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護衛依頼編
4-3 クラン『灼熱の戦姫』リーダーのマチルダさん
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隊列は、本隊の馬車が前2台、その後ろにシルバー冒険者のいる馬車、次にブロンズ組、次の村までのシルバー組、最後に俺たちがいる馬車の順番に決まった。ブロンズランクの冒険者を真ん中に置いて擁護する形だ。本来正規の手続きを踏んでない追尾組を守る必要はないのだが『灼熱の戦姫』のリーダーは腕に自信があるのか人が良いのかは分からないが、しっかり駆け出し組も守ってくれるようだ。
『灼熱の戦姫』のメンバーは全員馬に乗っており、前に4人、最後尾に2名付いて守ってくれている。
馬、欲しいけど、世話が大変だと聞いたからな……それに俺たち馬より速いしね。
でも馬、可愛いな。うーっ、乗って見たい。フェイも気になるのか横を歩いてる馬をちらちら見ている。
サクエラさんの馬車は幌付きで、軽トラックより若干小さめの小型の物で馬一頭で牽引している。競走馬の様なスレンダーな物ではなく、道産子馬のような逞しい体格をしている。スピードは出ないが、余裕で3人を乗せた馬車を引っ張っている。
若干馬たちは、フェイに怯えていると言うより、警戒しているような感じだ。馬は警戒心が強い臆病な生き物だとどこかで聞いた気がするが、フェイの中身は竜なのだ。なにか敏感に感じ取っているのかも知れない。
町から4時間ほど進んだのだが、まだ一度も敵に遭遇していない。
あまりにも退屈なので御者席でいろいろサクエラさんに話を聞いていた。
「スライムすら出ないんですね? いつもこんな感じですか?」
「いえいえ、つい最近町の衛兵が50人規模で街道の魔獣を狩りながら、誘拐盗賊団の拠点を壊滅させたじゃないですか。まだ1週間ほどしか経ってないですからね。この辺は狩りつくされて安全になってるのですよ。そもそも町の周辺エリアは衛兵が定期的に巡回してくれてますのでそれほど魔獣も出ませんよ」
「そうですか、何にも出てこないので、なんか日当泥棒のような気がしてきて、居心地悪いのですよ」
「町から離れれば離れるだけ危険度は増しますからその時にお願いします。このまま何もないのが一番良いのですよ。一人でも死人が出たら、その旅は到着するまで憂鬱な雰囲気のままですからね」
経験者の話は為になるな……。
「そうでしょうね……仲間が死んで笑えるはずないですものね。自分の仲間が死んでるのに別PTの者がにこにこしてたらそれはそれで癇に障るでしょうし、雰囲気は最悪でしょう。サクエラさんはそういう経験があるのですか?」
「ええ、何回かありますね。死んでしまうのは大抵私たちが雇えるような低ランク冒険者です。メインPTの命令を無視して、素材に目がくらんで突っ込んで行って返り討ちで死ぬパターンが多いです」
「マジありそうですね。あ! すみません、ちょっと席外しますね。フェイ、ちゃんと見守りするんだぞ」
「はい、兄様いってらっしゃい」
俺はさっと馬車の御者席から飛び降りて林の中に入って行った。
「あの、フェイさん? リョウマ君はお手洗いでしょうか?」
「いえ、おそらくはですが、兄様は何か見つけたのではないでしょうか」
「何かとは魔獣とかですか?」
「魔獣なら一応報告すると思いますので、おそらく食材か薬草などの素材ではないでしょうか。私も兄様が帰ってくるまでは分かりません」
「そうですか……一応隊を離れるときはリーダーに報告するのが基本でして、報告無しで隊を離れると怒られちゃいます」
「そうなのですか? それは知らずに申し訳ないです。兄様が帰ってきたらちゃんと伝えますね」
「お願いします。今回が護衛依頼初という事ですので誰も怒らないと思いますし。この辺は危険も少ないでしょうから大丈夫でしょう。フェイさんたちはずっと兄妹で旅しているのかな?」
