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水神殿への帰還
8-23 ゆで卵
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俺はレース仕様車よりアメリカンタイプの方が好みだ。ただ一番大事なかっこいい重低音が無いのは残念だ。
実際音があればあったで問題なんだけどね。あれほどの重低音で街道を爆走したら魔獣がわんさかきて、トレイン状態になるのは間違いない。サイレント仕様の今の方が現実的に考えればベストなのだ。
試乗ドライブを終え、村の宿屋に帰ってきたのだが、フェイがこっちを時々チラ見する。
チラ見の視線を感じるのだが、何も言ってこない……言ってこないが俺には分かっている。卵だ。
「フェイ、お前ゆで卵が食いたいんだろ?」
「う~、だって凄く美味しいって村の人が言ってるんだもん!」
「村の者も滅多に食べないそうだぞ。売れば結構いい値になるそうだから、大抵は食べるのを我慢して売るって言ってた。村の風習として、子供が16の成人になる年に村長がプレゼントするってのが50年ほど前からあるらしいけど、それ以外では偶に沢山とれた年に食べる程度らしいぞ」
「兄様、3時のおやつにって言ってました! もうすぐ3時です!」
「はぁ? 俺は何も言ってないだろう! お前が勝手に俺の心内を読んだだけだろうが!? この食い意地の張った駄竜!」
「う~!」
少し涙目になっている。可愛い奴だ。
「まぁ、冗談だ。俺の工房内で今、作ってる。俺はちょっとだけ黄身が半熟っぽいのが好きだからナビーに任せたんだ。大きいから俺と半分こだぞ。デイルさんが今日の夕飯も張り切ってくれてるはずだから、お腹一杯で食べれないとか失礼だからな」
今作ってると聞いてフェイは大はしゃぎだ。
卵はダチョウの卵よりは少し小さめだが、結構な大きさがある。半分でも鶏の5つ分は有りそうだ。
皿を2つ出し、できたてのアツアツのゆで卵を半分に切る。とろ~と少量黄身が流れ出す。中心付近は半熟だが白身は綺麗に固まっていて完璧俺の好みだ!
「フェイは今回頑張って獲ってきたからな。味見としてメリルたちには内緒で先に食べさせてやる」
アツアツのゆで卵に少量の塩を振って齧りついた。
旨い! 鶏の卵とは比べようがないほど濃厚なまろやかなコクがある。とろっとろの黄身が旨いのだ。
「兄様! 美味しいです!」
「ただのゆで卵なのにマジ旨いな。1人1個でも良かったな。フェイ、でも我慢だぞ。夕飯はもっと美味しいのが出るからな」
正直もっと食べたいのを我慢したほどだ。残りは神殿で巫女たちと一緒に食べる事にする。
夕刻にナシル親子が帰ってきた。
薬草を沢山採ってきたようだ。
村の男たちは本来外部の人間には秘密の採取場所を、惜しみなくナシルさんに教えたようだ。
「どうですか? いろいろ勉強になりましたか?」
「はい、この辺の魔獣は強い魔獣はいないのですね?」
「水神殿があるこの霊峰の山の影響らしいね。神殿に近づくほど弱い魔獣しか居なくなるんだって。サンダーバードはここじゃ強い部類だね。ソシリアの森周辺に比べたら、ここは比較的安全だよ」
「メリルが神殿に上がったら、ここへの移住も良いと思っていますが、リョウマ君はどう思います?」
「ナシルさんが良いと思うのであれば良いんじゃないですか? ここの住人は神殿関係者には激甘ですからね。メリルが神殿巫女になったのなら、その母親のナシルさんは大歓迎されるはずですよ。村の男の中に良い男でも居ましたか?」
「そういう方は居ませんでしたが、悪い方は居ないようでした。それに今はまだ再婚は考えられません」
「そうですか。ちなみに今直ぐとかでなく、ガラさんみたいな感じの人はどうですか? それと門番のダラスさんみたいな人とかはどうです?」
「ガラさんですか? 彼は素敵な方だと思います。私のような子持ちの未亡人では釣り合わないですね。ああいう方は、貴族のご令嬢の三女あたりの美しい女性が嫁がれてくるのでしょうね」
