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商都ハーレン編
5-3 お約束的なヤラレキャラ
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イリスさんと最初の個室で契約の確認事項を行っている。
「ガラ氏から許可が出ているので、狼と虎の分は先に支払うわね。今日の依頼分は剥ぎ取り後の魔石の状態を見て査定するからもう少し待っててね。あと、バナムの報酬もこっちで受け取るんだったね」
「それはやっぱりいいです。向こうで受け取ります。どっちにしろ行かないといけないので向こうの分はあっちで処理してもらいます」
「了解、他に何か聞きたい事はある?」
「バナム行きの護衛依頼を見繕ってください」
「実は3日後出発予定の護衛依頼をリョウマ君用に確保していたんだけどね……」
「ダメになったのですか?」
「いえ違うわ、ニコラス商会のガラ氏が指名依頼をしてきたの。2人に護衛をしてほしいそうよ。そっちの方が凄く条件が良いし、指名依頼で高評価がもらえると、ランクアップ時の査定ポイントがいいのよ」
「でも確か『灼熱の戦姫』が帰りも護衛するはずですよ? 彼女たちは解雇ですか?」
「勿論彼女たちも一緒よ」
「兄様! フェイはそれ受けたいです」
「フェイはソシアさんと仲良くなっていたからな。依頼料はどうなってます」
「それがね、1日1人5万ジェニーだそうよ」
「それって破格じゃないです? マチルダさんのところでも2万ジェニーとか言ってましたよ」
「実はこの依頼には条件があるのよ。よく分かんないのだけど、移動中の5日分の料理を頼みたいそうよ。料理人でもないリョウマ君になんでこんな依頼なのか不思議だけど、指名依頼は高ポイントなので、王狼の件と合わせてバナムに戻って依頼達成報告をした時点でシルバーランクに成れると思うわ。食事の提供対象は商人2名、御者2名『灼熱の戦姫』6名とあなたたちの分だそうよ」
「商人は4人と思っていましたが、2名は御者だったんですね」
「え? 5日も一緒に居て会話とかしてないの?」
「商人の方はガラさんとしか話してない気が……してないですね」
「御者は使用人だったり、奴隷だったりして基本的に身分が低いの。用が無い限りは御者の方から話し掛ける事は無いのよ。そう躾けられているから、リョウマ君の方から話しを振ってあげるぐらいの配慮はしようね」
「分かりました、アドバイスありがとうございます。旅の間、御者の人も商人と思ってましたよ」
「フェイは知ってたか?」
「フェイも商人の人と思ってました」
「だよな、フェイの狩った虎をじっと見て査定してたよな?」
「あの2人の御者はガラさんの所の見習なので、一応駆け出し商人って所かな。御者として連れ回しているぐらいなので、弟子としても優秀なんだと思う。いずれはどこかに支店を構えるようになる人たちかもね」
個室に行き、フェイとギルドカードを提示して、書類にサインをしたら、368万ジェニーも手渡された。
戦闘時フェイと俺との距離があったため、カードの判定ではどっちも個人討伐扱いになっていた。狼は俺の単独討伐、虎はフェイの単独討伐だ。配当は狼が100万から1割ギルドに支払い90万、虎が300万から1割引いて270万、計360万の計算だ。ちなみに8万はサクエラさんの5日分の護衛報酬ね。ヒャホー俺たち超リッチ。
しかもこれはあくまで依頼料であって、実際はこれから現物査定をし、その分の差額分がさらに入る。仮に虎が依頼時より暴落していて価格が300万より下だった場合でも先に受け取った270万の報酬は満額貰えるそうだ。もし、400万で売れたなら差額の100万程が更に手に入る。ガラさんが欲張って収益の半分とか言ってきたら貰える額は少なくなるのだが。今回魔石は売らないので、虎に関しては逆に返さないといけないかもしれないと思ってる。
