異世界ドア

プロローグ2〜夢への第一歩〜

サッカーは俺にとって、孤独からの救いだった。その魅力に引き込まれ、俺はこのスポーツの世界に没頭した。全世界の人々が熱中するこのスポーツに身を委ね、俺は自分の居場所を見つけた。

親戚に引き取られた時からプレゼントをまともに貰ったことがなかった。誕生日もクリスマスもただの日常で、何も与えられなかった。しかし、そんな中で叔父だけは俺を少しは気にかけてくれていた。
彼はサッカー用具を買ってくれた。そのおかげで、俺は中学までサッカーを続けることができた。

「すまないな千尋くん、これまで君に裕福な暮らしを与えてやれなくて」

叔父の顔は少し寂しげな表情をしていた。彼の言葉には、申し訳なさと同時に優しさがにじんでいた。

中学3年の頃には県選抜に選ばれ、全国大会も経験した。結果は準々決勝敗退。検討した方だが、全国のレベルの高さに驚いた。

「全国には凄いやつが沢山いる。年も同い年なのに」

この中学最後の大会を気に、高校でもまたこの舞台に立ちたいと願った。だから、自ずと俺の進路は決まっていた。

「全国に出るチームじゃない。全国制覇を目指す高校に入学してこの舞台に立ちたい。そしてプロになりたい」

俺はこの髪色のせいで、よく喧嘩に巻き込まれて暴力事件を起こしていた。警察のお世話にもなったことがある。成績自体は悪くないが、内申書には自信は無かった。だがそんな不安はすぐに消し飛んだ。

「初めまして、私は東京の聖徳高校のサッカー部のコーチをしています」

その言葉を聞いた瞬間、俺の心は躍った。毎年全国高校サッカー選手権を常に見ていた俺にとって、聖徳高校は名だたる強豪校だった。

「なら話は早いんだが、君ウチの高校に来る気はないか？簡単に言うとスカウトだ」

俺はためらうことなく了解し、家へと帰った。そして、俺は2人の叔父と叔母に東京の学校へ進学したい旨を伝えた。

学費は免除、寮に住む事、仕送りも不要なことを伝えると、叔母はとても嬉しそうな表情を浮かべ、快諾した。理由は簡単に想像がつく。俺を厄介払いしたいだけだと。

叔父さんには色々お世話になったお礼だけ告げた。そして中学卒業と同時に家を出た。新しい未来が待っている。そして俺は、自分の夢を追い求めるために一歩を踏み出した。