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第122話 魔力が照らす、未知の病
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静寂が支配していた。
セラフィーナ王妃の病室は、外界から隔絶されたように静まり返っている。魔法障壁が張られた部屋の空気はひんやりとしており、薬草の香りがほのかに漂っていた。
それなのに——迅の心臓は、ひどく煩わしいほどに脈打っていた。
(……こんなはずじゃなかった。)
診察をする。それだけのことだ。
なのに、今も手のひらがじんわりと汗ばんでいるのがわかった。
呼吸が乱れ、思考の流れが不規則に乱れていく。
頭の奥で、今にも崩れそうな記憶の扉が不穏に軋む。
(今は過去を思い出してる場合じゃない……目の前の患者を診るんだ……)
そう、わかっている。
なのに、喉の奥に張り付いたような違和感が消えない。
「……迅?」
リディアの声が、まるで冷たい水を浴びせるように響いた。
迅は小さく息を呑む。
リディアの瞳が、自分をまっすぐに見つめていた。
その表情には、明らかに不安の色が滲んでいる。
(……くそ、ダメだ。このままじゃ……)
乱れた思考を振り払うように、迅は拳を握りしめた。
——そして。
パァンッ!
鋭い音が、部屋の静寂を破った。
迅は勢いよく 自分の頬を両手で叩く。
バチンと強く打ちつけた頬がじんじんと熱を持つ。
視界の端でリディアが 「えっ!?」 と小さく声を上げるのが聞こえた。
「……よし、頭冷えた!」
迅は軽く首を回し、肩をひとつ鳴らして息を吐いた。
——冷静になれ、九条迅《くじょうじん》。
お前は医者じゃない。だが、今ここで考えを止めるのは間違いなく悪手だ。
“勇者”の役目は、ただ剣を振るうことだけじゃない。
迅は再び王妃を見やる。
彼女は、かすかに驚いたような表情をしていたが、すぐに穏やかに微笑んだ。
その微笑みを見て、迅の心はわずかに落ち着いた。
もう迷っている場合じゃない。
「……調理場から、沸かしたお湯と塩、それに秤を持ってきてくれ。」
迅はメイドに向かってそう告げる。
メイドは一瞬戸惑ったようにまばたきをした。
「えっ……?」
「早く。」
低く、だがはっきりとした迅の声に、メイドは反射的に頷く。
「わ、わかりました!」
彼女は慌てて部屋を出ていった。
「……病状に心当たりはあるが、まだ確証がない。本格的な検査をするなら準備がいる。」
迅は、フィリオスの方へ視線を向ける。
王子の小さな拳は強く握りしめられていた。
だが、その瞳は迷いなく迅を見つめている。
「お願いします!」
迷いのない声だった。
迅は短く頷き、再び王妃の方へ向き直った。
◇◆◇
ベッドの上のセラフィーナ王妃は、静かに迅を見つめていた。
その姿は、どこまでも穏やかで——
それでいて、ひどく儚い。
この女性が王妃であることを忘れてしまいそうになるほど、その笑みは母親のようだった。
「王妃様……少し、お身体の中に"薬"を直接注入したいのですが、大丈夫ですか?」
迅の言葉に、部屋の空気が凍りつく。
「……何を仰るのですか!?」
即座にメイドが声を上げた。
明らかに動揺し、険しい表情で迅を睨む。
「王妃様の身体にそのようなこと、許可できるはずがありません!」
怒りすら滲ませたその声に、迅は冷静に返す。
「王妃様の命がかかっています。今の段階で 正確な診断 ができなければ、適切な治療もできません。」
迅の言葉に、メイドは歯を食いしばる。
そのとき——
「勇者様。」
静かな、しかし凛とした声が部屋に響いた。
セラフィーナ王妃が、穏やかな微笑みをたたえたまま、静かに言葉を紡ぐ。
「それが必要だと考えていらっしゃるのね?」