「イリスさん、さっきのガラさんの指名依頼、受けようと思いますので手配お願いします」
「了解したわ、この契約書にサインお願い。ガラさんの方は後日来るそうよ、それでいいかしら?」
「信用してますので、後日のサインで結構ですよ」
「一応言っておくけど、初の人とか知らない人間との契約は絶対その場で当人同士でやるのよ。そして契約書は必ず3枚作り、1枚はギルドに預け、契約終了でお金を受け取るまでは1枚は自分で保管することを忘れないでね。人任せに先にサインして後で見たらいろいろ追加されてて中身が全然違ってたという事もあるのですからね」
「はい、気を付けます。ちょっと尋ねますが、北の湿地帯にいる水牛って、今、1頭当たり相場はどのくらいしてますか?」
「ここ1年狩られてないので、相当値上がりしてるわ。オークは常に供給されてるので屋台で串焼きで出されるほどなのに、牛肉は全く出て無いわね。ちょっと待ってね……討伐依頼が8件も出てるわね、10万~70万よ。10万は古い依頼だし安すぎるから却下ね。次が40万ね、この依頼もちょっと古いかな。要交渉だね、次が50万、大体この辺が妥当かな50万~65万が相場ね。70万のは期日指定の依頼なのでちょい高めなのね。誕生祝に欲しいからその3日前までの期日に持っていけばこの値段だそうよ」
「3日前というのは、熟成期間が要るからですね。でも50万以上が6件あるんですね。それとワニはどれくらいでしょうか」
「ワニって、キラークロコダイルの事かな? あれは言い値で売れるわ。魔石も大きいし相場は150~200万ほどしているわね。お肉も牙も魔石も何より皮が高値で取引されてるわ。あの湿地帯の中の魔獣では単体価格で言ったら一番ね。でもリョウマ君こんなこと聞いてどうするの?」
「狩りですよ、肉狩りイベント発生です!」
「何言ってるの! 無茶よ、そんな無謀な事受けさせないわよ!」
「そう言われると思って『灼熱の戦姫』とレイドを組んでいきます」
「それでも無茶よ! あそこはゴールドランク者20人規模で行くような所よ」
「正直に言いますと、俺一人で余裕なんですが、折角なので小遣い稼ぎにどうかと彼女らを誘っただけです。別に断られていたとしても、フェイと2人で行ってました。ほんとに余裕ですからイリスさん、変に気を使ってレイドPTを20人以上にしようとか考えて、他の冒険者に声掛けしたりしないでくださいね。超有難迷惑なので、もし余計な事をされたら2度とギルドを通して仕事をしませんよ」
「うっ、でも若い冒険者が無茶して死なないように配慮するのも受付嬢の大事な仕事なのよ?」
「キングと王狼を単独で瞬殺できるのですよ? フェイだってほらこの通り」
俺はフェイのサーベルタイガーの狩りシーンの動画を見せた。
「フェイちゃん強い! って言うかなにこれ! 素手で倒したの? 格闘家でもあるまいし! その細い足で信じられない!」
「言っておきますが、俺たち兄妹のメインはあくまで魔法ですからね。イリスさんが余計な事して、むさい冒険者が寄ってくるようになったら、もうここには来ないで、直接商人ギルドの方に狩った獲物を持込みしますからね」
「分かったわよ、でも十分気を付けてね」
「『命大事に!』が俺たち兄妹の方針なので安心してください」
契約も済み、小部屋を出て2階のラウンジに行ったら『灼熱の戦姫』が沢山の冒険者に囲まれていた。あの中に入って行きたくなかったが1時間程待たせてしまっている。
知らん顔して逃げるのもないだろうと思い声を掛けた。
「すみませんお待たせしました。ところで、この騒ぎはどうしたのですか?」
まさか、ガラさんに秘密にしてほしいと言われたのに王狼の事をしゃべったんじゃないだろうな。
「ん! いつもこんな感じ! うざい!」
