやラミィお兄ちゃんの顔は、怒った様子はなく穏やかだった。
『とりあえず、この小屋とあと隣接している納屋の説明をしますね。
ついて来てください。世話の仕方は、説明しなくても皆さんの方が詳しいと思いますので、お任せしますよ。』
そうドラしゃんは言うと、踵を返して小屋の説明をし出した。
カブさん達はしばらく、ぼーっとしていたが、ロドじぃーちゃんにせっつかれてドラしゃんの後を急いで追いかけた。
小屋の入り口付近では、ロドじぃーちゃんとラミィお兄ちゃんがその様子を見ていた。
「解決したようですね。」
ラミィお兄ちゃんは、ロドじぃーちゃんにそう呟いた。
「最後のシコリはのいたようだ。これで、アイツらも大丈夫だろう。」
ロドじぃーちゃんとラミィお兄ちゃんは、微笑しながら彼等の姿を眺めていた。
説明をしていくドラしゃんは、一つ一つ丁寧に教えていた。
ドラしゃんの言葉を聞き逃さないように、真剣な表情で話を聞くカブさん達。
ドラしゃんに対してまだ、遠慮がある様だが最初に比べたらまっしな距離感にはなっていた。
小屋の中の説明を終えて、私と2匹のフェンリルや動物達が居る放牧地へとやって来る。
『こちらから、動物を連れて外に出して下さい。広さは十分ありますので、ほぼ一日中外に放っていても問題はないかと思います。
どう世話をするかは、貴方がにお任せしますので、特にこちらから言う事はありません。
逆に、改善して欲しいことや世話をしていて必要なものが出て来ましたら、お知らせ下さい。直ぐに対応させて頂きますので。では、ごゆっくり確認して下さい。』
そう言って、ドラしゃんはカブさん達を放牧地へ連れ出す。
彼らは、実際に放牧地に入って言葉を失っていた。
アサくん達だけ別だった。
「スッゲー!めちゃくちゃ広いなぁー。」
「草もしっかり生えているわ。」
「あっちには花も!」
アサくん三兄妹は、放牧地を走りまわりだす。
さすが子供といったところだろう。どんな環境にも順応が早い。
そんな様子をロドじぃーちゃんやラミィお兄ちゃんは、のほほんと眺めていた。
ドラしゃんは、半ば呆れ顔。
カブさん達は、口をあんぐりっと開けて唖然とした様子。
「ガキはあーでなくっちゃ。」
「微笑ましいですね。」
『怪我をしても知りませんよ。私はそこまで面倒みませんから。』
「....。」
それぞれの反応が面白く、私は思わず笑ってしまった。
「ふふふっ。おもしろいね。」
私の姿を再確認した3人は、息を切らしながら駆け寄って来た。
「リン!凄いなぁー!」
「これならなんでも飼えちゃうね。」
「楽しみだわ。」
3人は笑顔で話してくれた。
そんな3人に、私も笑顔で答えた。
「よかった。あのね、たくさんどうぶつさんふやそうね。
あと、この子たちばんけんってやくわりできたけど、どうする?」
そう言って、2匹のフェンリルを3人に紹介した。
「小さくて、けが白いのが、おんなの子で、なまえが、ホワイト。
となりの大きくて、めのいろがちがう子が、おとこの子でゴールドだよ。」
2匹を紹介するし、アサくん達が触れようとした時だった。
『グッーゥ!!』
2匹はいきなり牙を剥き出しにして、唸り出したのだ。
アサくん達は、慌てて触れようとした手を引っ込めた。
「どうしての?なんで?」
私が慌てて2匹の頭を撫でると、先程の姿が嘘の様に、唸るのをやめて尻尾を振り出す。
私は何がなんだか分からず、ドラしゃんを見つめると、ドラしゃんが答えてくれた。
『ですから、お嬢様。先程も教えたと思いますが、その2匹は普通の犬ではありません。
【聖獣】のフェンリルです。契約主である、お嬢様以外には決して懐きません。
唸る程度で終わって良かったですよ。
下手をすれば、腕を噛みちかがられても文句は言えませんよ。』
ドラしゃんの言葉に私は勿論だが、その場にいた皆が、顔色を蒼白にして驚いた。
ロドじぃーちゃんとラミィお兄ちゃんは、知っていたのかドラしゃんの言葉に対して、"ウンウン"と首を縦に振る。
「こんなかわいいのに?」
私は目に涙を浮かべながらドラしゃんに確認するも、返ってくる返事は変わらなかった。
「じゃー俺達は触れないのか?」
アサくんの質問にドラしゃんが答えた。
