181 / 266
七 怨讐の皹
30
しおりを挟む
「ちょっ、せんせー、何してんの!? そんなことしないでよ! わかった。教える! 教えるから頭上げてよもー!」
頭を上げると、真奈さんは盛大な溜め息と共に、
「――もうそろそろ普通に生きていくなんて無謀な夢は諦めたら? だって。ほんっとどこまで人をイラつかせれば気が済むんだろ」
――本当は、佐治さんに言われる前に僕が決断しなければいけなかったのだ。自分が日常を生きることを選ぶのか、それとも自分の大切な人達の安全を選ぶのか。僕にはそれを選ぶ勇気すら、なかった。
ふと気がつくと、テーブルの上に投げ出すように置いていた僕の手に真奈さんの手が重ねられていた。
「せんせー……さっきよりなんかすごく辛そう。大丈夫? 具合、悪い?」
(この手を、僕は振り解けるのか? 振り解いて、たった独りで生きていくことが、僕にできるのか?)
それは――無理だ。情けないと罵られることはわかっている。自分のことしか考えていないと罵られることもわかっている。でも、僕にはできない。僕は、人に支えてもらわなければ、立って歩くことすらできやしないんだ。
頭を上げると、真奈さんは盛大な溜め息と共に、
「――もうそろそろ普通に生きていくなんて無謀な夢は諦めたら? だって。ほんっとどこまで人をイラつかせれば気が済むんだろ」
――本当は、佐治さんに言われる前に僕が決断しなければいけなかったのだ。自分が日常を生きることを選ぶのか、それとも自分の大切な人達の安全を選ぶのか。僕にはそれを選ぶ勇気すら、なかった。
ふと気がつくと、テーブルの上に投げ出すように置いていた僕の手に真奈さんの手が重ねられていた。
「せんせー……さっきよりなんかすごく辛そう。大丈夫? 具合、悪い?」
(この手を、僕は振り解けるのか? 振り解いて、たった独りで生きていくことが、僕にできるのか?)
それは――無理だ。情けないと罵られることはわかっている。自分のことしか考えていないと罵られることもわかっている。でも、僕にはできない。僕は、人に支えてもらわなければ、立って歩くことすらできやしないんだ。
0
あなたにおすすめの小説
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
いつまでもドアマットと思うなよ
あんど もあ
ファンタジー
二年前に母を亡くしたミレーネは、後妻と妹が家にやって来てからすっかり使用人以下の扱いをされている。王宮で舞踏会が開催されるが、用意されたのは妹のドレスだけ。そんなミレーネに手を差し伸べる人が……。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
異世界からの召喚者《完結》
アーエル
恋愛
中央神殿の敷地にある聖なる森に一筋の光が差し込んだ。
それは【異世界の扉】と呼ばれるもので、この世界の神に選ばれた使者が降臨されるという。
今回、招かれたのは若い女性だった。
☆他社でも公開
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる