13 / 19
第13話
しおりを挟む
束宵は私を愛してくれている。それは疑いようのない事実だった。
朝に晩に愛していると囁かれて、求められて、場所も問わずに身体を重ねて。そういうだたひたすらに愛される生活も悪くない、なんて思っていた。
でも、口付けながら名前を呼ぶその唇が、時々音もなく別の名前を呼んでいるように思えてならない。けど、実際に彼が私以外の名を呼ぶことはなかったし、過去について詮索して彼の愛を失うのも嫌だった。
――気のせいだ。
私は、疑わしいものからはなるべく目を逸らして生活していた。
ある日の夜。私は仕事を終えて、迎えの牛車がとまっている路地に向かっていた。
夕方からしばらく騒がしかった町はだいぶ静かになり、石畳を踏む足音が妙に大きく響いている。軒先の明かりが柔らかく揺れ、足元に伸びた影は路地裏の闇に溶けていく。
「今日は遅くなっちゃったなー」
小さく呟いた私は少し急ぎ足で進む。頭に浮かぶのは、家で待っているだろう束宵の顔だ。いつも彼は私のことを心配している。家から出したくないという言葉だって何度も聞いている。そして、過保護だと思えるくらい念入りに、牛車の御者――これも彼の式だった――に危険がないように伝える。それが少し煩わしくもあり、けれどもそこまで私を大切に想ってくれている彼が愛おしくなる。
路地の先に停まる牛車が見えた。店の近くに牛車が停まれるような場所はなく、またこんな立派なものに乗り込む姿を見られたら、私自身が金持ちだと誤解され追剥に合うかもしれない。店に行くときは必要以上に質素な格好にしているのも、そういう理由だった。
もう安心だ、と微笑んで一歩踏み出したその瞬間、突然路地の空気が変わった。ひやりとした寒気が背筋を這い上がり、いつの間にか軒先に下げられている提灯の明かりが暗くなり、周囲の影が異様に濃くなっていることに気付いた。
「……なにか、いる?」
声を出すと同時に、背後から強い風が吹きつけてきた。振り向く暇もなく、腰を冷たいなにかに掴まれる。
「……っ!!」
驚きすぎて、声が出ない。助けを求めることも出来ずに宙に引き上げられ、見知らぬ路地裏に放り込まれた。
「っ、く」
強かに背中を打ち付けて息が詰まる。
土の匂いがする狭い路地。月明かりさえ届かない暗闇。貧民街で暮らしていた数年前まで、こんなものはいつも隣にあるものでこんなに恐怖を覚えたことはなかった。
なにか来る。
怖い。
束宵が助けてくれたあの日、妖に追いかけられていた時のことを思い出す。恐る恐る目を上げた私の前には、明らかに人ならざるものがいた。
鋭い牙が覗く裂けた口、爛々と光る赤い瞳。人の姿に似せてはいるけれども、不自然に細長い手足と逆関節の足首、そしてなにかを分泌し続けている肌。それが妖であることを明確に示している。
「や……やだ……っ!」
やっと出た声は震えて路地の向こうにいるだろう人たちまでは届かない。心臓の音が耳元で鳴り響いて、喉の奥が詰まる。私はその場に座り込んだ。
湿った足音を立てて妖が近付いてくる。逃げようとしても背後は壁だ。張り付いたような格好で、目の前の妖を目を見開いて見つめる。にたぁっと笑う妖の腕が上がって、やっと這うように逃げ出した私の近くに振り下ろされる。バシッと音がして地面が抉れる。
「ヒッ」
一発で殺せるだろうに、妖は必死で逃げようとする私の近くの地面を叩き続ける。遊ばれている。理解して悔しくなって涙が滲む。
「束宵……っ」
助けて――
必死に彼の名前を呼ぶ。しかし、出るのは掠れた声だけ。しかも、こんな声が家で待っている彼に届くわけはない。
――束宵、ごめん。私、もうダメかも。
遊ぶのにも飽きたらしい妖が背後に迫ってきた。泣いて堪るか、と妖を睨みつける。その時、路地の入口から重々しい靴音が響いた。
妖が振り返る。その身体越しに、知っている人の姿。
冷めたい月の光に照らされた上質な生地の長い衣は光り輝き、風に揺れる。その顔には、普段の穏やかさは微塵もなく、怒りと鋭い殺気が浮かんでいた。
「ね。誰に手出そうとしてんの?」
その声は低く響き、路地全体に満ちる空気を震わせる。
「彼女の血の一滴まで、全部オレのものなんだけどさぁ。こんな怖がらせて、怪我させて……簡単に祓ってなんてやらないからね」
束宵が手を振るうと、袖の中から符が舞い出る。符は光を放ちながら宙を舞い、瞬く間に術式が完成する。
「封雷剣」
彼の短い言葉と共に、青白い稲妻を纏った剣が現れる。妖は後退るが、束宵は容赦なく踏み込んだ。その瞳には容赦の欠片もない。
妖は束宵に飛びかかり、鋭い爪を振るう。束宵はほんの少し身体を捻っただけでその攻撃を躱し、剣を振り下ろす。一撃で妖怪の腕が吹き飛び、その場に黒い血が飛び散る。妖怪の咆哮が響き渡る中でも、束宵は腕を止めることはない。
「玲花に手を出して、楽に死ねると思っちゃダメだよ」
うっすらと笑みを浮かべながら、束宵は妖の身体を切り刻んでいく。手足が飛ばされて胴に穴が開き、だいぶ小さくなった身体に彼は符を投げつける。それが妖の体に触れた瞬間激しい光を放った。焼け焦げる臭いが路地に充満し、妖は苦痛に喘ぎながらも最後の抵抗を試みる。
身体を捻って飛び上がり、束宵に襲い掛かろうとした。しかし、彼は容赦なく剣を突き刺し、稲妻が妖の体を貫くと同時に、それは黒い煙となって跡形もなく消えた。
路地裏に静寂が戻り、束宵と私だけが残った。
束宵の手から剣が消えると、ゆっくり近付いてくる。彼の顔を見ると、安堵で涙が溢れ出した。
「束宵っ……!」
手を伸ばせば、唇を噛みしめた彼は私をそっと抱きしめて髪を撫でてきた。そして、普段の余裕のある態度からも、先ほどの冷徹な態度からも想像のつかないほど情けない声を出す。
「ごめん、今回は大丈夫だと思ったんだけど。俺のこと呼んでくれてありがとう」
「ううん、ううん」
言葉にならず首を左右に振れば、土にまみれているだろう私の額に唇を押し当ててくる。
「もう大丈夫だからね」
「うん」
私はその胸に顔を埋め、嗚咽を漏らす。強く抱きしめてくれた束宵は、私を抱き上げると牛車に乗り込む。
「玲花ごめんね。怖かったね」
そう言いながら、彼は牛車の中で私を求めてきた。
「ね、仕事で汗かいてるし、転んで土もついちゃってるから、汚いってば」
さすがにこの格好では応じられない。拒否しようとしても、彼は珍しく強引だった。手首を掴まれて唇を重ねられる。息が出来なくなって口を開ければ、舌を捻じ込まれる。
「んっ、んっっ」
「玲花無事で良かった。ああ、もう本当にオレの手元から離したくない。目の届かないところに行かないでよ」
「ちょ……束宵!」
「ね、どこにも行かないよね? オレと一緒にいてくれるよね?」
忙しなく手を着物の隙間に差し込んできて、余裕のない愛撫を与えられ。
私が妖にやられてしまうかもしれない、と考えた時の彼の恐怖は想像もつかないものだったようだ。泣きそうな顔で求められて、絆されてしまう。
「お願い。生きてるって、確かめさせて」
「ん……いいよ」
切なげに言われると、胸の奥がきゅんとする。彼を抱き返せば、束宵はすぐに私の中に彼自身を沈めてきたのだった。
朝に晩に愛していると囁かれて、求められて、場所も問わずに身体を重ねて。そういうだたひたすらに愛される生活も悪くない、なんて思っていた。
でも、口付けながら名前を呼ぶその唇が、時々音もなく別の名前を呼んでいるように思えてならない。けど、実際に彼が私以外の名を呼ぶことはなかったし、過去について詮索して彼の愛を失うのも嫌だった。
――気のせいだ。
私は、疑わしいものからはなるべく目を逸らして生活していた。
ある日の夜。私は仕事を終えて、迎えの牛車がとまっている路地に向かっていた。
夕方からしばらく騒がしかった町はだいぶ静かになり、石畳を踏む足音が妙に大きく響いている。軒先の明かりが柔らかく揺れ、足元に伸びた影は路地裏の闇に溶けていく。
「今日は遅くなっちゃったなー」
小さく呟いた私は少し急ぎ足で進む。頭に浮かぶのは、家で待っているだろう束宵の顔だ。いつも彼は私のことを心配している。家から出したくないという言葉だって何度も聞いている。そして、過保護だと思えるくらい念入りに、牛車の御者――これも彼の式だった――に危険がないように伝える。それが少し煩わしくもあり、けれどもそこまで私を大切に想ってくれている彼が愛おしくなる。
路地の先に停まる牛車が見えた。店の近くに牛車が停まれるような場所はなく、またこんな立派なものに乗り込む姿を見られたら、私自身が金持ちだと誤解され追剥に合うかもしれない。店に行くときは必要以上に質素な格好にしているのも、そういう理由だった。
もう安心だ、と微笑んで一歩踏み出したその瞬間、突然路地の空気が変わった。ひやりとした寒気が背筋を這い上がり、いつの間にか軒先に下げられている提灯の明かりが暗くなり、周囲の影が異様に濃くなっていることに気付いた。
「……なにか、いる?」
声を出すと同時に、背後から強い風が吹きつけてきた。振り向く暇もなく、腰を冷たいなにかに掴まれる。
「……っ!!」
驚きすぎて、声が出ない。助けを求めることも出来ずに宙に引き上げられ、見知らぬ路地裏に放り込まれた。
「っ、く」
強かに背中を打ち付けて息が詰まる。
土の匂いがする狭い路地。月明かりさえ届かない暗闇。貧民街で暮らしていた数年前まで、こんなものはいつも隣にあるものでこんなに恐怖を覚えたことはなかった。
なにか来る。
怖い。
束宵が助けてくれたあの日、妖に追いかけられていた時のことを思い出す。恐る恐る目を上げた私の前には、明らかに人ならざるものがいた。
鋭い牙が覗く裂けた口、爛々と光る赤い瞳。人の姿に似せてはいるけれども、不自然に細長い手足と逆関節の足首、そしてなにかを分泌し続けている肌。それが妖であることを明確に示している。
「や……やだ……っ!」
やっと出た声は震えて路地の向こうにいるだろう人たちまでは届かない。心臓の音が耳元で鳴り響いて、喉の奥が詰まる。私はその場に座り込んだ。
湿った足音を立てて妖が近付いてくる。逃げようとしても背後は壁だ。張り付いたような格好で、目の前の妖を目を見開いて見つめる。にたぁっと笑う妖の腕が上がって、やっと這うように逃げ出した私の近くに振り下ろされる。バシッと音がして地面が抉れる。
「ヒッ」
一発で殺せるだろうに、妖は必死で逃げようとする私の近くの地面を叩き続ける。遊ばれている。理解して悔しくなって涙が滲む。
「束宵……っ」
助けて――
必死に彼の名前を呼ぶ。しかし、出るのは掠れた声だけ。しかも、こんな声が家で待っている彼に届くわけはない。
――束宵、ごめん。私、もうダメかも。
遊ぶのにも飽きたらしい妖が背後に迫ってきた。泣いて堪るか、と妖を睨みつける。その時、路地の入口から重々しい靴音が響いた。
妖が振り返る。その身体越しに、知っている人の姿。
冷めたい月の光に照らされた上質な生地の長い衣は光り輝き、風に揺れる。その顔には、普段の穏やかさは微塵もなく、怒りと鋭い殺気が浮かんでいた。
「ね。誰に手出そうとしてんの?」
その声は低く響き、路地全体に満ちる空気を震わせる。
「彼女の血の一滴まで、全部オレのものなんだけどさぁ。こんな怖がらせて、怪我させて……簡単に祓ってなんてやらないからね」
束宵が手を振るうと、袖の中から符が舞い出る。符は光を放ちながら宙を舞い、瞬く間に術式が完成する。
「封雷剣」
彼の短い言葉と共に、青白い稲妻を纏った剣が現れる。妖は後退るが、束宵は容赦なく踏み込んだ。その瞳には容赦の欠片もない。
妖は束宵に飛びかかり、鋭い爪を振るう。束宵はほんの少し身体を捻っただけでその攻撃を躱し、剣を振り下ろす。一撃で妖怪の腕が吹き飛び、その場に黒い血が飛び散る。妖怪の咆哮が響き渡る中でも、束宵は腕を止めることはない。
「玲花に手を出して、楽に死ねると思っちゃダメだよ」
うっすらと笑みを浮かべながら、束宵は妖の身体を切り刻んでいく。手足が飛ばされて胴に穴が開き、だいぶ小さくなった身体に彼は符を投げつける。それが妖の体に触れた瞬間激しい光を放った。焼け焦げる臭いが路地に充満し、妖は苦痛に喘ぎながらも最後の抵抗を試みる。
身体を捻って飛び上がり、束宵に襲い掛かろうとした。しかし、彼は容赦なく剣を突き刺し、稲妻が妖の体を貫くと同時に、それは黒い煙となって跡形もなく消えた。
路地裏に静寂が戻り、束宵と私だけが残った。
束宵の手から剣が消えると、ゆっくり近付いてくる。彼の顔を見ると、安堵で涙が溢れ出した。
「束宵っ……!」
手を伸ばせば、唇を噛みしめた彼は私をそっと抱きしめて髪を撫でてきた。そして、普段の余裕のある態度からも、先ほどの冷徹な態度からも想像のつかないほど情けない声を出す。
「ごめん、今回は大丈夫だと思ったんだけど。俺のこと呼んでくれてありがとう」
「ううん、ううん」
言葉にならず首を左右に振れば、土にまみれているだろう私の額に唇を押し当ててくる。
「もう大丈夫だからね」
「うん」
私はその胸に顔を埋め、嗚咽を漏らす。強く抱きしめてくれた束宵は、私を抱き上げると牛車に乗り込む。
「玲花ごめんね。怖かったね」
そう言いながら、彼は牛車の中で私を求めてきた。
「ね、仕事で汗かいてるし、転んで土もついちゃってるから、汚いってば」
さすがにこの格好では応じられない。拒否しようとしても、彼は珍しく強引だった。手首を掴まれて唇を重ねられる。息が出来なくなって口を開ければ、舌を捻じ込まれる。
「んっ、んっっ」
「玲花無事で良かった。ああ、もう本当にオレの手元から離したくない。目の届かないところに行かないでよ」
「ちょ……束宵!」
「ね、どこにも行かないよね? オレと一緒にいてくれるよね?」
忙しなく手を着物の隙間に差し込んできて、余裕のない愛撫を与えられ。
私が妖にやられてしまうかもしれない、と考えた時の彼の恐怖は想像もつかないものだったようだ。泣きそうな顔で求められて、絆されてしまう。
「お願い。生きてるって、確かめさせて」
「ん……いいよ」
切なげに言われると、胸の奥がきゅんとする。彼を抱き返せば、束宵はすぐに私の中に彼自身を沈めてきたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
聖女は秘密の皇帝に抱かれる
アルケミスト
恋愛
神が皇帝を定める国、バラッハ帝国。
『次期皇帝は国の紋章を背負う者』という神託を得た聖女候補ツェリルは昔見た、腰に痣を持つ男を探し始める。
行き着いたのは権力を忌み嫌う皇太子、ドゥラコン、
痣を確かめたいと頼むが「俺は身も心も重ねる女にしか肌を見せない」と迫られる。
戸惑うツェリルだが、彼を『その気』にさせるため、寝室で、浴場で、淫らな逢瀬を重ねることになる。
快楽に溺れてはだめ。
そう思いつつも、いつまでも服を脱がない彼に焦れたある日、別の人間の腰に痣を見つけて……。
果たして次期皇帝は誰なのか?
ツェリルは無事聖女になることはできるのか?
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
婚約破棄歴八年、すっかり飲んだくれになった私をシスコン義弟が宰相に成り上がって迎えにきた
鳥羽ミワ
恋愛
ロゼ=ローラン、二十四歳。十六歳の頃に最初の婚約が破棄されて以来、数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの婚約破棄を経験している。
幸い両親であるローラン伯爵夫妻はありあまる愛情でロゼを受け入れてくれているし、お酒はおいしいけれど、このままではかわいい義弟のエドガーの婚姻に支障が出てしまうかもしれない。彼はもう二十を過ぎているのに、いまだ縁談のひとつも来ていないのだ。
焦ったロゼはどこでもいいから嫁ごうとするものの、行く先々にエドガーが現れる。
このままでは義弟が姉離れできないと強い危機感を覚えるロゼに、男として迫るエドガー。気づかないロゼ。構わず迫るエドガー。
エドガーはありとあらゆるギリギリ世間の許容範囲(の外)の方法で外堀を埋めていく。
「パーティーのパートナーは俺だけだよ。俺以外の男の手を取るなんて許さない」
「お茶会に行くんだったら、ロゼはこのドレスを着てね。古いのは全部処分しておいたから」
「アクセサリー選びは任せて。俺の瞳の色だけで綺麗に飾ってあげるし、もちろん俺のネクタイもロゼの瞳の色だよ」
ちょっと抜けてる真面目酒カス令嬢が、シスコン義弟に溺愛される話。
※この話はカクヨム様、アルファポリス様、エブリスタ様にも掲載されています。
※レーティングをつけるほどではないと判断しましたが、作中性的ないやがらせ、暴行の描写、ないしはそれらを想起させる描写があります。
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
花の精霊はいじわる皇帝に溺愛される
アルケミスト
恋愛
崔国の皇太子・龍仁に仕える女官の朱音は、人間と花仙との間に生まれた娘。
花仙が持つ〈伴侶の玉〉を龍仁に奪われたせいで彼の命令に逆らえなくなってしまった。
日々、龍仁のいじわるに耐えていた朱音は、龍仁が皇帝位を継いだ際に、妃候補の情報を探るために後宮に乗り込んだ。
だが、後宮に渦巻く、陰の気を感知した朱音は、龍仁と共に後宮の女性達をめぐる陰謀に巻き込まれて……
【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る
水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。
婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。
だが――
「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」
そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。
しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。
『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』
さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。
かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。
そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。
そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。
そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。
アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。
ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
元平民だった侯爵令嬢の、たった一つの願い
雲乃琳雨
恋愛
バートン侯爵家の跡取りだった父を持つニナリアは、潜伏先の家から祖父に連れ去られ、侯爵家でメイドとして働いていた。18歳になったニナリアは、祖父の命令で従姉の代わりに元平民の騎士、アレン・ラディー子爵に嫁ぐことになる。
ニナリアは母のもとに戻りたいので、アレンと離婚したくて仕方がなかったが、結婚は国王の命令でもあったので、アレンが離婚に応じるはずもなかった。アレンが初めから溺愛してきたので、ニナリアは戸惑う。ニナリアは、自分の目的を果たすことができるのか?
元平民の侯爵令嬢が、自分の人生を取り戻す、溺愛から始まる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる