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開かずの扉
開かずの扉4
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「ハァハァ…」
乙がベッドで苦しんでいると、そっと首元に触れる感触があった。
温かく、どことなく優しい懐かしい温もり…。
そして誰かの溜め息が聞こえる。
「…と…」
「ハァハァ…ハァハァ…」
ハッキリと聞こえないが、それは自分を呼んでいる事が解った。
懐かしい声…
いつも自分から離れず支えてくれた輝李の声だ。
「苦しそうだね…」
「ハァハァ…輝・・李…?
何で…ここに…ハァハァ」
「神流さんに頼まれたから…」
苦しそうに虚ろな眼差しで見つめる乙は力なく息を荒くしていた。
「…薬は飲んだわけ?」
「…ハァハァ…ま…ハァハァ」
言葉も覚束ない乙に輝李は、大きな溜め息をつくと何を思ったのか急に乙に顔を近付ける。
「や…めろ…」
不意に顔を反らした乙の抵抗に、途端に輝李の眉間にイラッと皺が走り、乙の両脇に手を着いた。
「ちょっと!!
薬くらい大人しく飲んだらどう?
聞き分けがないなら座薬無理矢理押し込むよ!!
…子供じゃないんだから手間とらせないでくれるかな…」
「……ハァハァ」
冷やかな輝李の言葉に、やっと行動の理由を理解した乙は、大人しくなり薬を輝李の口から受け取った。
薬を飲ませ終わると輝李は、新しいタオルと水枕を医務室から持ってきて乙の頭に置き、冷たいタオルを額に当てた。
熱を出した時、取り分け何があるわけでもないのに無性に孤独感に襲われる。
そんな乙の気持ちが顔に出ていたのだろうか、輝李が口を開いた。
「少し…眠ったほうが良いよ…
僕、ここでレポート書いてるから何かあったら呼んで…」
素っ気なく資料の書物に目を落とす輝李、不意に乙の胸に痛みが走った。
こんなにギクシャクして、いつも部屋に籠もっていると噂は聞いていた。
輝李の頬を打ってしまった罪悪感と本当は自分とは顔を合わせたくないはずなのに、乙の傍に居てくれる輝李に乙は小さく口を開いた。
「輝李…ごめん…」
「…何が?」
「…ハァハァ」
言葉をつぐんた乙に輝李は、静かに言葉をついた。
「あの時の事を言ってるの?
…乙が判断して下した事でしょ。
なら、自分の判断にプライドを持ったらどうなの?
それとも、謝らなきゃいけない様な事だったわけ?
…下らない事言ってる暇があるなら、さっさと風邪治して!!」
「…ああ」
意外な言葉。
それは輝李の精一杯の優しさなのかもしれないと、乙は胸に痛みを抱いた。
その後、乙は静かに眠りについた。
懐かしい夢を見た。
それは、幼い頃の夢…。
──乙は幼い頃、夏風邪を毎年ひく子供だった。
それは母が生きていた、2人がまだ小さな時だった。
「ケホ…ケホ…ハァハァ…」
「乙…大丈夫?」
風邪を引いた乙のベッドの横で頭をポフンとついて輝李は、乙を心配そうに見つめている。
「ケホケホ…輝李、こんな所に来ちゃ駄目だろう…ケホ…」
「どうして?」
「風邪が移ったら…どうするんだよ…ケホ、ハァハァ…」
「大丈夫だよ、私移らないもん♪」
部屋に来るたびにメイドに叱られて追い出されていたが、懲りずに乙の部屋にやって来ては、花壇で積んだ花やおやつの残りを持ってお見舞いに来る。
夜には、メイドの目を盗んで乙の部屋に忍び込み乙の手を握って一緒に寝ていた。
しかしその後、乙が治ると必ず風邪が移って自分が寝込んでは、乙が見舞いに来ていたのだ。
「だから言っただろ!!仕方ないなぁ。」
「だって移らないと思ったし、乙が心配だったんだもん!!ケホ…」
乙は溜め息をついたが、いつも優しい笑顔で時折、輝李の手を握りながら輝李の部屋で勉強をしていた…───
「…輝李…」
いつの間にか乙は、眠りながら言葉をついた。
輝李が乙の手にそっと手を重ねると乙は力なく握りながら、また静かに眠った。
乙がベッドで苦しんでいると、そっと首元に触れる感触があった。
温かく、どことなく優しい懐かしい温もり…。
そして誰かの溜め息が聞こえる。
「…と…」
「ハァハァ…ハァハァ…」
ハッキリと聞こえないが、それは自分を呼んでいる事が解った。
懐かしい声…
いつも自分から離れず支えてくれた輝李の声だ。
「苦しそうだね…」
「ハァハァ…輝・・李…?
