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肯定ペンギン

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チートな異訪人と騎士

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 それは、いつものように平穏な、とある異世界での出来事だった。騎士団詰め所では団員たちが日々の鍛錬に励み、書類仕事に追われ、他愛ない冗談を言い合っていた。そこに突如として空から降ってきたのが、異世界からの来訪者、カナタだった。行く宛のない彼の面倒を騎士団は見ることになる。

 カナタは見たところ、ごく普通の青年。だが彼が持つチートスキルが、騎士団の日常を根底から覆すことになろうとは、この時の彼らは知る由もなかった。

 最初の異変は食料調達の任務中に起こった。深刻な食糧不足に悩まされていた騎士団は危険な『嘆きの森』への狩りに出かけることになった。団長である豪胆な男、ガストンは、いつものように厳重な警戒態勢を敷き、熟練の騎士たちを選抜した。しかし、カナタは事もなげに言った。

「え、食料調達ですか? じゃあ、これ使いますね」

 そう言って彼が取り出したのは、どこにでもありそうな釣り竿だった。ガストンは呆れたように眉をひそめたが、カナタは次の瞬間、その釣り竿をただの泉に投げ入れた。するとどうだろう、釣り糸が引き上げられるたびに、泉からは巨大な魚が、いや、時には猪が、さらには翼の生えた鳥までが次々と現れ、山と積まれていったのだ。騎士たちは唖然とし、ガストンは口をあんぐりと開けたまま固まっていた。食料不足は一瞬にして解消されたが、彼らの常識は粉々に打ち砕かれた瞬間だった。

 それからというもの、カナタのチートスキルは騎士団のあらゆる任務に影響を及ぼし始めた。

 ある日、難攻不落とされた山賊のアジト討伐に向かった時もそうだ。騎士たちは綿密な作戦を立て、夜陰に紛れて侵入しようと息を潜めていた。しかし、カナタは「え、普通に正面からでよくないですか?」と言い放ち、次の瞬間にはアジトの頑丈な門を片手で軽々と破壊し、そのまま山賊の頭を縄で縛って連れてきた。残りの山賊は、その光景を見て戦意を喪失し、一斉に投降した。騎士たちは「俺たちの出番は……?」と虚しく呟くしかなかった。

 また別の日には、凶暴な魔獣の群れが領地に押し寄せ、住民はパニックに陥っていた。騎士たちは果敢に立ち向かうも、その圧倒的な数と力に苦戦を強いられていた。そこにカナタがひょっこり現れ、「あ、これなら楽勝ですよ」と呟くと、ポケットから取り出した謎の笛を吹いた。すると、魔獣たちは一斉に動きを止め、まるで躾けられた犬のようにカナタの足元に座り込んだのだ。騎士たちは目を見張り、そのあまりの光景に戦意を喪失するどころか、ただただ呆然と立ち尽くすしかなかった。


 カナタの活躍は確かに騎士団の任務を格段に楽にし、領地の平和にも貢献した。しかし、同時に騎士たちの心には複雑な感情が渦巻いていた。

「俺たちの存在意義って、一体何なんだ……?」

 日々の鍛錬も、厳しい規律も、命を賭けた戦いも、カナタのチートスキルの前には霞んでしまう。彼らは誇り高き騎士でありながら、いつしかカナタの補佐のような立場になってしまっているのではないかという焦燥感に駆られていた。特に、生真面目で向上心の高い若手騎士レンは、毎日のようにカナタのチートスキルを観察し、その原理を解明しようと奮闘していたが、もちろんそんなことはできるはずもなかった。

 ガストン団長もまた、日々頭を抱えていた。カナタに感謝こそすれ、彼のあまりの万能さに、騎士団としての結束や練度が低下するのではないかという懸念を抱いていたのだ。一方で、カナタは全く悪びれる様子もなく、むしろ騎士たちの反応を見て首を傾げるばかり。彼は彼なりに、この世界の役に立とうと純粋に思っていたのだ。

 しかし、カナタのチートスキルが、思わぬ形で騎士たちの助けになることもあった。

 ある時、他国との国境紛争が勃発し、騎士団は総力を挙げて防衛に当たることになった。敵国の兵力は圧倒的で、騎士たちは絶望的な戦いを強いられていた。その時、カナタは珍しく深刻な顔で言った。

「これは、俺も本気出さないとヤバいかも」

 そして彼は、その身に秘められた真のチートスキルを発動した。それは、広範囲の敵を一瞬にして無力化する常識外れの能力だった。敵兵は次々と意識を失い、戦場は静寂に包まれた。騎士たちは呆然としつつも、その圧倒的な力によって危機を脱したことに安堵した。

 戦いは終わったが、騎士たちの心には新たな感情が芽生えていた。カナタの力は確かに規格外だが、彼がこの世界の平和を心から願っていることも理解できたのだ。彼らはカナタの力を完全に理解し、それを受け入れることで、新たな騎士団の形を模索し始めた。

 カナタのチートスキルに振り回され、時には自らの存在意義に悩んだ騎士たち。それでも彼らは、異世界からの来訪者と共に、この世界の平和を守り続けるだろう。そして、今日もどこかで、カナタの「やっちゃった」的なチートスキルに、騎士たちの悲鳴と笑い声が響き渡るのだった。
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