たまにはこんなファンタジー

肯定ペンギン

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傲慢な転生者の誤算

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 ある日、俺、如月きさらぎれんはトラックにはねられた――はずだった。次に目を開けた時、目の前に広がるのはファンタジー感満載の森。そして、自分の手には見慣れない紋章が刻まれている。

「まさか……異世界転生!」

 しかも、ただの転生じゃない。俺には『全知全能の書』というチートスキルが与えられていた。この本には、この世界のあらゆる魔法、スキルが記されており、思い描くままに具現化できるという。

「ハハハ! これで俺は、この世界の絶対的支配者だ! 調子に乗って悪いか!」

 俺は高笑いしながら、手始めに魔物を一撃で灰にする魔法を放った。その威力に、ますます増長する俺。もはや俺の敵などいない、そう確信していた。

 しかし、その確信はすぐに打ち砕かれる。

 初めて訪れた街で俺は冒険者ギルドの門を叩いた。そこで目にしたのは、信じられない光景だった。

 ギルドの受付嬢は、明らかに鑑定スキルを使わずして冒険者のレベルを言い当て、複雑な依頼内容を瞬時に理解していた。さらに、依頼を終えて戻ってきた冒険者たちは、まるで散歩でもしてきたかのように涼しい顔で、けた違いの魔物の素材を提出している。

「おいおい、なんだこのレベルは……?」

 俺は困惑した。俺の『全知全能の書』でも、これほどの逸材は見たことがない。いや、そもそもこの世界の常識が、俺の知るそれと乖離しているように感じたのだ。

 ある日、俺はSランク冒険者と名乗る男と出会った。男は俺を見るなり、ニヤリと笑った。

「お兄ちゃん、もしかして初めての転生かい?」

 その言葉に、俺は凍り付いた。

「どういう意味だ……?」
「いやさ、俺も最初はそうだったんだよ。スキルを持って異世界転生! これで人生イージーモードってな。でもな、この世界、ほとんどの人間が人生2周目なんだわ」

 男は続ける。

「この世界はな、選ばれし者だけが転生できる世界なんだ。それも、前世の記憶とチートスキルを持ってな。俺だって、元はしがないサラリーマンだったけど、今じゃこの通り、炎を自在に操る魔法剣士さ」

 俺は愕然とした。周囲を見渡せば、誰もが当たり前のように常識外れの力を持っている。

 街を歩く商人と思しき男は、実は空間魔法で商品を一瞬で取り寄せ、路地裏の子供は念力で玩具を操っている。カフェの店員は客の思考を読み取って注文を完璧にこなしていた。

 俺の『全知全能の書』は、この世界では「ちょっと便利な辞書」程度のものに過ぎなかったのだ。俺がチートだと思っていたスキルも、この世界では「あって当然の一般スキル」でしかなかった。

 俺は、生まれて――人生2周目にして何だが、初めて井の中の蛙だったことを思い知らされた。調子に乗っていた自分が、どれほど滑稽だったか。この世界はチートな人間しかいない、とんでもない世界だったのだ。

 俺は力なく呟いた。

「……まじかよ、この世界」

 そして、俺の異世界での第二の人生は、まさかの『チートの底辺』からのスタートを切ることになるのだった
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