何で…ここに…ハァハァ」
「神流さんに頼まれたから…」
苦しそうに虚ろな眼差しで見つめる乙は力なく息を荒くしていた。
「…薬は飲んだわけ?」
「…ハァハァ…ま…ハァハァ」
言葉も覚束ない乙に輝李は、大きな溜め息をつくと何を思ったのか急に乙に顔を近付ける。
「や…めろ…」
不意に顔を反らした乙の抵抗に、途端に輝李の眉間にイラッと皺が走り、乙の両脇に手を着いた。
「ちょっと!!
薬くらい大人しく飲んだらどう?
聞き分けがないなら座薬無理矢理押し込むよ!!
…子供じゃないんだから手間とらせないでくれるかな…」
「……ハァハァ」
冷やかな輝李の言葉に、やっと行動の理由を理解した乙は、大人しくなり薬を輝李の口から受け取った。
薬を飲ませ終わると輝李は、新しいタオルと水枕を医務室から持ってきて乙の頭に置き、冷たいタオルを額に当てた。
熱を出した時、取り分け何があるわけでもないのに無性に孤独感に襲われる。
そんな乙の気持ちが顔に出ていたのだろうか、輝李が口を開いた。
「少し…眠ったほうが良いよ…
僕、ここでレポート書いてるから何かあったら呼んで…」
素っ気なく資料の書物に目を落とす輝李、不意に乙の胸に痛みが走った。
こんなにギクシャクして、いつも部屋に籠もっていると噂は聞いていた。
輝李の頬を打ってしまった罪悪感と本当は自分とは顔を合わせたくないはずなのに、乙の傍に居てくれる輝李に乙は小さく口を開いた。
「輝李…ごめん…」
「…何が?」
「…ハァハァ」
言葉をつぐんた乙に輝李は、静かに言葉をついた。
「あの時の事を言ってるの?
…乙が判断して下した事でしょ。
なら、自分の判断にプライドを持ったらどうなの?
それとも、謝らなきゃいけない様な事だったわけ?
…下らない事言ってる暇があるなら、さっさと風邪治して!!」
「…ああ」
意外な言葉。
それは輝李の精一杯の優しさなのかもしれないと、乙は胸に痛みを抱いた。
その後、乙は静かに眠りについた。
懐かしい夢を見た。
それは、幼い頃の夢…。
──乙は幼い頃、夏風邪を毎年ひく子供だった。
それは母が生きていた、2人がまだ小さな時だった。
「ケホ…ケホ…ハァハァ…」
「乙…大丈夫?」
風邪を引いた乙のベッドの横で頭をポフンとついて輝李は、乙を心配そうに見つめている。
「ケホケホ…輝李、こんな所に来ちゃ駄目だろう…ケホ…」
「どうして?」
「風邪が移ったら…どうするんだよ…ケホ、ハァハァ…」
「大丈夫だよ、私移らないもん♪」
部屋に来るたびにメイドに叱られて追い出されていたが、懲りずに乙の部屋にやって来ては、花壇で積んだ花やおやつの残りを持ってお見舞いに来る。
夜には、メイドの目を盗んで乙の部屋に忍び込み乙の手を握って一緒に寝ていた。
しかしその後、乙が治ると必ず風邪が移って自分が寝込んでは、乙が見舞いに来ていたのだ。
「だから言っただろ!!仕方ないなぁ。」
「だって移らないと思ったし、乙が心配だったんだもん!!ケホ…」
乙は溜め息をついたが、いつも優しい笑顔で時折、輝李の手を握りながら輝李の部屋で勉強をしていた…───
「…輝李…」
いつの間にか乙は、眠りながら言葉をついた。
輝李が乙の手にそっと手を重ねると乙は力なく握りながら、また静かに眠った。
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