悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜

見丘ユタ

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4章.妹君と辺境伯は揺れ動く

141.お姉様は追い詰められていた①

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 使用人たちの報告を聞いたアンゼルムは、ユリウスに意見を求めた。

「ユリウス様、やはり……」

 ディートリンデが逃走した後、ユリウスはすぐ使用人たちを集めヘンドリックを見たものがいないか聞いた。

 その結果、ヘンドリックの姿を見たものがいないことが分かった。

 そして今、屋敷中を使用人たちが探しているが、未だ二人は見つかっていない。

 右往左往する使用人やアンゼルムたちの耳に唐突に何かが弾けるような音が聞こえた。

 皆が不思議がる中、ユリウスは立ち上がると険しい表情であたりを見回す。

「……アンゼルム」

 周囲を警戒するような彼に、アンゼルムは怪訝な表情を作る。

 アンゼルムも視線を巡らせてみるが、赤を基調とした見慣れた玄関があるだけで、不審人物がいる気配もない。

「今からこの場は貴君に預ける」

 帯剣していることを確認すると、ユリウスは足早に外へと向かおうとする。

「ユリウス様……? どちらへ」

「……」

 声をかけられたユリウスは、逡巡したのか足を止めた。

 彼は言うべきか迷っていた。

 つい今し方、リーゼロッテの指輪に仕掛けられた障壁が発動された。

 魔力感知や探索魔法は完全に遮断されるが、それが分かればいくらでもやりようがある。

 指輪の魔力が発動されたと同時に、特定の音を発するように仕掛けていたのだ。

(……障壁が発動したということは、リーゼが身の危険を感じたということ……急がなければ)

 アンゼルムのことだ。

 状況を説明すればついてくると言いかねない。

 しかし屋敷の方にも、信頼できる誰かが統率として残っていて欲しかった。

(音からしてかなり遮蔽物がある……建物の中、と言うよりこの感じは……)

 いずれにせよ急がなければならないことには変わりない。

 しばし佇んだ二人の間に、彼女が現れた。

「……私がこの場を預かります」

「……継母上ははうえ?!」

 驚くアンゼルムに小さく微笑むと、ナターリエはユリウスの背中に毅然とした態度で話しかけた。

「私の前夫は騎士でした。有事の際に家を預かるのは騎士の妻の務めでございます。当主がいないならば、私がこの場を取りまとめるのが道理でございましょう」

「……継母上……」

「代わりにリーゼロッテ……娘を必ず助け出してくださいませ」

 継母の凛とした声色に、アンゼルムは背筋を伸ばした。

 彼は正直、彼女のことを侮っていた。

 父や長姉の様子ばかり伺うしかできない弱い人間だとばかり思っていた。

 しかし、今目の前にいる彼女は非常に堂々と、覚悟を持ってユリウスに申し出ている。

 それを察してか、ユリウスも彼女に向き直ると頭を下げた。

「……こちらこそ、お願いいたします。必ず御当主と御令嬢をお連れいたします。アンゼルム、行くぞ」

「はい。ですが……どちらへ?」

 アンゼルムは眉をひそめた。

「立ち入り禁止の場所だ」

 ユリウスの言葉に、以前話した場所が思い浮かぶ。

「温室……! こちらです!」

 アンゼルムは言うが早いか、庭へと駆け出した。
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