「まぁ、本来はそうなんでしょうね。名ばかりの落ちぶれ貴族が、融資目当てで三女、四女あたりを押し付けるのが大商人の嫁に多いそうです。ガラさんはそれを嫌って未だに独身なんだそうです」
「そうなのですか? 大商人にもなると気苦労もあって大変なのですね」
「ですね。本来貴族の圧力で融資をさせた上で渋々結婚するのがパターンなのですが、ガラさんは王族や公爵家とも懇意にしていて、他の貴族も下手にチョッカイを掛けてこないんだそうです」
「それは凄いですね。王族と知り合いなんて本当に凄いです。でも、私はまだ直ぐに再婚とかは考えられないですね。まだ亡くなった主人の事を愛していますから……」
俺は亡くなった旦那さんと会った事なかったから、その辺をあまり気にしていなかったが、この質問はちょっと軽率だったかもしれないな。まだ亡くなってあまり経っていないのだ。こちらの世界の女性は、庇護を求めて甲斐性のある男性に直ぐ再婚すると聞いたけど、そういうのは人にもよるんだろうな。ナシルさんは、そう簡単に割り切れないタイプのようだ。
「メリルはガラさんは好きか?」
「う~ん、ガラさんならお母さんをあげてもいいかな」
「あはは、メリルの方がお母さんみたいな言い方するんだな。ちなみに門番の人はどうだ?」
「門番の人はダメ……冒険者の人はお父さんみたいに急に死んじゃいそうだから。もうお母さんに悲しい思いはさせたくない」
「あの人、マチルダさんと同じくらい強いんだぞ。そう簡単には死なないと思うけど……まぁ、冒険者だと不安だよな」
「そうなんだ。強いんだね。う~ん、でもやっぱりダメ。お父さんと違って、なんか酒癖悪そうだもん」
「ヒャハハ、ダラスさんはダメか~。じゃあ、俺はどうだ?」
「リョウマお兄ちゃんは絶対ダメ!」
「え~絶対ダメなのか? 確かに一回り以上年は離れてるけど。俺、結構稼ぎは良いだろ? 優良物件だと思うんだけど、メリルに拒否られると、ちょっとショックだ」
「違うの! お兄ちゃんはメリルと結婚すればいいの! メリルとなら4つしか歳も変わらないし、将来は神殿巫女様なのだからお兄ちゃんも自慢できるでしょ?」
「あらあら、この子ったら。うふふ、リョウマ君にお熱なのね」
メリルは可愛くなるだろうが、中身28歳の俺からすれば相手にできない。
この世界の15歳の少年から見れば、おそらくメリルは可愛いから恋愛対象として見れるのかもしれない。既に多少の胸の膨らみもある。この年齢の女子は日毎に女らしくなっていくことだろう。
「あ、そうだ。明日の予定を変更しようと思う。徒歩であと4日程なのだけど、転移魔法で行く事にする。いろいろ考えたんだけど。この後の魔獣が弱すぎて練習にも経験値にもならないんだよ。走ると肉体強化にはなるんだけど、そんなのどこでもできるしね」
「私たちはそれで構いません。では、明日には到着ですね」
「メリルどきどきしてきた!」
念の為にフィリアには報告しておいた。ちょっとだけ怒られちゃった。
『4日後と言うから、それに合わせて準備をいろいろするつもりだったのじゃ!』だそうだ。
メリルの大歓迎会をする予定が、小規模なものになると文句を言ってきたのだ。
ならやはり予定通りに行こうかと言ったら、『すぐくるのじゃ!』と否定する。
さて夕飯だ。
「今日もパメラさん、同席するんですね」
「当然じゃない。こんな美味しいもの、当分食べられないからね。なんかお父さんも張り切っていたし、凄く楽しみ」
「それを聞いたら、俺も早く食べたいですね」
今日の夕飯
・牛肉のカルパッチョ風
・ワニのバターソテー
・サンダーバードの岩塩蒸し
・生野菜のサラダ
・野菜の塩スープ
・ミルクセーキ
・プリン
「こりゃまた旨いですね! デイルさん、このカルパッチョのソースはどうやって作ったのですか?」
「カルパッチョ?」
「牛の生肉を薄くスライスしたものに、チーズやこういったソースをかけたものを、俺のいた村ではそう言ってたのです。このソース旨いですね」
「ルコルの実を絞って火にかけて塩コショウで味を調えただけだよ」
「へ~、岩塩蒸しも手が込んでますね。丁度いい塩加減です」
「兄様! ワニも美味しいです!」
「お前はバター好きだからな」
親子は今日も泣いている。
親子が泣きながら食べているのを見て、『泣くほど旨いのか!』と皆とても食べたそうだ。
今日も野郎どもは3倍増しだが静かに酒を飲みながらこちらをチラ見してくる程度だ。
おや、今入ってきた奴は以前俺に絡んできた夫婦だ。真っ直ぐ俺の方に向かってくる。
「リョウマ君、久しぶりだ。今日は礼を言いにきた。あんたのおかげで村の男たちに連れまわされて一人前と言えるぐらいの稼ぎができるようになったよ」
「何言ってやがる! 俺の半分も稼げてないだろうが! まだまだだ!」
「「そうだそうだ! ひゃはは!」」
周りの男たちからヤジが飛ぶが、皆が指導してくれているようで、結構馴染んでいるようだ。
「うっ! うるせぇ~! 兎の罠が難しいんだよ!」
「「「ぎゃははは!」」」
「リョウマ君、ほんとうありがとうね。こんな感じだけど、人並みに暮らせる程度の稼ぎはあるし、村の男たちもなんだかんだ気に掛けてくれてるから、助かっているよ」
「それは良かった。何事もコツコツですよ。欲張るとかえって痛い目を見ます。基礎が大事ですからね。だからナシルさんもここの村の人に預けて指導してもらったんです。そういえば、指導してもらった礼がまだでしたね。おかみさん、これで皆に振舞ってあげてください。ナシル親子の授業料です」
俺は金貨10枚をおかみさんに握らせた……村長からサンダーバード撃退でもらった金額と同額だ。
「皆、今日はリョウマ君の奢りだ! ジャンジャン飲んでいいよ!」
「「「ヒャホー! 兄ちゃんの奢りだ~!」」」
おかみさんの叫びと共に宴が始まった。
俺たちの食事自体は終えている。ワイワイと雑談に交じっているだけだが、それなりに楽しい。
ナシル親子も、今日世話になった男たちとなにやら楽しげに話している。こういう雰囲気は悪くない。
正直に言うと、バイクの出来が良かったので俺は上機嫌なのだ。
明日はいよいよ神殿に帰るのだが、ちょっと緊張もしている。
皆に黙って出て行ってしまったのだ。巫女たちだけではなく剣術を教わっていた騎士にも悪い事をした。
ちゃんと謝って許しを請おう。
実際音があればあったで問題なんだけどね。あれほどの重低音で街道を爆走したら魔獣がわんさかきて、トレイン状態になるのは間違いない。サイレント仕様の今の方が現実的に考えればベストなのだ。
試乗ドライブを終え、村の宿屋に帰ってきたのだが、フェイがこっちを時々チラ見する。
チラ見の視線を感じるのだが、何も言ってこない……言ってこないが俺には分かっている。卵だ。
「フェイ、お前ゆで卵が食いたいんだろ?」
「う~、だって凄く美味しいって村の人が言ってるんだもん!」
「村の者も滅多に食べないそうだぞ。売れば結構いい値になるそうだから、大抵は食べるのを我慢して売るって言ってた。村の風習として、子供が16の成人になる年に村長がプレゼントするってのが50年ほど前からあるらしいけど、それ以外では偶に沢山とれた年に食べる程度らしいぞ」
「兄様、3時のおやつにって言ってました! もうすぐ3時です!」
「はぁ? 俺は何も言ってないだろう! お前が勝手に俺の心内を読んだだけだろうが!? この食い意地の張った駄竜!」
「う~!」
少し涙目になっている。可愛い奴だ。
「まぁ、冗談だ。俺の工房内で今、作ってる。俺はちょっとだけ黄身が半熟っぽいのが好きだからナビーに任せたんだ。大きいから俺と半分こだぞ。デイルさんが今日の夕飯も張り切ってくれてるはずだから、お腹一杯で食べれないとか失礼だからな」
今作ってると聞いてフェイは大はしゃぎだ。
卵はダチョウの卵よりは少し小さめだが、結構な大きさがある。半分でも鶏の5つ分は有りそうだ。
皿を2つ出し、できたてのアツアツのゆで卵を半分に切る。とろ~と少量黄身が流れ出す。中心付近は半熟だが白身は綺麗に固まっていて完璧俺の好みだ!
「フェイは今回頑張って獲ってきたからな。味見としてメリルたちには内緒で先に食べさせてやる」
アツアツのゆで卵に少量の塩を振って齧りついた。
旨い! 鶏の卵とは比べようがないほど濃厚なまろやかなコクがある。とろっとろの黄身が旨いのだ。
「兄様! 美味しいです!」
「ただのゆで卵なのにマジ旨いな。1人1個でも良かったな。フェイ、でも我慢だぞ。夕飯はもっと美味しいのが出るからな」
正直もっと食べたいのを我慢したほどだ。残りは神殿で巫女たちと一緒に食べる事にする。
夕刻にナシル親子が帰ってきた。
薬草を沢山採ってきたようだ。
村の男たちは本来外部の人間には秘密の採取場所を、惜しみなくナシルさんに教えたようだ。
「どうですか? いろいろ勉強になりましたか?」
「はい、この辺の魔獣は強い魔獣はいないのですね?」
「水神殿があるこの霊峰の山の影響らしいね。神殿に近づくほど弱い魔獣しか居なくなるんだって。サンダーバードはここじゃ強い部類だね。ソシリアの森周辺に比べたら、ここは比較的安全だよ」
「メリルが神殿に上がったら、ここへの移住も良いと思っていますが、リョウマ君はどう思います?」
「ナシルさんが良いと思うのであれば良いんじゃないですか? ここの住人は神殿関係者には激甘ですからね。メリルが神殿巫女になったのなら、その母親のナシルさんは大歓迎されるはずですよ。村の男の中に良い男でも居ましたか?」
「そういう方は居ませんでしたが、悪い方は居ないようでした。それに今はまだ再婚は考えられません」
「そうですか。ちなみに今直ぐとかでなく、ガラさんみたいな感じの人はどうですか? それと門番のダラスさんみたいな人とかはどうです?」
「ガラさんですか? 彼は素敵な方だと思います。私のような子持ちの未亡人では釣り合わないですね。ああいう方は、貴族のご令嬢の三女あたりの美しい女性が嫁がれてくるのでしょうね」
「まぁ、本来はそうなんでしょうね。名ばかりの落ちぶれ貴族が、融資目当てで三女、四女あたりを押し付けるのが大商人の嫁に多いそうです。ガラさんはそれを嫌って未だに独身なんだそうです」
「そうなのですか? 大商人にもなると気苦労もあって大変なのですね」
「ですね。本来貴族の圧力で融資をさせた上で渋々結婚するのがパターンなのですが、ガラさんは王族や公爵家とも懇意にしていて、他の貴族も下手にチョッカイを掛けてこないんだそうです」
「それは凄いですね。王族と知り合いなんて本当に凄いです。でも、私はまだ直ぐに再婚とかは考えられないですね。まだ亡くなった主人の事を愛していますから……」
俺は亡くなった旦那さんと会った事なかったから、その辺をあまり気にしていなかったが、この質問はちょっと軽率だったかもしれないな。まだ亡くなってあまり経っていないのだ。こちらの世界の女性は、庇護を求めて甲斐性のある男性に直ぐ再婚すると聞いたけど、そういうのは人にもよるんだろうな。ナシルさんは、そう簡単に割り切れないタイプのようだ。
「メリルはガラさんは好きか?」
「う~ん、ガラさんならお母さんをあげてもいいかな」
「あはは、メリルの方がお母さんみたいな言い方するんだな。ちなみに門番の人はどうだ?」
「門番の人はダメ……冒険者の人はお父さんみたいに急に死んじゃいそうだから。もうお母さんに悲しい思いはさせたくない」
「あの人、マチルダさんと同じくらい強いんだぞ。そう簡単には死なないと思うけど……まぁ、冒険者だと不安だよな」
「そうなんだ。強いんだね。う~ん、でもやっぱりダメ。お父さんと違って、なんか酒癖悪そうだもん」
「ヒャハハ、ダラスさんはダメか~。じゃあ、俺はどうだ?」
「リョウマお兄ちゃんは絶対ダメ!」
「え~絶対ダメなのか? 確かに一回り以上年は離れてるけど。俺、結構稼ぎは良いだろ? 優良物件だと思うんだけど、メリルに拒否られると、ちょっとショックだ」
「違うの! お兄ちゃんはメリルと結婚すればいいの! メリルとなら4つしか歳も変わらないし、将来は神殿巫女様なのだからお兄ちゃんも自慢できるでしょ?」
「あらあら、この子ったら。うふふ、リョウマ君にお熱なのね」
メリルは可愛くなるだろうが、中身28歳の俺からすれば相手にできない。
この世界の15歳の少年から見れば、おそらくメリルは可愛いから恋愛対象として見れるのかもしれない。既に多少の胸の膨らみもある。この年齢の女子は日毎に女らしくなっていくことだろう。
「あ、そうだ。明日の予定を変更しようと思う。徒歩であと4日程なのだけど、転移魔法で行く事にする。いろいろ考えたんだけど。この後の魔獣が弱すぎて練習にも経験値にもならないんだよ。走ると肉体強化にはなるんだけど、そんなのどこでもできるしね」
「私たちはそれで構いません。では、明日には到着ですね」
「メリルどきどきしてきた!」
念の為にフィリアには報告しておいた。ちょっとだけ怒られちゃった。
『4日後と言うから、それに合わせて準備をいろいろするつもりだったのじゃ!』だそうだ。
メリルの大歓迎会をする予定が、小規模なものになると文句を言ってきたのだ。
ならやはり予定通りに行こうかと言ったら、『すぐくるのじゃ!』と否定する。
さて夕飯だ。
「今日もパメラさん、同席するんですね」
「当然じゃない。こんな美味しいもの、当分食べられないからね。なんかお父さんも張り切っていたし、凄く楽しみ」
「それを聞いたら、俺も早く食べたいですね」
今日の夕飯
・牛肉のカルパッチョ風
・ワニのバターソテー
・サンダーバードの岩塩蒸し
・生野菜のサラダ
・野菜の塩スープ
・ミルクセーキ
・プリン
「こりゃまた旨いですね! デイルさん、このカルパッチョのソースはどうやって作ったのですか?」
「カルパッチョ?」
「牛の生肉を薄くスライスしたものに、チーズやこういったソースをかけたものを、俺のいた村ではそう言ってたのです。このソース旨いですね」
「ルコルの実を絞って火にかけて塩コショウで味を調えただけだよ」
「へ~、岩塩蒸しも手が込んでますね。丁度いい塩加減です」
「兄様! ワニも美味しいです!」
「お前はバター好きだからな」
親子は今日も泣いている。
親子が泣きながら食べているのを見て、『泣くほど旨いのか!』と皆とても食べたそうだ。
今日も野郎どもは3倍増しだが静かに酒を飲みながらこちらをチラ見してくる程度だ。
おや、今入ってきた奴は以前俺に絡んできた夫婦だ。真っ直ぐ俺の方に向かってくる。
「リョウマ君、久しぶりだ。今日は礼を言いにきた。あんたのおかげで村の男たちに連れまわされて一人前と言えるぐらいの稼ぎができるようになったよ」
「何言ってやがる! 俺の半分も稼げてないだろうが! まだまだだ!」
「「そうだそうだ! ひゃはは!」」
周りの男たちからヤジが飛ぶが、皆が指導してくれているようで、結構馴染んでいるようだ。
「うっ! うるせぇ~! 兎の罠が難しいんだよ!」
「「「ぎゃははは!」」」
「リョウマ君、ほんとうありがとうね。こんな感じだけど、人並みに暮らせる程度の稼ぎはあるし、村の男たちもなんだかんだ気に掛けてくれてるから、助かっているよ」
「それは良かった。何事もコツコツですよ。欲張るとかえって痛い目を見ます。基礎が大事ですからね。だからナシルさんもここの村の人に預けて指導してもらったんです。そういえば、指導してもらった礼がまだでしたね。おかみさん、これで皆に振舞ってあげてください。ナシル親子の授業料です」
俺は金貨10枚をおかみさんに握らせた……村長からサンダーバード撃退でもらった金額と同額だ。
「皆、今日はリョウマ君の奢りだ! ジャンジャン飲んでいいよ!」
「「「ヒャホー! 兄ちゃんの奢りだ~!」」」
おかみさんの叫びと共に宴が始まった。
俺たちの食事自体は終えている。ワイワイと雑談に交じっているだけだが、それなりに楽しい。
ナシル親子も、今日世話になった男たちとなにやら楽しげに話している。こういう雰囲気は悪くない。
正直に言うと、バイクの出来が良かったので俺は上機嫌なのだ。
明日はいよいよ神殿に帰るのだが、ちょっと緊張もしている。
皆に黙って出て行ってしまったのだ。巫女たちだけではなく剣術を教わっていた騎士にも悪い事をした。
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炭酸カルシウムが地球の自然界にないなんて言ってるけど、これって石灰岩や大理石だよ。
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ていうかソーダ灰って高度技術すぎない?塩で間に合わせときなよ。
送れましたが、あけましておめでとうございますm(__)m
・・・もう1年 (゚ーÅ) ホロリ
水神殿に帰ってからが、非常に気になる。
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本当にごっそりいくとベツモノになっちゃうし……