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(温かい……) 
 意識を喪失した九曜が目覚めると、何者かの腕の中にいた。いつの間にか湯に浸かっている。
 九曜が見上げると、灰色の優しい瞳とぶつかった。
 幻以は九曜の肌の鬱血した部分に触れて、指先で揉みほぐしていた。
「よく揉んでおかないと、痕になってしまうからな」
「噛み痕はどうにもならんだろう」
 九曜は気恥ずかしくなり、うつむいて言った。
「後で軟膏を塗ればいい」
 幻以の朴訥な声が、九曜の耳に甘美に響く。
 昔から乱暴者として名を馳せてきた幻以だが、そんな彼と結ばれてからは、彼の優しさに触れることが多くなった九曜だった。
 幻以から少々深く抉られた噛み痕に触れられて、九曜は思わず眉を寄せた。
「痛むか?」
 幻以が九曜の顔を心配そうな面持ちでのぞき込み、聞く。
 九曜は首を横に振った。
「さほどでもない」
「そうだ。後でここに持ってきた茶を煎じよう。あれは痛み止めにもなる」
「さほどでもないと言った」
 言うと、九曜は幻以の胸に頬を寄せた。九曜の心は幸せに満ちていた。
 なにせ、幻以の優しさに浴すことができるのは、世界中で自分だけなのだ。
 九曜は顔を上げて、幻以に自分から舌を絡めて口づけした。
 幻以は恍惚とした表情の後に、九曜を抱き締めて口づけに応じた。
 九曜は九曜で、もっと幻以の優しさに応じるために、幻以の皮膚の上で手をさまよわせた。
 九曜の手は幻以の逞しい肩から胸へと滑り落ち、幻以を温泉から押し出して、幻以を温泉の湛えられた岩の浴槽のへりに座らせた。
 九曜は幻以の脚の間の再び隆起した陽物をうっとりと眺めてから、自身の手をそれに絡みつかせ、先端に唇を添えた。
 幻以の先端に幾度も口づけした九曜は、今度は幻以の竿に唇を滑らせ、そっと舌を出して、無心に奉仕した。
 九曜の淫靡な仕草は幻以の息づかいを次第に荒げさせ、顔を快感に歪ませていく。
 そんな幻以の表情などつゆ知らず、九曜の唇は滑るように幻以のそれを飲み込んでいった。
 口の中で肥大化するそれに限界を感じた九曜は苦痛に顔を歪め、喉の奥で小さな声を漏らした。
 喉の奥で噴き出た甘露を一気に飲み干してから、九曜は幻以を見上げた。
 口の端から甘露を垂れ流す九曜の瞳はかすみ始めていた。
 幻以はのぼせた様子の九曜を案じて九曜を湯舟から抱き上げた。
「無茶をするな」
「仕方がない……自分が……抑えられなかった」
 九曜はそう呟くと、幻以の肩にぐったりと頭を預け、再び意識を喪失した。 
 
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