迅は彼女の視線を真っ直ぐに受け止めた。
「……少しでも、正確なことを知るためには。」
その言葉に、セラフィーナはふっと目を細めた。
まるで、すべてを理解しているかのように——
それとも、初めから迅を信じるつもりだったかのように。
「貴方のことを信じるわ。お願いします。」
その瞬間、メイドの表情が揺らぐ。
「……王妃様……!」
メイドは食い下がるように言うが、セラフィーナは静かに首を振った。
「貴女の気持ちは嬉しいわ。でも、大丈夫よ。」
その穏やかな笑顔に、メイドは反論の言葉を飲み込むしかなかった。
——そうして、セラフィーナ王妃の “許可” が下りた。
迅は静かに息を吸い込む。
ここからが、本当の診察の始まりだ。
◇◆◇
セラフィーナ王妃の寝室に、張り詰めた空気が流れる。
メイドが持ってきた銀盆の上には、沸かした湯、塩、秤が整然と置かれていた。
湯気が立ち上るそれを見つめながら、迅は深く息を吸い込む。
(ここからは、俺の領域だ。)
戦場で剣を振るうのではなく、未知の病を解き明かす。
異世界の常識に縛られず、科学と魔法の融合によって“答え”を導き出す。
そのために——迅は、手を止めるわけにはいかなかった。
迅は 秤 に塩を乗せ、慎重に計測する。
分量を間違えれば、人体に与える影響が変わる。
「……1リットルに9グラム……」
迅は小さく呟きながら、測った塩を 湯 に静かに溶かす。
塩がゆっくりと水中に広がり、透明な液体が少しずつ均一になっていく。
やがて、銀盆の中には 即席の生理食塩水 が完成していた。
リディアが興味深そうに覗き込む。
「ただの塩水……じゃないのよね?」
迅は短く頷く。
「人間の血液の塩分濃度とほぼ等しい液体だ。体内に入れても拒絶反応を起こさず、血流に負担をかけずに馴染む。」
「要するに——“血の代用品” だ。」
リディアが小さく目を見開く。
しかし、すぐに理解し、納得したように頷いた。
「なるほど……。異物じゃなく、血液に溶け込むものだから、体に無理なく使えるのね。」
(相変わらず、説明の飲み込みが早ぇな。)
やはり、リディアは優秀だ。
迅が言葉を選びながら伝えれば、彼女は的確にそれを吸収していく。
そのことに、迅はわずかに安堵を覚えた。
生理食塩水の準備が整った。
次に、これを“診断のためのツール”に変える。
迅は 手のひらをかざし、微弱な魔力を食塩水へと流し込む。
——パァァァ……
淡い光が液体の中に広がる。
リディアが息を呑んだ。
「これは……魔力が輝いてる ……?」
迅は軽く指を動かし、魔力の流れを調整する。
液体の光がゆっくりと脈動し、規則正しい明滅を始めた。
「これは “魔力霧筺《マナ・シンチレーション》” の応用。」
「魔力に微弱な発光特性を持たせることで、血流の動きを可視化する。」
「つまり——“魔力を使った血管造影” ってわけだ。」
リディアが感嘆の声を漏らす。
「……そんなこと、できるのね……!」
迅は口元を引き締める。
「理論上はな。実際にうまくいくかは、やってみないとわからねぇ。」
彼は セラフィーナの手を優しく取り、脈を確かめる。
すべての準備が整った。
「リディア、頼めるか?」
迅がリディアを見やる。
彼女は真剣な表情で頷いた。
手をかざし、魔力を練る。
空気がわずかに冷え、彼女の指先から 極細の氷の針 が生まれた。
光を透かして輝く、それはまるで 宝石のような美しさ さえ感じさせた。
「……これでいい?」
「完璧だ。」
迅はその針を受け取り、慎重に セラフィーナの腕に針を当てる。
「少しだけチクっとしますよ。」
セラフィーナは穏やかに微笑み、静かに頷いた。
氷の針が、ゆっくりと皮膚を貫く。
氷の針が暖かな生理食塩水を約38℃の適温へと冷やし、点滴のように少しずつ体内へ流していく。
