フードデリバリー配達員をやっていたら異世界に自由に行けるようになったので、日本からいろいろな物をデリバリーして大金持ちを目指します!

クレール・クール

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引っ越し初夜

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引っ越し初日の夜。

「たーくん、ちょっといい?」

 サエちゃんが俺の部屋にやってきた。

「うわあ……この部屋も凄いねえ。5つ星ホテルでもこうはいかないんじゃない? 泊まったことなんてないけどさ」

 壁には品のいい大きな絵画が飾られ、細かな細工が施された置き物や魔石の力を利用した照明が煌々と灯されている。

 天井には大きなシャンデリア。暖炉には揺らめくことのない真球の炎が燃えて部屋を快適な温度に保ってくれている。

 クリスがこの炎を見て何か衝撃を受けたみたいで、みそらを誘って庭で魔法の特訓を始めていた。火事には充分に気をつけるように言っておいた。引っ越し直後にいきなり火事とかシャレにならないからね。

 とにかく、王族の別荘だけあってありとあらゆる贅が尽くされていて、庶民オブ庶民の俺には慣れるまでにはまだだいぶかかりそうな気がする。

 そして、それはサエちゃんも同じだったみたい。

「広い部屋にひとりだとなんだか寂しくて。今夜はいっしょに寝てもいい?」

 言いながら、ベッドに潜り込んできた。まだOKって言ってないんだけどな。まあOKなんだけどさ。

 このベッド、4畳半の部屋だったらベッドだけで埋め尽くされるくらい広い。天蓋付きのベッドなんて、ご休憩3時間とかで利用するあのホテルくらいでしか使ったことはない。もちろん豪華さは比べものにならない。

「広いベッドなんだし、そんなにくっつかなくてもいいでしょ?」

「いいじゃない。若くてかわいい女の子がいっしょに寝てあげるって言ってるんだから。ほらほらー」

 ぐっ。サエちゃんが小悪魔に見える。

「それにしても、こんなお屋敷もらって本当によかったのかなあ。使用人さんまでいるなんて、分不相応過ぎる気がするよ」

「うん。それは俺もそう思う」

「多分、私たち……というより、たーくんが他の国に行っちゃわないように囲っておきたいんだろうね」

 うーん……。正直それも考えたけど、実際どうなんだろう。この世界に魔法がないならともかく、数はそこまで多くないとはいえ魔法使いは存在している。王家ならお抱えの宮廷魔術師くらいいるだろし、配達バッグという名のマジックアイテムひとつしかない俺にそこまで価値があるとは思えないんだよなあ。

 ぶっちゃけ、天候を操れるシックスたち銀狐族のほうがずっと国としては価値がある存在だと思う。

「でも、文化はどう?」

「文化?」

「たとえば、食文化。かき氷もそうだけど、タレに漬け込んだ焼肉とかもこっちには無かったものでしょう?」

「うん、まあそうだね」

「新しい食べ物や食べ方が広がれば、農家さんたちだっていろいろな物を作るようになるでしょ? そうしたら流通する食材が増えて商人は喜ぶだろうし、お料理屋さんだって地球にもない料理を作り出すかもしれない。それに、いろいろな食材を作るっていうことは飢饉とかがあった時に被害を分散できる可能性もあるよ」

「ああ。なるほどなあ」

「たーくんはこれからもまだまだいろいろな文化を持ち込んで来ると思ってるんだと思うよ。期待されてるんだよ」

「うー、プレッシャーが……。サエちゃん、これからも俺のこと支えてくれな」

「うん、もちろんだよ。将来有望なたーくんは手放さないよー」

「わ、わわわ! だからそんなくっつくなって!」

 そして。

「おはようございますご主人様。昨夜はお楽しみでしたね」

 起こしにきたシルビアの優しい視線が痛かったです。
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