元厨二病な俺、異世界に召喚される!

回復師

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水神殿への帰還

8-19 ガスト村、サンダーバード襲来

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 夕食後、今日はサウナに入ってから風呂にする。
 かなり疲れてるはずだから、ゆっくり湯船にも浸かってもらう。正直、俺も疲れている。

「さて、解っていると思うが、今日は酷い事になっている。全身ピンク色表示だ。今からそれを揉み解す」

「ンギャー! お兄ちゃん、ちょっと待って! ギャー!」
「待っても治らないからな! 我慢だ!」

 恒例のマッサージ中だ。
 隣でも同じようにナシルさんが身悶えている。なんか色っぽい。

 今日は俺もフェイにお願いした。フェイも同じく揉み解してやる。

 それから、今日はハティの初の入浴だ。
 最初湯に怯えていたが、大きめのタライに湯を張ってそっと入れてあげたらタライのふちに顎を載せて眠り出した。余程気持ちが良かったのだろう。

 毛をブローしてやるが一向に起きない。初入浴後のハティはもう可愛いってものじゃなかった。
 シャンプー、リンスで洗ったハティはモコモコだった。

 お風呂上りにジュースをやろうと思っていたが、起きないのでそっとしておく。



「リョウマお兄ちゃん、バニラアイスが食べたい!」

 風呂上りに良く冷えたはちみつレモン水を出してやってたのだが、メリルがアイスを御所望だ。
 今日は疲れてるから甘いものが欲しいのだろう。

「いいぞ、疲れてる時は甘いものが食べたくなるからな。今日は沢山動いたし、2種類出してあげよう。バニラがいいならバニラにするけど新作2種とどっちがいい? オレンジ味とピーチ味のアイスだ」

「オレンジとピーチの新作がいい!」
「兄様! フェイも新作食べたいです!」
「あの、リョウマ君、私も欲しいです!」

「勿論全員出してあげるよ、俺も食べるしね」


 カップに入ったものを全員で試食する。

「ピーチうまっ! めっちゃうまっ!」

「フェイはオレンジがいいです! 甘酸っぱくて美味しい!」
「どっちも美味しいです!」
「メリルはピーチ味の方が好き! 美味しいね~」

 なかなか高評価のようだ。

「食べながら聞いてくれ。今日頑張ったから、明日の移動は25km程だ。それでガストの村に到着する。明日の晩はガスト村の宿屋に泊り、そこで2泊する予定だ」

「お兄ちゃん、どうして2泊するの?」
「いくら俺の回復魔法で治癒していると言っても、どうしても疲れはある。神殿に行く間にある村はそこだけだからな。ログハウスでもいいけど、冒険者として村で情報収集するのも仕事のうちだと『灼熱の戦姫』の皆に教わった。ガスト村の別名知っているか?」

「メリル、知らない……」
「薬草の村ですね」

「ナシルさん正解。別名薬草の村……ガスト村周辺では品質の良い薬草が採取できるんだよね。村人の殆どが薬草採取のプロですのでコツを教われるといいと思ってね」

「そうだね、お母さん薬草採取家目指してるんだもんね。プロに聞くのはいい事だよね」
「でも、こういう村は縄張り意識がとても強くて、部外者は中々受け入れてもらえないと聞きます。それに勝手に採取していたのがバレると袋叩きに合うと主人から聞いた事があります」

「ええ、そうですね。ガスト村の住人は神殿関係者には優しいのですよ。神殿のすぐ下の一番近い村ですからね」

「リョウマ君がいれば大丈夫だという事ですか?」
「そういう事です。明日の出発はどうしますか? 時間に余裕があるので、昼からの出発でもいいですよ? 朝いつもどおりに出て、昼前に村について向こうで昼食をとって村見物しても良いですしね」

「メリル、村の見物したい!」

「あ、悪いな。メリル、期待するような事言ったが、何もない小さな村だ。ソシリアの村より小さいし、露店も出ていない。ハーレン育ちのメリルからしたら、ビックリする程の小さな村だ」

