黎明の邪龍建国記 ~魔法を使えない私と最強邪龍、なぜか結託しましたが、最後は殺そうと思います~

PolaritY

文字の大きさ
5 / 22
フォルシア国編

第5話 作戦

しおりを挟む
 ライルは事を急かすように、話を戻す。

「で、フォルシア軍はいつ来る? 策はあるのか? 『穏便な方法』はどうしろと?」

 ローゼスさんは少し考え込みながら話す。

「フォルシアの進軍速度を考えると──私が国外に出てから同じように出発したとして……この距離を魔法付きで……おおよそ5時間後、でしょうか」

 彼は空を見上げて続けた。

「今の月の位置からして……朝日が昇り始める頃には、軍は肉眼でも見えるはずです」

 言い切ってすぐ、ライルはまた急かす。

「作戦は?」

「それについては……少し考えさせてください。その間、お二方はお休みになってください。急にここまで来て、ほとんど寝ていないでしょう?」

 私は確かに、と思いながら大きくあくびをした。
 ローゼスさんは辺りを見回すが、当然瓦礫以外は何も見えない。

「……とは言っても、寝床がありませんか」


 そう困っていると、ライルが足元の瓦礫をガタガタと動かし始める。
 いくつかの瓦礫を浮かせながら、その間から壊れかけのベッドを引っ張り出した。

「これを使え、レイル。私は別にいい」

「え、わ、わかった……」

 その言葉に甘えてベッドに横たわると、ライルは私の耳元でささやいた。

「私は一つ理解したからな。快適に眠るための『ジュウ』を……」

 住。
 私がまず教えようとしていることの一つ。
 数時間前──フォルシアの施設で過ごしていた時に、寝る前に少しと思って、寝具のことを教えたのだ。

 それが功を成した……と言っていいのだろうか。


「ライルさんが起きてらっしゃるなら、こちらで作戦会議をしましょう」

 ローゼスさんはライルを連れて、少し離れた位置に座った。


 私は眠ろうとするが、心配すぎてそうはいかない。
 あの邪龍のことだ。また何か変なことを言ってないか……

 (というか、ライルのあの腕──全部見られてたよね……?)
 (でも、下手に話題に出したら逆に怪しまれるだろうし……)


 モヤモヤが止まらない私は、ついにベッドから跳ね起きた。


「やっぱり私も参加します!」

 その声に、待ってましたという顔で振り返るローゼスさん。

「おお、丁度良かった。レイルさんのことをどうするか考えていたんですが──」

「レイルは私が守るから問題ないと言っているだろう?」

「ライルさんはフォルシア軍のことを舐めすぎです! いくらあの攻撃を受け止めたライルさんとはいえ、フォルシアの部隊は強い魔法使い一人がどうにかできるものではありませんよ……」

 ライルはふと思い出したように返す。

「──そういえば、移動中のあの攻撃は一体なんだったのだ?」

 彼女はあの衝撃を思い返しながら、少しニヤつく。

「あれは──私も詳しくは知らないのですが、戦略兵器の試作品と呼ばれていたかと……」

「試作品……か。フッ……」

 ライルは口角をもう一段上げた。
 そんな彼女を口車に乗せるように、ローゼスさんが言う。

「それにしても、あの威力を凌いでみせるとは──どうやったのかぜひ教えてもらいたいところですね……」

「それについてはまた今度だな。もっとも、教えたところで私以外の奴ができるとは思わんがな」

「ははは、それはその通りですね」


 彼のこの様子に、ライルは口元こそ笑いつつも、目元は訝しんでいた。
 私は話を戻すように、作戦について彼に聞いてみる。

「結局、相手側の動きはどう想定しているんですか?」

「フォルシア軍の動きについては──まず小から中規模の、騎馬隊及び魔法戦術隊の混成で来ると想定しています」
「騎馬隊が移動支援をすることで、戦術隊の能力を最大限活用できるという基本戦術ですが……これは威力偵察にも運用されます」

「なるほど?」

「騎馬隊の戦力については──この瓦礫で馬は止まりますが、問題は魔法戦術隊の方です」

 彼は真剣な眼差しで続ける。

「……その威力は破壊ではなく、敵の魔法を封じることにあります。魔法さえ封じてしまえば、どれだけ脅威的な魔法使いであってもただの人ですからね」

「ほう?」

 ライルはその話に食い付く。


「はっきり言ってしまえば、戦術隊の個々が扱う魔法はさほど脅威ではありません。ですがだからこそ──強力な魔法使いがいない中で発達した戦術が、魔法封印なのです」

「面白いことをするな……」

「故に、どれだけライルさんが強かろうと、封じられれば一巻の終わりで──」


 それを遮るように、彼女はニヤリとして言い放った。

「では──こちらが先に相手を封印すればよい、ということだな?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...