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34.カメラか、結婚か①

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「……熱は、下がりましたね」

 リアはおでこから手を離すと、ほっと息を吐いた。

「ありがとうリア」
「いえ、しかしお嬢様が風邪をひかれるとは珍しいですね」

 ギク。

 彼女の言葉に、ベッドから起きかけたわたしは顔をひきつらせた。

 あれから──アルの告白からどうやって帰宅したのか覚えていない。
 夜になるまで語らったような、逃げるようにすぐに帰ったような、彼が送ってくれたような、リアが迎えに来てくれたような……とにかく記憶があいまいだ。

 それもそのはず。その翌日、熱を出した。かなりの高熱だったらしく、3日ほどベッドの上で唸り続けた。

 おかげでパーティー翌日に寮を引き上げる予定が引き延ばされた。今、卒業生で寮内にいるのはわたしと、引き継ぎのある生徒会メンバー、そしてアルくらいだ。

 リアは湯に浸したタオルを絞ると、それをわたしに手渡した。

「真っ赤なお顔でしたし、久しぶりのパーティーでお疲れになられたのかもしれませんね」
「そ、そうねっ。そうかも。そうに違いないわっ」

 慌ててタオルを顔に当ててぐしぐし拭く。
「そんな強くこするとまた赤くなっちゃいますよ」とリアにたしなめられるが、赤くなるようにやってるんです、というか多分もうすでに赤いんです、と言いたい。

 彼女は首をかしげながらも、湯を洗面所に運ぼうと席を立った。
 ふう、危ない危ない。

 気を鎮めようと深呼吸を繰り返していると、

「あ、そういえば、きょうもお花を持って来られてましたよ。アレンドル様」

 洗面所からかけられたリアの声に、肩が震えた。ゆっくりと、おそるおそるベッドサイドテーブルを見る。
 一輪挿しの花瓶に赤い薔薇が一本。控えめな彼らしい選択だ。

 ひょっこりと顔を見せたリアが、ニヤニヤとこちらを見ている。
 ちくしょう、全部お見通しということなのか。

 あれこれと言い訳を考え──諦めた。

「リア……ちょっといいかしら……」

 観念したわたしに、彼女は満面の笑みで「はい、喜んで」と答えた。
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