132 / 166
REFRAIN
REFRAIN8
しおりを挟む
ジッと見つめる乙の瞳は、真っ直ぐに瀾を捕える。
「踊ろう」
意外な乙の言葉。
パーティー…てっきりこの場で、そんな雰囲気に成るのかと思っていた瀾は、その言葉に動揺を隠せずにいた。
「あ…でも、私ダンスなんて…」
「大丈夫、俺がリードする。
さぁ、おいで!!」
グイッと手を引かれ、甲板まで連れていかれると丁度12時の時計が鳴いた。
…1回…2回…3回…
…11回…12回…
瀾の脳裏に一瞬、誰かの口元と小さな言葉が流れた。
《「シンデレラみたい?」》
温かく優しい言葉。
『貴方は…誰…?』
小さな頭痛が一瞬、瀾をチクリと刺した。
甲板には、緩やかな時を刻む音楽が包んでゆく。
乙は、瀾の腰に優しく手を添えると自分のもとへ引き寄せた。
「あ…///」
小さな一歩が乙に寄り添う。
そして目の前の紳士のリードは、瀾を華麗に躍らせる。
柔らかな瞳…。
普段の乙からは、垣間見ることがない表情。
「…私…踊ってる…」
「ああ…」
「あ…///」
瀾の言葉に目の前の紳士は、微かだが柔らかに微笑んでいた。
初めて見せる乙の笑顔…。
穏やかで…包まれるような。
潮の微かな香りと乙の温かな体温に、ほのかに香る香水の調べと共に瀾の鼻孔は満たされていく。
「…ずっと、こうして踊りたかった」
「…え?」
「野中と…」
「先…輩…」
間近に見える乙の顔は、穏やかながらも少し寂しそうな印象を受けた。
「野中…」
「…はい?」
「上、見てごらん」
優しくついた乙の言葉に、瀾が空を見上げると…
その瞳に飛び込んできたのは、明かりの少ない夜空にちりばめられた満天の星達だった。
「うわぁ~…」
ため息にも似た歓喜の声は、少女の表情すら眩しく照らしだす。
「綺麗…///」
「ああ…」
くるりと回る少女は月光のスボットライトに照らされ、星達のアクセサリーを身に纏い、まるで月夜の妖精のように乙には映った。
ダンスのリズムに、また乙の元へ戻って来ると乙は瀾を抱き締めた。
「あ…///」
「野中…」
乙の頭は瀾の肩にもたれ、耳元でその声を奏でる。
「一つだけ…俺の願いを叶えてくれないか…」
「…お願い、ですか?」
「ああ…俺の名を…呼んでくれないか?
…乙と…」
キュッと抱き締められた腕の中で瀾は、小さくその名を呼んだのだった。
「…乙…さん…」
その響きに乙は暫くの間、瀾を強く抱き締めていた。
やがて肩が冷えてきた瀾を気遣い、乙は自分の部屋へと案内する。
「悪い…体が冷えてしまったな」
「いえ…」
「浴室…温めておいたから着替えて来ると良い。
今日は泊まっていけよ…。
どうせ輝李の部屋には入れないんだ…」
「ありがとう、ございます…」
瀾は、少し申し訳なさそうに目を反らすと、一礼をしてバスルームに向って行った。
ホコホコと顔を蒸気させて風呂からあがった瀾をベッドルームに案内すると、二つある内の一つを貸し与えた。
乙が、ベッドルームから出ようとすると瀾が心配そうに口を開く。
「あの…」
「…何だ?」
「ベッド、ありがとうございます」
「ああ…」
「それと…先輩は…?」
「俺は、もう少ししたら寝るから、先に休んでいるといい。
疲れただろ…」
「はい…ありがとうございます」
フッとクールな笑みを見せ、ベッドルームを出たが、乙が瀾と同じ部屋で寝る事はなかった。
メインルームのソファーに横になり、目を閉じる。
今夜は乙にとって、つかの間の幸せな夜だった。
しかし…
やはり運命は、乙に容易に安息を与えてはくれなかった…。
「踊ろう」