すると——
王妃の身体の中で、魔力が静かに脈動し始めた。
「……来た。」
迅は目を細め、魔力の流れを追う。
魔力が血流に乗り、ゆっくりと体内を巡っていく。
セラフィーナの皮膚の下で、光る血管のラインが薄く浮かび上がる。
まるで魔力が体の中で流れる川のように、静かに広がっていく。
リディアが驚いた声を漏らした。
「……すごい……!」
だが——迅の表情は、すぐに険しくなる。
光の流れの中に、異常な停滞と乱れが見えた。
大腿骨と肺。
その二か所だけ、血流の流れが異様に乱れている。
まるでそこに、何かが詰まっているかのように——。
(……やはり。)
迅は息を詰めた。
(これは……今の俺じゃ、完全には治療できない……)
喉の奥に、苦いものがこみ上げる。
医療技術も、魔法も、迅の知識には限界がある。
どれほど科学的に診断をしても、今の自分に”治療法”はない。
(だが——諦めるのはまだ早い。)
進行を抑える方法を考えればいい。
治せないのなら、時間を稼ぐ。
症状を抑え、回復する手段を探す。
迅は、静かに目を閉じた。
——次の手を、考えなければならない。
静寂が支配する病室の中、淡く光る魔力がゆっくりと消えていった。
セラフィーナ王妃の腕から抜かれた氷の針が、わずかに光を帯びたまま床に落ち、音もなく蒸発する。
迅は小さく息を吐き、ゆっくりと背筋を伸ばした。
診察の結果は、想定していた最悪のものに近かった。
(やはり、体内の異常な血流の滞り……腫瘍が原因か。)
光の流れが途切れていた 大腿骨と肺。
そこにあるのは、血液の流れを阻害する何か。
迅の脳裏に、現実世界での記憶がフラッシュバックする。
あの時、病室の中で、医師が告げた残酷な診断結果——。
(……いや、違う。今は俺が診る側だ。)
無意識に拳を握りしめる。
“過去” ではない。“今” のことを考えろ。
メイドが不安げに迅を見つめている。
その横で、フィリオスはじっと迅の次の言葉を待っていた。
「まず……セラフィーナ王妃に “回復魔法” をかけるのは 禁止 します。」
瞬間、メイドが息を呑む。
「なっ……!? 王妃様の治療に、回復魔法を使わずにどうするおつもりですか!?」
メイドの表情には、怒りと困惑が混じっていた。
この世界の常識では、“回復魔法は万能” という認識が根強い。
病気や怪我があれば、とにかく 魔法をかければ治る という思考が当たり前だった。
だが、それは 決定的に間違いだ。
迅はメイドをまっすぐに見据える。
「……“回復魔法” は、傷を再生させる力を持つ。だが、それは 正常な細胞だけじゃなく、異常な細胞にも作用する 可能性がある。」
メイドが困惑したまま口を開く。
「ど、どういうことですか……?」
「例えば、“傷” というものは、細胞……つまり、身体を作る組織が急速に増殖して埋め合わせることで治る。でも、“異常な増殖” が起きた場合はどうなる?」
「…………」
メイドの顔が青ざめていく。
彼女の頭の中で、“異常な増殖” という言葉の意味がゆっくりと理解されていく。
フィリオスが、緊張した面持ちで問う。
「……つまり、回復魔法をかけることで、“悪いもの” まで増えてしまう可能性がある、ということですか?」
迅は深く頷く。
「そうだ。“異常な細胞” を、回復魔法で活性化させてしまう可能性がある。」
「下手に魔法を使えば……王妃の症状は、かえって加速する。」
フィリオスは息を呑んだ。
しばらくの沈黙の後、彼は静かに言う。
「……分かりました。」
「僕は……勇者様を信じます。母上の治療に、回復魔法は使いません。」
その言葉に、メイドも何かを悟ったように、深く頭を下げた。
迅は腕を組み、数瞬思考を巡らせる。
(この状態で、俺ができることは何か。)
(“治療” は不可能でも、進行を遅らせる手段はあるはずだ。)
