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職業シャッフル! 女子パーティーの奮闘記
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「くっそー! こんなはずじゃなかったのに!」
エリスの叫びが薄暗いダンジョンの通路に響き渡る。彼女は剣士、それもパーティーの頼れるリーダーだ。しかし今、彼女の手に握られているのは、ずっしりとした長剣ではなく、やけに頼りない短剣とピッキングツール。そして、全身を覆うのは動きやすさを重視した盗賊の軽装だ。そう、彼女は今、盗賊のエリスなのだ。
数時間前、新人冒険者パーティー『花咲く乙女たち』は、初めての本格的なダンジョン探索に胸を躍らせていた。リーダーの剣士エリス、切れ者魔法使いのリアナ、心優しき僧侶セレネ、そしてムードメーカーで素早い盗賊のミリア。完璧な布陣のはずだった。
それが、古びた祭壇に仕掛けられていた奇妙な魔法陣のトラップに全員が巻き込まれて以来、事態は一変した。目を覚ますと、彼女たちの職業がバラバラに入れ替わっていたのだ。
「もう! リアナ、ちょっとは静かに歩いてよ! そんなにガチャガチャ言ってたら、魔物に気づかれるでしょ!」
エリスが眉をひそめて注意する。彼女の視線の先にいるのは、これまで後衛で魔法を操っていたはずのリアナ。現在の彼女は、エリスが元々装備していた重装鎧を身につけ、大剣を肩に担いでいる。だが、その足取りは覚束なく、鎧の金具が歩くたびにカチャカチャと音を立てる。
「だってしょうがないじゃない! こんな重いもの、着慣れてないんだから!」
剣士になったリアナは額に汗を浮かべて反論する。普段は涼しい顔で魔法を唱える彼女が、重い剣を振り回しては息切れし、たった数歩歩いただけで疲労困憊の様子だ。
「えっと、聖なる光よ、どうか……あれ? こっちの詠唱で合ってるのかな?」
後方からは、僧侶になったミリアの不安げな声が聞こえる。これまで華麗な隠密行動でパーティーを支えてきたミリアが分厚い聖典を片手に四苦八苦している。彼女が唱える治癒魔法は光が弱々しく、時折、変な音を立てて消滅する。
「うわぁぁぁ! 燃えちゃう、燃えちゃうぅぅ!」
そして、そのミリアの横で突如として炎が上がり、悲鳴を上げたのは魔法使いになったセレネだ。普段は穏やかで慈悲深いセレネが、手から放った初級火炎魔法がなぜか暴走し、自分のローブの裾を焦がしてしまったのだ。
「セレネ、落ち着いて! そのローブ、私の魔法使いのだから!」
リアナが慌てて叫ぶ。
「ねぇ、本当にこれ、元に戻るの? 私、もう壁に張り付いて移動するの、飽きちゃったんだけど」
エリスはため息をついた。彼女は元剣士なので、盗賊に必要な敏捷性は人並み以上にある。だが、元々正面から堂々と戦うタイプだった彼女にとって、ダンジョンの壁にへばりつき、隠密で移動する盗賊の仕事は、どうにも性に合わない。おまけに、罠解除もピッキングも失敗ばかりで、そのたびにミリアの「ああ、そこはそうじゃないんです!」という呆れた声が耳に響く。
一方、剣士になったリアナは、これまで軽視していた前衛の重要性を痛感していた。
「エリスがいつも魔物の攻撃を引き受けてくれてたから、私たちは安心して魔法を唱えたり、回復に専念できてたんだなって……。こんなに大変だったなんて」
彼女が重い剣を肩から下ろし、息を整える。その言葉に、エリスは少しだけ顔を綻ばせた。
魔法使いになったセレネは、最初は暴走魔法ばかりだったものの、次第にコツを掴み始めていた。
「僧侶のときは治癒することしか考えてなかったけど、こうして強力な魔法で敵を打ち払うのも、みんなを守る方法の一つなんだなって……!」
