元厨二病な俺、異世界に召喚される!

回復師

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水神殿への帰還

8-7 メリルの魔法講座(後編)

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 一方母親のナシルさんは【無詠唱】に苦戦している。まだ生活魔法の【アクア】ですら発動できていない。
 【無詠唱】はソシア、コリンさん、サーシャさんもまだできていない。俺の予想ではナシルさんより苦労するかもしれないとふんでいる。これまでの常識として学んだ間違った魔法知識が邪魔をするのだ。

 その点、ナシル親子は魔法知識は皆無に等しい。まっさらな白紙に俺がいいように色を付けられるのだ。変な色が混ざってない分早く綺麗に仕上がるのは当然だ。

「じゃあ、今日は初級魔法の【アクアボール】を覚えようか。これは『灼熱の戦姫』の皆もしっかり聞いてほしい。まずこれを見てもらえるかな」

 俺は皆の前に初級魔法の【アクアボール】を【多重詠唱】で10個並べた。
 Lv1~Lv10まで、大きさの違うやつを10個だ。

「魔法学校でその日のうちに発動できない原因がこれ、今、出してるやつは全て同じ初級魔法の【アクアボール】なんだけど解るかな? 大抵の魔法はLv1~Lv10までの熟練レベルがあるのだけど、魔法学校で間違った事を学んだ皆は、無理やりLv5しか使おうとしてないんだ。Lv1の魔法もLv10の魔法も消費MPは同じなのにこれは勿体無いよね」

「リョウマの言ってることがさっぱり解んない……」
「う~~ん。魔法学校ですぐに魔法が発動できないのは当たり前なんだよ。経験がない者がいきなり熟練Lv5の魔法を放とうとしてるんだからね。発動しなくて当然なんだ。どうして魔法学校が同じ大きさ、決まった詠唱をしないと発動しないと教えたのかは知らないけど、それ全部間違いだから。実際はレベル1から順番に習得しないと決していきなりレベル5の魔法は発動しない。逆に言えばしっかりしたイメージとちゃんと水神様の初級の祝福があるならレベル1の魔法は発動するって事だね」

 学校出の組は愕然としているが、ナシル親子は聞き漏らさないように必死だ。

「初級魔法が発動できたからと言って、すぐに中級魔法を覚えようとして練習しても、なかなか発動しないよね? その原因は間のLv6~Lv10を飛ばしてるからなんだ。初級魔法のLv10までちゃんと習得しない事には中級魔法のLv1は発動しないからね」

「私の上級魔法が発動しないのはそのせいでしょうか?」
「コリンさんは上級魔法の発動条件である種族レベル30以上の条件は達成してるので、その可能性が高いですね」

「リョウマ! 私は? 私のも見て」
「ソシアもその可能性は高いけど、種族レベル自体がそれ程まだ高くないからね。慌てて高火力の魔法を覚えてもMP不足でぶっ倒れるのが落ちだよ」

「うーん、それもそうだけど。ここぞって時に上級魔法はあるとやっぱ役立つでしょ?」
「それはそうだね。じゃあ、段階を踏んでそのうち教えてあげるよ。でも、まずは基礎から正しい知識で復習だね」

「うん、解った。よろしくね師匠!」
「じゃあ、今日はコリンさん、サーシャさん、メリルは初級の【アクアボール】レベル1の練習。ナシルさんはそのまま昨日と同じ魔力操作の練習、ソシアは【アクアボール】Lv1とLv10の発動ができるように練習しようか。威力調整ができるようになると魔獣素材を傷めないようにできたりいろいろ便利だからね。まずは俺が何度かLv1の魔法を実際に実演してみせるからそれをしっかり見て、自分で火力のイメージが上手くできるようになってもらいたい」


 何度か【アクアボール】レベル1を発動して実際にお風呂場の浴槽に放って実演して見せた。

「じゃあ、今、俺の前に浮かんでいるのがレベル1の魔法だから同じ大きさのイメージでやってみて。学校組は詠唱しても良いからね」


「あ! 発動した! リョウマ君、【アクアボール】獲得できた!」
「ウソ! 私もできた!」
「リョウマお兄ちゃん! 出た! ヤッター!」

「うー! 私もできたけど、なんか釈然としないわ!」

 最初の発言はサーシャさん、次がコリンさん、メリル、最後の不満げなのがソシアだ。

「ソシアは何が不満なんだよ」
「だって、サーシャさんは本来風でしょ、コリンさんは火と土が得意なのよ。なんで水も覚えちゃうかな! 私の存在価値が……それにメリルは【無詠唱】で一発発動って。うー! なんか負けた気分!」

「僻んでないで素直にメリルみたいに喜べよ。可愛くないぞ。メリルおめでとう。これで魔法使いの仲間入りだな。当分はそれの練習で魔力を使う事を覚えるんだ。そうすれば勝手にレベルも上がって威力の強い魔法も撃てるようになる」

「うん! ありがとうお兄ちゃん!」
「あめでとう、メリル! リョウマ君、本当にありがとうございます」

 娘の成長が嬉しいようで、ナシルさんは涙目で喜んでいる。

「お母さん、魔獣が出てきてもこれで少しは戦えるね!」
「何言ってるんだ。初級魔法のレベル1で戦えるわけないだろ。威嚇にしかならないぞ。戦闘はせめてレベル5になってからだ」

「そか、うん解った。頑張る!」
「コリンさんとサーシャさんはこれまで発動できなかったことを考えたらレベル1~4までのどこかに位置していると思うので。今からどこまで習得できているか検証してみましょう」

 俺はレベル2から順番に実演しながら解りやすいように目の前に浮かべてあげて検証した。

 結果はサーシャさんはレベル4、コリンさんはレベル3まで習得していた。

「サーシャさんは時間の問題で、もうすぐレベル5になって習得できていたのでしょうね」
「そうかもしれないけど、やはりこうやって自分の現在のレベルが解ってちゃんと段階を踏んでいくのがいいと思うわ」

「コリンさんはレベル3ですが、あまり水属性を伸ばす必要はないと思いますよ。火と土は相性いいですが、水は相性悪いですからね。個人属性が低い物を無理に練習するより、適性のある火と土を伸ばした方が効率がいいです。まぁ、火と土が効果のない魔獣が出た時に役には立ちますが、折角のクランパーティーなので、そういう時はソシアに任せればいいだけですよね」

「ええ、解ったわ。じゃあ、私は得意な火属性の自分の現段階のレベルを見た方が良いのかな?」

「そうですね。火属性はここじゃ危険なので、明日外でソシアとサーシャさんも見てあげますね」
「ほんと? 嬉しいわ、よろしくね」

「はい。じゃあ、次はソシアのレベル10の方をやってみようか」

 これも何回か実際に俺がやってみてあげて、目の前にレベル10の魔法を展開しておいたらちゃんとソシアはレベル10の【アクアボール】を発動できた。元々ソシアは魔法の才能はかなり高いのでコツが解れば中級魔法が放てるソシアにとっては簡単な事なのだ。

「できた! リョウマできたよ! 凄い! 初級魔法の威力が倍になった!」

 さっきまで才能の差を見せつけられてちょっと不機嫌だったが、今は超ご機嫌になっている。
 それはそうだろう、同じMP消費で威力が倍になっているのだ。
 これまで初級魔法で倒せなかった魔獣も倒せるようになるだろう。嬉しくない筈がない。

 だが、この熟練レベルの話にはまだ続きがあるんだよね。

 そもそもステータスの知力が魔法威力に影響するのに、圧倒的に数値の高い俺とソシアのレベル10の魔法が同じ威力なわけがないのだ。

 勿論、火系統が得意なコリンさんと水系統が得意なソシアの水魔法のレベル10の威力が同じなのもおかしい。近接の戦闘職のマチルダさんと、後衛の魔法使いのコリンさんの魔法の威力が同じのも当然おかしい。

 そのおかしな話が普通にまかりとうってるのが一番おかしいのだが、誰かの作為的意図を感じる。

 同じ威力でしか放てないという間違った常識がそうさせてしまっているのだが、どうやってそれを伝えるのかが難しい。

 昔、地球は丸いと最初に唱えたものは相当バカにされ迫害されたとか聞く。常識を覆すにはそれを裏付けられる程の確証がいるのだ。これをどう分かりやすく伝えるのかが今後の俺の課題だな。


 この日の練習でメリルは初級魔法の熟練レベルまでの習得に成功した。祝福が強いので習熟も異常に早いようだ。メリルの種族レベルが低いので直ぐ魔力切れになり、今日は早めに魔法講習は終了とした。




 その日の深夜、ナビーにけたたましく起こされた。 

『……マスター、シルバーウルフが接近中です』
『おはようナビー、今、何時だ? シルバーウルフなら、最近出没は良くするが襲ってこないって話じゃないのか?』

『……おはようにはまだ早いですね。深夜2時20分です。それと言い難いのですが、シルバーウルフは只の偵察ですね。後方に白王狼の奥さんが控えています。どうやら敵討ちの為にマスターの匂いを探しているようです。白王狼を狩った現場の匂いを嗅いでマスターの匂いを覚えているようです。この数日マスターの匂いを追跡してたのでしょうね』

『あたた、参ったな。敵討ちか……確かに解らないでもないが、襲われたら誰でも反撃するよな』

 俺は静かに外に出て、以前白王狼を狩った地点で待機した。
 偵察のシルバーウルフは、俺の匂いを確認した時点で奥さんを遠吠えで呼んだ。 

 奥さんとの距離は5km程あったのに、あっという間にやってきた。遠吠えもあの距離が難なく聞こえるんだとびっくりだ。白王狼の時もそうだったが、遠吠えには魔力がこもってるのかもしれない。そうでなければ数十キロの距離に伝わるのはちょっと物理的におかしい。

 白王狼の奥さんはあいつより更に3回りほど大きいし、ガルルルッと唸って威嚇してる様は奴以上に迫力がある。なんか奥さん奴より強くね?

 仕方ない、あっちから仕掛けられたんだ、また狩るしかないなと思ってたら、ナビーが爆弾発言をしてきた。


『……マスター、白王狼の奥さんはフェンリルなので狩っちゃダメですよ。彼女は神獣フェンリルです。それにお腹には彼の子供を宿しているようですね。身重の彼女に無理させないよう配慮してくださいね』

『ハッ? フェンリルってあのフェンリル? それに身重って! ウワーッきたー!』

 彼女は俺の頭をがっぷりと噛んでガジガジしている。
 【マジックシールド】【プロテス】【シェル】で物理と魔法攻撃を防いでいるが、ガリガリシールドが削られている。


 シールドが切れる前にリバフして耐えてるが、こっちは攻撃できないのだ。
 俺はどうしようかと、ガジガジ齧られながら途方に暮れるのだった。
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