「う~ん、それでも見たい! メリル、ハーレンしか知らないから、何見ても楽しいよ?」
「そうか? まぁ、宿屋のご飯は超旨いから期待してていいぞ」 

 レベルアップをしていたので【痛覚無効】を寝る前に掛けておいてあげた。
 夜中にレベルアップ痛で目が覚めるのは気の毒だからね。ゆっくり眠るといい。



 結局、出発は通常通り7時出発にした。
 どうせフェイは馬の世話があるし、俺は朝飯を作るので起きる時間はそれほど変わらない。

「お兄ちゃん、昨日は魔法の練習しなかったから、今日は朝・夕しよう」
「メリル朝はダメよ」

「お母さんどうして?」
「困った子ね……リョウマ君が言っていたでしょ? 思い出してごらん?」

「う~ん、解んない。お兄ちゃんごめんなさい、忘れちゃいました」
「ああ、けど大事な事だぞ。命に係わるほど大事な事だ」

「エエッ!? そんなに大事な事なら覚えているはずだよ?」
「朝出かける前にMPを使ってどうする? MP切れの時に魔獣が出たら、剣だけで戦闘しないといけなくなるぞ? 魔術師がMP切れで出かけてどうするんだ? 魔法の練習は、絶対魔獣の来ない安全な場所で寝る前にしろって言わなかったか? 今は移動中なんだぞ?」

「あっ! そうだった! 魔獣の多い辺境の街道で、出かける前にMP使っちゃいけないよね! 特にヒーラーは節約モードでって言われてた!」

「大事な事だから気を付けるんだぞ? 護衛中や出先では極力MP温存だ。今は俺たちがいるし、ログハウスは神殿並みの結界が張ってあって、安全だから練習しいてるんだからな」

「はい、師匠!」


 出発して3時間程で村が見えてきた。
 ナビーの予想どおり、途中で【身体強化】がレベル4に上がり【俊足】レベル1が付いていた。
 昨晩のうちに【脚力強化】と【筋力強化】が付いていたようで、4つのパッシブ効果でかなりの速度上昇だった。

「リョウマ君、【身体強化】の熟練レベル1つ違うだけでこれほど違うのですね?」
「ええ、【身体強化】はスキルの中でも上がりにくい部類だそうです。皮膚や骨、五感まで上がるので超使えるバッシブスキルですのでできれば6ぐらい欲しいですが、5から一気に上がりにくくなるそうです。今回は他の3つのパッシブ効果も有るので、顕著に違っていると思います」




「リョウマお兄ちゃん! なんか様子が変だよ? 門の入り口で人が騒いでるみたい」
「ん? ホントだ、何かあったのかな?」

「ダラスさん、お久しぶりです。何かあったのですか?」

 門の入り口で、ダラスさんと冒険者2人、村人2人が騒いでいた。

「リョーマ君か! いいところに来てくれた! さっきこの冒険者がサンダーバードに襲われたらしいんだよ。で、今、村の皆を避難し終えたところなんだけどな、弓持ちと魔法が使える奴が今ここにいる5人だけなんだよ」

 サンダーバード? あの有名な人形劇を思い出してしまった……。

「はぁ~参ったよ。ここから1キロ程先なんだけど、薬草採取に向っていたら、いきなり群れで襲ってきやがって、俺たちの乗っていた馬2頭が食われてしまったんだ。馬を食い終えたらこっちにくるかもしれないと思って、慌てて村に戻ってきたんだ」