彼女が放った火球は以前よりもしっかりとした形になり、目の前のゴブリンを一撃で吹き飛ばした。その瞬間、ミリアが「おぉ……!」と感嘆の声を上げる。
そして、僧侶になったミリア。最初は聖なる力に戸惑っていたが、盗賊時代に培った鋭い観察力で仲間のわずかな異変や体調の変化を見抜くようになった。
「リアナ、剣の持ち方がちょっとおかしいです! そこ、マメができそうですよ。エリス、隠密移動するときは、もう少し重心を低くして。あと、セレネ、詠唱の語尾、もう少し伸ばした方が魔力が安定するかもしれません!」
彼女が唱える治癒魔法は、まだ光が不安定なものの、的確な指示と迅速な対応でパーティーを支え始めていた。
「……なんか、みんな、普段と全然違うけど、意外とイケるかも?」
エリスが呟くと、他の三人も頷いた。
道中、エリスは盗賊の身軽さを活かして、今まで剣士では踏み込めなかった隠された通路を発見した。リアナは魔法の知識を応用し、剣に魔力を込めて斬撃を強化するユニークな技を編み出した。セレネは、僧侶の知恵と魔法使いの力を組み合わせ、結界を張りながら攻撃するトリッキーな戦術を生み出した。そしてミリアは、聖なる力を扱う中で、これまでの盗賊としての経験からくる直感が危機を察知する新たな力になることを発見した。
彼女たちは、お互いの職業の大変さを身をもって知り、これまで当たり前だと思っていた役割が、いかに重要だったかを痛感した。同時に、それぞれの新たな才能や意外な一面を発見し、パーティーの絆は以前にも増して強固になっていく。
「私たち、『花咲く乙女たち』は、どんな職業になっても、最強のパーティーなんだからね!」
エリスが、満面の笑みで言った。不慣れな役割の中で四苦八苦しながらも、彼女たちは少しずつ、新たな自分と、仲間たちの真の姿を知っていく。このダンジョンを抜け出したとき、彼女たちはきっと、これまでとは違う、もっと頼もしい冒険者になっていることだろう。そして、この大混乱のダンジョンでの経験は、彼女たちの冒険者人生で忘れられない、最高のコメディとして語り継がれていくのだった。
エリスの叫びが薄暗いダンジョンの通路に響き渡る。彼女は剣士、それもパーティーの頼れるリーダーだ。しかし今、彼女の手に握られているのは、ずっしりとした長剣ではなく、やけに頼りない短剣とピッキングツール。そして、全身を覆うのは動きやすさを重視した盗賊の軽装だ。そう、彼女は今、盗賊のエリスなのだ。
数時間前、新人冒険者パーティー『花咲く乙女たち』は、初めての本格的なダンジョン探索に胸を躍らせていた。リーダーの剣士エリス、切れ者魔法使いのリアナ、心優しき僧侶セレネ、そしてムードメーカーで素早い盗賊のミリア。完璧な布陣のはずだった。
それが、古びた祭壇に仕掛けられていた奇妙な魔法陣のトラップに全員が巻き込まれて以来、事態は一変した。目を覚ますと、彼女たちの職業がバラバラに入れ替わっていたのだ。
「もう! リアナ、ちょっとは静かに歩いてよ! そんなにガチャガチャ言ってたら、魔物に気づかれるでしょ!」
エリスが眉をひそめて注意する。彼女の視線の先にいるのは、これまで後衛で魔法を操っていたはずのリアナ。現在の彼女は、エリスが元々装備していた重装鎧を身につけ、大剣を肩に担いでいる。だが、その足取りは覚束なく、鎧の金具が歩くたびにカチャカチャと音を立てる。
「だってしょうがないじゃない! こんな重いもの、着慣れてないんだから!」
剣士になったリアナは額に汗を浮かべて反論する。普段は涼しい顔で魔法を唱える彼女が、重い剣を振り回しては息切れし、たった数歩歩いただけで疲労困憊の様子だ。
「えっと、聖なる光よ、どうか……あれ? こっちの詠唱で合ってるのかな?」
後方からは、僧侶になったミリアの不安げな声が聞こえる。これまで華麗な隠密行動でパーティーを支えてきたミリアが分厚い聖典を片手に四苦八苦している。彼女が唱える治癒魔法は光が弱々しく、時折、変な音を立てて消滅する。
