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満月の夜には魚は釣れない
キューピット
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『ふふふ……』
里奈は昔を思い出して笑った。
『どうした?』
『いや……昔を思い出したのよ』
『ああ、橘ってけっこう強引なところあるからなーー』
『あら?強引でも面倒見もいいのよ』
『そうだったな。いや……感謝してるよ』
愛依をサーフィンに誘った次の日、彼女は律義にもウエットスーツを着て、ロングボードを重そうに抱えながらやってきた。里奈はしばらくは自分は乗れないと思ったのでボードは持って行かなかったことを覚えている。人に教えるときは自分は楽しめない。教える人間に楽しんでもらうのだ。
『あ……あの……あたし、大丈夫かな?』
不安そうに愛依は里奈を見た。
今日はそんなに波はない。どちらかと言えば凪だ。サーファーとしては物足りないだろうけど、素人にはちょうどいい。
『大丈夫大丈夫、ここの海岸は基本的にほとんど人がいないから気楽に楽しめるし』
『そ……そうなの?』
『うん。波に乗ると楽しいよーー』
里奈は能天気な自分を思い出すと赤面してしまういそうになる。
この日は一時間ぐらい愛依にサーフィンを教えた。教えることも実は楽しい。少しずつうまくなっていくのをみるのはこちらも嬉しいのだ。
『大分乗れるようになってきたね』
『うん。なんか楽しい』
『明日も行こうよ』
『え。いいの?橘さん、自分は何もできないじゃない』
『いいのいいの。楽しいから。愛依ちゃんが乗れるようになるのが楽しみだよ』
里奈がそういうと愛依は少しきまりの悪い顔をした。
その顔の表情が何を意味するのかはその当時の里奈には分からなかった。
『あの……橘さん……』
『ん?どうしたの??』
『橘さんって……その……土屋くんと……』
『ああ。あれね。デマよ。仲は良いけど付き合ってはいないわよ』
即答した。この手の話は嫌というほど聞かされているが、付き合っていないのが事実なのだから事実しか答えられない。それに良平はかっこいいけど、なんとなく里奈のタイプではないのだ。
ああ……それは良平もそうに違いない。
『そうなの?』
『てゆうか愛依ちゃん、もしかして……』
真っ赤になった愛依の顔を見て初めてそのことに気づくなんて、なんて自分は鈍いのだろうと当時の自分を振り返りながら里奈は思った。
今では良平も愛依も大事な友人である。
愛依がサーフィンの楽しさを知って、良平と結ばれたらこんなに素敵なことはないと思ったのが昨日のことのようだ。
それから何回か良平と愛依を誘って遊びに行ったのを覚えている。
良平も愛依もお互いに話すことがなく、里奈を介して話そうとするのが、当時の里奈の悩みだった。二人とも美男美女なのに、お互い無口で話せない。良平は無口ではないのだが、女の子との話し方を知らないし、愛依はもともと無口だ。
よくよく考えてみたら、若い頃の里奈はそんなことばかりしている。
高校時代にも、大学時代にも、似たようなことをした思い出がある。
そりゃ結婚しないで今の今までいるわけだ。
そんなことより……
『土屋……愛依ちゃんとはどうなったの?』
里奈は昔を思い出して笑った。
『どうした?』
『いや……昔を思い出したのよ』
『ああ、橘ってけっこう強引なところあるからなーー』
『あら?強引でも面倒見もいいのよ』
『そうだったな。いや……感謝してるよ』
愛依をサーフィンに誘った次の日、彼女は律義にもウエットスーツを着て、ロングボードを重そうに抱えながらやってきた。里奈はしばらくは自分は乗れないと思ったのでボードは持って行かなかったことを覚えている。人に教えるときは自分は楽しめない。教える人間に楽しんでもらうのだ。
『あ……あの……あたし、大丈夫かな?』
不安そうに愛依は里奈を見た。
今日はそんなに波はない。どちらかと言えば凪だ。サーファーとしては物足りないだろうけど、素人にはちょうどいい。
『大丈夫大丈夫、ここの海岸は基本的にほとんど人がいないから気楽に楽しめるし』
『そ……そうなの?』
『うん。波に乗ると楽しいよーー』
里奈は能天気な自分を思い出すと赤面してしまういそうになる。
この日は一時間ぐらい愛依にサーフィンを教えた。教えることも実は楽しい。少しずつうまくなっていくのをみるのはこちらも嬉しいのだ。
『大分乗れるようになってきたね』
『うん。なんか楽しい』
『明日も行こうよ』
『え。いいの?橘さん、自分は何もできないじゃない』
『いいのいいの。楽しいから。愛依ちゃんが乗れるようになるのが楽しみだよ』
里奈がそういうと愛依は少しきまりの悪い顔をした。
その顔の表情が何を意味するのかはその当時の里奈には分からなかった。
『あの……橘さん……』
『ん?どうしたの??』
『橘さんって……その……土屋くんと……』
『ああ。あれね。デマよ。仲は良いけど付き合ってはいないわよ』
即答した。この手の話は嫌というほど聞かされているが、付き合っていないのが事実なのだから事実しか答えられない。それに良平はかっこいいけど、なんとなく里奈のタイプではないのだ。
ああ……それは良平もそうに違いない。
『そうなの?』
『てゆうか愛依ちゃん、もしかして……』
真っ赤になった愛依の顔を見て初めてそのことに気づくなんて、なんて自分は鈍いのだろうと当時の自分を振り返りながら里奈は思った。
今では良平も愛依も大事な友人である。
愛依がサーフィンの楽しさを知って、良平と結ばれたらこんなに素敵なことはないと思ったのが昨日のことのようだ。
それから何回か良平と愛依を誘って遊びに行ったのを覚えている。
良平も愛依もお互いに話すことがなく、里奈を介して話そうとするのが、当時の里奈の悩みだった。二人とも美男美女なのに、お互い無口で話せない。良平は無口ではないのだが、女の子との話し方を知らないし、愛依はもともと無口だ。
よくよく考えてみたら、若い頃の里奈はそんなことばかりしている。
高校時代にも、大学時代にも、似たようなことをした思い出がある。
そりゃ結婚しないで今の今までいるわけだ。
そんなことより……
『土屋……愛依ちゃんとはどうなったの?』
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