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開かずの扉
開かずの扉3
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──それは、乙が神流と出かけて何日か経ったある日だった。
ベッドから起き上がると、身体に違和感がある。
妙に部屋の中が熱い。
昨日、空調の調節をしなかったからだろうか、微かに視界が霞んで見える気がした。
疲れが溜まっているのだろうと学食に向かうと、ちらほらと疎らに残っている寮生の中に神流も来ていた。
「おはよう、乙」
「ああ…」
「今日は何食べる?」
「ああ…」
メニューを見たが乙が頼んだのはクロワッサンと紅茶だけだった。
朝食を取りながら神流が話し始めた。
「…それでな、私これから…になってさ」
「え?」
どうした事だろうか、心なしか神流の声が遠く聞こえる。
「だ~から!!
少しの間、帰らなきゃいけないの!!」
「ああ…そうか…」
「…乙?どうしたんだよ?
今日なんか変だぞ?」
「…疲れてるのかも知れないな」
そう言って席を立とうとしただった。
目の前の景色が一気に歪み始める。
ガタン!!
「乙ッ!!!!」
乙は、その場で倒れこんだ。
「乙!!おい!!大……か…!!」
既に神流の言葉も薄れ、視界すら霞み乙の意識が薄れていった。
神流は乙を部屋に運ぶと、パジャマに着替えさせて医務室の先生が到着するのを待った。
やがて医務室の先生が到着し、診察をすると口を開く。
「これは風邪ね。
疲れが溜まっていたのかもしれないわね」
「そうですか」
「でも、困ったわね。
私、これから学会に顔を出さなくてはいけないの。
木田さんは、これから帰郷するのよね?」
「はい…」
「誰か残っていないかしら…」
神流は、少し考え込むと一人の人物を思い出した。
乙の双子の妹の輝李だ。
「…あ」
「思い当たる人がいるの?」
しかし、そこまで言って考え直した。
今、輝李は乙とギクシャクしているのだ。
夏休み前に会った時の輝李の今にも泣きそうな哀しい顔。
そして、輝李に手をあげてしまった乙も辛そうながらに同じ顔をしていたのだ。
「先生…やっぱり、私が…」
「あら、駄目よ。
木田さん、ご実家で外せない用があるから帰るんでしょう?
外出届けの報告も受けているわ」
「はい、ですが…」
そう、神流の帰郷は交流会と称した政略的な用だったのだ。
先生に促され仕方なく、神流は寮内にいると思われる輝李を探した。
「輝李ちゃん!!」
「?」
寮中を探し、やっと輝李を見つけると声をかけて駆け寄った。
「ハァハァ…良かった、輝李ちゃんは帰ってなかったんだな。
探してたんだ、ハァハァ…」
「…どうしたの?慌てて…」
神流は今朝、乙が学食で倒れ部屋で寝込んでいる乙の様子を話した。
「乙が風邪…」
「…うん。本当はこんな事、今の輝李ちゃんに頼むのは凄く酷な事だって解ってるんだ。
乙と何かあったんだろ…?
最近、寮でも余り見かけないし、部屋に籠もっているみたいだって聞いていたから…」
「……」
「私が居てあげれれば良いんだけど、帰らなきゃいけないんだ…。
乙も輝李ちゃんもファンの子が多いし、他の子に頼むわけにもいかなくて」
「…解った…」
輝李は少し辛そうな顔を見せる。
当然の事だ。
あの時の乙の顔は、痛みは未だに輝李の中で鮮明に残っているのだから。
神流も辛そうに口を開く。
「ごめんね…輝李ちゃん…」
「ううん、気にしないで…
大丈夫!!僕達…姉妹だもん、こんな事で途切れたりしないから」
輝李の見せた笑顔は、何処か痛々しく哀しげに神流の目には映ったのだった。
ベッドから起き上がると、身体に違和感がある。
妙に部屋の中が熱い。
昨日、空調の調節をしなかったからだろうか、微かに視界が霞んで見える気がした。
疲れが溜まっているのだろうと学食に向かうと、ちらほらと疎らに残っている寮生の中に神流も来ていた。
「おはよう、乙」
「ああ…」
「今日は何食べる?」
「ああ…」
メニューを見たが乙が頼んだのはクロワッサンと紅茶だけだった。
朝食を取りながら神流が話し始めた。
「…それでな、私これから…になってさ」
「え?」
どうした事だろうか、心なしか神流の声が遠く聞こえる。
「だ~から!!
少しの間、帰らなきゃいけないの!!」
「ああ…そうか…」
「…乙?どうしたんだよ?
今日なんか変だぞ?」
「…疲れてるのかも知れないな」
そう言って席を立とうとしただった。
目の前の景色が一気に歪み始める。
ガタン!!
「乙ッ!!!!」
乙は、その場で倒れこんだ。
「乙!!おい!!大……か…!!」
既に神流の言葉も薄れ、視界すら霞み乙の意識が薄れていった。
神流は乙を部屋に運ぶと、パジャマに着替えさせて医務室の先生が到着するのを待った。
やがて医務室の先生が到着し、診察をすると口を開く。
「これは風邪ね。
疲れが溜まっていたのかもしれないわね」
「そうですか」
「でも、困ったわね。
私、これから学会に顔を出さなくてはいけないの。
木田さんは、これから帰郷するのよね?」
「はい…」
「誰か残っていないかしら…」
神流は、少し考え込むと一人の人物を思い出した。
乙の双子の妹の輝李だ。
「…あ」
「思い当たる人がいるの?」
しかし、そこまで言って考え直した。
今、輝李は乙とギクシャクしているのだ。
夏休み前に会った時の輝李の今にも泣きそうな哀しい顔。
そして、輝李に手をあげてしまった乙も辛そうながらに同じ顔をしていたのだ。
「先生…やっぱり、私が…」
「あら、駄目よ。
木田さん、ご実家で外せない用があるから帰るんでしょう?
外出届けの報告も受けているわ」
「はい、ですが…」
そう、神流の帰郷は交流会と称した政略的な用だったのだ。
先生に促され仕方なく、神流は寮内にいると思われる輝李を探した。
「輝李ちゃん!!」
「?」
寮中を探し、やっと輝李を見つけると声をかけて駆け寄った。
「ハァハァ…良かった、輝李ちゃんは帰ってなかったんだな。
探してたんだ、ハァハァ…」
「…どうしたの?慌てて…」
神流は今朝、乙が学食で倒れ部屋で寝込んでいる乙の様子を話した。
「乙が風邪…」
「…うん。本当はこんな事、今の輝李ちゃんに頼むのは凄く酷な事だって解ってるんだ。
乙と何かあったんだろ…?
最近、寮でも余り見かけないし、部屋に籠もっているみたいだって聞いていたから…」
「……」
「私が居てあげれれば良いんだけど、帰らなきゃいけないんだ…。
乙も輝李ちゃんもファンの子が多いし、他の子に頼むわけにもいかなくて」
「…解った…」
輝李は少し辛そうな顔を見せる。
当然の事だ。
あの時の乙の顔は、痛みは未だに輝李の中で鮮明に残っているのだから。
神流も辛そうに口を開く。
「ごめんね…輝李ちゃん…」
「ううん、気にしないで…
大丈夫!!僕達…姉妹だもん、こんな事で途切れたりしないから」
輝李の見せた笑顔は、何処か痛々しく哀しげに神流の目には映ったのだった。
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