「私は兄様が迎えに来てくれるまで、ずっと神殿で待ってました。最近になってやっと迎えに来てくれたのです。兄様は約束を守ってちゃんと迎えに来てくれました」
「そうですか、リョウマ君は優しそうですからね。フェイさんの事も随分気にかけているようですし、仲の良い兄妹ですね」
「兄様は優しいですが、時々意地悪でもあります。あ、帰ってきました」
「ただいま、薬草類は神殿に近い方が良い物があるんだな。この辺のはせいぜい中級の2級程度までだ。フェイの好きな香りの良い旨いキノコが有ったぞ。今晩バターソテーにして出してやる」
「ホントですか兄様! 夕飯が楽しみです。それはそうと、隊列から離れる時はリーダーのマチルダさんに声を掛けていかないといけないそうですよ」
「そうなのか? うん、まあそうだな……勝手に皆がウロチョロしてたら纏まりも規律もないよな。以後気を付けよう」
その後も何事もなくお昼の休憩地点までやって来た。なにも魔獣が出なかった為、予定より1時間早く着いたそうだ。ルートは確立されており、大体の到着時間も予測できるのでトイレや多少お腹が空いても行動は変えないらしい。お昼の休憩時間も90分と決まっており、馬を休ませるのがメインのようだ。
休憩時間に入ると早速他の奴らが俺たちに集まってきた。
男はフェイに、女は俺に、根掘り葉掘りと聞いてくる。マジウザイ……これが予想できたから護衛依頼はしたくなかったんだよ。フェイにすり寄って鼻の下を伸ばしてる奴等を見て切れかかったときにサクエラさんが助け舟を出してくれた。
「リョウマ君、フェイさん、どうも午後から雨が降りそうです。馬車の幌をもう1枚重ねたいので手伝ってもらっていいですか?」
「はい、フェイ手伝いに行くぞ!」
馬車の近くまで行くとサクエラさんは、『有名人は大変ですね』と笑っていたが、こっちはキレる寸前までイラついていたのだ。
「サクエラさんありがとうございました。笑い事じゃないですよ、爆発寸前でした。フェイ、フレンド登録なんか絶対するんじゃないぞ。お前アホの子だから、言っとかないとホイホイ言われるままにしそうだからな」
「アホの子って酷いです……フレンド申請拒否に設定してますので大丈夫ですよ。それでもしつこかったので、サクエラさんに感謝です」
「皆の気持ちも分かってしまうので、何とも言えないですが、どういたしましてです」
「サクエラさん、午後から雨が降っても移動はするのでしょうか?」
「小雨ぐらいなら当然移動しますが、道がぬかるむ程だと移動が困難になるので、近場の村までは移動しますが最悪その村で数日足止めの時もあります。夏のこの時期は雨季と違って夕方にドカッと降ってすぐあがるのでぬかるむ程にはならないと思います」
でも濡れるのは嫌だな【レインガード】とか命名して、空気の膜で結界を張るオリジナルでも作るかな。
『……マスター、さしでがましいのですが、既にエアコン魔法の空気の膜で結界を張っています。同系統の魔法は干渉し合うのでできませんね。新たに作るよりエアコン魔法に組み込んだ方がよろしいかと……』
『そうだな、そうするよ。『物の出入りは干渉されない』という部分を、『術者の望まない物は弾く』とかでいいかな?』
『……それは止めた方がいいです。その条件だとマジックシールドより難易度が高くなって、もはや生活魔法の域を出てしまいます。MP消費も格段に上がりますし、利用効率で考えたら無駄な高機能ですね。シールド系は戦闘時だけ使えればいいのです。なので、雨と認識した物だけ弾くようにしたほうが効果的です』
『確かに防御系を張りっぱなしにするにしても、マジックシールドの方がMP的にも効率的か……』
「リョウマ君、どうしました?」
「兄様は不意に考え事に没頭する事がありますが、ほっておいたほうがいいです。時々ブツブツ独り言とか言うかもしれませんが気にしないよう温かい目で見てあげてください」
