元厨二病な俺、異世界に召喚される!

回復師

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水神殿への帰還

8-22 ラバーワームの使い道

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 サンダーバードと卵はフェイに任せて、俺は別の物を探す。
 兼ねてよりいろいろ役立ってくれている例のゴムの代替品になる便利な奴だ。

『……マスター、ラバーワームは体長1~4m程の大きさがあります。地中0.5~3mの辺りを活動の場としていますので、どこにでも居るのですが、捕るのが面倒な魔獣でもあります』

『俺のMAPには表示されていないのだが?』
『……地中の魔獣まで表示させると、普段見ているMAPが光点だらけになるので、危険のない魔獣や、価値のない魔獣は勝手ながらナビーが選別して非表示にしています』

『成程、今後も選別の方は頼むな。で、今、表示しているのがラバーワームなのか?』
『……そうです。この周辺は結構いるようですが。どうやって捕獲するのですか?』

 俺はまず空間指定でミミズ周辺の空間に【ウィンダガシールド】を張る。張った空間ごと重力魔法の【レビテガ】で空中に浮かせる。空中に浮かせた土を崩してミミズだけ取り出せば簡単に捕獲完了だ。

 捕獲は結構簡単だったのだが、その後の殺害が大変だった。
 火だと溶ける、水だと傷む、土も傷む、雷は効かない、結局凍らせて死ぬのを待った。
 それがなかなか死なないのだ、完全に死なない事にはインベントリに保管できないので、結構時間を取られた。

『……剣で裂けばもう少し早く死ぬのではないでしょうか?』
『嫌だよ気持ち悪い……』

『……そうですか……後3匹ほどお願いします』
『まだ要るんだ……』

 頑張って取りましたよ。うねうねしてて気色悪かったけど、超頑張りました。
 ハティは興味深々で見ていたけど、バッチーので近づかせません。



 後は木だな。3種類ぐらい伐採させられたのだが、そのうちの1本には参った。

『……マスター、申し訳ありませんでした』
『何、気にするな。回復魔法があるので問題ない……それにしても即効性の強い被れ方だったな』

 そうなのだ、漆っぽい原料の木を集めている時に、なんか痒いなと思っていたら、あっという間に酷い被れがでたのだ。俺はハゼや漆に負けて被れる体質だったようだ。

『工房内の人形は被れたりしないのか?』
『……人形に五感は与えましたが、生命体ではありませんので、怪我や被れや病気などは無縁のものです』

『漆は例のやつのものか?』
『……そうです。何とか間に合いそうです』

『それは楽しみだ。結構苦労したようだな?』
『……はい、その分楽しめましたので問題ないです』

『ミミズの方はどうだ?』
『……もうすぐ完成です。マスターの言うとおりにしてみたら、全て上手くいきました。後2時間ほどで調整が終えるのでお待ちください』

『どっちかと言うと、俺はこっちの方が楽しみなんだよな』
『……そうなのですか? 危ないので、ナビー的には反対なのですけどね』

 ナビー工房に何をさせてるかと言うとバイクだ。自動二輪を造らせていたのだ。
 本体はもうできている。車体部の金属はミスリルを10%混ぜて錆びなくしている。強度もブラックメタルが安いと分かったので5%程混ぜているのでめちゃくちゃ丈夫だ。転倒させても傷一つ付かないだろう。

 動力は電気だ。サンダーバードの魔石を3個使って、電気モーターを造ったのだ。チェーン式でタイヤを回すのではなく、直接モーターで車輪軸を回す仕様にした。この世界の道路は基本土なのだ。アスファルトじゃないのでチェーン式だと土を咬んだりして危険があると思ったので、直でモーターの軸を車輪軸にしたのだ。これなら悪路でも砂の咬みようが無い。

 ミミズはタイヤに必要だったのだ。ナビーが苦労したのはこのミミズをチューブにするのに苦労していたようで、いっそのこと外部のゴム部だけに使用して中はカエルの腸をエンチャントで強化してチューブのように膨らませて使って見てはどうかとアドバイスしたのだ。

 タイヤの横幅は少し大きめで、土に沈まないよう20cm程もある。溝というより、モトクロス用のようにゴツゴツしたやつにしている。雨でぬかるんでいる場所も多いのだ。梅雨時など馬車は走れないほどぬかるむそうだ。




「兄様! 卵一杯とれました!」

 サンダーバードを狩ってこいと言ったのに、お前のメインは卵ですか?
 フェイには鳥の方がついでなんだろうな。
 それになんて素敵な笑顔なんだろう。食い意地は汚いが、憎めない奴だ……。

