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2.王太子テリー
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某乙女ゲームの悪役令嬢、コーデリアに転生したと気付いたのは、遡ること彼女が五歳の頃のこと。
父に連れられ王宮に訪問中、王子と会話している姿を王女と間違われて誘拐犯に連れ去られてしまう。
そりゃそうだ。
腰までの金髪に人形のような造形のコーデリアと王女は後ろから見たらそっくりだ。間違われても仕方がない。
そして追い詰められた誘拐犯に連れられ逃走中に、彼女は馬から落ちてしまうのだ。
瀕死の重傷を負った彼女はそれから一年眠り続け、目覚めた時には別人のように高飛車なご令嬢になっていた──というのが、本来のコーデリアの設定だった。
が、何を思ったか卒業式に向かう途中、交通事故で死んだ私の魂は落馬した彼女に宿ってしまった。
いやいや、転生するなら主人公のシルビアでしょ! 可愛くて性格もおしとやかで全方向愛されキャラ! 悪役令嬢なんておかしいって!
と内心めちゃくちゃ叫んだが、こればかりはどうしようもない。
私は仕方なしにコーデリアとして生きることにした。
彼女が断罪されるゲームの舞台、学園に入学するまではあと十年。
卒業まではあと十二年と考えると、それまでになんとか追放されるような芽を摘めれば……そう考えていた。
「……デリア、コーデリア、どうしました?」
呼び声にはっとしてそちらを見上げると、声の主が太陽のような微笑みを浮かべた。幼き日のテリー王子だ。
彼は、お見舞いと称して毎日ウォーレン家にやってきていた。
白の似合う金髪碧眼に、子供ながら柔らかな物腰の彼はまさに王子様キャラ中の王子様だ。
作中ダントツの人気を誇るキャラであり、コーデリアの婚約者でもある。ただちょっとだけアホっぽいところがあるのがタマにキズ。
彼は誘拐事件の責任を取って彼女と婚約したが、高飛車な彼女に愛情はなく、学園で出会ったシルビアに惹かれる、という典型的な乙女ゲームのシナリオを体現する存在なのだが……。
驚くべきことにシルビアが彼以外のルートを選んでも、コーデリアはもれなく追放される。
「おめでとう、シルビアお幸せに。そしてコーデリア、お前との婚約は解消する。追放だ」と、もののついでに自分の婚約破棄をぶっ込んでくるあたり、なんのギャグかと思った。
……まあ、彼は義理で婚約したようなもんだし、愛がないのは仕方がないけど、さすがにあのタイミングで婚約破棄はアホの所業だと思う。
なので、私は前々から密かにテリーが婚約破棄を狙ってるのではと思っていた。
ここで婚約破棄してしまえば、コーデリアは追放まではされない。うん、私頭いい。
「殿下、お話がございます」
「はい、なんでしょう?」
「私はもうこの通り元気ですので、殿下との婚約を解消したいのですが」
しずしずと言う私に、「は?」と目を丸くしたテリー。周りのメイドたちも口をあんぐり開けている。
「……何をいって」
「殿下はもっと、可愛い方がお似合いだと思うんですよね」
例えば、シルビアとか。
「おしとやかで、なんていうかこう、全方向愛されキャラ? って言うんですかね?」
そう、強いて言うならシルビアとか。
「私なんか高飛車で何もできないワガママな人間より、そういう子の方が殿下も幸せになれると思うんです。どうでしょう、婚約破棄をいたしませんか?」
「は?」の口のまま、ぽかんと口を開けていたテリーは、堰を切ったかのように笑い出した。肩は震え、目に涙が滲んでいる。
あのー……私そんな変なこと言ってないんですけど……むしろ未来のあなたの要望通りの婚約破棄ですよー……
困惑する私に、しばらく笑い転げた彼は、一言「……失礼しました。婚約解消は致しません」と再び笑い出しそうな顔で告げた。
その日の夜、メイドから顛末を聞いた父と母に「殿下に婚約破棄を申し出るとは何事か!」と、しこたま怒られたのは言うまでもない。
父に連れられ王宮に訪問中、王子と会話している姿を王女と間違われて誘拐犯に連れ去られてしまう。
そりゃそうだ。
腰までの金髪に人形のような造形のコーデリアと王女は後ろから見たらそっくりだ。間違われても仕方がない。
そして追い詰められた誘拐犯に連れられ逃走中に、彼女は馬から落ちてしまうのだ。
瀕死の重傷を負った彼女はそれから一年眠り続け、目覚めた時には別人のように高飛車なご令嬢になっていた──というのが、本来のコーデリアの設定だった。
が、何を思ったか卒業式に向かう途中、交通事故で死んだ私の魂は落馬した彼女に宿ってしまった。
いやいや、転生するなら主人公のシルビアでしょ! 可愛くて性格もおしとやかで全方向愛されキャラ! 悪役令嬢なんておかしいって!