「おい! 聞こえているんだぞ、俺を変人みたいく言うんじゃない」
【高速思考】発動中なので、本来周りからすれば一瞬の事なのだが、違和感を持たれるほど長い時間随分考え込んでいたようだ。
休憩が終わり出発したのだが、相変わらず暇をしていた。昼食は皆に合わせて硬いパンに干し肉を出して済ませたのだが、フェイがむちゃくちゃ不満げな顔をしていた。これが旅の普通の食事なんだと、皆のと比べて同じものだと納得させたが、不満顔丸出しでふくれっ面をしていた。
「フェイはちょっと贅沢に慣れ過ぎているな。皆と同じなんだからそんな顔をするんじゃない」
文句は言わなかったが、プイッてして黙り込んでいる。フェイは食い意地がちょっと汚いんだよな。
出発して3時間ほどたったあたりから、ちらほら魔獣が出始めたがスライムや昆虫系の弱いモノばかりで、ブロンズランクの4人が相手をして狩っていた。
何度目かの戦闘中にリーダーのマチルダさんが寄ってきて声を掛けてきた。
「リョウマ君たちは冒険者に成ったばかりだと、受付嬢のニリスさんから聞いていますが、経験値とかはいいのかな? 戦闘をブロンズ組に全て譲っているようですが、彼らより君たちの方が冒険者歴は浅いのですよ?」
「ええ問題ないです。戦闘経験は兄妹2人の時の方が稼げますし、知ってると思いますがキング討伐やら盗賊団捕縛の件で金銭的にも余裕がありますので。今回護衛依頼に参加したのは3つ同行依頼を消化すればシルバーランクになれるとニリスさんに勧められたからなのです」
「そうですか、私も君たちの事はニリスさんからよろしくと頼まれています。分からない事や不都合があったならすぐに言ってください」
「はい、ありがとうございます。その……休憩中の質問攻めや、フェイが男たちが言い寄るので嫌がっています。どうにかならないですかね? 強制排除してもいいのですが、初日に脅してしまっては彼らも残りの数日緊張しっぱなしになって気疲れするのも可哀想かなって……あまり調子に乗るようなら〆ますが」
マチルダさんは人が良さそうだったので相談してみた。
「いやーごめんなさいね。私たちも君たち兄妹には興味があったので、ついつい距離感を間違ったみたいですね。皆にもそれとなく注意しておくので許してください」
「はい、謝罪を受け取ります。話は変わりますが時々ふらっと隊列から抜けてもいいでしょうか? もちろんフェイに護衛はさせておきますので」
「なにか理由があるのです?」
「街道沿いにある素材や食材集めですね。目視や匂いとかがメインなのでせいぜい抜けても10分程で戻ってきますし、フェイが居れば護衛も問題ないですしね」
「もし君が抜けているその10分の間に、盗賊に襲われてフェイちゃんが乱暴されたらどうするのです? 絶対ないとは言えない事ですよ」
「いえ、絶対ないですね」
「何故そんなにはっきり言えるのです? 少し護衛依頼を甘く見過ぎているのではないですか?」
「あはは、まずフェイをどうにかできる盗賊なんていません。それに俺は高レベルの探索スキル持ちです。隠密系スキル持ちが居ても、俺のスキルの方が優秀ですので100%看破できます」
「随分自分たちに自信があるのですね。リョウマ君、『井の中の蛙』という言葉を知っていますか?」
エッ! こっちにもあるんだ? その事の方がびっくりだよ。初心者扱いで心配して言ってくれているのだろうけど、相手するのも面倒な事だ。
「その言葉は知っていますが、兄弟二人だけでコロニー4つとキング討伐は『井の中の蛙』とバカにされるような実力なのでしょうか? そこまで言うのですから『灼熱の戦姫』の皆様も当然キングやクイーンごとき簡単に倒せるんですよね? 戦闘は全部お任せします」
正直マチルダさんはどっちかと言うと好感の持てる人物だ。
『灼熱の戦姫』のメンバーも皆、良い子たちが揃ってる。ニリスさんがお勧めするだけの事はある。
