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【R18】afterStory happy honeymoon〜
その後のふたり 1
――ハネムーンから帰国して、ひと月。
私たちは、変わらず慌ただしい日々を過ごしている。
でも、今日は……そんな中でも、ちょっととした勝負の日だった。
「夢じゃない……」
退勤後、帰宅してすぐ。
トイレから出た私は、頬をつねってぽつりとつぶやく。
……ほんとうに、信じられなかった。夢かと思った。
私が持っている妊娠検査薬の窓口には、くっきりと陽性ラインが刻まれている。
手にしたまま、思わず呼吸が震えた。
――ここのところ毎月同じ日に来ていた生理が遅れているとは思っていた。
でも、幾度となく期待しては、それが打ち砕かれ落ち込むことが何度かあった。
だから、あまり期待しないようにしていたのだけれど――
待ちに待った結果に……どう喜びを言い表せばいいのかわからなかった。
「――ただいま」
部屋の真ん中で立ち尽くしていたそのとき、タイミング良く智秋さんが帰ってきた。
すぐさま玄関に駆けつけ、仕事帰りのスーツ体にそっと抱きついた。
「さ、桜さん……?」
智秋さんは戸惑いながらも、突然抱きついていきた私を抱きとめてくれた。
「いきなりどうしたんですか……?」と覗きこんできた彼に、後ろ手に隠していた検査薬を、おそるおそる見せた。
「え……」
智秋さんは、じっと見つめたまま、固まった。
「私たちの元にも、とうとう赤ちゃんがやってきてくれたみたいです……!」
ちょっぴり興奮気味に、喜びを噛み締めながら口にした。
だが、智秋さんはピクリとも動かなくなってしまった。
「智秋さん……?」
あれ……?
てっきり「良かった」と手を取り合って喜び会えると思っていた私は、はらりと冷や汗が背中を伝う。
も、もしかして、嬉しくなかった……?
――いや、そんな訳はない。
「今月もダメだった」といつも肩を落とす私を、心から慰めてくれていた。
早く授かるといいですね、とも言ってくれていた。
だから――
動かなくなった彼から、数歩離れた瞬間。
もう一度聞いてみようとした私の前で、
へなへなと智秋さんが崩れるようにしゃがみ込んだ。
そして、大きくと息を吐きながら、顔を手で覆った。
「…………すごく、嬉しいものですね」
困ったように、でもものすごく嬉しそうにはにかむその顔は、私以上に、とてもとても嬉しそうだった。
ちあき、さん……
「ありがとう、桜さん」
しゃがみ込んで目線を合わせると同時に、
そっと腕に抱きしめられ、なんだか泣きそうになってしまった。
子供を授かったこともそうだけど、大好きな人と、同じ喜びを、同じ分だけ共有できる。
ソレって簡単なようで、なかなか難しいことだと思うの。
「私の方こそ、ありがとう、智秋さん」
しっかり体温を感じ合ったあと、そっと触れ合う唇同士。
それから検査薬を片し、落ちていた智秋さんのビジネスバッグを手にして、リビングに促す。
「早いうちに、病院行って確かめないとですね、ドキドキする……」
「予約しておくので、週末、俺も行きます」
「……え? でもお仕事じゃ――」
「俺がそうしたいんです……自分でも驚くくらい、浮かれてる……」
智秋さんがさも当然のように笑顔で口にして、きゅんと胸が甘く痛んだ。
……なんとなくわかっていたけれど、やっぱり智秋さんは、とっても子供思いなパパになりそうだ。
「楽しみですね」
そう言うと、智秋さんも目尻を落として微笑んでくれる。
「家族が増えるというのは、こんなに嬉しいことなんだな」
もう一度キスしたあと、配膳して二人で席につく。
はじめてのことにちょっぴり不安はあるけれども、智秋さんと一緒なら、なにも心配いらない――
きっと、これから増えていくふたりの宝物を、智秋さんなら、私以上に大切に大切に、抱きしめてくれると思うの。
――END
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