「うわぁぁぁ! 燃えちゃう、燃えちゃうぅぅ!」
そして、そのミリアの横で突如として炎が上がり、悲鳴を上げたのは魔法使いになったセレネだ。普段は穏やかで慈悲深いセレネが、手から放った初級火炎魔法がなぜか暴走し、自分のローブの裾を焦がしてしまったのだ。
「セレネ、落ち着いて! そのローブ、私の魔法使いのだから!」
リアナが慌てて叫ぶ。
「ねぇ、本当にこれ、元に戻るの? 私、もう壁に張り付いて移動するの、飽きちゃったんだけど」
エリスはため息をついた。彼女は元剣士なので、盗賊に必要な敏捷性は人並み以上にある。だが、元々正面から堂々と戦うタイプだった彼女にとって、ダンジョンの壁にへばりつき、隠密で移動する盗賊の仕事は、どうにも性に合わない。おまけに、罠解除もピッキングも失敗ばかりで、そのたびにミリアの「ああ、そこはそうじゃないんです!」という呆れた声が耳に響く。
一方、剣士になったリアナは、これまで軽視していた前衛の重要性を痛感していた。
「エリスがいつも魔物の攻撃を引き受けてくれてたから、私たちは安心して魔法を唱えたり、回復に専念できてたんだなって……。こんなに大変だったなんて」
彼女が重い剣を肩から下ろし、息を整える。その言葉に、エリスは少しだけ顔を綻ばせた。
魔法使いになったセレネは、最初は暴走魔法ばかりだったものの、次第にコツを掴み始めていた。
「僧侶のときは治癒することしか考えてなかったけど、こうして強力な魔法で敵を打ち払うのも、みんなを守る方法の一つなんだなって……!」
彼女が放った火球は以前よりもしっかりとした形になり、目の前のゴブリンを一撃で吹き飛ばした。その瞬間、ミリアが「おぉ……!」と感嘆の声を上げる。
そして、僧侶になったミリア。最初は聖なる力に戸惑っていたが、盗賊時代に培った鋭い観察力で仲間のわずかな異変や体調の変化を見抜くようになった。
「リアナ、剣の持ち方がちょっとおかしいです! そこ、マメができそうですよ。エリス、隠密移動するときは、もう少し重心を低くして。あと、セレネ、詠唱の語尾、もう少し伸ばした方が魔力が安定するかもしれません!」
彼女が唱える治癒魔法は、まだ光が不安定なものの、的確な指示と迅速な対応でパーティーを支え始めていた。
「……なんか、みんな、普段と全然違うけど、意外とイケるかも?」
エリスが呟くと、他の三人も頷いた。
道中、エリスは盗賊の身軽さを活かして、今まで剣士では踏み込めなかった隠された通路を発見した。リアナは魔法の知識を応用し、剣に魔力を込めて斬撃を強化するユニークな技を編み出した。セレネは、僧侶の知恵と魔法使いの力を組み合わせ、結界を張りながら攻撃するトリッキーな戦術を生み出した。そしてミリアは、聖なる力を扱う中で、これまでの盗賊としての経験からくる直感が危機を察知する新たな力になることを発見した。
彼女たちは、お互いの職業の大変さを身をもって知り、これまで当たり前だと思っていた役割が、いかに重要だったかを痛感した。同時に、それぞれの新たな才能や意外な一面を発見し、パーティーの絆は以前にも増して強固になっていく。
「私たち、『花咲く乙女たち』は、どんな職業になっても、最強のパーティーなんだからね!」
エリスが、満面の笑みで言った。不慣れな役割の中で四苦八苦しながらも、彼女たちは少しずつ、新たな自分と、仲間たちの真の姿を知っていく。このダンジョンを抜け出したとき、彼女たちはきっと、これまでとは違う、もっと頼もしい冒険者になっていることだろう。そして、この大混乱のダンジョンでの経験は、彼女たちの冒険者人生で忘れられない、最高のコメディとして語り継がれていくのだった。
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