文明トカゲ

ペン牛

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四 照魔の鏡

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「ねー、せんせー」
「なに?」
「せんせーってさ、恋愛はしたことある?」
 思わず真奈さんの横顔をまじまじと見てしまう。当の真奈さんは特に変わった様子もなく、お気に入りだという少女漫画のページをパラパラとめくっていた。
(……覚悟してたとはいえ、本当に何も教えられることがないとは)
 まぁだからこそ、こうしてただ真奈さんと世間話をしているのだが。
(教えられることがない以上、お給料はもらえませんって串矢さんに話したのに、たった一度来ていただいただけで真奈の機嫌が目に見えてよくなったから、お支払いしないわけにはいきません、だもんな)
「――ちょっと、せんせー、聞いてるの?」
 真奈さんの呼びかけに慌てて思考を打ち切ると、返事をする。
「……ないよ。真奈さんはあるの?」
「ない。恋愛したことないのって、やっぱり前に話してくれた喪服着た女のせい?」
「……男性も女性も恋愛対象だと思えないことに関しては、多分そうだと思う。でも、仮に恋愛対象だと思えたとしても、上手くいくかどうかはわからないな」
「いや、できるに決まってんじゃん。せんせー、自分の見た目過小評価しすぎだから」
 真奈さんは少女漫画を閉じると、僕の顔に自分の顔を近づけてきた。思わず頭を引くが、椅子に座っているために大して動かすことができない。
「――私、ずっと脅されてるの。もしも誰かと恋仲になったら、相手を生きたまま引きちぎって、バラバラにするって」
 真奈さんは互いの息がかかる距離で、僕の目をじっと見つめながら言った。
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