「鳥の方はどれくらい狩れた?」
「24羽でナビーに止められました。それ以上は要らないからだそうです」

「ああ、それでいい。一度に狩り過ぎると生態系が乱れてしまうからな。卵が孵って雛が生まれたら、その雛の餌をこの周囲でサンダーバードが狩っていたのに、それが無くなると狩られていたはずの餌だったものが異常に翌年増えたりするんだ。そうすると増えた奴が自分の餌を食いまくるので、また関連していた種が減ったり増えたりで異常をきたしてしまう。何事も程度を考えてやらないとな」

「ふ~ん。兄様、ゆで卵作ってください!」

 こいつ……俺の話聞き流しやがった。

「茹で卵は後だ、宿屋でもうすぐ昼御飯だからな。一旦帰るぞ」
「お昼ご飯! 兄様、お腹空きました。今日はデイルさん、何を作ってくれてるでしょうね?」

「お前は食い気の事ばかりだな? 鳥並みの頭脳しかないのかもな」
「またそんな意地悪を……鳥っぽいですけど神竜です! 兄様が可愛くデザインしてくれたのでしょ? 他の神竜たちもきっとこのフェイの姿を羨ましがっています」

 フェイとの会話は楽しいが、違う意味で疲れる。



 宿屋で親子と合流する。なにやら村の男どもが沢山いる。普段ここの食事なんか滅多に利用しないくせに、ナシルさん目当てで3倍増しだ。宿屋の売り上げの貢献にはなるだろうが、飯は静かに食いたいものだ。


「ナシルさん、なんかモテモテですね……」
「はい、ちょっと困っています。少し前に父親は死んだと、メリルがぽろっと言っちゃったものですから、私が未亡人と分かったらアプローチが激しくなっちゃいました」

「お母さんごめんなさい。男の人がここまでおバカと思ってなかったの……」

「まぁ、ナシルさんは魅力的だからな。20過ぎの独身男性は放っておけないだろう」

「リョウマお兄ちゃんの素材集めは順調に集まってるの?」
「ああ、もう集まったぞ。お昼からは造った魔道具の試乗だ。上手くできていたらメリルは驚くぞ」

「エッ! メリルもお兄ちゃんと一緒に行きたい!」
「でもそれだと、あの野獣どもの中、お昼からナシルさんだけになっちゃうぞ?」

「う~、それはダメ。お母さんに近寄ったらメリルが凍らせるの!」

「で、ナシルさん。ちゃんと勉強にはなっていますか? ただウザく付きまとわれるだけで、為になる事も無いなら、午後からは中止しますが?」

「いえ、流石薬草採取の村と言われるだけあって、いろいろ為になる事を教わっています。薬草だけではなく、薬草が採れる同じエリアには、他にもギルドが買取してくれるようなものが沢山あるようなので、それを教えていただいています」

「へ~、折角足を運ぶんだから、同エリアで取れる素材があるのなら、覚えて採取しないと損だよね? 明日には出発予定だけど、なんだったら滞在を延長する?」

 滞在延長という言葉で、周りの男は沸き立ったが、当のナシルさんは予定どおりに出発を希望した。

「あのナシルさん。リョウマ君がもっといてもいいと言ってくれているのなら、兎の罠の仕掛け方とかも教えてあげたいのだがどうかな? あれは肉も毛皮も高く売れるし、薬草の採取ルート上に仕掛けておけばいいだけだから。最初の仕掛ける手間だけで、後は腕次第で定期的に兎が手に入るようになるよ?」

 男たちも少しでも気を引こうと必死だ。付き合う云々は別としても、村を気に入ってもらい、あわよくば移住でもしてくれれば、将来的にお付き合いできる可能性も0では無いと考えていいるようだ。

 この村への移住か……それも悪くは無いな。小さい村故、変に手出しする奴がいないのだ。ナシルさんに恋心を抱いたとしても、今のこいつらのように、正攻法で必死にアピールしてくるだろう。

 そういえば、この村の住人は、酒を飲んでも絡んでくるような奴は一人もいなかったな。
 問題を起こしたのは、例のダメ夫婦ぐらいだった。

「ナシルさん次第でこの村への移住も有かもですね。メリルが神殿召しに上がっても、ここなら近いのでお互いに偶に会う事もできますしね」

 ナシルさんにだけ聞こえるように囁いた。メリルの巫女の事は言わないようにと口止めしてある。ナシルさん目当てならまだ男の性なので健全だが、神殿巫女のメリルという話になると、お金絡みの事が出てくる。お金が絡むと人は歪む。

「それも良いかもしれませんね。午後からはその辺も踏まえて村の良いところを案内していただきますね」

 大喧騒が起こったが、食事の時は看板娘のパメラさんが群がる男を追っ払ってくれ、端のテーブルで静かに食べる事ができた。

 お昼はサンダーバードの肝のソテーだった。クリーミーで濃厚な味だが、臭みも無くパンに良くあった。肉の方もから揚げのようにカラッと焼いたもので、噛むと肉汁が口元から溢れてくるほどジューシーで、これまた美味だった。こちらの世界には油が貴重なのか揚げ物があまりないのだ。少し多めの油でカラッと焼く程度だ。