意外な乙の言葉。
パーティー…てっきりこの場で、そんな雰囲気に成るのかと思っていた瀾は、その言葉に動揺を隠せずにいた。
「あ…でも、私ダンスなんて…」
「大丈夫、俺がリードする。
さぁ、おいで!!」
グイッと手を引かれ、甲板まで連れていかれると丁度12時の時計が鳴いた。
…1回…2回…3回…
…11回…12回…
瀾の脳裏に一瞬、誰かの口元と小さな言葉が流れた。
《「シンデレラみたい?」》
温かく優しい言葉。
『貴方は…誰…?』
小さな頭痛が一瞬、瀾をチクリと刺した。
甲板には、緩やかな時を刻む音楽が包んでゆく。
乙は、瀾の腰に優しく手を添えると自分のもとへ引き寄せた。
「あ…///」
小さな一歩が乙に寄り添う。
そして目の前の紳士のリードは、瀾を華麗に躍らせる。
柔らかな瞳…。
普段の乙からは、垣間見ることがない表情。
「…私…踊ってる…」
「ああ…」
「あ…///」
瀾の言葉に目の前の紳士は、微かだが柔らかに微笑んでいた。
初めて見せる乙の笑顔…。
穏やかで…包まれるような。
潮の微かな香りと乙の温かな体温に、ほのかに香る香水の調べと共に瀾の鼻孔は満たされていく。
「…ずっと、こうして踊りたかった」
「…え?」
「野中と…」
「先…輩…」
間近に見える乙の顔は、穏やかながらも少し寂しそうな印象を受けた。
「野中…」
「…はい?」
「上、見てごらん」
優しくついた乙の言葉に、瀾が空を見上げると…
その瞳に飛び込んできたのは、明かりの少ない夜空にちりばめられた満天の星達だった。
「うわぁ~…」
ため息にも似た歓喜の声は、少女の表情すら眩しく照らしだす。
「綺麗…///」
「ああ…」
くるりと回る少女は月光のスボットライトに照らされ、星達のアクセサリーを身に纏い、まるで月夜の妖精のように乙には映った。
ダンスのリズムに、また乙の元へ戻って来ると乙は瀾を抱き締めた。
「あ…///」
「野中…」
乙の頭は瀾の肩にもたれ、耳元でその声を奏でる。
「一つだけ…俺の願いを叶えてくれないか…」
「…お願い、ですか?」
「ああ…俺の名を…呼んでくれないか?
…乙と…」
キュッと抱き締められた腕の中で瀾は、小さくその名を呼んだのだった。
「…乙…さん…」
その響きに乙は暫くの間、瀾を強く抱き締めていた。
やがて肩が冷えてきた瀾を気遣い、乙は自分の部屋へと案内する。
「悪い…体が冷えてしまったな」
「いえ…」
「浴室…温めておいたから着替えて来ると良い。
今日は泊まっていけよ…。
どうせ輝李の部屋には入れないんだ…」
「ありがとう、ございます…」
瀾は、少し申し訳なさそうに目を反らすと、一礼をしてバスルームに向って行った。
ホコホコと顔を蒸気させて風呂からあがった瀾をベッドルームに案内すると、二つある内の一つを貸し与えた。
乙が、ベッドルームから出ようとすると瀾が心配そうに口を開く。
「あの…」
「…何だ?」
「ベッド、ありがとうございます」
「ああ…」
「それと…先輩は…?」
「俺は、もう少ししたら寝るから、先に休んでいるといい。
疲れただろ…」
「はい…ありがとうございます」
フッとクールな笑みを見せ、ベッドルームを出たが、乙が瀾と同じ部屋で寝る事はなかった。
メインルームのソファーに横になり、目を閉じる。
今夜は乙にとって、つかの間の幸せな夜だった。
しかし…
やはり運命は、乙に容易に安息を与えてはくれなかった…。
0
あなたにおすすめの小説
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる