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第83話 迫る危機――"銀嶺の誓い"を追え
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「……嫌な予感がする。」
唐突に発せられた迅の言葉に、リディア、カリム、ロドリゲスの三人が彼の方を振り向いた。
迅はキャンプの端に立ち、険しい表情で地面に視線を落としていた。
まるで、この場に存在しない何かを見つめているような、そんな目だった。
「どうしたの?」
リディアが問う。
「"銀嶺の誓い"だよ。……アイツら、ひょっとしたらやばいかもしれねぇ。」
迅の声には、焦りはないが、確信めいた硬さがあった。彼の頭の中では、これまでの情報が一瞬で整理され、一つの結論にたどり着いていた。
「ふむ……"銀嶺の誓い"の三人じゃな……」
ロドリゲスが顎に手を添えながら静かに言う。
「見たところ、あやつらの実力は相当なものじゃ。並の魔術師や戦士では太刀打ちできんほどにはな。しかし、それがどうしたのじゃ?」
「そもそも、この件に魔王軍が関わってるのは間違いない。」
迅は続ける。
「犠牲になった兵士や冒険者の死因、遺体の不可解な少なさ、そして……アーク・ゲオルグが以前、デルヴァ村の村人を攫って行った遺跡が、まさにこの近くにあること。」
その名前を聞いた瞬間、カリムの表情がわずかに引き締まる。
以前の戦いで、彼はアークと直接対峙していなかったが、その恐ろしさは十分に理解していた。
「もしアークが絡んでいるなら、“銀嶺の誓い”の三人もただじゃ済まないかもしれない。」
迅は腕を組み、思考を巡らせながら続ける。
「冒険者としては凄腕かもしれないが、アイツらは”未知の敵”を想定して動いていない。
アークのように、普通の常識から逸脱した敵がいた場合……手も足も出ない可能性がある。」
「しかし……アークはすでに立ち去ったはずじゃろう?」
ロドリゲスが眉をひそめる。
「あの男がわざわざまた現れるかのう?」
「それがわからないんだよなぁ。」
迅は目を細める。
「ただ、“アークの技術”を使った誰かが、まだ遺跡で実験を継続している!って線もあるからな。」
「なるほどのう……」
ロドリゲスは長い髭を撫でながら、考え込むように呟いた。
「確かに、あやつは我々の前から姿を消したが、あの遺跡には何やら企みがあった様子じゃった。ふむ……」
「それに、アイツらを見捨てるわけにもいかないだろ。」
迅は、ちらりとリディアを見やる。
「お前もそう思うだろ?」
リディアは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに微笑みながら頷いた。
「……そうね。あの人たちは、なんか……イヤな感じではあったけど、死なせるには惜しい腕を持っているわ。」
「うむ、ならば話は早い。」
ロドリゲスが頷いた。
「さっさと遺跡へ向かうとするかの。」
「行くか、勇者殿!」
カリムが拳を握りしめる。
迅は頷き、全員の視線がひとつの方向――アル=ゼオス魔導遺跡へと向けられた。
◇◆◇
夜の帳が下り、月光に照らされた"アル=ゼオス魔導遺跡"が、静寂の中に佇んでいる。
風が遺跡の石壁をかすめ、不気味な響きを奏でていた。古代文字が刻まれた石造りの扉は半ば崩れ、まるで奈落へと続く口を開けたかのように、闇が広がっている。
エリナ・ヴァイスハルトは、凛とした表情で遺跡を見据え、剣の柄を握りしめた。
「……間違いありませんわね。ここに”何か”がある……」
彼女の言葉に、ミィシャ・フェルカスは鼻を鳴らし、しっぽを揺らしながら腕を組む。
「……にゃ~んか、イヤな感じがするぜ。こういう場所、ロクなもんがねぇんだよ」
ライネル・フロストは魔法灯をかざし、魔力の流れを探るように静かに目を閉じた。
「……この遺跡、内部の魔力が妙に不安定だ。まるで“流動”しているみたいだな……普通の古代遺跡とは違う」
エリナは静かに息を吐き、真紅の鎧の上から胸元を押さえた。
この遺跡に囚われているかもしれない仲間たち……彼らの多くは”銀嶺の誓い”より下の位階の冒険者たちだったが、それでも同じギルドに属する者たちだ。
「彼らを見捨てるわけにはいきませんわね……」
自分たちは”白銀級”。
この国において、冒険者の最高位に属する、王国の軍将校と同等の権限を持つ者たち。
ならば、自らの手で、仲間を救い出さなければならない。
「……私たちが、やらねばなりませんわ」
その言葉に、ミィシャは耳をピクンと動かし、「ああ、さっさと終わらせるか」と軽く肩を回した。
ライネルも静かに頷くと、「気を引き締めていこう。慎重にね」と短く言葉を添えた。