——そこで、一つの方法が頭に浮かぶ。
氷魔法を応用し、体内の代謝を抑制することで、異常な細胞の増殖を遅らせる。
「……氷魔法を使えば、治療は無理でも進行を抑えることができるかもしれない。」
リディアが反応する。
「……氷魔法?」
迅は頷く。
「基本的に、細胞の活動は温度と密接に関係している。高温になれば活性化し、低温になれば鈍化する。」
「つまり、腫瘍がある部分を 適切に冷却 することで、異常な細胞の増殖スピードを遅らせることができるはずだ。」
「……なるほど……!」
リディアが納得したように息を吐く。
だが、迅は少し眉を寄せた。
「……ただ、俺の氷魔法の技術じゃ、まだ難しいかもしれねぇ。」
「頼めるか?」
リディアはしばらく考え込んだ。
唇を噛み、一度だけ目を閉じる。
——そして、静かに目を開いた。
「……氷魔法の高度な技術が必要なんでしょ?」
「そうだ。単純に冷やすだけじゃダメだ。局所的に冷却して、血液の流れを阻害しない程度に温度を調整する必要がある。」
リディアは少しだけ迷いを見せた後、そっと口を開く。
「それなら、私よりも適任がいるかもしれないわ。」
「……?」
迅が驚いたように眉を上げる。
リディアは静かに頷く。
「この国には……私よりも、氷魔法を極めた人がいる。」
◇◆◇
ミィシャはグラスを揺らしながら、不機嫌そうに舌打ちした。
「……チッ。どの面下げて出てきたんだ、あのバカ王子。」
遠巻きに見えるのは、堂々と笑みを浮かべる ルクレウス・ノーザリア その人だった。
彼は貴族たちと軽妙に会話を交わしながら、ワインを片手に優雅に振る舞っている。
その姿は、まるで王子として完璧に演じられた”虚像”だった。
「……今日はあたしたち “銀嶺の誓い” の祝賀会でもあるんだぜ?」
ミィシャが低く呟く。
「まさか、顔を出すとは思わなかったぜ……。何考えてんだ、あの男。」
彼女の横で、エリナがじっと ルクレウス を睨みつけていた。
その眼差しには、激しい 憎悪 と 鋭い観察の意志 が入り混じっている。
「……」
彼女は何も言わない。
だが、何を考えているかは明白だった。
ルクレウス・ノーザリア——その名を聞けば、嫌でも思い出す。
ヴァイスハルト家の没落の記憶を。
だが、それを “今” ここで語るつもりはない。
彼女は何も言わず、ただ “観察” する。
一方、ライネルはそんな二人の様子を 少しだけ距離を取って眺めていた。
エリナ本人から直接聞いた訳ではないものの、彼は、これまでの経緯から、ミィシャやエリナが ルクレウスを敵視している理由 を、ある程度察していた。
だが、それを確信に変えるものはない。
証拠がないのだ。
だからこそ、エリナも沈黙している。
「……あまり騒ぐなよ。」
ライネルは軽く肩をすくめながら言った。
「ルクレウス殿下に敵意を向けるのはいいが……いや、良くはないな。……今ここで騒いだところで、何も変わらないどころか、他の高官達の不興を買う可能性もある。」
「……チッ、わかってるって。」
ミィシャは不満げに唇を尖らせた。
エリナは何も言わず、グラスを揺らすだけだった。
ライネルは、ふと 誰かの視線を感じた。
(……?)
首を巡らせると——
そこには、勇者・九条迅 の姿があった。
ライネルの背筋に、一瞬、冷たいものが走る。
(……く、九条迅!?)
先程のやり取りが思い起こされる。
舞踏会の最中、ライネルは迅を軽く挑発しただけのつもりだった。傷付けられた"推し"の仕返しとして。
まさか、その報復に来たのでは——?
「……お、おい、ミィシャ。」
小声で隣のミィシャを小突く。
「ん?……って、うわ、九条迅!? なんでこっちに来てんにゃ!?」
(な、何故こいつがここに……!?
──まさか、本当に報復の為に……!?)