「いつもなら報告とギルドカードの更新を済ませたらさっさとギルドを出るんだけど、今日はラウンジに腰を掛けたので私たちとお近づきになりたい人たちが声を掛けてきてるのよ」
疑ってごめんなさい! 俺たちが遅くなったせいですね。ほんとすいませんです。
「まぁ、綺麗な人が揃ってますから……気持ちは解りますが、逆効果でしょうね」
「何が逆効果なんだよ兄ちゃん……めちゃくちゃ良い女侍らせて、イイ気になってんのか! あぁ?」
うわー、アホが絡んできたよ。この手の奴はどこにでもいるんだな。しかも大抵ランクが低いやられキャラなんだよね。
やられキャラ、可哀想なので、今回は見逃してあげるよ。大金貰っておじさん機嫌がいいのだよ、良かったね。
「何、無視してんだ! それにしても嬢ちゃんの方は綺麗だな! この髪なんかサラサラしてシルクみたいだ! どれどれ―――
『あっ!』と思ったのだが時既に遅し……5mほど先の壁に激突してそのままうずくまって吐血。
あれ、なんかやばくね! いやマジやばいって! 瀕死じゃん! ほっといたら直ぐ死ぬよあれ……内臓破裂ってやつでしょ! 俺は慌てて上級魔法の【アクアガヒール】をかけた。ふぅ、どうやら間に合ったようだ。後ろを見たら『やってしまった』という顔をして泣きそうなフェイが居た。
恐らく前回同様、蹴った事への後悔はないだろう。いつもの事だ、泣きそうな顔をしているのは俺に怒られると思っての事だろう。勿論怒りますよ……実際かなり怒ってます。人ひとり殺しかけたんですからね。
「フェイ! お前何てことするんだ! 死ぬとこだったぞ! 殺人者になりたいのか!」
「兄様ごめんなさい!」
騒ぎを聞きつけたイリスさんが来てくれたのだが、今回の場合フェイが圧倒的に悪い。殺す気はないだろうが、髪を触ろうとしたぐらいで殺しかけたんだ。フェイが繰り出した蹴り足が霞んで見えない程だった。
「この騒ぎは何ですか!? 何があったんです! ギルド内の喧嘩はご法度ですよ!」
「ん! こいつがフェイちゃんの美しい髪を無断で触ろうとした! 死んで当然!」
サリエさん、庇ってくれるのはいいのですが、発言が物騒ですよ。
「それは万死に値しますね! なんで此奴はまだ生きているのですか?」
「イリスさんまで何言ってるんですか!? フェイ、きちんと謝れ!」
「嫌です! 兄様がドライヤーしてくれた髪を汚い手で触ろうとしました! 謝りません!」
またそっちかよ! なんで俺を話に絡めるんだ!
「触ろうとした事に対して蹴った事を謝れって言うんじゃない。蹴って殺しかけた事を謝れって言ってるんだ。殺す程の事じゃないだろう!」
フェイは少しだけ考えた後、冒険者の側に行くとこう言い放った。
「蹴った事は謝りません、ですが力を入れすぎて殺し掛けちゃったことは謝ります。ごめんなさい」
「ふざけるな! 殺しかけておいて『ごめんなさい』で済むと思ってんのか!」
「あなたが悪いのでしょう? 自覚が無いのですか? 美少女の髪に触れていいのは、同じく美少年だけなのですよ」
「はぁ? 何言ってんだ? イリスさんもちょっと可愛いからっていい気になってると路地裏へ連れ込まれるぜ? 夜道には気を付けるんだな!」
アイツバカだとか、誰か止めてやれとか聞こえてくるが誰も止めようとしない。ソロなのかなこいつ。
「へー、この私を脅すのですか。いいでしょう」
イリスさんは、なにか黒い手帳のような物を出して、何か2、3行書き込んでから【亜空間倉庫】に戻した。なんだろうあれ、なにか恐怖を感じたのだが。周りの冒険者は、あいつ終わったーとか囁いてる。
「あの、イリスさん? そのさっきの黒い不気味な手帳は何なのでしょう? なにか只ならぬ気配がしたのですが?」
「何でもないですよ、只のメモ書きです」
ちゃんと答えてくれたのは、イリスさんではなくマチルダさんだった。そっと耳元で囁いてくれたのだがその内容は恐ろしい物だった。