「兄様! クロちゃん、避難させなきゃ!」
「そうだな……ダラスさん、宿屋の厩舎空いていますか? それと、俺の名はリューマではなくリョウマです」

「ああ、そうだった。リョウマだな。厩舎は空いてたと思うぞ」
「村に入っていいですか? 全員冒険者です。皆、ギルドカード出して」

「確認は後でいい。早く村の中へ避難しろ」




「おかみさん、お久しぶりです! 厩舎にうちの馬、お願いします」
「リョウマ君かい、サンダーバードが出たんだってね。馬を買ったのかい? 早く入れてきておやり。うちの厩舎は密閉できるから全部の窓を閉めれば魔獣一匹入れないので安心だよ。なにせうちは貴族様も来られるからね。頑丈に作ってあるんだよ。今は5つ空いているから、好きなとこに入れるといいよ。ただ、騎竜の横は、馬の方が怯えて可哀想だから、できるだけ離してあげるんだよ」

「フェイ、入れておいで。おかみさん、馬1頭と4名の風呂、飯付で2泊お願い。後、昼食も宜しく」
「ありがとうね。え~と……」

「金貨5枚と銀貨1枚ね。はい、金貨6枚。おつりはいいから、昼食に何か飲み物付けて。馬にも餌やりの時にフルーツを付けてあげてほしいかな」

「あんた、計算早いね! でも、こんなに多くもらって良いのかい?」

「ええ、むっちゃ稼いでますから、大丈夫ですよ」
「そうかい? なら遠慮なく貰っとくよ」

「兄様、入れてきました」

『フェイ、そういえばお前……前回来た時は、服が無くて竜の姿だったよな。ちゃんと知らん顔しておけよ』
『うん、そうする』


「あ、おかみさん。こいつを忘れてた」

 胸元の服の中で眠ってたハティをそっと取り出す。

「狼の子かい? そういえば、あんた、あの可愛い鳥の従魔はどうしちゃったんだい?」
「あいつはどっかその辺を飛んでいますよ」 

「そうかい、死んでないなら良いけどね。可愛い鳥だったから、他の魔獣に食べられちゃったのかと思ったよ。今、サンダーバードの群れが近くに来ているみたいだよ。見つかると襲われるんじゃないのかい?」

「あいつに雷属性は効かないので大丈夫です。この子、一緒の部屋で大丈夫ですか? 生まれて数日ですから、まだ歯も生えてないので悪さはしないです」

「あの鳥もそうだったけど、その子も随分奇麗にしてあるね。ああ、いいよ。でもそそうをしたら、あんたが奇麗にするんだよ?」

「うん、分かってる。そっちは親子で、こっちは双子の兄妹ね。二人部屋でお願いします」

「リョウマ君、妹がいたんだね。あらまぁ~可愛い! あんたとそっくりだね」
「おばさんありがとう、フェイです」

「そっちの親子も随分と別嬪さんだね~」

「新人冒険者のナシルです。2晩宜しくお願いします」
「メリルだよ!」

「じゃあ、2階の1号室と2号室でいいかい? 場所は分かるね? はい鍵」

「部屋に一旦行って待機にしようか?」


 二人と別れ、居室に入りベッドでくつろぐ。

『ナビー、サンダーバードの情報がほしい』
『……はい、Bランクの8級程度の魔獣です。雷属性で電撃を放ち、群れで行動をとります。決まった巣は持たず、この時期繁殖の為にこの周辺の森に来る習性が有るようです。羽を広げると3、4m程の大きさですので、コンドルと同じか、ちょっと大きい程度でしょうか』

 地球に異世界の鳥と同じデカさで飛ぶヤツが居る事に驚きだが、サンダーバードって聞いたら、外人チックな人形劇を思い出してしまう。

『Bランクでも等級が低いんだな。あまり必要性はなさそうかな?』
『……雷属性の魔石があれば、いろいろ出来そうですけどね』

『そう言えば雷属性の魔石はあんまり持ってないな。水属性は大量にあるけどね』


 部屋で寛いでいたらダラスさんがやって来た。

「リョウマ君、手伝ってくれないのか? てっきり手伝ってくれるものと思い、門で待ってたんだぞ」
「エッ!? 俺たち弓とか持っていないですよ?」

「別嬪さんたちには危険な鳥の相手なんか頼まないよ。俺が期待しているのは、コロニーを単独で潰せる戦力の君だよ」

「時々サンダーバードは村を襲ってくるのでしょ?」

「毎年この時期にやって来るな。もう慣れっこだから、人が被害に合う事は滅多にないんだけど、何もしないで放っておくと家畜や畑が荒らされるんだよ……かと言って下手にチョッカイを出すと中級魔法の雷でビリッとされちゃうしな。厄介な奴らなんだよ」

