露天風呂の白い女

奥住卯月

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露天風呂の白い女

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「地獄岳第一旅館まで」
 俺は出張先での仕事が終わり、会社が用意してくれた温泉宿に向かっていた。
「お客さん、ご存知でしょ?地獄岳が噴火してから、この温泉街も客が減っちゃったんですよ。こうして泊まりに来てくださる、お客さんのような方は、ありがたいんです」
 タクシーの運転手は言った。
「タクシーの売り上げも、3割は減っちゃいましたかねぇ?」
 俺は、少し黙ってほしいと思った。俺は仕事で疲れているのだ。そして、この辺りは田舎で、温泉以外何もない。露天風呂に入って、さっさと寝るだけである。
 タクシーの運転手は、宿に着くまでの間、ずっとしゃべり続けていたが、俺は生返事だけしてスルーした。
「お客さん、宿に到着しましたよ」
「あぁ、ありがとう。支払いはカードでいけるかな?」
「はい。ありがとうございます」
 俺はタクシーを降りると、宿へ向かった。

※※※※※

「いらっしゃいませ。お待ち申しておりました」
 宿の仲居たちが頭を下げる。
「6時にお部屋にお食事をお持ちいたします」
 俺は半分話を聞き流して、荷物を仲居に預けて、部屋へと歩き始めた。
「温泉のご案内ですが、露天風呂は9時まで、屋内大浴場は0時までとなっております」
 俺は
「あぁ」
と軽く返事だけをして、部屋に入った。
「それではごゆっくりおくつろぎください」
 仲居が出ていくと、俺はフーッと息を吐き、早速ビールを飲み始めた。

「お客様、お食事をお持ちいたしました」
 宿の夕食は、可もなく不可もなくだった。熱燗を2本ほど追加し、それから露天風呂に向かった。
「今、地獄岳は火山活動をしておりまして、若干でありますが、有害な火山ガスも普段より濃くなっております。もし入浴中に息苦しさを感じられましたら、すぐにお上がりください」
 仲居が何やら注意喚起をしていたが、俺は適当に聞いていた。本当に危険だったら、露天風呂を閉鎖するだろうし、誰か従業員も呼びに来るさ。

※※※※※

 俺は浴衣を脱いで、温泉に浸かった。火山活動をしてるからなのか、それとも元々なのか、硫黄の臭いの強い温泉だ。俺は夜の寒空の下、湯気がもうもうと立つ温泉を堪能していた。会社もなかなか気の利いた宿を準備してくれたものだ。
 と、誰か人が入ってきた。白い湯気の向こうから見えたその人影は、スラリとした若い女性の姿だった。
「わわわ!」
 俺は一瞬戸惑った。そして、ふと思った。この露天風呂は、混浴だっただろうか?
「こんばんは」
「こ、こ、こ、こんばんは!」
 俺はあたふたしながら答えた。
「ここは混浴でしたっけ???」
「この時間帯は混浴なんですよ」
 俺ははてな?となったが、それ以上は深く考えないことにした。まあ、若い女性と混浴できるのなら、ラッキーな話だ。
「この温泉は初めてですか?」
 女が訊いた。
「ええ。出張でこっちのほうに来て、会社がこの宿を取ってくれたんですよ」
 切れ長の目をより細くして、女はふふふ、と笑った。俺は女の顔をしみじみと見つめた。色白で切れ長の目、あごはきれいにとがっており、長い黒髪を上にくくっている。お湯の上に見える首や肩も、真っ白で美しい肌だ。俺は思わず見とれてしまった。

「どうなさったんですか?」
 俺はハッ!となった。
「いえいえ、何でもありません!」
 俺は恥ずかしくて顔を真っ赤にした。
 すると、女はふーっと息を吐き、ニコッと笑った後、俺のほうに近づいてきた。水面から見え隠れする胸の谷間が美しい。この胸に、俺の顔を埋めたい...
 女は唇を俺の耳に寄せると、ふーっと息を吹きかけた。俺はますます顔が赤くなり、股間がムクムクと元気になってきた。
 女は舌で俺の首筋をチロチロと舐め、固くなった俺の肉棒を、右手の親指と人差し指で軽く摘まんだ。
「こんなに固くなって...」
 女は左手で俺の右手をとり、女の乳房に俺の手を当てた。俺の股間はピクンと反応した。その動きを、女の右手は感じとったようだ。女は唇を俺の唇に重ねた。そして、右手で俺の肉棒をしごき始めた。
「お、おぉ...」
 俺は思わずため息を漏らした。そして、俺は女の乳房に添えていた右手に力を込めた。
「あ、あっ!...」
 女も歓喜のため息を漏らした。女の乳首が固くなってきた。そして、俺の股間もますます固くなった。俺はしばらくの間、女の胸を揉みしだいた。露天風呂に、淫靡なため息が響いた。

 女の右手の動きが、少しずつ速くなってきた。それに合わせて、俺の肉棒もピクン!ピクン!と反応する。俺は、女の固くなったピンクの乳首をクリクリと摘まんだ。
「うん、うぅん...」
 女の唇から吐息が漏れる。俺は堪らず顔を女の白い両乳房の谷間に埋め、右手で女の腰を抱き、左手で女の太ももを持ち上げた。
「あぁっ!」
 俺は固く太く赤黒く勃起した肉棒を、女の蜜壺へと突き立てた。
「お、おぉ...」
 俺は、女の締まりの良い膣の感触を堪能した。

パン!パン!パン!パン!

 俺は激しく腰を振った。その動きに合わせて、女は
「あん!あん!あん!あん!!」
と喘いだ。その喘ぎ声に、俺の股間はますます熱くなった。俺は顔を右に動かし、唇で女の薄桃色の乳首に吸い付いた。
「あっ!はあぁっ!!」
 女はさらに吐息のような喘ぎ声を出した。俺はますます激しく腰を振った。

うっ!いく!いきそうだ!!

 俺は股間に熱くこみ上げてくるものを感じた。それに伴い、意識が少しずつ遠のいていくのを感じた。温泉に浸かって激しいセックスをしたせいだろうか?どうやらのぼせてきたようだ。

パン!パン!パン!パン!

「うっく!うっく!うっく!うっく!」
「おっ!おっ!おっ!」
 俺たちの淫靡な喘ぎ声が響く。俺は遠ざかる意識の中、吹き出ようとするザーメンを必死で堪えた。

もう少し、もう少し...

 意識はいよいよ消え入りそうになってきたが、頭の芯は、絶頂に達しそうな快感で震えていた。
「あん!あん!あん!!」
「うっ!おっ!おぉっ!!」
 股間に熱い電流が走った。

!!!!!

「うわあっ!お客様!!」
 かすかに男の声が響いたような気がした...

※※※※※

 露天風呂には規制線が張られ、多数の警察官が来ていた。
「死因は、火山ガスの中毒のようですね」
 そう、俺は入浴中に死んだのだ。第一発見者は、宿の男性従業員らしい。消え行く意識の中で聞いた男の叫び声は、その従業員のものらしい。
 俺は知らなかったが、地獄岳の温泉には、客の命を拐っていく女の言い伝えがあったらしい。長年地獄岳は噴火していなかったので、その言い伝えはただの迷信のようになっていたようだが、地元の郷土史家によると、地獄岳の噴火とその女が現れる時期は、ほぼ一致していたらしい。そして、今回の噴火によるその女の犠牲者は、俺が第一号になったようだ。
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