「あれは、噂のブラックリストですね。あれに名が乗ってしまうと、受付嬢一同から冷たくあしらわれるようになるそうです。良い依頼は来なくなり、買取査定も厳しくなるそうです。評価以上に下げる事は無いのですが、これまで大目に見てくれていた多少の傷でも見つけて指摘されるそうです」
なにそれ怖い、美人の受付嬢たちに冷たくされるだけでもう泣いちゃいそうだよ。
「それからリョウマ君たちもギルド内は喧嘩はご法度です。やるなら外に出てからやりなさい」
「外だといいのですか?」
「ええ、ギルドは冒険者同士の諍いには感知しません。仲裁を依頼されれば別ですが、それ以外は自己責任です。但し、外での諍いは憲兵の管轄です。殺せば正当性が無ければ当然殺人罪が記録され連行されます」
「了解しました。と言う訳であんた、謝罪はするけどこれ以上は俺も面倒です。一方的に因縁を付けてきて髪に触れようとしたのは事実ですので、まだ文句があるなら外へ行きましょう。ここからは俺が相手をします」
「それからイリスさん、お手間をおかけしてすみませんでした。他の冒険者の方もお騒がせしました」
「イリスさんごめんなさい。兄様も、恥を掻かせてしまいごめんなさい」
「イリスさん、その、さっきのあれ許してください! 本気じゃないのです! ちょっと粋がってしまっただけです、許してください! それと嬢ちゃんも絡んで悪かった! 酒を飲み過ぎて、気がデカくなっていたんだ! すまなかった!」
イリスさんは、無言で手帳を取出し。シャシャット2重線を引いていた。どうやら許されたらしい。
フェイに絡んだ冒険者も、それを見て安堵の顔をしていた。よほどの危機感を抱いたのだろう。
俺は、冒険者と血ダマリができていた床に【クリーン】をかけ、もう一度フェイと皆に謝ってから『灼熱の戦姫』の皆とギルドを出るのであった。
「ガラ氏から許可が出ているので、狼と虎の分は先に支払うわね。今日の依頼分は剥ぎ取り後の魔石の状態を見て査定するからもう少し待っててね。あと、バナムの報酬もこっちで受け取るんだったね」
「それはやっぱりいいです。向こうで受け取ります。どっちにしろ行かないといけないので向こうの分はあっちで処理してもらいます」
「了解、他に何か聞きたい事はある?」
「バナム行きの護衛依頼を見繕ってください」
「実は3日後出発予定の護衛依頼をリョウマ君用に確保していたんだけどね……」
「ダメになったのですか?」
「いえ違うわ、ニコラス商会のガラ氏が指名依頼をしてきたの。2人に護衛をしてほしいそうよ。そっちの方が凄く条件が良いし、指名依頼で高評価がもらえると、ランクアップ時の査定ポイントがいいのよ」
「でも確か『灼熱の戦姫』が帰りも護衛するはずですよ? 彼女たちは解雇ですか?」
「勿論彼女たちも一緒よ」
「兄様! フェイはそれ受けたいです」
「フェイはソシアさんと仲良くなっていたからな。依頼料はどうなってます」
「それがね、1日1人5万ジェニーだそうよ」
「それって破格じゃないです? マチルダさんのところでも2万ジェニーとか言ってましたよ」
「実はこの依頼には条件があるのよ。よく分かんないのだけど、移動中の5日分の料理を頼みたいそうよ。料理人でもないリョウマ君になんでこんな依頼なのか不思議だけど、指名依頼は高ポイントなので、王狼の件と合わせてバナムに戻って依頼達成報告をした時点でシルバーランクに成れると思うわ。食事の提供対象は商人2名、御者2名『灼熱の戦姫』6名とあなたたちの分だそうよ」
「商人は4人と思っていましたが、2名は御者だったんですね」
「え? 5日も一緒に居て会話とかしてないの?」
「商人の方はガラさんとしか話してない気が……してないですね」
「御者は使用人だったり、奴隷だったりして基本的に身分が低いの。用が無い限りは御者の方から話し掛ける事は無いのよ。そう躾けられているから、リョウマ君の方から話しを振ってあげるぐらいの配慮はしようね」
