僕が”僕”じゃなかったら

パれっと

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 ―――――起―――――

3話「どうすれば、あなたの“1番”になれますか?」⑥ー楽ー

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 その後、
良ちゃんの部屋で、折り紙をしたり、
桜ちゃんが来て、
4人でおままごとをやったりして。

…そのとき、
生まれて初めて、

…“楽しい”、って気持ちを、
感じた気がした。



 そうして、
お絵描きして遊んでいると、

「良太~、
 お菓子出すの手伝って。」

「あ、はーい。」

良ちゃんのお母さんが呼びに来て、
良ちゃんが立ち上がった。

「のみもの、なにがいい?」
「ぼく、りんごジュースがいいな。」

あっくんが答えると、
良ちゃんは頷いて、
私を見た。

「こはるちゃんは?」


私は、訊かれて、
…自分に、
特に、好きなものがなかったから、
答えに、困って。

「…なんでもいい。」
ぽそっと、つぶやいた。

「うん。
 じゃあ、こはるちゃんが
 すきそうなの、
 もってくるね。」

良ちゃんは、にこにこと答えて。

「…あっくん、…だいじょうぶ?」
心配そうに、あっくんを覗き込んだ。
「…うん。
 こはるちゃんは、おんなのこだから…。」
あっくんが優しく答えて、
良ちゃんは、
ほっとしたような顔をしてから、
部屋を出た。


…このときは、
なんの話か、わからなかったけど、
その後、
あっくんが、
幼稚園のときに遭った
事件の話を聞いて、
…そういうことだったのかなと、
納得した。




 そして、
あっくんと部屋に2人になって。

私は、あっくんと
話したことがなかったから、
どうしよう、
何話せばいいんだろう、
と焦った。

そうすると、
あっくんは、

私の描いた絵を、覗き込んで、

「…え、かくの、じょうずだね。」

小さく、笑った。

「このおはな…かわいい。
 ぼく、あんまりおはな、
 じょうずにかけないから
 …すごいなぁ。」

ぽそぽそ小さい声で、
恥ずかしそうにしながら、
あっくんは喋って。

…私にも、
こんな風に、
かわいく笑ってくれるんだな、
と思った。

「そ、そんなことないよ。
 あっくんのかいた
 ひこうきのが、じょうずだよ!」

「そ、そうかな…。
 ありがとう…。」

恥ずかしそうに笑う
あっくんを見て、

私も、
自然と、笑顔になって。


…人と話すことって、
 こんな、
 ちょっとのことで、いいんだな

…って、思った。

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