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第75話 科学勇者、モテなくなる(一部例外を除く?)
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「……ねぇ、迅」
「……ん?何だよ、リディア?」
研究室へと続く王宮の通路で、リディアから急にかけられた声に、九条迅は少し驚いて答える。
「あなたの"神経加速"って魔法、あるじゃない?」
「おお!あれな!」
迅が声を弾ませる。
「あれは俺の中でも大分満足行く出来の魔法だぜ!お前もそう思うだろ?」
「……そうね。確かにあの魔法は素晴らしいわ。
──ただ…」
リディアがピンと人差し指を立てる。
「思ったんだけど、まだ"改良の余地"はあるんじゃないかしら?」
「ほう……!」
迅の眉がピクリと跳ね上がる。
「詳しく聞こうじゃねぇか……!」
(よし!食いついた!)
リディアが心の中でガッツポーズを取る。
彼女のミッションは、確実に進行していた。
◇◆◇
王国魔法士団の研究棟、その一角にある迅の研究室。
そこには、いつもの静けさとは違う異様な活気が漂っていた。
部屋の中央には、十数名の女性魔法士たちが集まっている。
全員が熱心にメモを取りながら、迅の話を聞いていた。
「今日は雷属性魔法について、ちょっと面白い応用を試してみようと思う。」
迅は白衣の袖をまくり、得意げに腕を組んだ。
「雷属性魔法ってのは、単に攻撃に使うだけじゃもったいない。神経と電気信号の関係を応用すれば、超人的な反応速度を実現することができるんだよ。」
「神経……? 反応速度……?」
女性魔法士たちは戸惑いながらも、興味深そうに聞き入る。
迅は研究机の上に置いていたノートを開き、魔力で光る線を描きながら説明を続ける。
「例えば、身体の動きってのは、脳からの指令が神経を伝って筋肉に届くことで成り立ってるわけだよな?」
「はい……?」
「でも、この伝達速度には限界がある。だから、俺たちがどれだけ鍛えても、“一瞬で反応する”ってことはできないわけだ。」
迅はニヤリと笑いながら指をパチンと鳴らした。
「でもな――もしも、神経の伝達速度を強制的に上げることができたら?」
「えっ……?」
「魔力で神経を刺激し、電気信号を加速すれば、人間の反応速度の限界を超えられるかもしれねぇってことさ。」
女性魔法士たちは、一瞬目を輝かせた。
「つまり……電撃を身体に流して、超反応を手に入れるってことですか?」
「そう! まさしくそれだ!」
迅は勢いよく頷く。
「俺が開発した”神経加速《ニューロ・ブースト》“を、さらに強化した魔法――“雷神経活性化(エレクトロ・ニューロブースト)“だ!」
「……それって……実験はもう成功してるんですか?」
「これからだ。」
「えっ!?」
女性魔法士たちは、一斉に硬直した。
迅はどこ吹く風で、腕を軽く回しながら、余裕たっぷりに続ける。
「まぁ、理論的には問題ない。神経の電気信号を強制的に増幅することで、動作速度が爆発的に向上するはずだ。副作用は……まぁ、軽い痺れとか?」
「……………」
「よし、さっそく試してみるか!」
「えっ、ちょ、勇者様! 実験台はどうするんですか!?」
「決まってるだろ。俺だ。」
「ええええええええっ!?!?!?」
女性魔法士たちが大騒ぎする間もなく、迅は手を上げた。
「《雷神経活性化(エレクトロ・ニューロブースト)》!!」
バチバチバチッ!!!
青白い雷が迅の全身を駆け巡る。
「ぐおおおおおおおおお!!??」
バチィィィィン!!
研究室に雷鳴が響き渡り、床に火花が散った。
「ちょっ……!? 勇者様、大丈夫ですか!?」
「お、おぉ……!?」
白目を剥きながらも、迅はガタガタと立ち上がる。
「すげぇ……!! なんか……動きが軽い……!!」
「ほんとに……?」
「うん、たぶん……たぶんな!」
「……勇者様、それって……」
「要するに、自分の体を電気でブーストすれば、限界の更に限界を超えた反応速度が得られるってことだ!」
「えっ、じゃあまたやるんですか……?」
「もちろん!」
迅は自信満々に胸を張った。
「もう一回試してみるか!」
「い…いや、もうやめた方が——」
「“雷神経活性化・強化版”!!」
バチバチバチバチバチバチッ!!!
「ギャアアアア!!??」
ドガァァァァン!!!
雷が爆ぜ、研究室の中に強烈な閃光が走る。
そして、白煙の中から現れたのは――
髪が逆立ち、顔が真っ黒に焦げた九条迅。
「ああ……刻が……見える……?」
「……ゆ、勇者様、大丈夫ですか!?」
「…………(シーン)」
パタリ、と迅が倒れ込む。
バチッ、バチバチッ……
彼の全身からは、まだ静電気が弾ける音がしている。
研究室はしんと静まり返った。
女性魔法士たちは顔を見合わせる。
「……これって、普通に危険なのでは?」
「た、たしかに、戦う姿にはシビれたけど……そういう意味の“シビれる”じゃないわ……」
「勇者様、やっぱりヤバい人だった!!」
「ちょ、ちょっと無理かも……!」
「そ、そろそろ帰らなきゃ……!」
女性魔法士たちは、一斉に研究室から逃げ出していった。
「……これよ。」
研究室の隅でその様子を見ていたリディアは、呆れた様子で、しかし、どこか安心したように微笑んだ。
(結局、ジンについていける女性なんて、私くらいなものなのよね。)
彼の優秀過ぎる頭脳と突飛な発想は、普通の人間には理解しがたい。
「まったく……本当にあなたって人は。」
リディアは呆れながらも、そっと微笑んだ。
◇◆◇
「——おい、勇者殿!何事じゃ!?」
その時、ロドリゲスが研究室に入ってきた。杖を片手に、慌てた様子でこちらを見回す。
その声に、迅はパチリと目を覚ます
「…………ハッ!夢を見ていた。感電する夢。」
「現実よ、それ。」
リディアがジト目でツッコむ。
「なんじゃこの焦げた匂いは!? お主、また何かヤバい実験でもしておったのか!?」
「“また”ってなんだよ。“また”って。」
迅が白衣をバサバサと振りながら、軽く抗議する。
「いや、普通に雷魔法の神経伝達強化の実験してただけだ。」
「……いや、聞いただけでも既に普通じゃないんじゃが?」
ロドリゲスはじっと迅を見つめた。
「待て、お主……神経伝達強化の実験……? 何を言っておるのじゃ?」
「だから、雷魔法を利用して神経の反応速度を更に高める方法を試してたんだよ。」
「いや、それはわかるが……どうやって?」
ロドリゲスが眉をひそめると、迅はあっさりと答えた。
「簡単だよ。俺は耐雷魔法を応用して、神経のミエリン鞘……絶縁物質を強化してるからな。理論上、電気の流れを高速化しても大丈夫なはずなんだよ。」
「……お、お主……まさか……」
ロドリゲスは顔を引きつらせた。
「……それって、"人体改造"……?」
「は? 何言ってんだ? 俺はただ、耐雷魔法で神経の通電性を強化してるだけだぞ?」
迅はキョトンとした顔で答える。
ロドリゲスの顔がみるみる青ざめていく。
「いや、それがすでに異常なんじゃが!!? 普通の人間は、神経の絶縁層を強化するなんてこと、やらんのじゃが!!?」
「……ん? そうか?」
迅は不思議そうに首をかしげる。
「科学的に考えれば、神経伝達速度を上げるなら神経の配線そのものを強化するのが一番効率的だろ? 実際、速筋の発火率が上がって、動作速度は向上してるし……」
「いや、そういう問題ではない!! お主、自分の神経構造を弄ることのヤバさがわかっとるのか!? 一歩間違えれば身体がショートして動かなくなるぞ!!」
「だから、理論上は大丈夫なはずなんだって。」
迅は自信満々に胸を張る。
「……『理論上』って言葉が一番危ないのじゃが。」
ロドリゲスは額を押さえながら、溜息をついた。
リディアも同じように額を押さえながら、深いため息をつく。
「……やっぱりジンって、思考が普通の人間じゃないのよね。」
「なんだよ、人聞きの悪い言い方するな。」
迅がぶすっと口を尖らせる。
「……それにしても、あの魔法士たちはどこに行ったのじゃ?」
ロドリゲスが辺りを見回しながら尋ねた。
「最初はここにいたようじゃが……」
「それなら……」
リディアが、研究室の入り口を指差す。
「全員、全力で逃げて行ったわよ。」
「……あー……」
迅は、ようやく事態を理解したようだった。
そんな彼の隣で、ロドリゲスは腕を組み、険しい顔で考え込んでいた。
「……しかし、これで勇者殿の評判はどうなるのじゃろうな。」
「評判?」
リディアが首を傾げると、ロドリゲスは眉をひそめながら続けた。
「王国騎士団の者たちや、貴族の娘たちの間でも、勇者殿の評判は急上昇しとる。カリム殿を破ったことで、その強さは誰もが認めるものとなった。」
「……ああ、それは確かに。」
リディアも納得する。
「だが、今の魔法士たちの反応を見るに、“勇者殿は規格外すぎて、普通の人間にはついていけん” という印象を与えた可能性もある。」
「……確かに。」
リディアも思い当たる節があった。
「……ということは?」
「勇者殿のもとに集まる女性は、これから本当に”常識外れ”な者ばかりになるやもしれん。」
ロドリゲスの言葉に、リディアの背筋が寒くなる。
「……ちょっと待って、それって逆に危険じゃない!?」
リディアの脳裏に、迅の思考速度に追いつき、ぶっ飛んだ発想を持つ女性が次々と現れる未来がよぎった。
(そ、そんなの、絶対にロクなことにならない!!)
「だ、大丈夫よね……? そんな人、そうそういるわけないし……」
「そう思うか?」
ロドリゲスはどこか意味深な笑みを浮かべる。
「世界は広いぞ。もし、勇者殿に匹敵するような”異端”が現れたら、どうなるのかのう?」
「…………。」
リディアは、無意識に迅の方を見た。
彼は、研究ノートを片手に、何事もなかったかのように次の実験の準備を進めている。
「……さぁ、次はもう少し高出力で試してみるか。」
「……やめて。」
リディアは即座に制止した。
こうして、異世界ハーレムの危機は、迅自身のヤバさによって無事に回避された……。
「……ん?何だよ、リディア?」
研究室へと続く王宮の通路で、リディアから急にかけられた声に、九条迅は少し驚いて答える。
「あなたの"神経加速"って魔法、あるじゃない?」
「おお!あれな!」
迅が声を弾ませる。
「あれは俺の中でも大分満足行く出来の魔法だぜ!お前もそう思うだろ?」
「……そうね。確かにあの魔法は素晴らしいわ。
──ただ…」
リディアがピンと人差し指を立てる。
「思ったんだけど、まだ"改良の余地"はあるんじゃないかしら?」
「ほう……!」
迅の眉がピクリと跳ね上がる。
「詳しく聞こうじゃねぇか……!」
(よし!食いついた!)
リディアが心の中でガッツポーズを取る。
彼女のミッションは、確実に進行していた。
◇◆◇
王国魔法士団の研究棟、その一角にある迅の研究室。
そこには、いつもの静けさとは違う異様な活気が漂っていた。
部屋の中央には、十数名の女性魔法士たちが集まっている。
全員が熱心にメモを取りながら、迅の話を聞いていた。
「今日は雷属性魔法について、ちょっと面白い応用を試してみようと思う。」
迅は白衣の袖をまくり、得意げに腕を組んだ。
「雷属性魔法ってのは、単に攻撃に使うだけじゃもったいない。神経と電気信号の関係を応用すれば、超人的な反応速度を実現することができるんだよ。」
「神経……? 反応速度……?」
女性魔法士たちは戸惑いながらも、興味深そうに聞き入る。
迅は研究机の上に置いていたノートを開き、魔力で光る線を描きながら説明を続ける。
「例えば、身体の動きってのは、脳からの指令が神経を伝って筋肉に届くことで成り立ってるわけだよな?」
「はい……?」
「でも、この伝達速度には限界がある。だから、俺たちがどれだけ鍛えても、“一瞬で反応する”ってことはできないわけだ。」
迅はニヤリと笑いながら指をパチンと鳴らした。
「でもな――もしも、神経の伝達速度を強制的に上げることができたら?」
「えっ……?」
「魔力で神経を刺激し、電気信号を加速すれば、人間の反応速度の限界を超えられるかもしれねぇってことさ。」
女性魔法士たちは、一瞬目を輝かせた。
「つまり……電撃を身体に流して、超反応を手に入れるってことですか?」
「そう! まさしくそれだ!」
迅は勢いよく頷く。
「俺が開発した”神経加速《ニューロ・ブースト》“を、さらに強化した魔法――“雷神経活性化(エレクトロ・ニューロブースト)“だ!」
「……それって……実験はもう成功してるんですか?」
「これからだ。」
「えっ!?」
女性魔法士たちは、一斉に硬直した。
迅はどこ吹く風で、腕を軽く回しながら、余裕たっぷりに続ける。
「まぁ、理論的には問題ない。神経の電気信号を強制的に増幅することで、動作速度が爆発的に向上するはずだ。副作用は……まぁ、軽い痺れとか?」
「……………」
「よし、さっそく試してみるか!」
「えっ、ちょ、勇者様! 実験台はどうするんですか!?」
「決まってるだろ。俺だ。」
「ええええええええっ!?!?!?」
女性魔法士たちが大騒ぎする間もなく、迅は手を上げた。
「《雷神経活性化(エレクトロ・ニューロブースト)》!!」
バチバチバチッ!!!
青白い雷が迅の全身を駆け巡る。
「ぐおおおおおおおおお!!??」
バチィィィィン!!
研究室に雷鳴が響き渡り、床に火花が散った。
「ちょっ……!? 勇者様、大丈夫ですか!?」
「お、おぉ……!?」
白目を剥きながらも、迅はガタガタと立ち上がる。
「すげぇ……!! なんか……動きが軽い……!!」
「ほんとに……?」
「うん、たぶん……たぶんな!」
「……勇者様、それって……」
「要するに、自分の体を電気でブーストすれば、限界の更に限界を超えた反応速度が得られるってことだ!」
「えっ、じゃあまたやるんですか……?」
「もちろん!」
迅は自信満々に胸を張った。
「もう一回試してみるか!」
「い…いや、もうやめた方が——」
「“雷神経活性化・強化版”!!」
バチバチバチバチバチバチッ!!!
「ギャアアアア!!??」
ドガァァァァン!!!
雷が爆ぜ、研究室の中に強烈な閃光が走る。
そして、白煙の中から現れたのは――
髪が逆立ち、顔が真っ黒に焦げた九条迅。
「ああ……刻が……見える……?」
「……ゆ、勇者様、大丈夫ですか!?」
「…………(シーン)」
パタリ、と迅が倒れ込む。
バチッ、バチバチッ……
彼の全身からは、まだ静電気が弾ける音がしている。
研究室はしんと静まり返った。
女性魔法士たちは顔を見合わせる。
「……これって、普通に危険なのでは?」
「た、たしかに、戦う姿にはシビれたけど……そういう意味の“シビれる”じゃないわ……」
「勇者様、やっぱりヤバい人だった!!」
「ちょ、ちょっと無理かも……!」
「そ、そろそろ帰らなきゃ……!」
女性魔法士たちは、一斉に研究室から逃げ出していった。
「……これよ。」
研究室の隅でその様子を見ていたリディアは、呆れた様子で、しかし、どこか安心したように微笑んだ。
(結局、ジンについていける女性なんて、私くらいなものなのよね。)
彼の優秀過ぎる頭脳と突飛な発想は、普通の人間には理解しがたい。
「まったく……本当にあなたって人は。」
リディアは呆れながらも、そっと微笑んだ。
◇◆◇
「——おい、勇者殿!何事じゃ!?」
その時、ロドリゲスが研究室に入ってきた。杖を片手に、慌てた様子でこちらを見回す。
その声に、迅はパチリと目を覚ます
「…………ハッ!夢を見ていた。感電する夢。」
「現実よ、それ。」
リディアがジト目でツッコむ。
「なんじゃこの焦げた匂いは!? お主、また何かヤバい実験でもしておったのか!?」
「“また”ってなんだよ。“また”って。」
迅が白衣をバサバサと振りながら、軽く抗議する。
「いや、普通に雷魔法の神経伝達強化の実験してただけだ。」
「……いや、聞いただけでも既に普通じゃないんじゃが?」
ロドリゲスはじっと迅を見つめた。
「待て、お主……神経伝達強化の実験……? 何を言っておるのじゃ?」
