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四 思い出めくり
side:夜一 -偏愛痛・狂-
しおりを挟む「そっとしときなよ。もう疲れ切ってるからさ」
自部屋に退散したひまを追いかけようと立ったそいつを呼び止めた。
「あとさぁ、何で別れろって、しつこいわけ? あっ、もしかして狙ってた?」
すっげぇ動揺してる。図星じゃん。
「弟だ、そんなわけ」
「あるんだろ? だから、絶対渡したくない。そうだろ?」
苦しそうな顔をしてる。分かりやすー。コイツ、よく今まで手出さないで我慢したなぁ。
「あんたは、後遺症でセックス依存症になったって。でも真昼とは」
「誰が言った? んなこと。あ、親父かー。ここまでくるとホント、愛を通り越して、変態じゃん」
他人にプライベートを踏みにじられて気分悪ぃ。さっきから目がズキズキしてきてるし、さっさと終わらせて家で抜きてぇ。
「真昼にそんなことはしないでくれ! するなら俺にしてほしい。とにかく真昼は傷つけないでくれ!!」
ひまもキモいとか思ってんのかな。でも、純粋だからどこかではちゃんと考えて言ってくれてる、なんて思ってるのかも。
「は? なんでお前とまたヤんなきゃなんねぇーんだよ。気色悪ぃな」
あさにぃだか何だか知らねえけど、人の色恋沙汰にいちいち、口出してくんな。どこの旧時代の話だよ、別れろとか兄貴が釘指してくるの。
BL展開の兄弟ものじゃん。しかも義理とか燃えるんだろうなー。
「他の人とセックスをしていることを知ったら真昼はショックで立ち直れなくなる。だから、俺ならいくらでも罵倒されても縁切られてもいいから!」
「でっけぇ声出すなよ。ひまに聞こえるだろ?」
ピンポーン。ピンポーン。
まるで謀ったようなタイミングで鳴った。
「俺が出ます」
そりゃそうだわな。
ズンズン歩いて出て行くそいつの後ろ姿に唾吐いてやりたくなった。
俺がどんだけ我慢してるかって、知らねえくせに。
勝手にレッテル貼んなよ。痛みを紛らわす処方薬か、セックスは。そんなんじゃねえ。
毒だ。
猛毒。一度効いたら、もう欲しくて堪らなくなる。
痛み出す前に、グラビアを撮った後、行為に及ぶことあった。アブノーマルな撮影も回ってくるから、盛り上げるためにヤッたこともある。
童貞も処女もとっくに喪失済み。啼かして啼かされて。オトコにもオンナにもなった。
俺の欲しいものを手に入れるために体を売る。見たくて堪らない、すべてすべてのために。
ひまと付き合うために、俺は自分の生き方を力づくでねじ曲げた。
オナる回数は増えたけど我慢できた。昨日はホント、うっかりだった。時間をかけるつもりだったのに。
てか、おっせぇな。いつまで待たんだよ。
「あ、夜一さん?」
玄関の向こうから聞こえたのは、ボリューム調節を覚えたストーカーまがいの奴の声。
「珍しいな。寝てるだろ、いつもなら」
「彼は真昼の隣人で友だちだとか」
多分、友だちなんじゃん? ひまがどう思ってるか知らないけど。
夕空はよく見るとふるふるしていた。コイツは夜を怖がりすぎている。もっと肩の力抜いて生きればなぁ。
「じゃ、そろそろお暇しまーす」
「ちょっと」
「まだなんか用なの?」
夕空の前でコイツと言い合うのはよくない。夕空はすぐ詮索したがるから、面倒くさい。
「これ、お返しします」
差し出されたのは紙切れ、と挟まれた、多分チケット。
「最低だな」
夕空には聞こえないぐらいの声でボソッと言ってやった。
人質にとったワケだ。ひまが大事にしていたであろう、これを。
「おやすみー、良い夢をー」
夕空と一緒に退散した。背後でドアが音もなく閉まった。
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