と内心めちゃくちゃ叫んだが、こればかりはどうしようもない。
私は仕方なしにコーデリアとして生きることにした。
彼女が断罪されるゲームの舞台、学園に入学するまではあと十年。
卒業まではあと十二年と考えると、それまでになんとか追放されるような芽を摘めれば……そう考えていた。
「……デリア、コーデリア、どうしました?」
呼び声にはっとしてそちらを見上げると、声の主が太陽のような微笑みを浮かべた。幼き日のテリー王子だ。
彼は、お見舞いと称して毎日ウォーレン家にやってきていた。
白の似合う金髪碧眼に、子供ながら柔らかな物腰の彼はまさに王子様キャラ中の王子様だ。
作中ダントツの人気を誇るキャラであり、コーデリアの婚約者でもある。ただちょっとだけアホっぽいところがあるのがタマにキズ。
彼は誘拐事件の責任を取って彼女と婚約したが、高飛車な彼女に愛情はなく、学園で出会ったシルビアに惹かれる、という典型的な乙女ゲームのシナリオを体現する存在なのだが……。
驚くべきことにシルビアが彼以外のルートを選んでも、コーデリアはもれなく追放される。
「おめでとう、シルビアお幸せに。そしてコーデリア、お前との婚約は解消する。追放だ」と、もののついでに自分の婚約破棄をぶっ込んでくるあたり、なんのギャグかと思った。
……まあ、彼は義理で婚約したようなもんだし、愛がないのは仕方がないけど、さすがにあのタイミングで婚約破棄はアホの所業だと思う。
なので、私は前々から密かにテリーが婚約破棄を狙ってるのではと思っていた。
ここで婚約破棄してしまえば、コーデリアは追放まではされない。うん、私頭いい。
「殿下、お話がございます」
「はい、なんでしょう?」
「私はもうこの通り元気ですので、殿下との婚約を解消したいのですが」
しずしずと言う私に、「は?」と目を丸くしたテリー。周りのメイドたちも口をあんぐり開けている。
「……何をいって」
「殿下はもっと、可愛い方がお似合いだと思うんですよね」
例えば、シルビアとか。
「おしとやかで、なんていうかこう、全方向愛されキャラ? って言うんですかね?」
そう、強いて言うならシルビアとか。
「私なんか高飛車で何もできないワガママな人間より、そういう子の方が殿下も幸せになれると思うんです。どうでしょう、婚約破棄をいたしませんか?」
「は?」の口のまま、ぽかんと口を開けていたテリーは、堰を切ったかのように笑い出した。肩は震え、目に涙が滲んでいる。
あのー……私そんな変なこと言ってないんですけど……むしろ未来のあなたの要望通りの婚約破棄ですよー……
困惑する私に、しばらく笑い転げた彼は、一言「……失礼しました。婚約解消は致しません」と再び笑い出しそうな顔で告げた。
その日の夜、メイドから顛末を聞いた父と母に「殿下に婚約破棄を申し出るとは何事か!」と、しこたま怒られたのは言うまでもない。
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