文明トカゲ

ペン牛

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四 照魔の鏡

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 トカゲの持った人間の顔の一部が、信じられないことを口にする。
「……待って、どういう、こと? だって、あなた、そろそろいいかもな、って」
「んん? あぁ、あれかぁ、あれはなぁ、そろそろ見切りをつけてもいいかもなって意味だよ。どうでもよくなったんだよ。お前、思ったよりも、育ちが悪かったしなぁ」
 その言葉を聞いた真奈さんの顔から、あらゆる感情が削げ落ちていく。
「あぁ、でもなぁ、ずっと目をかけてた女が、他のやつのもんになるのもなぁ、うん、だからお前、ここで死ね、ここで死んで、今喋らせてるこの口の代わりになれや」
「……ざけないで」
「あぁ? なんだぁ?」
「――ふざけないでって言ったんだ!! どうでもよくなった!? ここで死ね!? 口の代わりになれ!? ねぇ、私ってなんなの!? 私の今までの人生って一体なんなのよ!? あんたに怯えるだけの人生だった! あんたに苦しめられるだけの人生だった!  
 それで今度は死ね!? 私は、私は――あんたの玩具になるためだけに生まれてきたっていうの!?」
 両目から涙を溢れさせながら、真奈さんはトカゲに向かって叫ぶ。トカゲは、真奈さんに向かって手を伸ばし、頭を掴むと、
「真ぁ奈ぁ、お前よぉ、そんな当たり前のこともわからないで、生きてきたんか」
 カクン、と真奈さんの全身から力が抜け、そのまま床にへたり込む。その目には最早なんの意思も宿っていない。
 ――ヒビが入る。
「なぁ、お前よぉ、さっきから何じっと見てんだ?」
 立ち上がる。あぁ、僕は今、一体どんな顔をしているのだろう。
「んん? あぁ、そうかぁ、お前も真奈が好きなのかぁ、じゃあやっぱり、真奈が見てる前で、お前を殺した方がいいなぁ」
 トカゲの言葉を聞いて、真奈さんの視線が僕の方に向けられる。そして、
「――せんせー、生きて」
 虚ろな、一切の光が消えた目のまま、全ての力を振り絞るようにしてそう言った。そして、それを聞いた瞬間、
 ――砕け散る。
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