恋愛代行業者

ぼたもち。

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ハグじゃなかった

置いて行ってもらったお金と、僕のお金でお会計をしてお店を出た。
帰りはタクシーを使わずトボトボ歩いて帰ることにした。
葵さんはハグさせたら、お仕事成功ってことにしてくれるって言ってた。なんで僕のこと抱きしめたいんだろ…。不思議でたまらない。ボーっと考えて歩いていると、ドンッと誰かにぶつかった。

「っあ、すみませ……」

慌てて顔を上げると、そこには見覚えのある顔があった。

「ん?あ、狸塚じゃん!昼は稲荷ありがとう!」
「いえ…沙織さんはここで何をされてたんですか?」
「仕事終わったとこ。そっちも?」

すごく楽しそうにニッと笑った。

「はい」
「成功したんでしょ?」

その言葉にモヤッとした。

「……分からないんです」

ポツリとつぶやくと、『分からないって?』と聞き返されてしまった。

「んー…あっ、昼のお礼だし話聞くよ?取り敢えず飲みに行こう!」

グイッと俺の腕を引いて、近くの居酒屋に入った。
それから何かのカードを見せると、個室に案内された。
な、なんだろ…。もしかして沙織さんすごい人?
沙織さんはドカッと腰掛けて、僕も座った。

「酒何飲む?」
「あ、甘いやつで…」
「はいはーい。ツマミはてきとうに頼むけどいい?」
「お願いします」

ここの常連なのか、パッと選んで店員さんを呼んだ。

「これとこれと……あとこれで」

メニューを指さして言うと、店員さんは商品を確認した。それを聞いた沙織さんはコクンと頷いた。

「すぐお持ちします」

そう言って部屋から出て行った。

「んで、分からないってのは?」
「あの…依頼主様のお相手に会ってきたんです。その方はゲイらしくて、依頼主様がウンザリしちゃって、別れたいみたいで僕が話をつけに行ったんです。変装完璧だったはずなのに何故かすぐにバレちゃって…」
「えっ!狸塚バレたの?!」

目を丸くして声をあげた沙織さんにコクンと頷いた。

「えー…あの狸塚がバレるとはなぁ」
「僕もビックリでした」
「それで?」

興味深そうに机に肘をついてニヤニヤしながら僕を見た。

「社長のおまじないが効かなくて僕パニックになって泣いちゃったんです」
「はぁ?!泣いたぁ?!」
「ゔっ…もう無理かもしれないです…」

俯いてポソッと呟いた。

「へぇー…それなら失敗って思うんじゃない?」
「続きがあります。僕は泣きながら “成功したってことにして欲しい、そして僕のことは忘れてください” って言ったんです」
「…相手はいいって?」
「いえ、条件があるって」

言うと、沙織さんは顔を顰めた。

「うわぁっ、嫌な予感しかしない」
「彼氏さんは “内緒にしてもいいけど抱かせて” って言ったんです」

そういうと、ポカーンと口を開けて固まった。それから、状況が飲み込めたのか、パチクリと瞬きをした。

「だっ、抱かせろだって?!」
「はい。でもなぜ僕なのか、何故ハグしたいのかが全く分からないんです」
「はっ…はぁ?待って狸塚」
「はい」
「抱かせろの今分かってる?」
「ハグさせろってことですよね。それくらいは僕もーー……」

ドヤッと自慢すると、僕の話を遮られた。

「違うわっ!!セックスさせろってこと!!」

声を荒げて、ドンッ!と拳で机を叩いた。

「……」
「狸塚ホントにバカだな」

セックスって?エッチってことだよね?理解した途端、火がつくようにカァッと顔が熱くなった。
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