「だから、雷魔法を利用して神経の反応速度を更に高める方法を試してたんだよ。」
「いや、それはわかるが……どうやって?」
ロドリゲスが眉をひそめると、迅はあっさりと答えた。
「簡単だよ。俺は耐雷魔法を応用して、神経のミエリン鞘……絶縁物質を強化してるからな。理論上、電気の流れを高速化しても大丈夫なはずなんだよ。」
「……お、お主……まさか……」
ロドリゲスは顔を引きつらせた。
「……それって、"人体改造"……?」
「は? 何言ってんだ? 俺はただ、耐雷魔法で神経の通電性を強化してるだけだぞ?」
迅はキョトンとした顔で答える。
ロドリゲスの顔がみるみる青ざめていく。
「いや、それがすでに異常なんじゃが!!? 普通の人間は、神経の絶縁層を強化するなんてこと、やらんのじゃが!!?」
「……ん? そうか?」
迅は不思議そうに首をかしげる。
「科学的に考えれば、神経伝達速度を上げるなら神経の配線そのものを強化するのが一番効率的だろ? 実際、速筋の発火率が上がって、動作速度は向上してるし……」
「いや、そういう問題ではない!! お主、自分の神経構造を弄ることのヤバさがわかっとるのか!? 一歩間違えれば身体がショートして動かなくなるぞ!!」
「だから、理論上は大丈夫なはずなんだって。」
迅は自信満々に胸を張る。
「……『理論上』って言葉が一番危ないのじゃが。」
ロドリゲスは額を押さえながら、溜息をついた。
リディアも同じように額を押さえながら、深いため息をつく。
「……やっぱりジンって、思考が普通の人間じゃないのよね。」
「なんだよ、人聞きの悪い言い方するな。」
迅がぶすっと口を尖らせる。
「……それにしても、あの魔法士たちはどこに行ったのじゃ?」
ロドリゲスが辺りを見回しながら尋ねた。
「最初はここにいたようじゃが……」
「それなら……」
リディアが、研究室の入り口を指差す。
「全員、全力で逃げて行ったわよ。」
「……あー……」
迅は、ようやく事態を理解したようだった。
そんな彼の隣で、ロドリゲスは腕を組み、険しい顔で考え込んでいた。
「……しかし、これで勇者殿の評判はどうなるのじゃろうな。」
「評判?」
リディアが首を傾げると、ロドリゲスは眉をひそめながら続けた。
「王国騎士団の者たちや、貴族の娘たちの間でも、勇者殿の評判は急上昇しとる。カリム殿を破ったことで、その強さは誰もが認めるものとなった。」
「……ああ、それは確かに。」
リディアも納得する。
「だが、今の魔法士たちの反応を見るに、“勇者殿は規格外すぎて、普通の人間にはついていけん” という印象を与えた可能性もある。」
「……確かに。」
リディアも思い当たる節があった。
「……ということは?」
「勇者殿のもとに集まる女性は、これから本当に”常識外れ”な者ばかりになるやもしれん。」
ロドリゲスの言葉に、リディアの背筋が寒くなる。
「……ちょっと待って、それって逆に危険じゃない!?」
リディアの脳裏に、迅の思考速度に追いつき、ぶっ飛んだ発想を持つ女性が次々と現れる未来がよぎった。
(そ、そんなの、絶対にロクなことにならない!!)
「だ、大丈夫よね……? そんな人、そうそういるわけないし……」
「そう思うか?」
ロドリゲスはどこか意味深な笑みを浮かべる。
「世界は広いぞ。もし、勇者殿に匹敵するような”異端”が現れたら、どうなるのかのう?」
「…………。」
リディアは、無意識に迅の方を見た。
彼は、研究ノートを片手に、何事もなかったかのように次の実験の準備を進めている。
「……さぁ、次はもう少し高出力で試してみるか。」
「……やめて。」
リディアは即座に制止した。
こうして、異世界ハーレムの危機は、迅自身のヤバさによって無事に回避された……。
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