ライネルが密かに警戒していると——
迅が、まっすぐにライネルの前に立った。
そして、一言。
「ライネル・フロスト。
──あんたの力を借りたい。」
「……は?」
——その瞬間、ライネルは 思わず 間抜けな声 を出し、絶句した。
セラフィーナ王妃の病室は、外界から隔絶されたように静まり返っている。魔法障壁が張られた部屋の空気はひんやりとしており、薬草の香りがほのかに漂っていた。
それなのに——迅の心臓は、ひどく煩わしいほどに脈打っていた。
(……こんなはずじゃなかった。)
診察をする。それだけのことだ。
なのに、今も手のひらがじんわりと汗ばんでいるのがわかった。
呼吸が乱れ、思考の流れが不規則に乱れていく。
頭の奥で、今にも崩れそうな記憶の扉が不穏に軋む。
(今は過去を思い出してる場合じゃない……目の前の患者を診るんだ……)
そう、わかっている。
なのに、喉の奥に張り付いたような違和感が消えない。
「……迅?」
リディアの声が、まるで冷たい水を浴びせるように響いた。
迅は小さく息を呑む。
リディアの瞳が、自分をまっすぐに見つめていた。
その表情には、明らかに不安の色が滲んでいる。
(……くそ、ダメだ。このままじゃ……)
乱れた思考を振り払うように、迅は拳を握りしめた。
——そして。
パァンッ!
鋭い音が、部屋の静寂を破った。
迅は勢いよく 自分の頬を両手で叩く。
バチンと強く打ちつけた頬がじんじんと熱を持つ。
視界の端でリディアが 「えっ!?」 と小さく声を上げるのが聞こえた。
「……よし、頭冷えた!」
迅は軽く首を回し、肩をひとつ鳴らして息を吐いた。
——冷静になれ、九条迅《くじょうじん》。
お前は医者じゃない。だが、今ここで考えを止めるのは間違いなく悪手だ。
“勇者”の役目は、ただ剣を振るうことだけじゃない。
迅は再び王妃を見やる。
彼女は、かすかに驚いたような表情をしていたが、すぐに穏やかに微笑んだ。
その微笑みを見て、迅の心はわずかに落ち着いた。
もう迷っている場合じゃない。
「……調理場から、沸かしたお湯と塩、それに秤を持ってきてくれ。」
迅はメイドに向かってそう告げる。
メイドは一瞬戸惑ったようにまばたきをした。
「えっ……?」
「早く。」
低く、だがはっきりとした迅の声に、メイドは反射的に頷く。
「わ、わかりました!」
彼女は慌てて部屋を出ていった。
「……病状に心当たりはあるが、まだ確証がない。本格的な検査をするなら準備がいる。」
迅は、フィリオスの方へ視線を向ける。
王子の小さな拳は強く握りしめられていた。
だが、その瞳は迷いなく迅を見つめている。
「お願いします!」
迷いのない声だった。
迅は短く頷き、再び王妃の方へ向き直った。
◇◆◇
ベッドの上のセラフィーナ王妃は、静かに迅を見つめていた。
その姿は、どこまでも穏やかで——
それでいて、ひどく儚い。
この女性が王妃であることを忘れてしまいそうになるほど、その笑みは母親のようだった。
「王妃様……少し、お身体の中に"薬"を直接注入したいのですが、大丈夫ですか?」
迅の言葉に、部屋の空気が凍りつく。
「……何を仰るのですか!?」
即座にメイドが声を上げた。
明らかに動揺し、険しい表情で迅を睨む。
「王妃様の身体にそのようなこと、許可できるはずがありません!」
怒りすら滲ませたその声に、迅は冷静に返す。
「王妃様の命がかかっています。今の段階で 正確な診断 ができなければ、適切な治療もできません。」
迅の言葉に、メイドは歯を食いしばる。
そのとき——
「勇者様。」
静かな、しかし凛とした声が部屋に響いた。
セラフィーナ王妃が、穏やかな微笑みをたたえたまま、静かに言葉を紡ぐ。
「それが必要だと考えていらっしゃるのね?」
迅は彼女の視線を真っ直ぐに受け止めた。
「……少しでも、正確なことを知るためには。」
その言葉に、セラフィーナはふっと目を細めた。
まるで、すべてを理解しているかのように——
それとも、初めから迅を信じるつもりだったかのように。
「貴方のことを信じるわ。お願いします。」
その瞬間、メイドの表情が揺らぐ。
「……王妃様……!」
メイドは食い下がるように言うが、セラフィーナは静かに首を振った。
「貴女の気持ちは嬉しいわ。でも、大丈夫よ。」
その穏やかな笑顔に、メイドは反論の言葉を飲み込むしかなかった。
——そうして、セラフィーナ王妃の “許可” が下りた。
迅は静かに息を吸い込む。
ここからが、本当の診察の始まりだ。
◇◆◇
セラフィーナ王妃の寝室に、張り詰めた空気が流れる。
メイドが持ってきた銀盆の上には、沸かした湯、塩、秤が整然と置かれていた。
湯気が立ち上るそれを見つめながら、迅は深く息を吸い込む。
(ここからは、俺の領域だ。)
戦場で剣を振るうのではなく、未知の病を解き明かす。
異世界の常識に縛られず、科学と魔法の融合によって“答え”を導き出す。
そのために——迅は、手を止めるわけにはいかなかった。
迅は 秤 に塩を乗せ、慎重に計測する。
分量を間違えれば、人体に与える影響が変わる。
「……1リットルに9グラム……」
迅は小さく呟きながら、測った塩を 湯 に静かに溶かす。
塩がゆっくりと水中に広がり、透明な液体が少しずつ均一になっていく。
やがて、銀盆の中には 即席の生理食塩水 が完成していた。
リディアが興味深そうに覗き込む。
「ただの塩水……じゃないのよね?」
迅は短く頷く。
「人間の血液の塩分濃度とほぼ等しい液体だ。体内に入れても拒絶反応を起こさず、血流に負担をかけずに馴染む。」
「要するに——“血の代用品” だ。」
リディアが小さく目を見開く。
しかし、すぐに理解し、納得したように頷いた。
「なるほど……。異物じゃなく、血液に溶け込むものだから、体に無理なく使えるのね。」
(相変わらず、説明の飲み込みが早ぇな。)
やはり、リディアは優秀だ。
迅が言葉を選びながら伝えれば、彼女は的確にそれを吸収していく。
そのことに、迅はわずかに安堵を覚えた。
生理食塩水の準備が整った。
次に、これを“診断のためのツール”に変える。
迅は 手のひらをかざし、微弱な魔力を食塩水へと流し込む。
——パァァァ……
淡い光が液体の中に広がる。
リディアが息を呑んだ。
「これは……魔力が輝いてる ……?」
迅は軽く指を動かし、魔力の流れを調整する。
液体の光がゆっくりと脈動し、規則正しい明滅を始めた。
「これは “魔力霧筺《マナ・シンチレーション》” の応用。」
「魔力に微弱な発光特性を持たせることで、血流の動きを可視化する。」
「つまり——“魔力を使った血管造影” ってわけだ。」
リディアが感嘆の声を漏らす。
「……そんなこと、できるのね……!」
迅は口元を引き締める。
「理論上はな。実際にうまくいくかは、やってみないとわからねぇ。」
彼は セラフィーナの手を優しく取り、脈を確かめる。
すべての準備が整った。
「リディア、頼めるか?」
迅がリディアを見やる。
彼女は真剣な表情で頷いた。
手をかざし、魔力を練る。
空気がわずかに冷え、彼女の指先から 極細の氷の針 が生まれた。
光を透かして輝く、それはまるで 宝石のような美しさ さえ感じさせた。
「……これでいい?」
「完璧だ。」
迅はその針を受け取り、慎重に セラフィーナの腕に針を当てる。
「少しだけチクっとしますよ。」
セラフィーナは穏やかに微笑み、静かに頷いた。
氷の針が、ゆっくりと皮膚を貫く。
氷の針が暖かな生理食塩水を約38℃の適温へと冷やし、点滴のように少しずつ体内へ流していく。
すると——
王妃の身体の中で、魔力が静かに脈動し始めた。
「……来た。」
迅は目を細め、魔力の流れを追う。
魔力が血流に乗り、ゆっくりと体内を巡っていく。
セラフィーナの皮膚の下で、光る血管のラインが薄く浮かび上がる。