「分かりました、アドバイスありがとうございます。旅の間、御者の人も商人と思ってましたよ」
「フェイは知ってたか?」
「フェイも商人の人と思ってました」
「だよな、フェイの狩った虎をじっと見て査定してたよな?」
「あの2人の御者はガラさんの所の見習なので、一応駆け出し商人って所かな。御者として連れ回しているぐらいなので、弟子としても優秀なんだと思う。いずれはどこかに支店を構えるようになる人たちかもね」
個室に行き、フェイとギルドカードを提示して、書類にサインをしたら、368万ジェニーも手渡された。
戦闘時フェイと俺との距離があったため、カードの判定ではどっちも個人討伐扱いになっていた。狼は俺の単独討伐、虎はフェイの単独討伐だ。配当は狼が100万から1割ギルドに支払い90万、虎が300万から1割引いて270万、計360万の計算だ。ちなみに8万はサクエラさんの5日分の護衛報酬ね。ヒャホー俺たち超リッチ。
しかもこれはあくまで依頼料であって、実際はこれから現物査定をし、その分の差額分がさらに入る。仮に虎が依頼時より暴落していて価格が300万より下だった場合でも先に受け取った270万の報酬は満額貰えるそうだ。もし、400万で売れたなら差額の100万程が更に手に入る。ガラさんが欲張って収益の半分とか言ってきたら貰える額は少なくなるのだが。今回魔石は売らないので、虎に関しては逆に返さないといけないかもしれないと思ってる。
「イリスさん、さっきのガラさんの指名依頼、受けようと思いますので手配お願いします」
「了解したわ、この契約書にサインお願い。ガラさんの方は後日来るそうよ、それでいいかしら?」
「信用してますので、後日のサインで結構ですよ」
「一応言っておくけど、初の人とか知らない人間との契約は絶対その場で当人同士でやるのよ。そして契約書は必ず3枚作り、1枚はギルドに預け、契約終了でお金を受け取るまでは1枚は自分で保管することを忘れないでね。人任せに先にサインして後で見たらいろいろ追加されてて中身が全然違ってたという事もあるのですからね」
「はい、気を付けます。ちょっと尋ねますが、北の湿地帯にいる水牛って、今、1頭当たり相場はどのくらいしてますか?」
「ここ1年狩られてないので、相当値上がりしてるわ。オークは常に供給されてるので屋台で串焼きで出されるほどなのに、牛肉は全く出て無いわね。ちょっと待ってね……討伐依頼が8件も出てるわね、10万~70万よ。10万は古い依頼だし安すぎるから却下ね。次が40万ね、この依頼もちょっと古いかな。要交渉だね、次が50万、大体この辺が妥当かな50万~65万が相場ね。70万のは期日指定の依頼なのでちょい高めなのね。誕生祝に欲しいからその3日前までの期日に持っていけばこの値段だそうよ」
「3日前というのは、熟成期間が要るからですね。でも50万以上が6件あるんですね。それとワニはどれくらいでしょうか」
「ワニって、キラークロコダイルの事かな? あれは言い値で売れるわ。魔石も大きいし相場は150~200万ほどしているわね。お肉も牙も魔石も何より皮が高値で取引されてるわ。あの湿地帯の中の魔獣では単体価格で言ったら一番ね。でもリョウマ君こんなこと聞いてどうするの?」
「狩りですよ、肉狩りイベント発生です!」
「何言ってるの! 無茶よ、そんな無謀な事受けさせないわよ!」
「そう言われると思って『灼熱の戦姫』とレイドを組んでいきます」
「それでも無茶よ! あそこはゴールドランク者20人規模で行くような所よ」
「正直に言いますと、俺一人で余裕なんですが、折角なので小遣い稼ぎにどうかと彼女らを誘っただけです。別に断られていたとしても、フェイと2人で行ってました。ほんとに余裕ですからイリスさん、変に気を使ってレイドPTを20人以上にしようとか考えて、他の冒険者に声掛けしたりしないでくださいね。超有難迷惑なので、もし余計な事をされたら2度とギルドを通して仕事をしませんよ」