だが朝からフェイに対する卑猥な視線や、興味本位の質問攻めでうんざりしている。
これ以上サクエラさん以外と話したくないと言うのが本音だ。
「ふぅ、まぁ戦闘に関しては実力はあるのでしょうけど、護衛依頼は協調性を磨くのも目的の一環ですからね。そうピリピリするものじゃないよ」
あなたたちがピリピリさせてるんだろうが!と言いたかったが、我慢した……。
『灼熱の戦姫』のメンバーは全員馬に乗っており、前に4人、最後尾に2名付いて守ってくれている。
馬、欲しいけど、世話が大変だと聞いたからな……それに俺たち馬より速いしね。
でも馬、可愛いな。うーっ、乗って見たい。フェイも気になるのか横を歩いてる馬をちらちら見ている。
サクエラさんの馬車は幌付きで、軽トラックより若干小さめの小型の物で馬一頭で牽引している。競走馬の様なスレンダーな物ではなく、道産子馬のような逞しい体格をしている。スピードは出ないが、余裕で3人を乗せた馬車を引っ張っている。
若干馬たちは、フェイに怯えていると言うより、警戒しているような感じだ。馬は警戒心が強い臆病な生き物だとどこかで聞いた気がするが、フェイの中身は竜なのだ。なにか敏感に感じ取っているのかも知れない。
町から4時間ほど進んだのだが、まだ一度も敵に遭遇していない。
あまりにも退屈なので御者席でいろいろサクエラさんに話を聞いていた。
「スライムすら出ないんですね? いつもこんな感じですか?」
「いえいえ、つい最近町の衛兵が50人規模で街道の魔獣を狩りながら、誘拐盗賊団の拠点を壊滅させたじゃないですか。まだ1週間ほどしか経ってないですからね。この辺は狩りつくされて安全になってるのですよ。そもそも町の周辺エリアは衛兵が定期的に巡回してくれてますのでそれほど魔獣も出ませんよ」
「そうですか、何にも出てこないので、なんか日当泥棒のような気がしてきて、居心地悪いのですよ」
「町から離れれば離れるだけ危険度は増しますからその時にお願いします。このまま何もないのが一番良いのですよ。一人でも死人が出たら、その旅は到着するまで憂鬱な雰囲気のままですからね」
経験者の話は為になるな……。
「そうでしょうね……仲間が死んで笑えるはずないですものね。自分の仲間が死んでるのに別PTの者がにこにこしてたらそれはそれで癇に障るでしょうし、雰囲気は最悪でしょう。サクエラさんはそういう経験があるのですか?」
「ええ、何回かありますね。死んでしまうのは大抵私たちが雇えるような低ランク冒険者です。メインPTの命令を無視して、素材に目がくらんで突っ込んで行って返り討ちで死ぬパターンが多いです」
「マジありそうですね。あ! すみません、ちょっと席外しますね。フェイ、ちゃんと見守りするんだぞ」
「はい、兄様いってらっしゃい」
俺はさっと馬車の御者席から飛び降りて林の中に入って行った。
「あの、フェイさん? リョウマ君はお手洗いでしょうか?」
「いえ、おそらくはですが、兄様は何か見つけたのではないでしょうか」
「何かとは魔獣とかですか?」
「魔獣なら一応報告すると思いますので、おそらく食材か薬草などの素材ではないでしょうか。私も兄様が帰ってくるまでは分かりません」
「そうですか……一応隊を離れるときはリーダーに報告するのが基本でして、報告無しで隊を離れると怒られちゃいます」
「そうなのですか? それは知らずに申し訳ないです。兄様が帰ってきたらちゃんと伝えますね」
「お願いします。今回が護衛依頼初という事ですので誰も怒らないと思いますし。この辺は危険も少ないでしょうから大丈夫でしょう。フェイさんたちはずっと兄妹で旅しているのかな?」
「私は兄様が迎えに来てくれるまで、ずっと神殿で待ってました。最近になってやっと迎えに来てくれたのです。兄様は約束を守ってちゃんと迎えに来てくれました」