「中級程度の魔法なら、くらうと死人が出てもおかしくないですよね?」
「毎年来るのは分かっているから、皆、雷耐性の付与がある装備品やアクセサリー品を必ず購入して持っている。死ぬほどの怪我はしないよ」

「成程ね~。で、俺に何をさせたいのですか?」
「できれば、家畜を守ってほしい。奴らは気が短いので、2時間も守リ切れば、すぐ飽いて出て行くんだ。やってくれるなら村から依頼料も出す。村長と金額は相談だが最低5万ジェニーは出す」

「何羽ぐらい居るのです?」
「さっきの冒険者が襲われた時に居たのは5羽だったそうだが、周りでバリバリ放電音が聞こえて来てたらしいので、もっといるかもしれない。繁殖の為に集まってるんだ、普通は10羽以上で群れを作るからな。それくらい居ると思う。どうだ? 頼めるか?」

「そうですね……倒した場合の取り分はどうなるのですか?」
「そうだな。共闘の場合折半で、単独の場合は倒した人が得るのでどうだ?」

「妥当なとこですね、それでいいです」
「だが、滅多に倒せないぞ? 奴らの羽が結構硬くてな。腹側しか矢は通らないし、動きが早いから中々当たりもしない。空から攻撃してきて、近づいてこない。倒せたらラッキー程度に思っておいた方がいいな。もし倒せたら高値で羽と魔石、肉や肝も買ってもらえるぞ」

「肉は美味しいのですか?」
「肉もそうだが、肝が旨いんだ。バターで香りづけして火を通すと濃厚でクリーミーな味わいだ。新鮮じゃないと食えないから、街に出回る事はあまりないだろうな」


 旨いと聞いた時点で狩り決定だ。フェイはもうその気になっている。
 その時バリバリという放電音と、不細工な鳥の鳴き声が空から聞こえてきた。

「クソッ、やっぱり来やがった。頼めるなら村長の家の厩舎に家畜を集めているからそこに向かってくれ。俺は広場で村全体の警護をする事になっている。他の者はもう村長宅に行っている。強要はできないが、できれば宜しく頼む」


 毎年の事らしいが、到着早々村が襲われているとか、運がいいのか悪いのか……。

「兄様、バターで肝が食べたいです!」

 言うと思ってたよ……こいつはよく食べるくせにまったく太らないんだよな。

「よし、フェイ。お前は部屋で待機だ!」
「エエー! フェイ、サンダーバード倒したい!」

「最後まで聞け。フェイはここで待機という事にするが、お前は竜化してから飛んで皆殺しにしろ。羽も売れるそうだから、物理魔法で頭に石か氷でもぶつければ羽も傷めず倒せるだろう」

「兄様、魔法じゃなくてもいい?」
「ああ、素材を痛めないならどう倒しても良いぞ。こっそり窓から出て、竜化して全部倒したら、一旦俺の下に帰ってこい。態と従魔として指示を出すので、村の外に飛んで出て、転移魔法でこの部屋に戻ってくるんだ。いいな?」

「兄様の従魔が倒したって事にして、フェイは部屋に居ましたアピールをすればいいのですね?」
「そうだ、意図は理解できているようだな、そういう趣旨で頼んだぞ。お前が全部狩って良いからな」

「はい、兄様! フェイ頑張る!」


 フェイの奴、どう見ても村や家畜の為と言うより、肉や肝目当てに頑張るようにしか見えない。

 まぁ、いいけどね。
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