まるで魔力が体の中で流れる川のように、静かに広がっていく。
リディアが驚いた声を漏らした。
「……すごい……!」
だが——迅の表情は、すぐに険しくなる。
光の流れの中に、異常な停滞と乱れが見えた。
大腿骨と肺。
その二か所だけ、血流の流れが異様に乱れている。
まるでそこに、何かが詰まっているかのように——。
(……やはり。)
迅は息を詰めた。
(これは……今の俺じゃ、完全には治療できない……)
喉の奥に、苦いものがこみ上げる。
医療技術も、魔法も、迅の知識には限界がある。
どれほど科学的に診断をしても、今の自分に”治療法”はない。
(だが——諦めるのはまだ早い。)
進行を抑える方法を考えればいい。
治せないのなら、時間を稼ぐ。
症状を抑え、回復する手段を探す。
迅は、静かに目を閉じた。
——次の手を、考えなければならない。
静寂が支配する病室の中、淡く光る魔力がゆっくりと消えていった。
セラフィーナ王妃の腕から抜かれた氷の針が、わずかに光を帯びたまま床に落ち、音もなく蒸発する。
迅は小さく息を吐き、ゆっくりと背筋を伸ばした。
診察の結果は、想定していた最悪のものに近かった。
(やはり、体内の異常な血流の滞り……腫瘍が原因か。)
光の流れが途切れていた 大腿骨と肺。
そこにあるのは、血液の流れを阻害する何か。
迅の脳裏に、現実世界での記憶がフラッシュバックする。
あの時、病室の中で、医師が告げた残酷な診断結果——。
(……いや、違う。今は俺が診る側だ。)
無意識に拳を握りしめる。
“過去” ではない。“今” のことを考えろ。
メイドが不安げに迅を見つめている。
その横で、フィリオスはじっと迅の次の言葉を待っていた。
「まず……セラフィーナ王妃に “回復魔法” をかけるのは 禁止 します。」
瞬間、メイドが息を呑む。
「なっ……!? 王妃様の治療に、回復魔法を使わずにどうするおつもりですか!?」
メイドの表情には、怒りと困惑が混じっていた。
この世界の常識では、“回復魔法は万能” という認識が根強い。
病気や怪我があれば、とにかく 魔法をかければ治る という思考が当たり前だった。
だが、それは 決定的に間違いだ。
迅はメイドをまっすぐに見据える。
「……“回復魔法” は、傷を再生させる力を持つ。だが、それは 正常な細胞だけじゃなく、異常な細胞にも作用する 可能性がある。」
メイドが困惑したまま口を開く。
「ど、どういうことですか……?」
「例えば、“傷” というものは、細胞……つまり、身体を作る組織が急速に増殖して埋め合わせることで治る。でも、“異常な増殖” が起きた場合はどうなる?」
「…………」
メイドの顔が青ざめていく。
彼女の頭の中で、“異常な増殖” という言葉の意味がゆっくりと理解されていく。
フィリオスが、緊張した面持ちで問う。
「……つまり、回復魔法をかけることで、“悪いもの” まで増えてしまう可能性がある、ということですか?」
迅は深く頷く。
「そうだ。“異常な細胞” を、回復魔法で活性化させてしまう可能性がある。」
「下手に魔法を使えば……王妃の症状は、かえって加速する。」
フィリオスは息を呑んだ。
しばらくの沈黙の後、彼は静かに言う。
「……分かりました。」
「僕は……勇者様を信じます。母上の治療に、回復魔法は使いません。」
その言葉に、メイドも何かを悟ったように、深く頭を下げた。
迅は腕を組み、数瞬思考を巡らせる。
(この状態で、俺ができることは何か。)
(“治療” は不可能でも、進行を遅らせる手段はあるはずだ。)
——そこで、一つの方法が頭に浮かぶ。
氷魔法を応用し、体内の代謝を抑制することで、異常な細胞の増殖を遅らせる。
「……氷魔法を使えば、治療は無理でも進行を抑えることができるかもしれない。」
リディアが反応する。
「……氷魔法?」
迅は頷く。