覚悟を決めた3人は、ゆっくりと遺跡の闇の中へと足を踏み入れた。
唐突に発せられた迅の言葉に、リディア、カリム、ロドリゲスの三人が彼の方を振り向いた。
迅はキャンプの端に立ち、険しい表情で地面に視線を落としていた。
まるで、この場に存在しない何かを見つめているような、そんな目だった。
「どうしたの?」
リディアが問う。
「"銀嶺の誓い"だよ。……アイツら、ひょっとしたらやばいかもしれねぇ。」
迅の声には、焦りはないが、確信めいた硬さがあった。彼の頭の中では、これまでの情報が一瞬で整理され、一つの結論にたどり着いていた。
「ふむ……"銀嶺の誓い"の三人じゃな……」
ロドリゲスが顎に手を添えながら静かに言う。
「見たところ、あやつらの実力は相当なものじゃ。並の魔術師や戦士では太刀打ちできんほどにはな。しかし、それがどうしたのじゃ?」
「そもそも、この件に魔王軍が関わってるのは間違いない。」
迅は続ける。
「犠牲になった兵士や冒険者の死因、遺体の不可解な少なさ、そして……アーク・ゲオルグが以前、デルヴァ村の村人を攫って行った遺跡が、まさにこの近くにあること。」
その名前を聞いた瞬間、カリムの表情がわずかに引き締まる。
以前の戦いで、彼はアークと直接対峙していなかったが、その恐ろしさは十分に理解していた。
「もしアークが絡んでいるなら、“銀嶺の誓い”の三人もただじゃ済まないかもしれない。」
迅は腕を組み、思考を巡らせながら続ける。
「冒険者としては凄腕かもしれないが、アイツらは”未知の敵”を想定して動いていない。
アークのように、普通の常識から逸脱した敵がいた場合……手も足も出ない可能性がある。」
「しかし……アークはすでに立ち去ったはずじゃろう?」
ロドリゲスが眉をひそめる。
「あの男がわざわざまた現れるかのう?」
「それがわからないんだよなぁ。」
迅は目を細める。
「ただ、“アークの技術”を使った誰かが、まだ遺跡で実験を継続している!って線もあるからな。」
「なるほどのう……」
ロドリゲスは長い髭を撫でながら、考え込むように呟いた。
「確かに、あやつは我々の前から姿を消したが、あの遺跡には何やら企みがあった様子じゃった。ふむ……」
「それに、アイツらを見捨てるわけにもいかないだろ。」
迅は、ちらりとリディアを見やる。
「お前もそう思うだろ?」
リディアは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに微笑みながら頷いた。
「……そうね。あの人たちは、なんか……イヤな感じではあったけど、死なせるには惜しい腕を持っているわ。」
「うむ、ならば話は早い。」
ロドリゲスが頷いた。
「さっさと遺跡へ向かうとするかの。」
「行くか、勇者殿!」
カリムが拳を握りしめる。
迅は頷き、全員の視線がひとつの方向――アル=ゼオス魔導遺跡へと向けられた。
◇◆◇
夜の帳が下り、月光に照らされた"アル=ゼオス魔導遺跡"が、静寂の中に佇んでいる。
風が遺跡の石壁をかすめ、不気味な響きを奏でていた。古代文字が刻まれた石造りの扉は半ば崩れ、まるで奈落へと続く口を開けたかのように、闇が広がっている。
エリナ・ヴァイスハルトは、凛とした表情で遺跡を見据え、剣の柄を握りしめた。
「……間違いありませんわね。ここに”何か”がある……」
彼女の言葉に、ミィシャ・フェルカスは鼻を鳴らし、しっぽを揺らしながら腕を組む。
「……にゃ~んか、イヤな感じがするぜ。こういう場所、ロクなもんがねぇんだよ」
ライネル・フロストは魔法灯をかざし、魔力の流れを探るように静かに目を閉じた。
「……この遺跡、内部の魔力が妙に不安定だ。まるで“流動”しているみたいだな……普通の古代遺跡とは違う」
エリナは静かに息を吐き、真紅の鎧の上から胸元を押さえた。
この遺跡に囚われているかもしれない仲間たち……彼らの多くは”銀嶺の誓い”より下の位階の冒険者たちだったが、それでも同じギルドに属する者たちだ。
「彼らを見捨てるわけにはいきませんわね……」
自分たちは”白銀級”。
この国において、冒険者の最高位に属する、王国の軍将校と同等の権限を持つ者たち。
ならば、自らの手で、仲間を救い出さなければならない。
「……私たちが、やらねばなりませんわ」
その言葉に、ミィシャは耳をピクンと動かし、「ああ、さっさと終わらせるか」と軽く肩を回した。
ライネルも静かに頷くと、「気を引き締めていこう。慎重にね」と短く言葉を添えた。
覚悟を決めた3人は、ゆっくりと遺跡の闇の中へと足を踏み入れた。
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