『まず無理でしょう。まぁ~、その2匹が許せば可能だと思いますが...今は無理でしょうね。力もどればも回復していないので、赤子程度ですので本人達も警戒心が剥き出しですからね。
もう少し力も回復すれば...なんとかなるのでは?』
ドラしゃんの言葉に、ただ私達は2匹のフェンリルを見つめるしかなかった。
私とは普通なのに...。
「じぁーばんけんは?」
私はドラしゃんに恐る恐る確認すると。
『今の段階では難しいですね。もう少し、力が回復すれば問題ないかと。
その前に、この街で番犬は必要ないかと。こんな安全な街ですので。ね。』
ドラしゃんのその言葉で、カブさん達は頷いた。
この街の外の世界の生活環境を知る彼等にとって、この街がいかに安全かは身に染みてわかっていた。
「お嬢ちゃん。ありがたいけど、今の所は大丈夫だよ。
わしらで交代で、世話をするしこんだけ家から近ければ、何かあればわかるからね。」
カブさんは、未だ蒼白い顔をしたまま私に声をかけた。
その言葉に他の人も頷いた。アサくん達もだ。
「俺たちも、そいつらがもう少し大きくなったら触らせてもらうよ。」
アサくんの言葉に、ナナちゃんもナサちゃんも頷いた。
私は渋々承諾するしかなかった。
「とりあえずは、動物達の世話はカブじぃー達に任せて、お前さんはこの2匹の世話が新しい仕事だな。
これは、お前にしかできない事だから頼んだぜ。」
ロドじぃーちゃんが、代表で私を元気付ける様に励ましの言葉をくれた。
私は皆の顔をみた。
皆も同じ気持ちなのか、眼差しがそう告げていた。
「わかった。リンもがんばる。」
私はそう笑顔で返事をした。
私の笑顔を見て、皆ひと安心。
2匹のフェンリルを私に任せて、アサくん達を連れてドラしゃんは納屋の説明と動物達の所へ案内した。
「こまった子たちね。ダメよ。みんないいひとばかりなんだから。
きずつけたら、わたしおこるからね。」
私はそっと2匹のフェンリルに呟くと、2匹の耳と尻尾が垂れ下がる。
しょんぼりする姿も可愛くて負けそうになったが、このままではいけないと思い私はグッと堪えた。
「あのね。わたしのことをまもろうとするのはいいよ。
でもね、わたしにたいして、わるい人かそうでないかは、しっかりくべつしてね。
ちなみに、このまちにはいないよ。
いたら、ドラしゃんたちが、やっちゅけてくれるから。」
私が2匹のフェンリルに真剣な表情で、話しているのを離れた場所で、ドラしゃん達にしっかり見られていた。
「あれは、もしかしたらもしかするぞ。」
ロドじぃーちゃんは、ニヤニヤ笑っていた。
ラミィお兄ちゃんも、ニコニコ笑っていた。
そんな2人とは正反対に、ドラしゃんは渋い顔をしていた。
「何かするのか?リン?」
アサくんは、ロドじぃーちゃんの言葉が気になった。
そして、側にいたドラしゃんを見上げると、ドラしゃんは視線をアサくんの方へ下げた。
『まぁ~見ていて下さい。飛んだ奇跡を起こしますよ。』
ドラしゃんの言葉に首を傾げるアサくんと妹のナナちゃんとサナちゃん。
「じゃ。いくよ。ぜったい、さっきみたいなことしたら、わたし、きらいになるからね。」
私は2匹のフェンリルに言い聞かせて、皆がいる方へと2匹を連れて行ったのだ。
そして、アサくん達を呼び寄せた。
「アサくん。ナナちゃん、ナサちゃん。こっちきて。」
私の声に、アサくん達は一度ドラしゃんを見上げた。
すると、ドラしゃんは静かに頷いてので、3人は私と2匹のフェンリルの方へ向かって歩いてくる。
「アサくん、ナナちゃん、ナサちゃん、さっきはごめんね。ほらふたりとも!」
私は、私の後ろを耳と尻尾をしょんぼりと下げてついて来た2匹に声をかける。
2匹は私をチラッと横目で見たが、私の意志が変わらない事を気付き、3人の前にゆっくりと出てゆき、伏せの姿勢をとった。
3人と周りで見守っていたカブさん達は驚く。
「だいじょうぶだよ。なでてあげて。」
私はアサくん達にそう言うと、アサくん達は一瞬躊躇した。
しかし、私が笑顔で大丈夫って再度伝えると、3人はしゃがみ2匹をそっと撫でる。
今度は、2匹は3人に牙を剥いたり、唸ったりせずに大人しく伏せをしたまま。
