6 / 24
ハグじゃなかった
置いて行ってもらったお金と、僕のお金でお会計をしてお店を出た。
帰りはタクシーを使わずトボトボ歩いて帰ることにした。
葵さんはハグさせたら、お仕事成功ってことにしてくれるって言ってた。なんで僕のこと抱きしめたいんだろ…。不思議でたまらない。ボーっと考えて歩いていると、ドンッと誰かにぶつかった。
「っあ、すみませ……」
慌てて顔を上げると、そこには見覚えのある顔があった。
「ん?あ、狸塚じゃん!昼は稲荷ありがとう!」
「いえ…沙織さんはここで何をされてたんですか?」
「仕事終わったとこ。そっちも?」
すごく楽しそうにニッと笑った。
「はい」
「成功したんでしょ?」
その言葉にモヤッとした。
「……分からないんです」
ポツリとつぶやくと、『分からないって?』と聞き返されてしまった。
「んー…あっ、昼のお礼だし話聞くよ?取り敢えず飲みに行こう!」
グイッと俺の腕を引いて、近くの居酒屋に入った。
それから何かのカードを見せると、個室に案内された。
な、なんだろ…。もしかして沙織さんすごい人?
沙織さんはドカッと腰掛けて、僕も座った。
「酒何飲む?」
「あ、甘いやつで…」
「はいはーい。ツマミはてきとうに頼むけどいい?」
「お願いします」
ここの常連なのか、パッと選んで店員さんを呼んだ。
「これとこれと……あとこれで」
メニューを指さして言うと、店員さんは商品を確認した。それを聞いた沙織さんはコクンと頷いた。
「すぐお持ちします」
そう言って部屋から出て行った。
「んで、分からないってのは?」
「あの…依頼主様のお相手に会ってきたんです。その方はゲイらしくて、依頼主様がウンザリしちゃって、別れたいみたいで僕が話をつけに行ったんです。変装完璧だったはずなのに何故かすぐにバレちゃって…」
「えっ!狸塚バレたの?!」
目を丸くして声をあげた沙織さんにコクンと頷いた。
「えー…あの狸塚がバレるとはなぁ」
「僕もビックリでした」
「それで?」
興味深そうに机に肘をついてニヤニヤしながら僕を見た。
「社長のおまじないが効かなくて僕パニックになって泣いちゃったんです」
「はぁ?!泣いたぁ?!」
「ゔっ…もう無理かもしれないです…」
俯いてポソッと呟いた。
「へぇー…それなら失敗って思うんじゃない?」
「続きがあります。僕は泣きながら “成功したってことにして欲しい、そして僕のことは忘れてください” って言ったんです」
「…相手はいいって?」
「いえ、条件があるって」
言うと、沙織さんは顔を顰めた。
「うわぁっ、嫌な予感しかしない」
「彼氏さんは “内緒にしてもいいけど抱かせて” って言ったんです」
そういうと、ポカーンと口を開けて固まった。それから、状況が飲み込めたのか、パチクリと瞬きをした。
「だっ、抱かせろだって?!」
「はい。でもなぜ僕なのか、何故ハグしたいのかが全く分からないんです」
「はっ…はぁ?待って狸塚」
「はい」
「抱かせろの今分かってる?」
「ハグさせろってことですよね。それくらいは僕もーー……」
ドヤッと自慢すると、僕の話を遮られた。
「違うわっ!!セックスさせろってこと!!」
声を荒げて、ドンッ!と拳で机を叩いた。
「……」
「狸塚ホントにバカだな」
セックスって?エッチってことだよね?理解した途端、火がつくようにカァッと顔が熱くなった。
帰りはタクシーを使わずトボトボ歩いて帰ることにした。
葵さんはハグさせたら、お仕事成功ってことにしてくれるって言ってた。なんで僕のこと抱きしめたいんだろ…。不思議でたまらない。ボーっと考えて歩いていると、ドンッと誰かにぶつかった。
「っあ、すみませ……」
慌てて顔を上げると、そこには見覚えのある顔があった。
「ん?あ、狸塚じゃん!昼は稲荷ありがとう!」
「いえ…沙織さんはここで何をされてたんですか?」
「仕事終わったとこ。そっちも?」
すごく楽しそうにニッと笑った。
「はい」
「成功したんでしょ?」
その言葉にモヤッとした。
「……分からないんです」
ポツリとつぶやくと、『分からないって?』と聞き返されてしまった。
「んー…あっ、昼のお礼だし話聞くよ?取り敢えず飲みに行こう!」
グイッと俺の腕を引いて、近くの居酒屋に入った。
それから何かのカードを見せると、個室に案内された。
な、なんだろ…。もしかして沙織さんすごい人?
沙織さんはドカッと腰掛けて、僕も座った。
「酒何飲む?」
「あ、甘いやつで…」
「はいはーい。ツマミはてきとうに頼むけどいい?」
「お願いします」
ここの常連なのか、パッと選んで店員さんを呼んだ。
「これとこれと……あとこれで」
メニューを指さして言うと、店員さんは商品を確認した。それを聞いた沙織さんはコクンと頷いた。
「すぐお持ちします」
そう言って部屋から出て行った。
「んで、分からないってのは?」
「あの…依頼主様のお相手に会ってきたんです。その方はゲイらしくて、依頼主様がウンザリしちゃって、別れたいみたいで僕が話をつけに行ったんです。変装完璧だったはずなのに何故かすぐにバレちゃって…」
「えっ!狸塚バレたの?!」
目を丸くして声をあげた沙織さんにコクンと頷いた。
「えー…あの狸塚がバレるとはなぁ」
「僕もビックリでした」
「それで?」
興味深そうに机に肘をついてニヤニヤしながら僕を見た。
「社長のおまじないが効かなくて僕パニックになって泣いちゃったんです」
「はぁ?!泣いたぁ?!」
「ゔっ…もう無理かもしれないです…」
俯いてポソッと呟いた。
「へぇー…それなら失敗って思うんじゃない?」
「続きがあります。僕は泣きながら “成功したってことにして欲しい、そして僕のことは忘れてください” って言ったんです」
「…相手はいいって?」
「いえ、条件があるって」
言うと、沙織さんは顔を顰めた。
「うわぁっ、嫌な予感しかしない」
「彼氏さんは “内緒にしてもいいけど抱かせて” って言ったんです」
そういうと、ポカーンと口を開けて固まった。それから、状況が飲み込めたのか、パチクリと瞬きをした。
「だっ、抱かせろだって?!」
「はい。でもなぜ僕なのか、何故ハグしたいのかが全く分からないんです」
「はっ…はぁ?待って狸塚」
「はい」
「抱かせろの今分かってる?」
「ハグさせろってことですよね。それくらいは僕もーー……」
ドヤッと自慢すると、僕の話を遮られた。
「違うわっ!!セックスさせろってこと!!」
声を荒げて、ドンッ!と拳で机を叩いた。
「……」
「狸塚ホントにバカだな」
セックスって?エッチってことだよね?理解した途端、火がつくようにカァッと顔が熱くなった。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【本編完結:改稿中】水曜日の迷いごと
咲月千日月
BL
人知れず…心に抱えているもの、ありますか?
【 准教授(弁護士) × 法科大学院生 】
純粋で不器用なゆえに生き辛さを感じている二人の、主人公目線からの等身大ピュア系ラブストーリーです。
*現代が舞台ですが、もちろんフィクションです。
*性的表現過多の回には※マークがついています。