「うっ、でも若い冒険者が無茶して死なないように配慮するのも受付嬢の大事な仕事なのよ?」
「キングと王狼を単独で瞬殺できるのですよ? フェイだってほらこの通り」
俺はフェイのサーベルタイガーの狩りシーンの動画を見せた。
「フェイちゃん強い! って言うかなにこれ! 素手で倒したの? 格闘家でもあるまいし! その細い足で信じられない!」
「言っておきますが、俺たち兄妹のメインはあくまで魔法ですからね。イリスさんが余計な事して、むさい冒険者が寄ってくるようになったら、もうここには来ないで、直接商人ギルドの方に狩った獲物を持込みしますからね」
「分かったわよ、でも十分気を付けてね」
「『命大事に!』が俺たち兄妹の方針なので安心してください」
契約も済み、小部屋を出て2階のラウンジに行ったら『灼熱の戦姫』が沢山の冒険者に囲まれていた。あの中に入って行きたくなかったが1時間程待たせてしまっている。
知らん顔して逃げるのもないだろうと思い声を掛けた。
「すみませんお待たせしました。ところで、この騒ぎはどうしたのですか?」
まさか、ガラさんに秘密にしてほしいと言われたのに王狼の事をしゃべったんじゃないだろうな。
「ん! いつもこんな感じ! うざい!」
「いつもなら報告とギルドカードの更新を済ませたらさっさとギルドを出るんだけど、今日はラウンジに腰を掛けたので私たちとお近づきになりたい人たちが声を掛けてきてるのよ」
疑ってごめんなさい! 俺たちが遅くなったせいですね。ほんとすいませんです。
「まぁ、綺麗な人が揃ってますから……気持ちは解りますが、逆効果でしょうね」
「何が逆効果なんだよ兄ちゃん……めちゃくちゃ良い女侍らせて、イイ気になってんのか! あぁ?」
うわー、アホが絡んできたよ。この手の奴はどこにでもいるんだな。しかも大抵ランクが低いやられキャラなんだよね。
やられキャラ、可哀想なので、今回は見逃してあげるよ。大金貰っておじさん機嫌がいいのだよ、良かったね。
「何、無視してんだ! それにしても嬢ちゃんの方は綺麗だな! この髪なんかサラサラしてシルクみたいだ! どれどれ―――
『あっ!』と思ったのだが時既に遅し……5mほど先の壁に激突してそのままうずくまって吐血。
あれ、なんかやばくね! いやマジやばいって! 瀕死じゃん! ほっといたら直ぐ死ぬよあれ……内臓破裂ってやつでしょ! 俺は慌てて上級魔法の【アクアガヒール】をかけた。ふぅ、どうやら間に合ったようだ。後ろを見たら『やってしまった』という顔をして泣きそうなフェイが居た。
恐らく前回同様、蹴った事への後悔はないだろう。いつもの事だ、泣きそうな顔をしているのは俺に怒られると思っての事だろう。勿論怒りますよ……実際かなり怒ってます。人ひとり殺しかけたんですからね。
「フェイ! お前何てことするんだ! 死ぬとこだったぞ! 殺人者になりたいのか!」
「兄様ごめんなさい!」
騒ぎを聞きつけたイリスさんが来てくれたのだが、今回の場合フェイが圧倒的に悪い。殺す気はないだろうが、髪を触ろうとしたぐらいで殺しかけたんだ。フェイが繰り出した蹴り足が霞んで見えない程だった。
「この騒ぎは何ですか!? 何があったんです! ギルド内の喧嘩はご法度ですよ!」
「ん! こいつがフェイちゃんの美しい髪を無断で触ろうとした! 死んで当然!」
サリエさん、庇ってくれるのはいいのですが、発言が物騒ですよ。
「それは万死に値しますね! なんで此奴はまだ生きているのですか?」
「イリスさんまで何言ってるんですか!? フェイ、きちんと謝れ!」
「嫌です! 兄様がドライヤーしてくれた髪を汚い手で触ろうとしました! 謝りません!」
またそっちかよ! なんで俺を話に絡めるんだ!