その姿に驚きながらも、嬉しかったのか3人は撫でる回数を増やしていく。
流石に我慢ができなくなったのか、2匹は小さく唸り声をあげて、3人の手が止まった瞬間、私の後ろに逃げて来た。
そして、私に"我慢したよ。褒めて"と言わんばかりに、甘えた声を上げる。
「やっぱりこうなったか。」
「さすが、リンですね。」
『はぁー。こうなる事は目に見えてましたが、ここまでとは...。まぁ~、あくまでもあの3人のみでしょうね。彼等が、リン以外に触るのを許すのは。
あとは...旦那様と奥様。アキラ様ぐらいですね。』
ロドじぃーちゃん達の言葉に、カブさん達は驚きを通り越して、魂が飛びそうになっていた。
この出来事から、カブさん達の認識が少し変わった。
この街で1番凄いのは、"私"って認識になったのは後々大きくなって、昔話を皆でした時に知る事になるのだった。
リン:
困るよね。誰ばり唸ったりされたら。
ロドじぃーちゃん:
そうだろ?だからよ、リン。誰かさんにも、それ言ってくれよ!?
リン:
???ホワイトとゴールド以外にも、そんな事する子いるの?
ロドじぃーちゃん:
いるぞ。それも1人や2人でないからな。
困るんだよぉ~。
むやみやたらにガン付けたり、脅したり、圧をかけたり、毒を盛ろうとしたりよ。
ドラしゃん:
おや?なんの話をしてるんですか?
楽しそうですね(^o^)
ロドじぃーちゃん:
(O_O)...∑(゚Д゚)
ドラしゃん:
??何を楽しそうに話してたんですか?
誰が、なんですって?
あちらで、詳しくお話をお聞かせねがえますか?
ロドじぃーちゃん:
いや、いや~大丈夫だ。
気のせいだぞ。
なっ?リン!:(;゙゚'ω゚'):
リン:
なんかね、ホワイトやゴールドみたいに、唸る子がいるんだって!
誰か知ってる?ドラしゃん?
ドラしゃん:
そんな人が居るんですか?
そんなのを見つけたら、私がお仕置きしておきますから安心して下さいね^ ^
あっ、ロドムカは少しかりていきますね。
リン:
わかった!
ロドじぃーちゃんまたあとでね^ ^
皆さんも、またよろしくお願いします^ ^
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ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。
未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。
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異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
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日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
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酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
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こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
神様を育てることになりました
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死後の世界で転生待ちをしていた。誘導にしたがって進んでいたが、俺だけ神使に別の場所に案内された。そこには5人の男女がいた。俺が5人の側に行くと、俺達の前にいた神様から「これから君達にはこの神の卵を渡す。この卵を孵し立派な神に育てよ」と言われた。こうしてオレは神様を育てることになった。
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