「そうですか、リョウマ君は優しそうですからね。フェイさんの事も随分気にかけているようですし、仲の良い兄妹ですね」
「兄様は優しいですが、時々意地悪でもあります。あ、帰ってきました」
「ただいま、薬草類は神殿に近い方が良い物があるんだな。この辺のはせいぜい中級の2級程度までだ。フェイの好きな香りの良い旨いキノコが有ったぞ。今晩バターソテーにして出してやる」
「ホントですか兄様! 夕飯が楽しみです。それはそうと、隊列から離れる時はリーダーのマチルダさんに声を掛けていかないといけないそうですよ」
「そうなのか? うん、まあそうだな……勝手に皆がウロチョロしてたら纏まりも規律もないよな。以後気を付けよう」
その後も何事もなくお昼の休憩地点までやって来た。なにも魔獣が出なかった為、予定より1時間早く着いたそうだ。ルートは確立されており、大体の到着時間も予測できるのでトイレや多少お腹が空いても行動は変えないらしい。お昼の休憩時間も90分と決まっており、馬を休ませるのがメインのようだ。
休憩時間に入ると早速他の奴らが俺たちに集まってきた。
男はフェイに、女は俺に、根掘り葉掘りと聞いてくる。マジウザイ……これが予想できたから護衛依頼はしたくなかったんだよ。フェイにすり寄って鼻の下を伸ばしてる奴等を見て切れかかったときにサクエラさんが助け舟を出してくれた。
「リョウマ君、フェイさん、どうも午後から雨が降りそうです。馬車の幌をもう1枚重ねたいので手伝ってもらっていいですか?」
「はい、フェイ手伝いに行くぞ!」
馬車の近くまで行くとサクエラさんは、『有名人は大変ですね』と笑っていたが、こっちはキレる寸前までイラついていたのだ。
「サクエラさんありがとうございました。笑い事じゃないですよ、爆発寸前でした。フェイ、フレンド登録なんか絶対するんじゃないぞ。お前アホの子だから、言っとかないとホイホイ言われるままにしそうだからな」
「アホの子って酷いです……フレンド申請拒否に設定してますので大丈夫ですよ。それでもしつこかったので、サクエラさんに感謝です」
「皆の気持ちも分かってしまうので、何とも言えないですが、どういたしましてです」
「サクエラさん、午後から雨が降っても移動はするのでしょうか?」
「小雨ぐらいなら当然移動しますが、道がぬかるむ程だと移動が困難になるので、近場の村までは移動しますが最悪その村で数日足止めの時もあります。夏のこの時期は雨季と違って夕方にドカッと降ってすぐあがるのでぬかるむ程にはならないと思います」
でも濡れるのは嫌だな【レインガード】とか命名して、空気の膜で結界を張るオリジナルでも作るかな。
『……マスター、さしでがましいのですが、既にエアコン魔法の空気の膜で結界を張っています。同系統の魔法は干渉し合うのでできませんね。新たに作るよりエアコン魔法に組み込んだ方がよろしいかと……』
『そうだな、そうするよ。『物の出入りは干渉されない』という部分を、『術者の望まない物は弾く』とかでいいかな?』
『……それは止めた方がいいです。その条件だとマジックシールドより難易度が高くなって、もはや生活魔法の域を出てしまいます。MP消費も格段に上がりますし、利用効率で考えたら無駄な高機能ですね。シールド系は戦闘時だけ使えればいいのです。なので、雨と認識した物だけ弾くようにしたほうが効果的です』
『確かに防御系を張りっぱなしにするにしても、マジックシールドの方がMP的にも効率的か……』
「リョウマ君、どうしました?」
「兄様は不意に考え事に没頭する事がありますが、ほっておいたほうがいいです。時々ブツブツ独り言とか言うかもしれませんが気にしないよう温かい目で見てあげてください」
「おい! 聞こえているんだぞ、俺を変人みたいく言うんじゃない」
【高速思考】発動中なので、本来周りからすれば一瞬の事なのだが、違和感を持たれるほど長い時間随分考え込んでいたようだ。
休憩が終わり出発したのだが、相変わらず暇をしていた。昼食は皆に合わせて硬いパンに干し肉を出して済ませたのだが、フェイがむちゃくちゃ不満げな顔をしていた。これが旅の普通の食事なんだと、皆のと比べて同じものだと納得させたが、不満顔丸出しでふくれっ面をしていた。
「フェイはちょっと贅沢に慣れ過ぎているな。皆と同じなんだからそんな顔をするんじゃない」
文句は言わなかったが、プイッてして黙り込んでいる。フェイは食い意地がちょっと汚いんだよな。
出発して3時間ほどたったあたりから、ちらほら魔獣が出始めたがスライムや昆虫系の弱いモノばかりで、ブロンズランクの4人が相手をして狩っていた。
何度目かの戦闘中にリーダーのマチルダさんが寄ってきて声を掛けてきた。
「リョウマ君たちは冒険者に成ったばかりだと、受付嬢のニリスさんから聞いていますが、経験値とかはいいのかな? 戦闘をブロンズ組に全て譲っているようですが、彼らより君たちの方が冒険者歴は浅いのですよ?」
「ええ問題ないです。戦闘経験は兄妹2人の時の方が稼げますし、知ってると思いますがキング討伐やら盗賊団捕縛の件で金銭的にも余裕がありますので。今回護衛依頼に参加したのは3つ同行依頼を消化すればシルバーランクになれるとニリスさんに勧められたからなのです」
「そうですか、私も君たちの事はニリスさんからよろしくと頼まれています。分からない事や不都合があったならすぐに言ってください」
「はい、ありがとうございます。その……休憩中の質問攻めや、フェイが男たちが言い寄るので嫌がっています。どうにかならないですかね? 強制排除してもいいのですが、初日に脅してしまっては彼らも残りの数日緊張しっぱなしになって気疲れするのも可哀想かなって……あまり調子に乗るようなら〆ますが」
マチルダさんは人が良さそうだったので相談してみた。
「いやーごめんなさいね。私たちも君たち兄妹には興味があったので、ついつい距離感を間違ったみたいですね。皆にもそれとなく注意しておくので許してください」
「はい、謝罪を受け取ります。話は変わりますが時々ふらっと隊列から抜けてもいいでしょうか? もちろんフェイに護衛はさせておきますので」
「なにか理由があるのです?」
「街道沿いにある素材や食材集めですね。目視や匂いとかがメインなのでせいぜい抜けても10分程で戻ってきますし、フェイが居れば護衛も問題ないですしね」
「もし君が抜けているその10分の間に、盗賊に襲われてフェイちゃんが乱暴されたらどうするのです? 絶対ないとは言えない事ですよ」
「いえ、絶対ないですね」
「何故そんなにはっきり言えるのです? 少し護衛依頼を甘く見過ぎているのではないですか?」
「あはは、まずフェイをどうにかできる盗賊なんていません。それに俺は高レベルの探索スキル持ちです。隠密系スキル持ちが居ても、俺のスキルの方が優秀ですので100%看破できます」
「随分自分たちに自信があるのですね。リョウマ君、『井の中の蛙』という言葉を知っていますか?」
エッ! こっちにもあるんだ? その事の方がびっくりだよ。初心者扱いで心配して言ってくれているのだろうけど、相手するのも面倒な事だ。
「その言葉は知っていますが、兄弟二人だけでコロニー4つとキング討伐は『井の中の蛙』とバカにされるような実力なのでしょうか? そこまで言うのですから『灼熱の戦姫』の皆様も当然キングやクイーンごとき簡単に倒せるんですよね? 戦闘は全部お任せします」
正直マチルダさんはどっちかと言うと好感の持てる人物だ。
『灼熱の戦姫』のメンバーも皆、良い子たちが揃ってる。ニリスさんがお勧めするだけの事はある。
だが朝からフェイに対する卑猥な視線や、興味本位の質問攻めでうんざりしている。
これ以上サクエラさん以外と話したくないと言うのが本音だ。
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