「触ろうとした事に対して蹴った事を謝れって言うんじゃない。蹴って殺しかけた事を謝れって言ってるんだ。殺す程の事じゃないだろう!」
フェイは少しだけ考えた後、冒険者の側に行くとこう言い放った。
「蹴った事は謝りません、ですが力を入れすぎて殺し掛けちゃったことは謝ります。ごめんなさい」
「ふざけるな! 殺しかけておいて『ごめんなさい』で済むと思ってんのか!」
「あなたが悪いのでしょう? 自覚が無いのですか? 美少女の髪に触れていいのは、同じく美少年だけなのですよ」
「はぁ? 何言ってんだ? イリスさんもちょっと可愛いからっていい気になってると路地裏へ連れ込まれるぜ? 夜道には気を付けるんだな!」
アイツバカだとか、誰か止めてやれとか聞こえてくるが誰も止めようとしない。ソロなのかなこいつ。
「へー、この私を脅すのですか。いいでしょう」
イリスさんは、なにか黒い手帳のような物を出して、何か2、3行書き込んでから【亜空間倉庫】に戻した。なんだろうあれ、なにか恐怖を感じたのだが。周りの冒険者は、あいつ終わったーとか囁いてる。
「あの、イリスさん? そのさっきの黒い不気味な手帳は何なのでしょう? なにか只ならぬ気配がしたのですが?」
「何でもないですよ、只のメモ書きです」
ちゃんと答えてくれたのは、イリスさんではなくマチルダさんだった。そっと耳元で囁いてくれたのだがその内容は恐ろしい物だった。
「あれは、噂のブラックリストですね。あれに名が乗ってしまうと、受付嬢一同から冷たくあしらわれるようになるそうです。良い依頼は来なくなり、買取査定も厳しくなるそうです。評価以上に下げる事は無いのですが、これまで大目に見てくれていた多少の傷でも見つけて指摘されるそうです」
なにそれ怖い、美人の受付嬢たちに冷たくされるだけでもう泣いちゃいそうだよ。
「それからリョウマ君たちもギルド内は喧嘩はご法度です。やるなら外に出てからやりなさい」
「外だといいのですか?」
「ええ、ギルドは冒険者同士の諍いには感知しません。仲裁を依頼されれば別ですが、それ以外は自己責任です。但し、外での諍いは憲兵の管轄です。殺せば正当性が無ければ当然殺人罪が記録され連行されます」
「了解しました。と言う訳であんた、謝罪はするけどこれ以上は俺も面倒です。一方的に因縁を付けてきて髪に触れようとしたのは事実ですので、まだ文句があるなら外へ行きましょう。ここからは俺が相手をします」
「それからイリスさん、お手間をおかけしてすみませんでした。他の冒険者の方もお騒がせしました」
「イリスさんごめんなさい。兄様も、恥を掻かせてしまいごめんなさい」
「イリスさん、その、さっきのあれ許してください! 本気じゃないのです! ちょっと粋がってしまっただけです、許してください! それと嬢ちゃんも絡んで悪かった! 酒を飲み過ぎて、気がデカくなっていたんだ! すまなかった!」
イリスさんは、無言で手帳を取出し。シャシャット2重線を引いていた。どうやら許されたらしい。
フェイに絡んだ冒険者も、それを見て安堵の顔をしていた。よほどの危機感を抱いたのだろう。
俺は、冒険者と血ダマリができていた床に【クリーン】をかけ、もう一度フェイと皆に謝ってから『灼熱の戦姫』の皆とギルドを出るのであった。
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父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
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