 親子はいつものように当然泣きながら食ってた。

「デイルさんありがとう! 季節ものの鳥も今だけ感があるからいいね」

「もうそろそろ、卵狙いのハンターたちも来ますので、この宿屋もちょっと忙しくなってくるんですよ」

「そうなんだ。卵って専門で狙いに来るほど美味しいのかな?」
「そうですね。鶏の卵とは比べ物にならない程美味しいです。それにサンダーバード自体は速過ぎて滅多に狩れないのですが。卵は動けませんので耐雷性の装備に固めて巣に特攻して獲ってくるそうですよ。卵を守ろうと近づいたら運が良ければそれも捕獲できますしね」


 よし! 3時のおやつにゆで卵を食べよう。それほど旨いのなら楽しみだ。


 食後、親子と別れて俺とフェイは村の外に出る。

『……マスター、一応完成しています』
『一応という事は、乗ってみないと判らないって事だな?』

『……はい。工房内で実際に走らせることはできないので、レールの上をタイヤだけ回しているような状態でしか試験ができてないのです。サスペンションとこのタイヤでどこまで衝撃を吸収できて、揺れを少なくできているのか分からないのです』


 インベントリから早速ナビーの造ったバイクを取り出す。

『めっちゃかっこいいじゃないか! てっきりモトクロスのような型をイメージしてたよ』
『……頑張りました!』

 目の前にあるのはアメリカンタイプだ。ハーレーのような重量感のあるやつで、ブラックメタルが混じっているので黒くメタリックに磨き上げ光っている。超かっこいい!

 早速試乗だ!

 残念ながらあの重低音のドルドドドドッと響く、体を震わせるようなエンジン音はない。
 モーターなのでクラッチもない。スロットルを絞るとキュイーンと独特なモーター音が僅かにするだけだ。
 敢えて静音仕様にしてあるのは、音で魔獣を引き寄せないためだ。

 ハティとフェイは見学だ。
 フェイは自転車すら乗った事が無いのだから、間違いなく転倒するだろう。為さす訳にはいかない。



『ナビー! 完璧だ! これ良いぞ! 多少の石や段差や窪地なんかあってもサスペンションが吸収してくれている。それにスピードも出るな……これ、全開にすると何キロぐらい出るんだ?』

『……レールでの計測では267kmでした。マスターの世界のレース仕様車が350km程出るのを考えたらまだまだですね』

『いや、これで十分だ。そもそもそれほどスピードを出せる道が無い』

 今、なんだかんだ言いながら130km程のスピードが出ている。街道の道幅を目一杯使って爆走中だ。
 走っている街道沿いで危険物があるなら事前にナビーが教えてくれる。網膜上に表示されているラインどおりのコースを辿れば安全に爆走できるのだ。はっきりいってめっちゃ楽しい!


 このバイクの動力はサンダーバードの魔石3個。つまり魔石3個分の俺のMPが使われる。魔石としてはBランク魔獣なので中級魔術程度、1個MP50の消費だ。3個なので150使う事になる。

『ナビー、MP150消費でどれくらいの時間走れるんだ?』
『……内部検証では、時速60km走行で約2時間程でした。時速100kmだと、役1時間程でマスターの魔力を再補填する必要があります』

『十分な時間だな。今の俺の魔力量なら問題ない。平地では十分だが神殿へ向かう際の上り坂とかパワーは足りるか?』

『……傾斜50度で検証しましたが大丈夫でした。ただMPは30分程で消費されてしまいます』
『まぁ、50度の傾斜とか実際無いだろうから、パワーが足りるなら問題ない』


 一度村に帰り、ハティを胸元に放り込み、フェイを後部座席に乗せる。

『フェイ、俺の腰にしっかりしがみついていろ。ハティもあまり動いたらダメだぞ』
「ミャン!」 

 はぁうっ! 何だ今の鳴き声! 超可愛い!



『兄様? 鉄の馬ですか? ひゃっ! 兄様! この馬、クロちゃんより速いです!』

 ハティは俺の胸元から顔を覗かせて、流れる景色が楽しいのか、尻尾がフリフリ揺れている。
 俺のお腹を尻尾が撫でて気持ちがいい!

 フェイも顔で風を切るのが相当楽しいのか大はしゃぎだ。
 今回フェイを乗せているので、少し速度は抑えて時速80kmで走っているのだが、安定していて2人乗りでも大丈夫そうだ。


 この世界初の自動二輪の魔道具の誕生だ。

 ガラさんにだけは見せないと思いながら、フェイと楽しくドライブをした。
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