「基本的に、細胞の活動は温度と密接に関係している。高温になれば活性化し、低温になれば鈍化する。」
「つまり、腫瘍がある部分を 適切に冷却 することで、異常な細胞の増殖スピードを遅らせることができるはずだ。」
「……なるほど……!」
リディアが納得したように息を吐く。
だが、迅は少し眉を寄せた。
「……ただ、俺の氷魔法の技術じゃ、まだ難しいかもしれねぇ。」
「頼めるか?」
リディアはしばらく考え込んだ。
唇を噛み、一度だけ目を閉じる。
——そして、静かに目を開いた。
「……氷魔法の高度な技術が必要なんでしょ?」
「そうだ。単純に冷やすだけじゃダメだ。局所的に冷却して、血液の流れを阻害しない程度に温度を調整する必要がある。」
リディアは少しだけ迷いを見せた後、そっと口を開く。
「それなら、私よりも適任がいるかもしれないわ。」
「……?」
迅が驚いたように眉を上げる。
リディアは静かに頷く。
「この国には……私よりも、氷魔法を極めた人がいる。」
◇◆◇
ミィシャはグラスを揺らしながら、不機嫌そうに舌打ちした。
「……チッ。どの面下げて出てきたんだ、あのバカ王子。」
遠巻きに見えるのは、堂々と笑みを浮かべる ルクレウス・ノーザリア その人だった。
彼は貴族たちと軽妙に会話を交わしながら、ワインを片手に優雅に振る舞っている。
その姿は、まるで王子として完璧に演じられた”虚像”だった。
「……今日はあたしたち “銀嶺の誓い” の祝賀会でもあるんだぜ?」
ミィシャが低く呟く。
「まさか、顔を出すとは思わなかったぜ……。何考えてんだ、あの男。」
彼女の横で、エリナがじっと ルクレウス を睨みつけていた。
その眼差しには、激しい 憎悪 と 鋭い観察の意志 が入り混じっている。
「……」
彼女は何も言わない。
だが、何を考えているかは明白だった。
ルクレウス・ノーザリア——その名を聞けば、嫌でも思い出す。
ヴァイスハルト家の没落の記憶を。
だが、それを “今” ここで語るつもりはない。
彼女は何も言わず、ただ “観察” する。
一方、ライネルはそんな二人の様子を 少しだけ距離を取って眺めていた。
エリナ本人から直接聞いた訳ではないものの、彼は、これまでの経緯から、ミィシャやエリナが ルクレウスを敵視している理由 を、ある程度察していた。
だが、それを確信に変えるものはない。
証拠がないのだ。
だからこそ、エリナも沈黙している。
「……あまり騒ぐなよ。」
ライネルは軽く肩をすくめながら言った。
「ルクレウス殿下に敵意を向けるのはいいが……いや、良くはないな。……今ここで騒いだところで、何も変わらないどころか、他の高官達の不興を買う可能性もある。」
「……チッ、わかってるって。」
ミィシャは不満げに唇を尖らせた。
エリナは何も言わず、グラスを揺らすだけだった。
ライネルは、ふと 誰かの視線を感じた。
(……?)
首を巡らせると——
そこには、勇者・九条迅 の姿があった。
ライネルの背筋に、一瞬、冷たいものが走る。
(……く、九条迅!?)
先程のやり取りが思い起こされる。
舞踏会の最中、ライネルは迅を軽く挑発しただけのつもりだった。傷付けられた"推し"の仕返しとして。
まさか、その報復に来たのでは——?
「……お、おい、ミィシャ。」
小声で隣のミィシャを小突く。
「ん?……って、うわ、九条迅!? なんでこっちに来てんにゃ!?」
(な、何故こいつがここに……!?
──まさか、本当に報復の為に……!?)
ライネルが密かに警戒していると——
迅が、まっすぐにライネルの前に立った。
そして、一言。
「ライネル・フロスト。
──あんたの力を借りたい。」
「……は?」
——その瞬間、ライネルは 思わず 間抜けな声 を出し、絶句した。
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