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明けない夜
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静寂に包まれた通称『無情の奈落』。その入り口に立つのは、新米冒険者パーティー『暁の誓い』だ。リーダーの剣士レオン、回復役の僧侶ルル、魔法使いのセシル、そして斥候のレン。彼らはまだ幼さが残る顔に不安と期待を同時に浮かべていた。
「よし、みんな!気を引き締めていこう!ここをクリアすれば、俺たちも一人前だ!」
レオンがそう叫び、柄にもなく気合を入れる。
ダンジョンに足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を刺す。薄暗い通路には不気味なカビが壁を這い、足元からは湿った土の匂いが立ち込める。数歩進むと突然、セシルの足がもつれた。
「きゃっ!」
セシルが前のめりに倒れ込み、手のひらから微かに煙が上がる。
「どうしたの、セシル!?」
ルルが駆け寄る。セシルは顔を真っ青にして、震える声で言った。
「なんか、体が痺れて……力が入らない……」
ルルが鑑定すると、セシルは麻痺の状態異常に陥っていた。おそらく、通路のどこかに仕掛けられていた罠だろう。ルルの治癒魔法で麻痺はすぐに解除されたが、パーティーの間に緊張が走った。
さらに奥へと進むと、奇妙な歌声が聞こえてきた。それはどこか懐かしく、そして甘く響く。レンが耳を澄まし、囁くように言った。
「罠だ……たぶん、魅了系の」
しかし、その声は想像以上に魅惑的だった。次に異変が起きたのはレオンだった。彼の顔がぼんやりと夢見るようになり、一歩、また一歩と歌声のする方へ誘われるように歩き出す。
「レオン!戻ってきて!」
ルルが叫ぶが、レオンの耳には届かない。慌ててルルがレオンに飛びつき、その体を抑え込む。しかし、レオンはまるで恋人のようにルルを抱きしめ、頬ずりしようとする。ルルは顔を真っ赤にして、なんとか魔法でレオンを正気に戻した。彼は魅了の状態異常にかかっていたのだ。
「くそっ……なんてダンジョンだ……」
顔が赤いままのルルをよそに、レオンは歯ぎしりをする。
慎重に進む彼らの前に、巨大なクモの群れが現れた。レンが素早く弓を構え、セシルが魔法を詠唱する。戦闘が開始され、クモたちは糸を吐き出し始める。
「避けろ!」
レオンが叫ぶが、遅かった。一本の糸がルルの腕に絡みつき、彼女の動きが鈍くなる。ルルは鈍足の状態異常に陥っていた。さらに別のクモの糸がセシルを捕らえ、彼女の魔力が急速に消耗していく。セシルは魔力枯渇の状態異常だ。
レオンは前衛で奮戦するが、クモの毒が彼の視界を歪ませ始める。盲目だ。レンは後方から矢を放ち続けるが、毒の霧が周囲に広がり、彼の呼吸を苦しめる。毒、そして沈黙。彼らの声が出なくなり、連携が取れなくなっていく。
視界を失ったレオンは、闇雲に剣を振るう。魔力が尽きたセシルは、魔法の詠唱もできない。毒に蝕まれ、声も出せないレンは、ただ矢を放つことしかできない。そして、鈍足で動きのままならないルルは、仲間を助けられない無力感に打ちひしがれていた。
「ぐっ……」
レオンの背中に、クモの鋭い爪が深々と突き刺さる。彼はその場に膝をつき、そのまま動かなくなった。
レオンの倒れる音を聞き、ルルは悲鳴を上げようとするが、喉からは何も出ない。彼女の視界もまた、徐々に薄れていく。仲間たちが次々と倒れていく中、ルルの意識も遠のいていく。
最後に彼女の目に映ったのは、闇に包まれたダンジョンの天井だった。
『無情の奈落』は、その名の通り、一切の情け容赦なく、初心者パーティーの命を吸い尽くした。暁の誓いは、二度と夜明けを見ることはなかった。
「よし、みんな!気を引き締めていこう!ここをクリアすれば、俺たちも一人前だ!」
レオンがそう叫び、柄にもなく気合を入れる。
ダンジョンに足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を刺す。薄暗い通路には不気味なカビが壁を這い、足元からは湿った土の匂いが立ち込める。数歩進むと突然、セシルの足がもつれた。
「きゃっ!」
セシルが前のめりに倒れ込み、手のひらから微かに煙が上がる。
「どうしたの、セシル!?」
ルルが駆け寄る。セシルは顔を真っ青にして、震える声で言った。
「なんか、体が痺れて……力が入らない……」
ルルが鑑定すると、セシルは麻痺の状態異常に陥っていた。おそらく、通路のどこかに仕掛けられていた罠だろう。ルルの治癒魔法で麻痺はすぐに解除されたが、パーティーの間に緊張が走った。
さらに奥へと進むと、奇妙な歌声が聞こえてきた。それはどこか懐かしく、そして甘く響く。レンが耳を澄まし、囁くように言った。
「罠だ……たぶん、魅了系の」
しかし、その声は想像以上に魅惑的だった。次に異変が起きたのはレオンだった。彼の顔がぼんやりと夢見るようになり、一歩、また一歩と歌声のする方へ誘われるように歩き出す。
「レオン!戻ってきて!」
ルルが叫ぶが、レオンの耳には届かない。慌ててルルがレオンに飛びつき、その体を抑え込む。しかし、レオンはまるで恋人のようにルルを抱きしめ、頬ずりしようとする。ルルは顔を真っ赤にして、なんとか魔法でレオンを正気に戻した。彼は魅了の状態異常にかかっていたのだ。
「くそっ……なんてダンジョンだ……」
顔が赤いままのルルをよそに、レオンは歯ぎしりをする。
慎重に進む彼らの前に、巨大なクモの群れが現れた。レンが素早く弓を構え、セシルが魔法を詠唱する。戦闘が開始され、クモたちは糸を吐き出し始める。
「避けろ!」
レオンが叫ぶが、遅かった。一本の糸がルルの腕に絡みつき、彼女の動きが鈍くなる。ルルは鈍足の状態異常に陥っていた。さらに別のクモの糸がセシルを捕らえ、彼女の魔力が急速に消耗していく。セシルは魔力枯渇の状態異常だ。
レオンは前衛で奮戦するが、クモの毒が彼の視界を歪ませ始める。盲目だ。レンは後方から矢を放ち続けるが、毒の霧が周囲に広がり、彼の呼吸を苦しめる。毒、そして沈黙。彼らの声が出なくなり、連携が取れなくなっていく。
視界を失ったレオンは、闇雲に剣を振るう。魔力が尽きたセシルは、魔法の詠唱もできない。毒に蝕まれ、声も出せないレンは、ただ矢を放つことしかできない。そして、鈍足で動きのままならないルルは、仲間を助けられない無力感に打ちひしがれていた。
「ぐっ……」
レオンの背中に、クモの鋭い爪が深々と突き刺さる。彼はその場に膝をつき、そのまま動かなくなった。
レオンの倒れる音を聞き、ルルは悲鳴を上げようとするが、喉からは何も出ない。彼女の視界もまた、徐々に薄れていく。仲間たちが次々と倒れていく中、ルルの意識も遠のいていく。
最後に彼女の目に映ったのは、闇に包まれたダンジョンの天井だった。
『無情の奈落』は、その名の通り、一切の情け容赦なく、初心者パーティーの命を吸い尽くした。暁の誓いは、二度と夜明けを見ることはなかった。
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